ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。   作:Kkmn

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3.よわよわざこざこ蛇娘ちゃん

何なのだろう。あの子は。

それが蛙っぽい少女に対しての率直な印象だった。

 

「しゃぅ……ふしゅるらぁ…」

 

…巻き込んでしまった。悪いことをしてしまった。

そう呟いたつもりだったのだがやはり"この身体"では上手く言葉を発音できない。

この"蛇の個性"を押し付けられてから何度も試してみたが、結局まともに会話することは不可能だった。

 

(…こんな雨の日に。こんな廃墟に人が来るなんて…)

 

 

 

────▼▼───

 

 

あの敵に"蛇の個性"を押し付けられ、何処とも分からぬ路地裏に打ち捨てられた彼女は絶望していた。

なぜなら水たまりに映る自身の姿が大切な人や子供たちを殺めた、あの蛇の敵そのものになってしまっていたのだから。

いや、本当によく見れば目元が柔和だったり、幼さが色濃く残ってたり、身長などの違いはある。

ただ…それは同じ種類の動物を見分けるように難しく、事情を知らない人間には見分けようがない。

 

「……しゃ、ぁっ…!?しゅるっ、しゃはぁぁぁっ…!?!?」

 

喉を抑え何度も言葉を発そうとし、それが不可能なことに気づいた時その絶望はさらに深まった。

蛇の見た目。複数の個性。そんな特異な属性を併せ持った人間が世界に何人いる?

きっとあの凶悪連続幼児殺害犯の敵だけ─────否、今はもう彼女は普通の見た目をしていることだろう。

だったら、自分だけ?

 

「……っ」

 

凶悪敵の見た目。敵と同じ複数個性。戸籍もない。言葉も話せない。

そして─────残っている記憶はヒーローだったことくらい。自分の名前も、ヒーロー名も思い出せない。

 

 

(…もう、死ぬ、しか…)

 

 

それが元ヒーロー、かつ現敵の見た目の少女が下した決断だった。

もし自分がスケーブゴートとして捕まってしまい、あの蛇女が行方をくらませば…もう終わりだ。

それで事件は解決扱いになり、真犯人は永遠に逃げおおせることになるだろう。

彼女は路地に散乱していたガラスの破片を醜い鱗まみれの手で握り、首元に近づけた。

 

『クス…クス…♪』

 

意を決した途端、水たまりに映るおぞましい蛇の女の顔が醜く歪んだ気がした。

そしてその不気味な嘲笑を見るや否や、彼女はガラス片を握る手を解いてしまった。

 

「…シャァァァッ……!!!」

(そう、だ…この女を、あの化け物を殺すまで、死ぬわけには……!!!)

 

そう新たに決意しなおした彼女はガラス片を水たまりに投げつけようとして─────自らの大きな乳房でバランスを崩し、無様に転んだ。

 

『くくっ…♪クスクス、クスクス…♪』

「…っ!!…っ!」

(なんだ、この、身体っ…!子供の身体に押し込められた時も酷かったが、それよりも酷い……!)

 

"蛇女"の個性により、急激に幼い年齢から年頃の少女へと成長させられた違和感は信じがたいものだった。

その胸には一抱えはあろうかと言う大きさのたわわな乳房。

これがバランスは崩すし腕の可動域の大半を邪魔するし、弾んで動きを阻害するしでもう邪魔でしかない。

更にそれだけに飽き足らず、腰の下、臀部にも邪魔な脂肪がつき、身じろぎするだけで示し合せたように揺れるのだ。

 

「……っ…」

 

ゆさゆさと暴れまわる乳房を片手を食い込ませるように抑え、立ち上がろうとするが問題はそれらだけではない。

この太ももの半ばから変質している蛇の下半身の動かし方がまるで分らないのだ。

歩き方が分からないどころか、そもそも自分の意思で上手く動かせない。

 

(…っ…まずは、この、忌々しい身体に慣れて、動けるようにならないと……!!)

 

水たまりの中を、びちゃびちゃと水を跳ねて無様にもがいている少女の姿は、まるで水遊びのような幼稚なものだった。

しかしその混乱しかける頭を必死で落ち着かせ、彼女はこれからの事を順序だてて計画していく。

 

(この身体に慣れて…次は、大量の個性を把握して、訓練して戦闘の勘を取り戻す!そして…確か、取引したことのある裏ブローカーがいたはず。それは覚えている!そいつを見つけて、武器と情報を手に入れる!)

