ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。 作:Kkmn
26.初登校だよ梅雨ちゃん&ナナちゃん
人生の転機というものはいつ訪れるかわからないものだ。
わたしにはそれが3つある。
一つ目は警察に所属していたわたしにヒーロー公安が声をかけた時。
その頃警察と言えばヒーローという存在に存在意義を脅かされ続け、保身に走っていた時期だ。そんな「組織としての役目」ではなく「組織の維持」に注力する警察は。
どの県警でも罪のでっち上げや、冤罪などが平気でまかり通る、本当に終わっていた時期。まともに悪人を追おうと思えば、業務時間外に個人として調査するしかない。もしくはヒーローに情報を横流しするしかない異常が常態化していた。
そんな組織に別れを告げ、わたしは公安からの誘いを受け入れた。
2つ目はそのヒーロー公安を辞めた時。
地獄を抜けた先にあったのは、また地獄だった。人の命をモノとして消耗し続ける特濃のブラック組織。それが公安の実態だ。
けれども納得はできないが理解はできる。なんせ警察があんな調子な上、ヒーローだって仕事を選ぶ。そんな状況で悪徳企業や悪質な活動団体、テロ組織、法を犯す政治家への対処をせねばならない。
そしてそのどれもが狡辛い。法を犯すスレスレ、その境界を反復横跳びしてるような奴ら!町で無邪気に暴れまわってくれるならどれだけ楽だったか。
わたしはそこでヒーロー免許を与えられ、運よく長生きしたせいで現場の長にされた。責任が増えただけで、報酬は一切変わらなかった。
「アンタいつ引退するの?」
とは入ってきた新人のスナイパーによく言われたものだ。そして「俺が死んだ時だ」と返すのも。
「ならアタシがアンタからリーダーを奪って引退させてやるよ!」
とか言っていたそいつだったが、今は監獄にいる。ふざけるな、気持ちは分かるが。
それはそうと、わたしの『無敵』は潜入・暗殺・工作、そのどれもに良く役に立ってくれた。その個性自体の防御性能に命を救われたこともままあるが、それ以上に便利だったのは人命を無視した装置を気兼ねなく使えたことだ。
「人体の性能を極限まで高めるクスリ」「人間が携行できる最大火力の兵器」「人体の性能を大きく拡張する外骨格」「人間の意識を刈り取るレベルのEMPを発生させるデバイス」…そのどれもが但し書きにこう書いている。『使用者の生命は保証できかねます』と。
…だが『無敵』は心的ダメージには効果がない。何度も手塩にかけて育てた若手、後輩が目のまえで惨たらしく死ぬダメージは消してくれないのだ。何十年も同じ光景を見続けた癖に、我ながら軟弱なことだ。そのダメージがある一線を越えたとき、わたしはヒーロー公安を辞めた。長ったらしい誓約書や数多の事件の守秘義務に関してサインをし、やっとの思いで陰からシャバへと出た。
3つ目は…出資していた孤児院が敵に襲撃された時。
地獄を抜けた先にあったのは、また地獄だった。また?そう、またなのだ。
公安時代の死んだ後輩が出資していた孤児院。そこの経営が立ち行かなくなっている、と聞いた自分はそこのスポンサーになった。死ぬ前に善行の一つでも積んでおこうと思って。犯してきた汚れ仕事の数からして地獄逝きは確定だが…。
そして「ぜひ子供たちに会ってやってください!!」と連絡を受けたその日、孤児院は連続幼児殺害犯の標的となった。あぁ今でも覚えてる…黒い霧が沸き起こり、その中から蛇の異形の女がはい出てきたあの不気味な光景を。
────▽▽────
そこからはもうトントン拍子だった。
黒い霧の中に飛び込んだ先にいた化け物共を殺したが力尽き、自分はカラダも、個性も、記憶までもを奪われた。実験体にされるわ、個性のゴミ箱にされるわ、性別までも変えられるわ。挙句、誘拐殺人犯の個性を移植されスケープゴートとして野に放たれた。
『無敵』も長年鍛えた身体もない。あるのはただゴミの個性と醜い蛇の少女のカラダだけ。死ぬか、警察に殺人犯として逮捕されるかどちらかだった。
