ギリ生きてます。
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「なでしこ行くよー!」
「待ってよーお兄ちゃーん!」
懐かしい遠い昔の記憶。それは、俺が変わるきっかけとなった時の記憶。
「あっ」ズシャアッ
「なでしこ!?」
「…………ぐすっ」
いつも俺の後ろをついてまわっていたなでしこが盛大に転び、膝から血を流した。
「な、なでしこ……ど、どうしよう……どうすれば……」
「うぅ……グスッ」
その時の俺はまだ頼りなくてアワアワと見守ることしかできなくて…………
「と、とりあえず家に……いやでも……」
「……わ、わたし泣かないよ……お兄ちゃん……ぐすっ」
「なでしこ……」
そんなとき、なでしこの強さを目の当たりにして"俺よりも遥かにか弱い妹がこんなに強い子に成長してるのに俺は今だって何もしてやれてない"
そう思った途端自分の無力さに怒りや焦燥といったものがごちゃ混ぜになって湧き上がって…………
「…………なでしこ」
「……?」
「おんぶ……するよ」
「……うん」
「よいしょ……っと」
「…………」
「なでしこ、情けないお兄ちゃんでごめんな」
「……ううんそんなことない」
「おれ、もっとなでしこの"お兄ちゃんらしく"なれるようがんばるから……もっとなでしこが誇れるお兄ちゃんになるから、みてて」
そう言ってなでしこと弱いままだった自分に誓ったあの日以降、俺は涙を見せることはなくした。
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「……知らない天井だ」
嘘です。知ってる天井です。
「…………え」
「…………あ」
…………目と目が合ったらポ○モンバトル!
じゃなくて、なんで志摩さんがここにいるんだ?
「え? ここって俺の家……」
「えと……」
……いや、待てよ。冷静に状況を整理しよう。まず、俺は風邪を引いていた。
そして、風邪を引いた俺は家族から聞いた話によれば、とんだ醜態(幼児化)を晒すようになるというじゃないか。しかも、俺にはその時の記憶はないときた。
さらに今、目の前に椅子に座り小説を読む志摩さんがいる。これが意味することと言えば……………………。
いやいや落ち着けー。落ち着くんだ俺。俺はいつだってbe cool(?)なはずだ。
まさか自分の妹の友達にバブみを晒すなんてことは………………ないハズだ。(小声)
と、とにかく! 志摩さんに聞いてみないことには情報は確定しない、シュレディンガーの猫ってやつだ(?)。
「志摩さん」
「……ハイナンデショウ」
「何がとは言わないけど……見た?」
「………………」
おわった/(^o^)\
その反応は……もう……見たって……言ってるようなものやん…………(泣)。死のう。
もーね、一縷の望み消え去ったわ。…………しゃーない。
「志摩さん!」ガシッ
「ひゃいっ! ///」
「今日のことは忘れてくれっ…………!」
秘技"全力お願い"! こうなった以上は志摩さんには忘れてもらうしかない。
ほんと土下座でも靴でも舐めますんで、ほんとなんでもしますんで忘れてくださいっ! (小物感)
「あっ…………」
「ん?」
全力お願いしてる最中、志摩さんが突然声を上げたので何事かと志摩さんの目線を追うと…………。
「…………」
「…………」
「…………」
なでしこがお盆を持ち口を半開きでこちらを凝視していた。
待ってお兄ちゃんなでしこからそんなに熱い視線を向けられると破裂してしまうわ。(シスコン)
ていうか、なんでそんな見て…………くる…………んだ? …………いや待て、改めて自分の状況を見れば俺が志摩さんに対して迫っているように…………見えなくもないな。
「…………シツレイシマシタ」
「な、なでしこ!? これはそういうわけじゃないから!」
少年説明中…………
「な、なんだ~。てっきりそういうことかと思ったよぅ」
「いやいや……」
流石に志摩さんに対しても失礼だろうそれは。
「だってお兄ちゃん、リンちゃんが遭難しかけた時に大慌てで救援に向かおうとしてたから…………」
「えっ…………///」
「ちょっ!? なでしこ!?」
突然のなでしこからのキラーパス! 顔面に直撃だーッ!
その件についてはほんとうに恥ずかしいので掘り返すのはやめていただきたいのですが……(汗)。
とにかく何か言い訳を…………。(言い訳していいわけ!?)
「あ、あれは流石にマズイと思ったからで…………そういう邪な考え(?)がある訳では…………」
「……///」
「ないというか……なんというか〜…………ねっ? 志摩さん!」
「いえ……その……///」
えっ? 何その反応…………。
…………いやいや! 違う違う!
俺の! 想像してた! 反応と! 違い過ぎるっ!
