ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。 作:Kkmn
18.継承者さんと梅雨ちゃん
夢。
夢の中といえばどんなモノをみんな思い浮かべるかしら。
そうよね、私も自分のお家だったり、いつもの教室だったり、最近はミルコさんの一時事務所だったり。
またあるいはアニメの中やいつかテレビで見た遠い綺麗な山国の中だったりするわよね。
そういう身近かどうかの差はあれど、自分の記憶の中で印象めいた所が舞台になることがほとんど。
「ケロケロ」
────じゃあここは何処かしら?
真っ暗闇の空間なのに、何かが流れていっている。まるで暗闇の中を浮いて旅行しているような気分。
そして自分が立っているのは瓦礫?壊れた建物の一角?
こんなのアニメかドラマかで見たかしら?そもそもこんなに意識がはっきりしている夢なんて不思議だわ。
パチリ。瞬きを一つする。
「ケロ」
するとどういったことか、瞬きをする前には居なかった人影が2つ…じゃないわ、3つね。
一つは寝ているナナちゃん。でも…真っ白。現実と同じね。
あれ?現実?私そういえば何してたのかしら?確かあのスーツの敵に思い切り蹴りを叩き込んで…それから…?
…まあそれはいったん保留しましょう。
もう一つはとても恰幅のよいスキンヘッドのおじさん。見た目がちょっとワイルドだわ。ヒーローさんかしら?寝ているナナちゃんを心配そうな顔つきで覗き込んでるわ。
最後の一人はとっても綺麗なお姉さん。背がとっても高いわ。ヒーロースーツ?に包まれたカラダもとっても鍛えられてるのが上からでもわかる。
「???……不思議な夢ね」
夢の役割は記憶の整理。
ということは何処かしらで私が見たり出会ったりした人なんでしょうけど、まったく見おぼえがないわ。
ただ…こちらのお姉さんに関してはオールマイトと雰囲気が似通っている気がする。
私の頭の中で勝手にオールマイトとミルコさんのイメージをガッチャンコさせてしまったのかしら?
そんな夢の中にしてはやけにハッキリする頭で考えるが埒があかない。お話でもしてみようかしら。
「ケロ、こんにちは」
「うおおおおいいい!?ビックリしたさぁ!!?!??」
「……!」
スキンヘッドの男性が尻もちをつき、対照的にお姉さんは静かに振り返る。
そのお二人としっかりと真正面から目が合うけど…うーん?お母さんにも似てないし、一体どなたかしら?
そう再び思考の沼に陥りそうになる私に、お姉さんはツカツカと歩み寄ってくるわ。
「…ちょっとごめんな」
「ケロっ?」
そのまま頭や身体を撫でられ触れられ、まるで空港のボディチェックのようだわ。受けたことないけど。
でもこの人の手、あったかいし大きくて、なんだかとっても安心するわ。
ミルコさんに頭わしゃわしゃ撫でられるのと同じくらい、心がほっとしちゃう。
「
「私も不思議だわ。こんなにハッキリした夢ははじめてよ」
口元に手をやってそうお姉さんに告げると、どこかふふっと優しい笑みを浮かべられる。
「…実はね、私たちも戸惑ってるんだよ。こんなにハッキリと意識があることに。こうして会話までできるなんて」
「!わかったわ、これ、もしかして貴方の個性かしら?『夢の中に入る』みたいな?」
「ふふっ、残念だが違う。それにここは『夢』というモノとも違いそうだ。さて、どこから話したものか」
そう言って髪をかき上げるお姉さんは仕草一つ一つが本当に美しいわ。静かなミルコさんみたい。
尻もちをついていたおじさんがお尻を払って立ち上がり、同じく近づいてくる。
軽く手をあげてニカッと挨拶をしてくれたので、私もケロッと会釈でそれに応じる。
「よお嬢ちゃん!!!悪いな!!混乱してるだろうけど俺たちもさっき起きたばっかさ!!お互い様って訳さね!!!」
「ええ、とっても混乱しているわ。でもあなたたちは良い人みたいだから安心してるわ。ケロケロ」
「おおっ!!見る目あるねぇ!!」
豪快に笑い飛ばすおじさんを一瞥したお姉さんが、膝を落として私の肩に手を置いた。
目線を合わせて威圧感を与えないようにしてくれてるのね。やっぱり悪い人じゃないわ。
「ここは深層意識。心の奥底の領域だよ。あなたのね。」
「ケロ。心の中?みたいなカンジかしら?」