…蛙吸梅雨という少女に出合わなければ、実際にそうなってたと思う。彼女はこんな不気味で醜いわたしのケガを見るや否や献身的に治療をし、世話までしてくれたのだ。わたしが「子供しか食べれない」と知れば血肉を差し出そうとするし、わたしが「殺人事件について知りたい」と言えば、その裏にいる巨悪にまで辿り着いてしまった。
何故ここまで親切にしてくれるのか?彼女はわたしが生み出した都合のいいイマジナリーではないのか?とすら思ったことがある。そんな時いつも彼女は笑ってこう言ってくれるのだ。
「だってお友達だもの。当然じゃない」
と。
何度彼女の前から去ろうと思っただろうか。こんな純真無垢な少女が自分といれば穢れてしまう。危険な目に遭わせてしまう。でもその度に、彼女はいつも力強い手でわたしを引き留めてしまうのだ。あの悍ましい醜い化け物が現れた時も、あの
もはや何をすれば、何を返せば、この少女に報いる事ができるのか分からない。
同じく助けてくれたミルコさm…うん、ミルコさまにだってそう。こうやって久しぶりに考えを文章に纏めてるのもそれについて考える為────
そうだ、わかった。将来梅雨ちゃんのお嫁さんになって一生幸せな家庭を築けば良いんだ。
「いやちょっとまって、梅雨ちゃん勝手に舌で変なこと書き足さないで?」
「あらごめんなさい。悩んでたみたいだからお手伝いしてあげようと思って」
いつの間に起きてたんだろう。
ケロケロ、と鮮やかに笑う梅雨ちゃんをよそに、わたしはキーボードから手を離しノビをした。それだけで胸元でたゆんっ、と揺れる巨大な脂肪の塊が忌々しい。これのせいで前かがみになってしまい、肩こりが酷い。
男だった頃の身体が恋しい…肩こりとは無縁で、脚もあって動かしやすかったあの頃が。
「ケロケロ、ついに今日入学式ね。わたし何だかとってもワクワクしてきちゃったわ。ナナちゃんはどう?二回目の高校生活は楽しみかしら?」
「…梅雨ちゃんと一緒にいれるなら何でも、どこでもいいよ」
「まぁっ」
丸い可憐な目がキラキラと輝き、無表情にも関わらず嬉しい感情がにじみ出ている。寝起きで乱れていたその綺麗な頭髪を手で梳いてやると、その目の輝きは更に増した。…すると不意に、その手がガッ!!と捕まれ────。
「…学校までまだ時間あるわ。昨晩の続きを────」
「ダメ、それ中学の話でしょ。雄英は遠いんだからいつもより早めに出ないとダメ」
「ケロ……」
分かりやすくしょぼんと、いつもの手指ポーズでしょぼくれる梅雨ちゃん。その表情と、はだけたパジャマから覗く白い素肌がわたしを強く誘惑するが、初日から遅刻なんて梅雨ちゃんのためにもならない。だからここはキスで我慢してもらおう。
白銀の鱗に覆われた、醜い手。それを伸ばし彼女の柔らかく丸い頬に添える。
でも彼女が何度も愛してくれているうちに、いつしかこの手のことが嫌いだとは思えなくなってしまった。手だけではない。この醜い蛇の少女の身体も、彼女が好きだと言ってくれるなら、わたしは一生このままこの姿でも…。
────ちゅっ
何度この少女と不純な口づけをしただろうか。でもその度にわたしの心は救われ、彼女にどんどん染められて行ってしまった。そのしっとりとした少し冷たいキスの感触も、もう心の奥底にまで刻み付けられてしまっていた。
「ケ、ロ…………はじめて、だわ」
「え?」
するとどうしたことか、彼女がわなわなと震えながらキスされた唇に指を這わす。まるでそのキスを噛みしめるように。何か気に障ることがあったのかと小首を傾げていると。
「えっちの時以外で、ナナちゃんからキスされたの。」
「ぶふぅ!!!!」
「ケロ…これはアレかしら?高校デビューって言うアレかしら?奥手だった子が高校ではヤンチャになるって言うあの…」
「違うから」
「今日をナナちゃんからキスしてくれた記念日にしましょう、これでまた一つ二人だけの記念日ができたわねケロケロ」
恥ずかしさを紛らすために、コホンと咳払いをして蛇の下半身をしならせてベッドから退く。もうすっかりこの下半身にも慣れたものだ。ふと見降ろそうとした視界に移ったのは巨大な二対の乳房。邪魔。…そういえばこれのせいでわたしは制服の採寸の時、本当に恥ずかしい思いをしたのだ。あの時のミッドナイトの手つきときたら…。
