ヘビはカエルに食べられる。たまに兎に食べられる。 作:Kkmn
8.迷い悩んで蛇娘
「よし、もう発信機の類もなさそうだし、喋ってイイぞお前」
「…ぅ…でも、つゆ、ちャんが…─────んむぐぅ?!」
「ケロ、次そんな水臭いこと言ったらおしおきするわ。ナナちゃん」
粘液をたっぷり纏わせた白い指を口の中に押し込まれ、蛇の少女は苦し気…ではなくどこか恍惚とした表情で呻いた。蛇の口腔は、人間のどんな部位の五感よりも遥かに敏感で繊細なのだ。そんな所に指を突き立てられたらそれはもう、口の中いっぱいに梅雨ちゃんを感じられて幸せ─────じゃない。
「で、お前はあのクソ蛇ヤロウとはどんな関係なんだ?あいつの子供か?妹か??」
そういって後ろから自分を抱きすくめ、顎下でスリスリとニオイをマーキングしてくるミルコさまが仰る。…あのラボで四六時中『支配』の影響下にあったせいか、なんかこう服従しちゃうのが癖になってしまってる…。
「えっと…家族でもナンでもナくて…その」
「ゆっくりでいいのよ、おててギュッとしてあげるから頑張って」
そして正面には梅雨ちゃんが爪を切ってくれながら頭をよしよししてくれて…うぅ。されるがままなのに、甘えてはいけないと理性が叫ぶのに、抗えない。この身体に心が引っ張られてるような感じがする。
「孤児院に…いた。そこでアる日、あの蛇の”敵”が急に、屋内にあらわれて…。あっという間に子供たチを数人捕まえ、クロいキリのなかに消えタ。おれ…じゃない、自分、は、それを追って霧のなかに入った」
「え?俺?……じゃなくて、孤児院ってあそこのことよね?」
「うっわテレポ持ちかよ、ダルいなそりゃあ!でもお前も飛び込むなんてバカだな!!!よくやった!!」
ミルコさまの下顎スリスリがスピードアップし、摩擦で着火しそうになる。
「うん、そして…そのシャき、ちがう、先にいたのは……何の個性か分かラナいけど、みんナ脳が剥きだしにナってた巨漢達だった。それはみんな倒したんだけど、結局捕まって…」
「ちょっとまって?倒した?ナナちゃんが?どうやったのかしら」
「あ…ソの…えっと…今はこんなだけど、本当は、違う個せ…ううん、順を追って説明スるから」
梅雨ちゃんが首をかしげて覗き込んでくるが、それは仕方のないことだと思う。だって今の自分は歩くことすら満足にできない上、ただの子供にすら勝てないひ弱な存在なのだから。
「そこで…メがさめたら……そコには”個性を与奪できる個性”をもった、顔の無イ男がいた。そして、そいつから個性をいくつも押し付けられた。─────そこにいタ、”蛇女”の個性も」
「おうおうおうワケが分かんなくなってきたなぁ!!”個性を与奪できる個性”と来たか!!そんなヤツいりゃあこの世界はとっくにそいつが大統領にでもなってるだろうよ!!!」
「でも世の中には個性に影響を及ぼす個性もあるんでしょう?だったらいてもおかしく…?いやまって、それじゃああなたのその”蛇”の個性や、いっぱいある個性は?」
梅雨ちゃんの言葉にこくりと頷き、その疑問に答える。
「そう、この”蛇女”の個性ハ、もともトその”ラミア”って呼ばれてた蛇の敵のモノ。自分は…おしつけられた」
「……」「へぇ……」
部屋の中の空気が僅かに引き締まる。ミルコさまは興味をそそられるような顔をしているが、梅雨ちゃんは対照的に固まってしまっている。
「自分は、そこで”ゴミ箱”ッて言われテた。顔の無い男の、いらない個性を捨てるゴミ箱…。もってた個性も奪わレて、そして最後は捨てラレて…あの孤児院に…─────むぎゅ」
「……ぅぅっ…ううっ…ナナちゃん…」
梅雨ちゃんの腕にこれでもかと言うほど強く抱きしめられ、暖かな胸に押し付けられた。優しさと柔らかさに満ちたそこに挟まれた頬に、雫が数滴落とされる。それが涙だと気づいた時には、更に強く胸のふくらみに押し付けられていた。その母性と安心感に満ちた温かさとニオイに、うっとりと目を閉じそうになるのを必死でこらえる。
「んむぐ…そこで…つゆちゃんに、助けられて…」