 

揺らぎかけていた復讐の意思が再びふつふつと燃え上がり、彼女の琥珀の鋭い瞳に確固たる意志が宿っていた。

殺す。絶対に殺す。むごたらしく殺す。

そう硬く暗い決意をしたためた彼女は、ずりずりと地べたを這いながら歩み始めた。

 

 

 

おぼろげな記憶に残っていた、あの孤児院を見つけられた幸運だった

…記憶の姿とは似ても似つかない、焼け果てた廃墟だったが。

 

(ヒーローだった時の、個性。戦い方……っ、だめだ、思い出せない…)

 

やっと蛇の下半身で、数日の練習の後1mだけアリ並みの速度で動けるようになった後、記憶の残滓を探ってみていた。

あの蛇女がけしかけてきた怪物たちを殺したのは覚えている…でもどうやって倒した?どうやって戦った…?

 

(なにか、そう、なにかを握って戦っていたような…くそっ…!)

 

何度も、何百回もしてきた戦いの内容が、欠片も思い出せない。

記憶を発掘することは叶わないと早々に見切りをつけ、それならと"この身体"の個性に思考を巡らす。

 

(この"蛇"…?の個性は足かせでしかない。戦いに役に立たせることは出来そうにない…なら、あの化け物に押し付けられた個性は…)

 

そう思い至り試してみた。全身に力をこめたり、意識を集中したり、蛇女たちへの殺意を込めて見たり、ガレキを握ったり…。

だが─────結果はさしたる成果は得られなかった。

まず分かっただけで、4つある。

発光。体重操作。水?…あとは多分、怪力…?

 

発光。全身に力を込めると、自分の身体が暗闇でぼんやり蛍のように光った。

体重操作…?。地面との接地面に神経を集中すると床がボコリとへこんだ。

水?上記二つの個性の使用で息を荒げている時に、不意に掌から2リットルほど水が溢れ出た。塩辛かった。

怪力。ガレキを壊そうとした途端、不意に筋肉が痙攣しガレキが破裂し、全身打撲と切り傷まみれになった。そして腕から噴水のように血が噴き出た。

 

そしてそのどれも、再現しようとしてもまったくできない。どうすれば使えるか把握できない。

 

 

「……しゃぁ……」

 

半焼したソファにしなだれながら、ぐったりと蛇の少女は目を閉じた。

なるほど、あの個性を与奪できる化け物は自分のことを"ゴミ箱"と言っていた。

どうやらそれは嘘ではないらしい。仮に任意で使えたとしても、これらの個性は到底役に立ちそうにない。

もしうまく使えたとしても─────血と水を噴き出しながら怪力を発揮して光る、重いだけのヘビ人間。

 

(いや、他にもある。それにこれらの個性だって使い道が見つかるかもしれないし…あぁ、その前に、これ止血しないと…そこのカーテンを巻いて…)

 

数日間雨水のみで生活していた彼女は、蓄積された疲労と失血のせいか、どこか虚ろな目で空を見つめていた。

だからその廃墟の中でドタバタど駆け回っても音に気づくこともないし、目の前に誰かが現れてもとっさに反応できなかった。

 

 

「ごめんなさい!誰かいるかしr─────」

 

 

 

──────▼▼──────

 

 

「ふ、しゃ」

 

蛙に似た風貌の少女を見送ったあと、蛇の少女は思考を巡らせていた。

 

なぜ自分の傷が塞がった?あの子の個性?いや、あの見た目や脚力は個性由来のものだろうから…やはり、自分?ならなんの個性だ?

いや、今はそれよりあの子は本当に大丈夫なのか?信用していいのだろうか?