「そう思ってくれていいさ!」
「私たちは歴代ワンフォーオール…いや、あなたが俊典、オールマイトから受け取った力の中に宿っていた意識だよ。」
「わんふぉー…?力、宿っていた意識…。!!」
頭の中で電球がケロンッ!と点灯する音が聞こえたわ。この頭が冴えわたる感じ、ナナちゃんのバフは夢、じゃなくて心の中でも有効なのね。
「この力は受け継がれてきた物。そしてあなたたち二人はオールマイトの前にこの力を持っていた人たちってことかしら」
「……!大したモンさ!完璧に近い正解さぁ!!!」
お姉さんもちょっと目をぱちくりして驚いてる感じだわ。でもすぐに落ち着いて次の言葉を続けてくれたの。
「今はいない者も併せて全部で7人。その力は受け継がれてきたんだ。そう、まるで聖火のように、
「あのスーツ姿の敵かしら?」
「…………ああ」
私がそれを口にしたとたん、二人の顔がどっと暗くなるのを感じた。まるでこう、その二人にとっては存在を思い起こすのさえ忌々しいような…そんな印象を感じるわ。
でも確かにあの敵は恐ろしかった。あのオールマイトとミルコさんが並び立って、それでも傷一つつけるのが精一杯だった恐ろしい存在。
それが目の前に飛び込んできた絶望はとんでもなかった。当たり前に続くと思ってた平和な世界が、音を立てて崩れていくような。
…ナナちゃんが騙し討ちしてくれなかったら、私もきっとあのまま死んでたのかしら。
「奴の名はオールフォーワン。百年以上に渡り恐怖と絶望を世界にバラまいてきた巨悪。あなたはさっき奴を打ち破ったけど…
「…ケロ…?」
ええ?オールマイトの全力ストレートをスリッピングアウェイでぶつけただけでも、もう人に対する攻撃としてはアレなのに?
そのうえミルコさんのキックと、ナナちゃんのすんごいバフと、オールマイトから貰ったパワーを全力でぶつけたのに??
私結構もう、ナナちゃんたちを守るためなら敵の命を奪う覚悟も!って感じで蹴ったのだけど。
「奴が死んでたら私たちも成仏できてたかもしれないんだけどね。生憎まだ闘いは続くようだ。」
「…なんだかすごいお話だわ。コミックみたい。」
「……そう、コミックだ。あいつは…あの男は、コミックのような感覚でやってるんだろうな…。人の命を奪うのも、人生を弄ぶのも…きっとまた…」
そうお姉さんがまるで噛みしめるような面持ちでため息をつけば、私は少し彼女のことが心配になってしまう。
…本当に、心の底から辛そうだ。唇を変色するほど噛みしめ、その美しい瞳が揺れる。
さっきこの人は
きっとあの恐ろしい敵と死ぬまで戦い続け、そして志半ばで次の人に託したのだろう。
それまでにどれだけの苦労と辛い日々があったか、私には想像も及ばない…。
────だからせめて私が今言えることは。
「…大丈夫よ。何度現れても、あなたの代わりに、オールマイトの代わりに、私があの敵を蹴り飛ばすわ。」
俯いていた彼女がハッとした面持ちで顔を上げ、息を呑む。
「ケロケロ、だから安心して。あなた達の思い、しっかり背負うから」
瞳から大きな雫が溢れ、滴る。その顔がまるでナナちゃんが泣いてるような顔に見えてしまった。
そのせいで私は自分でも気づかないうちに、その震える彼女の綺麗な髪を撫でつけていた。
大丈夫。大丈夫。と。いつも一人で背負い込み、泣いてしまう彼女にするのと同じように。
きっとこの人も全部ひとりで抱え込んでしまって、一人でずっと頑張ってきた人だったんだろう。
そしてそれをきっと最後まで貫き通した強い人だったにちがいない。
傍にいたスキンヘッドのオジサンが、そっと震える肩を支える。
「…………ッ!!ご、ごめんね…あなたの方が、よっぽど不安なのに…!!ごめんね…あなたを見ると、色々、思い出しちゃって…!!」
「ケロケロ、いいのよ。」
色々とこみあげてくるものがあったみたいで、しばらくそうしていたけれど。
彼女は意を決したように涙を拭い、立ち上がりしばらく私を見降ろした。
私もそれに見合い、ずっと彼女の綺麗な瞳と向き合う。信念の宿った人の目だ。ミルコさんやナナちゃんと同じ目。いやそれ以上かも。
「────────決めた。やはり、一代目が言っていた通りにしよう。この子に
??この子に、のこしていく?ケロ?