「なるほどなぁ…?んあ?待てよ?まあ今の話が多分全部本当だとして、今はもうそのクソ蛇ヤロウは蛇の見た目してねーってことか??」
ミルコさまが自分+梅雨ちゃんを一緒に抱きしめ、ついでに二人の頭をヨシヨシと撫でながらそう呟いた。そして自分もそれに頷く。捨てられる直前、ハッキリとは見えなかったが白衣の女は普通の白い肌をしていたはずだ。すると彼女は首に手を当てて首を傾げた。あ、考え事してると耳がぴょこぴょこしてて可愛い。
「…”個性を与奪する個性”の敵なぁ。そんなヤツが何で噂も立たねェほどコソコソそんなコトしてやがんだ??そんな個性あったら派手に事件でも起こしてオールマイトの個性でも奪えば─────……!!!」
次の瞬間、ぴぴーん!と音が聞こえる程ミルコさまの両耳が立った。かわいい。それはそうと、でもいい加減ちょっと解放してほしい。梅雨ちゃんとミルコさまの胸に前から後ろから押しつぶされて窒息しそう。しかも二人とも凄くふにふにで柔らかくて、服越しなのに良い匂いだから…”魅惑”がッ…漏れそう…♡
「もう既に一回オールマイトにブチのめされた敵なんじゃねェのか!!?それでコソコソしてやがんだな!!だったら話は早え、オールマイトに聞きゃあその敵のコトが分かるじゃねェか!!」
「…待って、ミルコさん。その前に警察に行って今の証言を聞いてもらうことはできないのかしら?そうすればナナちゃんも保護してもらえるし、一緒にお買い物もいけるようになるわ」
「つ、梅雨ちゃん…」
勢いよく立ち上がった彼女を制して梅雨ちゃんが一言。やっぱりこの子は凄い。物怖じと言うものを知らない。すぐにでも出かけようとしていたミルコさまはその言葉にピクリと耳を動かし、少し顔を渋くする。
「お前、口カタいか?」
「安心して、思ったことはすぐ口にしちゃうけど秘密は守るわ」
「ン~~~…これはホークs…おっと忘れろ、他のヒーローからの情報なんだけどよ、他言したらぶっ飛ばすぞ?……警察内部に既に蛇ヤロウの『支配』の個性を喰らってる奴が何人かいたらしくてな」
告げられたその言葉に、梅雨ちゃんはただでさえ丸くて可愛い眼を更にまん丸にした。自分はそれくらいおかしくない、とひとりごちた。ソファに腰を再びかけなおし、自分に対するアゴすりすりマーキングが再開される。そして空いている手でスマホを取り出した。
「え~っとなんだっけかな。…ああそうだ、なんでもアメリカの警察から貰った情報とか、捜査状況まとめたファイル?とかが全部破棄されちまってたらしい。で、下手人はなんとその事件を担当してた刑事達だったんだとよ。んで全員取り調べに対して「何故そんなことをしたかわからない」ってな」
「ふしゃぁ…」「ケロ…」
「で?どうするよ?もしお前を取り調べたり鑑識する奴がそんなヤツらだったら?」
ニヤついた笑みでミルコさまが自分たちを見下ろす。梅雨ちゃんはまるでわたしを庇うかのようにギュッとさっきから抱きしめてくれている…あったかい…。
「いい。もとモと、警察なんて、あてにしてない……昔からずっトそう…」
「ナナちゃん…」「………。まぁ、警察にイイ思い出ねーっつーのは分かんなくもねーけどよ」
…っ。ダメだ。陰鬱な顔をしてしまっていたのか、二人に気遣わせる顔をさせてしまった。首を軽く振り「ごめんなさい」と告げ、出来る限りの笑顔を浮かべる。しかしそれが逆効果だったのか、梅雨ちゃんは再びわたしに対する抱擁を強くした。
「まぁアタシが何とかしてやるから安心しろ!!お前の話を裏付ける証拠の一個でもありゃあどうとでもなる!!そうすりゃカエルっ子と一緒に3人でラーメン屋にでも連れてってやるからな!!」
ミルコさまなりの気遣いなのだろうか。明るい声音と満面の笑みをこちらに向けながら、大きく感じられる手で頭をわしわしとぐちゃぐちゃにされる。あったかくて、おおきな手…。気持ちよさの余り、ガラガラ音が意識せずとも勝手に鳴ってしまう。子供の身体だからだろうか、大人の手がこんなに心地いいなんて。梅雨ちゃんの両腕もとっても温かいし、まるで心が溶けていくような。
─────────PiPiPiPiPiPi!!!!