「あ、今日はどのブラにする?こっちのレース盛り沢山のふりふりにするか、それともこっちのシックで高級感あるやつにするか────ケロケロ悩ましいわね。」
「………い、いつも思うんだけど、服の下のモノに気を使う必要ある??それに何でお揃いのにしたがるの?着やすいのでよくない?」
「折角ナナちゃんの合うサイズに合わせて作ってもらった特注品よ?着ないともったいないじゃない。それに普段コスチュームだと着れないから、拘りたいのよ。ケロ」
「…女の子の価値観わからない……」
「そうよね。だからこれから高校生活でいっぱい勉強しましょうね。」
結局今日はシックで大人しめの下着にしたらしく、わたしは裸になって言われるがままに万歳する。え?いやだって…ひとりで、ブラつけれないし…。ホックを先にかけて前後ひっくり返す、って装着の仕方してたら「胸がフィットしないじゃない」と怒られた。それ以来こんな感じでブラを付ける機会があれば梅雨ちゃんかミルコさまが付けてくれる…情けないにも程がある。
「っ…んっ……ぁっ」
「あんまり艶っぽい声出さないで、襲うわよ」
乳房がぎゅむぎゅむとカップの中に詰め込められる手つき。でもそれが大好きな彼女の手だと意識してしまうとどうしても声が抑えられない。でもやはり梅雨ちゃんが着けてくれると収まりがいい。乳房がとても軽くなった気がする…。そんな胸元の様子を再確認していると、背後から聞こえてくるするするという布擦れ音────。
「さ、じゃあ次は私ね。ちゃんと付けられるようになるまで毎日私で練習してもらうわ。」
「は?」
そこには上半身のパジャマとキャミソールを脱ぎ捨て、うなじや美しい腰のくびれまでもをさらけ出した梅雨ちゃんがいた。…よし、逃げよう。公安時代だって太刀打ちできない敵が現れては逃げるのが最善だったからな。あの何でも「反射」してくる敵とか「気象」を操作する敵とか。うん。
────WHISH!
と思ってたら緑の閃光を纏った舌に絡めとられた…。
「こんなアホみたいなことでOFA使わないで梅雨ちゃん…オールマイトも草葉の陰で泣いてるよ」
「八木ちゃんを勝手に殺さないで頂戴。さ、まずは片方の胸をカップに収めて────あぁまずはストラップが延びてないかも確認して────」
こうして梅雨ちゃんによるブラの付け方講習を乗り切ったわたしは、妹のさつきちゃんや弟の五月雨くんを起こしつつ支度を整えて彼女と一緒に家を発った。梅雨ちゃんがさつきちゃんに行ってきますのハグをしてる横で、五月雨くんにハグをしたら顔を真っ赤にしてしまった…嫌だったのだろうか…帰ってきたら謝っておこう。
────▽▽────
「すごーい!フロッピーだぁ!!!ホンモノだぁ~~~!!!」「ホンモノよ」
「ね!ね!一緒に写真撮っていい…ですか!?」「いいわよ、はい」
「え?マジで雄英(ウチ)にナージャいんの??デマじゃなかったんだ!見たい見たい!!」「ムギュムギュゥ」
「わたし半年前にナージャ様にキスしてもらって命を助けられたんです!結婚を前提に付き合ってくれませんか!!!」「ア…気持ちは嬉しいデス」
「可愛い~~!!!ホントにウチの制服きてる~~!!おっぱいおおき~!!触っていい??」「ダメよ」
「ベロみたーい!ベロ出してみてくれませんか!」「ケロン」
「アレやって欲しいです!愛と正義のマリアー……」「今プライベートなんで…」
雄英の巨大な門をくぐった先でわたし達を出迎えてくれたのは美しい桜吹雪と大きなH型のビル────そしてこれである。最初はまったく気づかれていなかったのだが、とある女子生徒に
「あ、あの…フロッピー、と、ナージャ…ですよね…?サ、サインくれませんか…?」
と声を掛けられたのを切っ掛けに、わらわらと人が集まってきてしまってこの有様である。それを適当にあしらえば良いものを「ケロケロもちろんよ、お名前伺ってもいいかしら?」なんて満面の笑顔で神対応のファンサービスしちゃったもんだから。「あ、対応してくれるんだ!」と思ってしまった生徒達がもうこんな有様です。めっちゃムギュムギュされてます…あっ誰だ今お尻触ったの。っていうか蛇の下半身が!みんな蛇の下半身触りすぎ!鱗で覆われてるから何されようが平気だけど触りすぎ!