蒼也は混乱している。じゃねぇんだよっ。
「そういえばお兄ちゃん、熱は大丈夫?」
「え? あ、あー測ってみるか……」
数分後…………
「36度5分か」
「平熱だね」
時刻は夕方。丸一日寝ていたおかげかすっかり熱はその鳴りを潜め身体の倦怠感なども綺麗さっぱりなくなってた。
「それで、聞き損ねてたけど志摩さんはなぜ家に?」
「リンちゃん、お兄ちゃんのお見舞いに来てくれたんだよね〜」
「うむ」
「そうだったのか…………」
なんか申し訳ないな。長旅から帰ってきて間もない中、わざわざお見舞いに来てもらったのが。
「あ、そうだ!」
「?」
「はいこれ! スポドリと冷えピタ!」
「ああ、ありがとうなでしこ」
そういえばおつかい頼んでたっけか。丁度寝起きで喉が渇いてたからありがたい。
「そうやー入るわよ」ガチャ
「? どうしたの桜ねーちゃん」
「あんた熱は下がったの?」
「うん、36度5分」
「そ、よかったわね」
「今回も大変ご迷惑をおかけしまして…………」
相変わらず家族の皆々様には顔が上がらねぇや……ってな。
「大袈裟ね……リンちゃん、そうやのこと看ててくれてありがとうね」
「いえそんな……」
「どうせならこれからもずっとみててくれても良いんだけど」
「へ?」
「何言ってんの? 桜ねーちゃん」
「はぁ……」
何でそんな落胆したような溜め息をわざわざ聞かせるようにつくんですかね。
「ま、いいわ。リンちゃん、今日はもう遅いからうちでご飯食べていきなさい」
「いや、そこまでしてもらうわけには」
「リンちゃん! ご飯一緒に食べようよ!」
「…………わかったよ。ご馳走になります」
「やったー!」
「よかったな、なでしこ」
「うん!」
はい可愛い。ほんとに可愛いですねー。
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「「「「「いただきまーす」」」」」
「いただきます」
そんなこんなであっという間に夕飯の時間となり志摩さんを含めた食事会(?)が始まろうとしている。
ちなみに今日の夕飯は風邪を引いた俺がいるはずだったため身体に優しいメニューとなっていたが、急遽変更し宴会よろしくなぐらい豪勢な料理が並んでいる。
今日何かの記念日だっけ?
「ん、おいしい」
「お気に召したようでよかったわ〜」
「はっはっはっ! いっぱい食べなさい!」
唐揚げをつまみその味に感嘆の声をあげる志摩さんに対して母さんと父さんが喜んでるが、志摩さんの皿にバカスカ食べ物を取り分けていくのは良くないと思うのです。俺は。
「盛りすぎだって……」
「そうか? このぐらいペロッといけるだろう……な、母さん」
「そうね〜」
「やべーな、この家族」
胃袋ブラックホールか? みんながみんなそんな胃袋持ってると思うなよ…………。
そんな風に俺が改めて各務原家の胃袋に戦慄していると思わぬ爆弾が父さんから投下された。
「いや~それにしても、そうやがついに彼女を連れてくるとはな!」
「!?」
「何言ってんだよ父さ「お兄ちゃん、リンちゃんと付き合ってたの!?」…………いや、違うよなでしこ?」
変なこと言うからなでしこが勘違いしちゃったじゃんかよ。めちゃくちゃびっくりした顔でこっち向いてるって。
だが、そんな顔もキュートだっ!
「というか、どこ情報だよそれ……」
「違うのか?」
「ちがうわ」
「ふむ……そうなのか」
なんで納得してないみたいな顔してるんですかねぇ。
「だってそうやったら小さい時からモテてたのに誰にも靡かなかったじゃない?」
「うむ」
「桜ねーちゃんまで…………」
正直に言って俺の中では1,2位を争うレベルでなでしこと桜ねーちゃんがいて、単にそれ以外に興味が沸かないだけなんだよなぁ。
世界一可愛い家族を差し置いて他に目が行くと思います? 思わねぇよなぁ。(圧)
「リンちゃんはどう思う? そうやのこと」
「えっ……と」
「はいはいこの話終わりー。志摩さんも無理して答えなくていいからね」
なんか自分の話を他人目線から聞くとなると小っ恥ずかしい感じがするのでちょっと強引に話を切ることにする。がしかし、
「……先輩はどんな人にも壁を作らず、優しくて、そんな姿が魅力的で」
「…………」
「私にとっては憧れ、みたいな人です」
「…………」
…………えっと、めっちゃ真剣な目で見ながら言ってくるやん志摩さん。
「(ほら、あんたもなんか言いなさいよ)」
「…………いやいや、勘弁してくれぇ」ボソッ
桜ねーちゃんからの圧がすごい。目で訴えかけてきてますわ。
とはいえ、何か言葉を返さないといけないのは分かっているが…………正直こんな感情を向けてこられるのが初めてだからどう返したらいいのか分からん。
…………自分が小さい時からモテていたという自覚はあったし、そういう好意を寄せられることも両手で数え切れないほどにあった。うん。
