ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。 作:Kkmn
「何々?何の重大ニュース?」「オールマイトが引退でもすんの?」
「ちげーよ!オールマイトの事務所を敵が襲撃したんだってよ!」
「ハァ!?オールマイトの事務所に?バッカじゃねえの??」
「なんでよりによってンな所に…」「瞬殺されるだろ」
(……?なんや凄く騒がしいなぁ)
塾からの帰り道、寂れた地方都市の中心で唯一立派に都市らしさを醸し出す街頭ディスプレイの前。
そこに出来ていた人だかりを見て、思わず麗日曜お茶子は足を止め、彼らに倣ってそのディスプレイを見上げる。
(『オールマイトの事務所が入居しているビルが襲撃を受ける。現在ヒーローミルコが交戦中』……でも煙でよく見えへんなぁ〜)
ヘリからの中継はビルの最上階を映し、時折数分前に撮影されたであろう煙の切れ目からミルコが戦っている様子のリプレイが流される。
相変わらず際どい衣装の野性的な笑みのエラい美人だから、そのインパクトもあって記憶に残っている。
でもその戦っている敵がほとんど見えない。一瞬だけ胴体がちらりと映ったシーンが停止、拡大されたが…あれは…スーツ?
(お父ちゃんでも作業着ばっかでスーツなんか滅多に着ないのに、敵なんかがスーツ着るんや)
そんなどこかのんびりとした思考をしていたのは彼女一人ではなかった。
この場に見ている全員、否、中継を見ている全員が楽観的な思考をしていた。
何せ敵がいるところはNo.1ヒーローオールマイトの居城。
(帰ってはやく今日の復習せんと…雄英受けるんやったら油売ってるヒマなんて─────ん?)
そのモニターの端、一瞬煙が晴れた所に何かその場には不似合いなモノが映った気がして目を凝らす。
本当に一瞬だけ映ったのは…子供?あんな所に?
(……私と同じくらいの年齢の子?逃げ遅れたのかな。それか見間違い?)
その中学生、麗日お茶子は想像もしえなかった。
自らとまったく同じ年齢のその少女が─────その隣にいるヒーローと同じく戦っているなどと。
──────▼▼──────
「いや……本当に、本当に残念極まりないコトをしてしまった。快気祝いに顔を見せに来ただけだったのに」
そのスーツの男が漏らす言葉の一つ一つが、彼女の精神をすり減らす。
何の重みも感情も込められていないはずのその言葉が、酷く恐ろしく、破滅的なモノに聞こえて仕方がない。
“兎”の生存本能がさっきからけたたましくアラートを鳴らし、今すぐこの場から逃げろと叫んでいる。
「カメラの前で四肢をもぎ取り、人々を目の前で殺し、ゆっくりと薄皮を剝いで殺すつもりだったんだ。それがまさか」
カツ、カツ、と冷たい足音が響き渡り、場を支配する。その男の声は何処となく喜悦と狂気の感情が見え隠れしていた。
アタシ何十回コイツを本気で蹴った?とミルコは脳内で軽く思案するが、すぐにその思考を放棄し敵の出方を探った。
その背後には守るべき相手が─────自らが連れて来た少女、蛙吹梅雨と、そして。
「まさかたった一撃で絶命寸前になってしまうなんて。衰えすぎだね。いや、それとも僕が元気になりすぎただけかな?」
アタシを見てねぇ。と内心舌打ちしたが、その怒りに任せて飛び掛かるような真似は流石の彼女も出来なかった。
なにせこの目の前の敵が一撃で倒したのは。
「─────オールマイト」
「…………!」
その男の視線の先にいたオールマイトの姿たるや─────とても公共の電波に載せれるようなものではなかった。
血ではなく臓物が抉れた腹部から噴き出し、筋肉はしぼみ、今この瞬間にも血の海は広がっていっている。