うっとりと目を閉じた瞬間、けたたましい着信音が鳴り響き、驚いて大きく身を震わせてしまった。情けない。
「緊急の着信よね?この音はたしか」
「ああ。多分敵だな!はいこちらミルコ─────ああ、塩野町にいるぜ!!!……はぁ?なんだそりゃ?……敵の目的は?……オーケー!!風見市だな!すぐ”跳んでいく”から待ってろ!!」
やはり敵が現れたという通報だったらしい。しかしその通話を終えるや否やミルコさまはニヤニヤとした笑みでわたしと梅雨ちゃんを見て…?なんだ?
「へへ、お前さっき『脳ミソむき出しマン』がどーとか言ってたよな!?」
「え?言ってたかしらそんなの」
「ああ脳が剝きだしになった怪物の……。!?まさか」
「出たってよ!!!脳ミソむき出しマン!!!!」
そう言って見せつけてきたスマホの画面には煙を上げ、真ん中から倒壊したビルの残骸に鎮座する黒い影。その姿は…見紛うワケがない。散々あの研究所で戦わされたり、閉じ込められたり、サンドバックにされたりしたあの化け物と同じだ。…思い出すと背筋に何か冷たいモノが走り、思わずぎゅっと梅雨ちゃんの服の裾を掴んでしまっていた。
「タイミングバッチリだなぁ!コイツとっ捕まえりゃ証拠の一個でも出てくるだろ!!そうすりゃ全部解決だ!!!」
「…気をツけて。この化け物、個体によるけど色んな個性を持ってる…わたし、ミたいに…!」
「へぇ?そりゃ面白れぇ!!イイ喧嘩になりそうだな!!─────お前らいい子で待ってるんだぞ!!」
言い終わるのを待たずにミルコさまはそのままベランダの窓を勢いよく開け放つ。そして手すりを両手でホールドし、その筋肉質でむっちりとした脚を思い切りしならせた。
「見てろよカエルっ子!お前も鍛えりゃこれくらい出来るようになるからな!!しゃぁっ!───────脱兎の如くっ!!」
「わっ」「しゃっ」
…建物が地震でも起きたかのように揺れ、次の瞬間にはミルコさまが…見えない。「あんなに小さく!」とか「あんなに遠くに!」ではなくもう見えない。きっともう地平線の向こう側まで飛んで…いや跳んでいったのだろうか。梅雨ちゃんもいつも以上に無表情になってポカンとしてる。
「あれでNo.5だったら…エンデヴァーとかオールマイトはもうどうなっちゃうのかしらね」
「……ホントだね。デも梅雨ちゃんも、あんナ風に跳ベるって。」
「ムリムリムリムリかたつむりよ。あんなの一生かかっても出来ないわ」
二人でミルコさまの風圧で散らかった部屋内を片づけ始める。網戸が外れてしまったしニンジンのダンボールも吹っ飛んでしまった。
こういうのは梅雨ちゃんがテキパキと一人でやってしまうから、自分もできる事だけでも手伝ってしまおう。
「でも良かったわ。その怪物が捕まってあなたのお話の裏付けの証拠が見つかれば、これでやっとあなたが安心してお外を歩けるようになるのね。ケロ」
「…うん、そうすレば…」
「そうすれば?」
「あ…いや、なんでも、ナい……」
床に散乱したニンジンを拾いながら、つい口に出そうになった言葉を喉元でぐっと堪える。言えるワケがない、こんな子供に。それもこんな優しい子に…。と、そこまで考えていたら、目の前に急に梅雨ちゃんのお顔がにゅっ!と現れてコケそうになった。
「……………」
「な、なに…?」
怖い。梅雨ちゃんの丸くて大きくて可愛らしい眼が、凄まじい無言の圧をかけてくる。でもなんとなく分かる、この梅雨ちゃんの顔は怒ってるような気がする…。
「ダメよ」
「…なに、が?」