「いや、だってミルコさんとオールマイトさんに言われてるもの、オフだろうがファンサはしっかり笑顔で答えなさいって…あ、お菓子?ありがとう頂くわケロケロ」
「だからってぇ…!あぁもう!だれ!?胸触ったの!!」「ワタシです!!フカフカだぁ!!」「えぇーいいなぁ!!ウチも触りたい!!!」
ほとんどが2年生や3年生らしき風貌であるが、中には恐らく1年生らしき…つまり今日が入学日の生徒がちらほらいる!入学式から何してるんだ!っていうかもういい時間じゃないのか?もうそろそろ教室でHRの時間じゃないのか!?このままだと遅刻してしまうぞ!そう焦って梅雨ちゃんを見やると…嗚呼しっかり笑顔で丁寧にファン対応してる…眩しい…でも今はダメだって…。
するとその時。
────SNAP!!
────WHISH!!!
「ケロ?」「ふしゃ?」
わたしと梅雨ちゃんの身体が急に宙へと舞い上がる!なんだ?…と思ったが、梅雨ちゃんには何か不可思議な手が、わたしには長いツルが巻き付いていて。そしてあっという間に観衆から放り出されたわたし達は建物の入り口へと引っ張られて…!?
「────謝罪。手荒になってしまいました」
「アンタたちさぁ、もうHR始まるよ!?ヒーロー科の癖に入学初日から遅刻はヤバイで?」
そこに居たのは少し鋭い目つきの少女と……あぁ、この間の文化祭で友達になった茨ちゃんだ。彼女も合格したと聞いていたが、どうやら見かねて助け船を出してくれたらしい、ポンポンと埃を払いながら軽く頭を下げる。
「あ、ありがとう…ほら梅雨ちゃんも戻ろうとしないの!!…でも今の何?手が浮いてたように見えたけど」
「え~~っ??言えないなァ~~。ヒヒ、もし同じクラスだったら教えてあげる。ヒントはトカゲ!」
「ケロケロ、ありがとね塩崎ちゃん」
「……ッ、お二人、お急ぎになられた方が良いのでは。」
塩崎ちゃんが額に汗を浮かばせながら指をさした先には────さきほどのファンたちが大挙して押し寄せてくるではないか!!これはマズい。
「こらぁ!!アンタらもHR始まるでしょーが!そんなコトしてる場合かいなぁ!!!」
「うるさい!!憧れのヒーローにお近づきになれる機会なんだ!授業なんかよりよっぽど大事!!!」
「そうだそうだ!」
あぁもうダメだ。これはもう一刻も早く退散するしかない。そう思い切れ目の少女と頷き合うと────。
「お近づき…?なるほど、ナナちゃんちょっとおいで?わたしイイコト思いついたわ。」
「うわ絶対イイコトじゃないでしょ…まぁいいけど」
そして梅雨ちゃんはわたしのおとがいに指をクイッとひっかけると────あぁはい、そういうコトだよねやっぱり。
────ちゅっ…れろぉ…♡
おもむろに唇を重ね合わせた。それも軽い口づけではなく、ディープな方で。思いっきり彼らに見せつけるように、ねっとりと、丹念に、ゆっくりと、慈しむように。もうそれを見た衆目の反応たるや、どんなモノか想像してみて欲しい。憧れのヒーロー二人がいきなり公然でキス…それも深い方を見せつけてきたのだから。何なら隣にいる塩崎さんとトカゲ?の少女も顔真っ赤にして固まってるもの。
「ぷ────はぁ♡ごめんなさい、わたしにはナナちゃんという将来を誓い合った子がいるの。皆さんのお気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい。」
そう言い捨て、梅雨ちゃんは何でも無いといった無表情でスタスタとその場を後にした。そしてキスの余韻でうずくまるわたしに切れ目の少女がポンと肩を置いて────。
「ア、アンタ…もし同じクラスやったら守ってやるからな……」
「無情。禁断の愛…」
どういう展開がいい?
-
スーパー梅雨ちゃん無双
-
主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
-
スーパーミルコさん無双
-
ひたすら百合百合