そして、その惨状を前に蒼白になりながらも救護しようとする蛙の少女の姿に、敵はその仮面のような顔を不気味に歪めた。
「…ぜ……なぜ、キサマ、いきて……ゲホッ!!」
「”愛の力”さオールマイト!しかし今日はもう活動限界だったものな。勿体ないことをしてしまった。もっといたぶって殺したかったのに─────おっと」
トラックのタイヤが破裂したような炸裂音が空を揺らす。敵が片腕をかざすや否や、それを攻撃の予兆と見たミルコの回し蹴りがその片腕に向かって放たれた。無論普段しているような、生きたまま確保するための手加減など一切ない。全身全霊の力を込めた必殺の一撃だった。
「なんだァ…テメェ…!!」
だが─────余りにも手ごたえがない。
自分が今相対しているのは常識が通用しない理外の存在だという事を、ミルコは幾度となく放った蹴りによってひしひしと理解させられていた。
そしてその当の敵は何らそれを苦痛に感じるようなそぶりも見せることなく、ちらりと目だけ見やる。
「まだこっちのカスの方が元気がいい。……いや?そうか?君はあの娘の『愛情』を受けていたのか。通りで歯ごたえがある」
「っせェ~~~~!!!もっと大声で喋れェ!!!」
炸裂音、破裂音。その音だけで周囲のビルを揺らし、風圧だけで周囲のビルのガラスを割ってしまう程の重く深い蹴りが何度も何度も敵に浴びせられる。しかしそのどれもが大したダメージにならない。
その幾重もの風圧を受け、近くを飛んでいた幾つかのマスコミのヘリ達は大きく揺らぎ、一時退避を余儀なくされた。
(何か仕掛けがあるタイプだなァ。『衝撃無効』?『身代わり』?でもそれ以前にそもそもコイツ強─────────)
瞬間、突破口を探していたミルコの脳内で鳴り続けていた”兎”の生存本能が絶叫した、焼き切れるほどに、発狂したように。見れば男が掌を強く握りこみ、それを軽く突き出すような素振りを見せている。
「『パワー増強』『ベクトル倍化』『筋力100倍』『破裂』『破壊』『消滅』『風圧『大』』『加速』『早送り』『衝撃増加』『ループ』『個性倍化』…」
(─────やべェ)
その男の言っていることは3割程度しか理解できなかったものの、『ヤバイ』というコトだけは兎に角理解できた。
コレを打たせてはいけない!!!コレを打たせたら後ろの二人が、否、この町が─────否、東京が吹き飛ぶ!!!
させじと顔面を狙って渾身のハイキックを放つも、やはりまったく手ごたえがない…!まるで別次元の存在を蹴っているかのようだ。
(─────仕方ねェ、”一本”くれてやるか)
男が纏っていた殺意が発露された瞬間、その拳がこちらに向かって突き出されていた。もはや次元が違う、その一撃が。
恐らく高度の違いや力の向きなど一切関係ない。この拳の先にあるものは全て吞み込まれ完全に消滅する。
そう誰もが確信するほどのエネルギーが、その拳から放たれ──────────
「────────
「────────DETROIT SMASH!!!」
──────ることはなかった。
そのベクトルとは正反対の二つの大きな力がその拳へと叩きこまれ、爆発的な衝撃と風圧を伴い無理やり相殺されたのだ。
…それを間近で受けた蛙吹梅雨が半壊したビルから振り落とされることなく耐えられたのは、ミルコによる下半身の鍛錬の賜物だった。
「……ケロッ!!」
そして彼女が顔を庇っていた腕を解いた先にあった光景に、その蛙っぽい顔を引きつらせてしまった。
…目の前にいるのはこの国で1番目に凄いヒーローと5番目に凄いヒーローなのに。
それなのに、その二人のヒーローが死に体でボロボロになっているのに、それに相対するスーツ姿の敵は腫れた腕以外無傷だったのだから...!!