いくら「秘密にする」と言っても、もし連続殺人の敵の疑いをもたれれば通報されてしかるべきだろうし。

仮にそうなった場合…会話もできない以上、"乱暴な手段"にうってでるしか……。

 

(だめだ。やっぱり今のうちに逃げるしかない。危険すぎる)

 

数分にわたる熟考のうえ、そう判断した彼女は窓に手をかけ飛び降りることに決めた。

ここは2階だ、降りれない高さではない。

そう決断し、窓の淵に鱗に覆われた手をかけると─────。

 

 

「うわ、マジでいたじゃん!」

「いったでしょー!?これ絶対個性のニオイだって♡」

「うっはぁ…かわいい…♡えっろ…♡」

「やば、裸じゃんっ♡やる気まんまんってこと???」

 

その背中にかけられたのは、余りにも浮ついた惚けたほうな声。

振り返ると焼け焦げた部屋の入口に、数人の制服を着た少女…おそらく高校生?が佇んでいたのだ。

だがその様子はどう見ても通常ではない、皆頬は上気し、息は荒げ、あろうことか涎を垂らしているものまでいる。

まるで獲物を前に興奮したゾンビのような……まて、ニオイ?個性の…?まさか、気づかない内にこの身体から…!?

 

「……しゃぁ…!!」

「えへへぇ♡『しゃー!』だってぇ♡きゃわいい~~~~っっ♡耳が妊娠しちゃうよぉっ♡」

「そんなメスのニオイぷんぷんさせてぇ、誘ってるんだよね♡」

 

「…んあ???みんな、まって?コイツ……最近ニュース出てる敵じゃない????」

 

どうやって彼女たちにケガさせずに黙らせるかを思考していた彼女の集中は、その一言によって途切れた。

 

「え?マ???」

「マ。だってほら、蛇の"異形"で、複数個性…この良いニオイでしょ?これもう確定じゃん」

「へ~!じゃあここはアジトってこと?じゃあたっぷり私たちがお仕置きしてあげなきゃねぇ…♡」

「わ~写真よりかわい~♡年下じゃん♪お姉ちゃんたちが常識を教えてあげるからね♡…カラダに♡」

 

そのギラついた欲望を隠さない視線に、ぞっと背筋に悪寒が走る。

まずい。殺人犯と同じ見た目だとバレたのもマズいし、彼女たちが正気を失っているのももっとマズい。

どうやら気づけなかったみたいだが…これは間違いなく何らかの自分の個性だ。

多分嗅いだ相手を狂わせるようなニオイを無意識に発生させるような…くそっ、邪魔すぎる!

 

「─────シャァッ!!」

 

この女子高生たちには本当に悪いが、このまま大人しく気を失ってもらうしかない。

そう結論づけた彼女は、向かってくる正気を失った色欲のゾンビたちに相対して─────。

 

 

 

───────▼▼───────

 

 

「─────直接聞いてみましょうか。」

 

思考の海に沈んでいた蛙の少女、梅雨はそう呟くと立ち上がった。

絶対…とまではいかないが、きっと彼女は違う、殺人犯の敵などではない。

確かに見た目はほぼ同じだが…写真とよく見比べれば微妙に年相も異なるし、柔和な感じがする。

それに何より、たった今この瞬間、同じ犯人による事件が起こってるのだ。だから違う。彼女は敵じゃない。

 

「…ケロ?随分待たせちゃってるわね。急がなきゃ」

 

一番大きい傷はふさがったとはいえ、彼女はケガまみれだ。待たせるべきではない。

さっそく焼け焦げた棚や設備から使えそうな衣料品をひったくると、彼女は急いで蛇の少女の元へ向かった。

 

(もしかしたら、見た目のせいで迫害されて、家出したのかも…ケロ、そうよ。それなら辻褄があうわ)

 

そう走る梅雨は心の中で推察するが…彼女だってそれが都合のいい推理なのはわかっている。

結局は少女に直接聞くしかない、思ったことを心の中に隠すのはそもそもニガテなのだから。

 

「─────ごめんなさい。待たせ……t……」

 

 

しかし、飛び込むようにエントリーしたその部屋の光景を理解するために、彼女は数秒硬直した。

 

数人の下着姿の様子がおかしい見知らぬ少女達。そしてあたりには脱ぎ散らかした制服。

知っている、塩ノ洲から徒歩6分のところにある女子高のものだ。

そしてその少女達の視線の先には─────。

 

 

安っぽい玩具で拘束され、傷が増えて…"穢された"蛇の少女がいた。

 

 