でも、そのどれもが打算的で何か作為的なものが見え隠れしてて嘘で塗りたくられてる感じがしてならなかった。自分の被害妄想かもしれんが。
(まあ、あいつだけはそんな感じじゃなかったけど…………いや、今はあいつだけじゃないか)
だから俺は、唯一信用できる家族を一番に考え、大事にするようになった。
「…………志摩さん」
「…………」
けど、志摩さんもそういう俺が大事にする人達と同じで"本心からの会話"をしてくれている。
そして今、そんな子が自分にこうして素直な想いを伝えてくれている。
うん、なんなんだろうなこの感じ…………よく分からない、けど。
「俺は、こうして他の人に自らで歩み寄ろうとする……志摩さんのその姿勢に惹かれたし、素敵だと思う」
「…………」
いや、そうじゃない。本心からの会話にはもっと本音に近しい言葉で端的に…………。
…………今、俺が言うべき言葉は。
「うーんまぁ、何ていうかその…………俺にとって志摩さんは大事な人、かな」
「…………」
「「「「…………」」」」
……うむ、ちょっと詰まったが俺なりに本音に近しい言葉で表せた気はする。
そう、志摩さんは俺にとって大事な人なんだ。
なんか、改めて自分の本心を言葉に出すとスッキリするというか自分の気持ちが明瞭化されるっていうか…………なんか、こう……ね…………
「「「「…………」」」」
「…………」
「「「「…………」」」」
「なーんでみんなして黙ってこっち見てるんですかねぇ!」
先程から向けられる視線に流石に耐えきれなくなって、思わずといったように声に出してしまったわ!
「いや……なんか、ねぇ?」
「え、えぇ」
「う、うん」
「う、うむ」
「なに、この反応」
母さん、桜ねーちゃん、なでしこ、父さんの順で仲良くよーわからん反応してこないで頂きたい。……まぁいいか。
「まさかあのそうやが他人に関心を持ち始めるなんてね」ヒソヒソ
「父さんびっくりしたぞ」ヒソヒソ
「ええ、びっくりしたわねー」ヒソヒソ
「だが……」ヒソヒソ
「ええ……」ヒソヒソ
「そうね……」ヒソヒソ
(((これはくっつけるしかない!!)))
あの、なでしこを除いた三人でプチ家族会議しないでもらえるかな? なでしこに至ってはすごくキラキラした目でこっち見てるし……くっ、可愛いなーもう! 飴ちゃんあげちゃう!
「お兄ちゃん! 頑張ってね!!」
「うん?」
ナニを?
「そうや、頑張りなさい」
だから何を?
……まあいいや、とりま頭使ってお腹減ったし夕飯の続き続き。
「あ、志摩さんソースと……って…………?」
「……」
「志摩さーん?」
「…………」
「おーい?」
「…………」
返事がない、まるで屍のようだ。
……じゃなくて、さっきから志摩さんが俯いて声かけても反応しないのだが。というか若干覗く顔が赤いような……?
風邪移してたら悪いしちょっと確認するか。
「志摩さん?」トントン
「ひゃいっ!!」
「うわびっくりした」
ほんとにびっくりすると人って跳ねるんだな(他人事)。
「大丈夫?」
「は、はい大丈夫……です///」
「ちょっと失礼」
「!?!?」
自分の額と志摩さんの額を合わせて軽く熱がないか検診する。昔は桜ねーちゃんにやってもらってたっけなー。いと、懐かし。
「うーん」
「〜〜〜っ///」
36度……8分くらいかな、ちょっと熱っぽいか?
「…………」
「…………///」
そういや、これ何気なくやったけど………………。
…………。
「…………っ!」バッ
「…………?」
…………あかん、なぜか急に恥ずかしくなってきた。
慌てて顔を背けたが、心臓の鼓動がやけに大きく聞こえてくる。心不全か……うん、心不全やなそうに違いない。
今度病院に行こう、そしたら顔が熱い原因も靄がかった心の原因もすべて分かる、はずだ。
なお、病院では何も異常は見つからなかったそうな。
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「リンちゃん! またね!」
「うん、またね」
「志摩さん、また学校で」
「はい、また学校で」
そうやってなでしこと先輩に別れを告げ、愛車の原付を走らせる。
「…………」
運転に集中しながらも走ってる間ずっと考えてるのは各務原先輩のこと。先輩のあの時の表情は…………。
きっと、そうだよな? 少しは意識してくれるように…………。
「…………っ///」
あーでもないこーでもないととある可能性が思い浮かんだり消えたり……。
考えが全くと言っていいほどまとまらないうちに家に着いてしまった。
「クリスマスキャンプか…………」
ふと、思考の渦から抜け出そうとして思い浮かべた単語を反芻する。
「よし……!」
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マジでそれぞれの心情を書き分けるのって難しい。さあ、そろそろ進展あるか……?