これは夢?そうでなければ説明がつかない。
「っぶねェ~~~っ!!脚捨てずに済んだけど、もう動くンじゃねぇオールマイト!!死ぬぞ!!!」
「……ッ…カハッ…!!」
─────パン、パン。
その彼らの姿を手を叩いて無邪気に喜ぶスーツの男の笑みは、より一層濃くなった。
「いや……そうだったね、『ヒーローは手負いが最も恐ろしい』。僕としたことがウッカリしていたよ。まさかコレを止められるとは思わなかった…おかげでかなり消耗してしまったよ」
「ハッ嘘こけ!!せめて息くらい上がってから言えや!!」
「本当だよ、今のは久しぶりに本気を出した。けどまぁ、すぐに回復できるんだけどね。─────おいで」
「…ああ?」
スーツの男が何もない空間に手をかざし、まるで誰かを手招きするかのような仕草。
それを見たヒーロー2人は構えるが、もはやオールマイトは立つ力すらないのか激しく吐血し、膝を屈した。
そして次の瞬間。その空間に大きく”ヒビ”が入った。まるでそこに超透明なガラスがあったのかのように。
そのヒビはピキピキと音を立て、まるで卵が孵化するかのように限界を迎えた。
─────ピキッ。
「─────およびでしょうか、ごしゅじんさま」
その割れ目から現れたのは、白い蛇だった。
人目を引く腰まで伸びた光沢のある美しい長髪、高く整った鼻梁と、瑞々しく艶やかな唇。そしてその下半身は人間の要素など微塵も見当たらない、硬い鱗に覆われた蛇そのものの異形。
更には鈍く輝く鱗は彼女の顔や腹部、乳房を除く全身の柔肌を包み込む。きめ細やかさや柔らかさが見える地肌。
そのどれもが、色を何処かに忘れてしまってきたかのように真っ白だった。
ただ一つ、その鮮血のように紅く染まる縦長の瞳だけを除いて。
「あぁ、やはり便利だ。君に貴重なテレポートの複製を渡して良かった。回復を頼むよ」
「は、ァイ”、わk、あrい魔maししし」
その白い蛇がその腫れた腕に、そっと口づけを落とす。
その唇から覗く長い舌は、人間のものとは似ても似つかない、細長いチロチロとした蛇の舌。
ただ────その舌は半分千切れ、目は焦点が合わず、そもそも片目が
顔は半分焼けただれたように溶け、気道が損傷しているのか話す度に空気が漏れる音が聞こえる。
そして、唖然としていた兎のヒーローの赤い瞳が激情に揺れ、ぞわりと兎の耳と銀髪が逆立った。
「─────テメェ。テメェ……テメェエエェェェエエッッ!!!!」
まだ何処か、心の何処かにあった、まだ見ぬ強敵に出会えた嬉しさやワクワク。そう言った感情が今完全に消滅した。
それを一切歯牙にもかけず、その男は白い蛇のほっそりとした腰に腕を回し口づけを返す。
「─────あはっ♡」心酔しきったような、狂気に蝕まれたような笑みで、彼女はそれに悦んだ。
「大変だったんだよコレを使いものにするには!中々どうして上手くいかなくてね!個性で体感時間800年くらい拷問したり、脳の7割を摘出したり、臓器を半分ほど別のモノに置き換えたり、脅したり、あらゆる洗脳の個性を試したりさ!苦労したんだぜ、誰に対しても100%の効力の『愛情』を発揮できるようにしてあげるには!」
「ソイツ返せェ!!!ソイツはアタシんだぞ!!!」
“自分のモノ”を盗まれた怒りをこれでもかと込め、弾ける程に筋肉が満ちた脚での一撃がその若い男の顔面に蹴りこむ。
この戦い─────この一方的すぎる”遊び”を戦いと呼んでいいのか不明だが─────が始まってから初めて、その男の姿勢がグラつく。
「おや、『無敵』を貫通してくるか。個性を無視して攻撃してきたのは君以外には昔の
「寝てんなヘビっ子ォ!!テメェが殺してぇって言ってたのコイツだろ!!ブッ殺してやれ!!」
自分より格上の相手と戦った事なんざゴマンとある。勝てなかった戦いもあったし、ボロ負けしたことだってある。
だとしてもこの不気味ヅラは何だ??ここまで戦いにならねぇのはバグってやがる!!
それにバグってるヘビっ子がずっとこのバケモンにしがみついてて余計やりづれぇ!!!
「凄いだろう?この『無敵』は。この能無77号...彼女が、ヒーローだったときの個性を拝借したモノなんだ!この『愛情』といい、『無敵』といい、本当にこの子は僕にとっての救いの女神─────おお?」
「テメェはもう喋んな、カs─────あ?」
─────SLAAAM!!!
その仮面のような不気味な笑顔が、この戦いが始まって以来初めて消えた。
そして初めて彼は、この戦いが始まって以来、否、全盛期の姿を取り戻して以来、初めて防御の姿勢を取っていた。
「ケロ、その口で─────それ以上私の友達を語らないで」
どういう展開がいい?
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スーパー梅雨ちゃん無双
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主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
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スーパーミルコさん無双
-
ひたすら百合百合