猿轡と目隠し、手錠。鎖。どれも本物ではない、多分ドンキとかに売っているプラ製の玩具だ。

そしてそれを身につけさせられている彼女は─────涙を目隠しの下から流し、震えていた。

 

「…ふぇ?」

「んあ?」

 

彼女は─────蛙吹梅雨は、"考えるより先に身体が動いていた"。

思い切り、一切の遠慮なく脚力にモノをいわせた跳躍。

さらにこれまた脚力にモノを言わせた強烈なドロップキックが二人の女学生の脇腹に叩きつけられた。

 

「おごぇっ!!?」「いぎぁっぁ!?!?」

 

人生で初めて本気で放った蹴りの威力はすさまじく、その二人が叩きつけられた壁は凹み、ミシミシと建物全体が震えた。

もう一発叩き込もうとした所を、僅かな理性が『もう一度したら崩落しちゃう』と自制させた。

 

「ひぃっ!?やだやだやだ何!?!?わたしたち悪い事してないよ!!?!」

「何よあなた!?!?敵???!?敵よ!!!だれか!たすけて!!」

 

「─────」

 

怒りで声も出ない、という慣用句を聞いたことはあっても、自分で体験したの初めてだった。

そして余りに怒りすぎると逆に冷静になるというのも、今まさに自分で実感していた。

 

「─────なんてねバぁぁカ!()()はわたしたちのよ!!」

 

そんな状態ゆえ、不意をついたつもりの女学生の一人が『肥大化』した右腕を振り下ろしてきても無反応だった。

…普段の彼女を知るもの、否、彼女の家族でさえも見たことの無いほどの冷たい眼。

 

「ケロ」

 

蛙の鳴き声が響いた。

その瞬間、梅雨の脚がアッパーカットの如くその顎にカウンター気味にクリーンヒットした。

そして飛び掛かった女学生は─────天井に埋まった。比喩でもないし一切の誇張もない。本当に文字通りそのままの意味であった。

 

「ひっ…いやぁぁぁああ!?!?やだぁ!わたしの!()()は!ワタシのものなのよぉぉっっ!!!!」

「…ケロっ」

 

最後に一人残された女学生は、発狂したかの如き叫び声をあげ────その身体から白い「濃霧」の奔流を発生させた。

この半壊した屋内では窓も扉も開けざらしなのに、凄まじい量と濃さのそれはあっというまに視界を奪う。

…視界が真っ白で何も見えない上に、この霧のせいでニオイも分かりづらい!

 

「えへへ♪ばーかばーか蛙野郎!誰にもやるか!この()()はワタシの!」

「ッ…ケロ、待ちなさいっ!」

 

視界が幾分戻ってきた時には既にその女学生と…拘束されていた蛇の少女もいなかった。

 

「ああもう、ダメよ!そんなのっ」

 

幸い建物の外を見ると、霧の残滓が路地裏に続くのが見えている。アレを追えばすぐに追いつくはずだ。

一瞬自身が蹴り上げた学生たちを見るが、呻いてはいるが出血はなさそうなので放っておく。

 

 

─────▼▼─────

 

(ああ、ごめんなさい。私がグダグダせずにすぐにあの子の元へ戻っていたら)

 

駆ける、跳ねる。大雨の中を梅雨は死に物狂いで急いだ。

 

(ニオイの個性のことも、指摘してあげていれば)

 

どんどんと霧の痕跡が近くなっていく。

 

(私がもっとしっかりしていたら─────)

 

距離は目前に迫り、もうすぐそこだ。

この路地裏をもう一つ曲がったところ、そこにきっと。わたしが来るのを待っている彼女が…!!

 

 

 

─────いなかった。

 

 

 

いた、というより、あったのは。

気を失い全裸で倒れている女学生と。

 

大雨の路地裏にボロ布を羽織った少女。

見開かれ血走った目、複数の"個性"を暴走させた、恐ろしい異形の姿。

 

 

「─────シャ、ァ」

 

 

理性を感じない呻き声が、牙が覗く口から洩れた。




チャージ長引いてます
ごめんね

どういう展開がいい?

  • スーパー梅雨ちゃん無双
  • 主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
  • スーパーミルコさん無双
  • ひたすら百合百合
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