そうして沈黙を破った一言は、私にはちょっとよくわからない意味のものだったわ。
「ああ、俺もそれが良いと思うぜ。この嬢ちゃんなら使い方を誤ることはないさ。いや、正統継承者になるべき…」
「それは絶対にダメだ。この子はこの力がなくとも世の中に必要なヒーローになるはずだ。
「…ああ、そうだな。」
??どういうことかしら?さっきもちょっと危なかったけど、今は更にもっと話についていけないわ?
すると今度はおじさんが私の前で大きく手を広げて。
「この力は受け継がれてきた物さ!その度に大きく!巨大になっていく!それは本来良いことさ!今度の継承では俺たちの意思までも目覚めたしな!でもな!今回ばかりはそれが仇になっちまったさ!!…何故なら、お前の中にはもうすでに強大な力が既に
強大な力。破裂。
力強くそう言い放つおじさんが手を広げた先に居たのは────そう、うつらうつらと眠りこける白い蛇の少女。私のお友達ナナちゃん。
ケロ、なるほど。今のオジサンのお話おかげで辛うじてギリギリ理解できたわ。
「つまり、私がナナちゃんから貰っている『個性』と、オールマイトから受け取った『個性』。それらが私の中には一緒には収まりきらない?」
「そう!そういうことさ!」
「ケロ」
やだ恥ずかしいケロケロ。さっきあんなにお姉さんに「大丈夫」「想いは継ぐわ」って言ってたのがめちゃくちゃ恥ずかしくなってきたわ!!ケロケロ!!
「ギリギリ収まるはずだったんだ。しかし彼女の『愛の個性』の影響を受けて、このワンフォーオールの力が大きく増してしまった。…火に薪をくべるように。」
「ケロ…それじゃあ私、どうなっちゃうの?破裂しちゃって…お姉さんたちはオールマイトに戻るのかしら?」
「大丈夫だ、あなたは破裂しないし、私たちは元の鞘に戻る。だけど、
「と言うと?」
「あなたの中に
お姉さんが両手を向き合わせ、静かに目を閉じる。すると…え?火?これ個性かしら?
その手のひらの中に静かに揺らぐ炎が現れ────ああなるほど。これはパワーのイメージなのね。
ならそれは、私が受け取らないといけないもの。
「本当は、あなたに説明だけするつもりだった。目覚めてしまった責任と、それを俊典にただ返すよう諭すつもりだった。」
その両手が触れる。とても…とても温かい。そして力強い。まるで人の命そのものが宿ってるような。
炎に注がれていた目線が、私の両目へと移る。私はそれにしっかりと向き合い、目を合わせる。
「だが話してみて分かった…あなたは本当に強く、心優しい少女だ。もし同じ時代に生きていたら、俊典に出合わなければ、あなたにワンフォーオールを預けていただろう。」
「そんな」
「"本体の火"を継承できないことを本当に残念に思う。これはあなたへの継承の際、大きくなった分の火だ。そして
その声音が少し優しく、柔らかなモノになる。
表情も本当に優しくて綺麗で、ああそうよ、まるでお母さんのような────。
「死人の我儘を聞いてくれ、少女。そしてあのバカを、俊典を…オールマイトを少しでも支えてやってくれないか。」
やがて私の掌に移った灯火。命の躍動。そして温かみを確かに感じる。
収まらない動悸に喉が自然と鳴ってしまう。だが、その緊張も身体に溶けていく炎と共に消えていった。
「ええ、約束するわ。安心して。────菜奈さん。」
「……いけないな。歳をとると涙脆くなってしまう。」
「ケロケロ、良いじゃない泣いても。私のお友達も、一人で抱え込んでいつも泣いてるの。」
私とお姉さん、菜奈さんの視線が示し合わせたように蛇の女の子に、ナナちゃんの方へと向かう。
その彼女の小さく寝息を立てる幼い子供を見る目は、まるでお母さんのようで────。
「子供がいるんだ。きっともう
「ええ」
「いつか会ってやってほしい。…いや、これは我儘が過ぎるか」
「ケロケロ、いいのよ。菜奈さんのお孫さん、きっといい子だわ。お友達になってみたいもの、必ず会いに行くわ」
そう微笑み返した時には既に、菜奈さんたちの身体が光に包まれて消えていく。
もう少し、もうちょっとだけまだお話したいと思って伸ばした手は────誰かの手を握って────。
「…つゆちゃん、おきて」
どういう展開がいい?
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スーパー梅雨ちゃん無双
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主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
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スーパーミルコさん無双
-
ひたすら百合百合