「とっても怖い事考えてたでしょ。そんなお顔してたわ、ナナちゃん」
「………」
俯いて黙るしかない。もちろんそれは肯定の意味だと彼女は取るだろうが。なぜこんなにも鋭いのだ、それともそんなにも自分が顔に出やすいのか?何故分かったのだろうか。─────復讐してやる。あの蛇女と顔の無い化け物を殺してやる。と考えてることを。…すると彼女は、両手で頬をぎゅっと包んで来た。…逃れようとしても、逃げられない。
「なんで逃げるのかしら」
「………つゆちゃんと、一緒にイると……忘れそウになる……」
「何を?」
「………」
梅雨ちゃんの手は、相変わらず残酷なほどやさしくて、温かい。言えない、言いたくない。憎悪、憎しみ、怒り、復讐。そんなことを彼女の前でいいたくない。何故?だってもしそんなことを告げて、嫌われてしまったら─────。そこまで考えて自分は固まった。嫌われたくない?出会ってまだ一か月そこらの子供に、嫌われるのが怖い??本来の自分ならそんなこと考えもしなかったハズだ。
(もしかして─────)
思わず額をぎゅっと手で抑えた。その手は小さく、苦労も知らない紛うことなき少女のモノだった。
そういえば、いつから自分はこんな柔らかい話し方になっていた?いつから時々自分のことを「わたし」だなんて呼んでいた?
(心の中や考え方まで、子供に─────女の子に─────この身体に染まってきて─────)
最悪の想像に全身から嫌な汗がどっと噴き出すのを感じ、頭が真っ白になった瞬間だった。
─────────PiPiPiPiPiPi!!!!
「ケロ?……ミルコさん、スマホ忘れていってるじゃない。うっかり屋さんね」
その思考はいったん中断を余儀なくされ、二人の間に流れていた微妙な空気も霧散してしまう。着信相手は…「ミッドナイト」と表示されている。…確か、ヒーローの名前だったはずだが。
「…でて、伝言だケ受け取ッておこう」
「それが良いわね。私がとるわ─────はい、もしもし。ミルコさんは不在のため代わりにお電話とりました。………え、ええと。弟子……?かしら?…………え???」
散らばったニンジンを全部箱に戻し、電話応対中の彼女を置いてベランダに出る。風に撫でられた長い髪に引かれる感覚に、なぜ今まで違和感を覚えていなかったのだろうか。そもそもたった数mを歩いただけで、こんなにも揺れる胸などに何も違和感を覚えていなかったのは何故だったのだろうか。……あぁ、でも元の自分すら思い出せない癖にわたしは何を考えて……。
「────敵!?塩野市はここだけど……!まって、その住所って、まさか─────」
梅雨ちゃんの声が普段とは違う声音になったことに気づき、そっと振り返ると─────。
とてつもない轟音と爆発音が背後の町から鳴り響き、わたしはその衝撃で吹き飛ばされた。
どういう展開がいい?
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スーパー梅雨ちゃん無双
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主人公ちゃんがひたすらえっちぃ目に
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スーパーミルコさん無双
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ひたすら百合百合