なでしこ(兄)のゆるキャン△   作:てるまるまる

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クリキャンのおわり!パートファイブ!

 

 おまたせしました。

 一つのターニングポイントをようやく迎えられました。(2年5ヶ月……)

 読み続けていただいている、皆様は大変お待たせいたしました。

 2期も書き上げれるように頑張りますので、当作品を末永くお願いします。

 では、どうぞ。

 

 ────────────────────────

 

「そろそろ寝ますかー」

 

「そだねぃ」「……」

 

 鳥羽先生を運び終えた後戻ってきてなでしこと志摩さんと談笑しながら動画を一本見終えた所で丁度眠気がやってきた。

 

「あ、あの……」

 

「ん、どしたの志摩さん」

 

「えっと……」

 

「?」

 

「少し……散歩、しませんか?」

 

 ………………まだ少し眠気が浅いのかな? 

 

「いいよ、なでしこはどうする?」

 

「私は先に寝るよぅ……」

 

「おっけー、暖かくして寝なよ」

 

「うん、おやすみー……」

 

「おやすみ、なでしこ」「おやすみ」

 

「じゃ、いこうか」

 

「はい」

 

 そうして始まった夜の散歩。

 高原で空気が澄んでいるおかげか上を見上げると天然のプラネタリウムが広がっており、思わず天体観測をしそうになるが……

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 何かあるのかと思い、志摩さんからの話を待つ。

 しかし、5分くらい経った今でも志摩さんから話しかけられる様子はなかった。

 

「……」

 

「……」

 

「あ、あの……」

 

「お、どしたの志摩さん」

 

「か、各務原先輩って、昔はどんな子……だったんですか?」

 

「ん〜、唐突だね……」

 

 まあ、おそらくこれはあの時の続きなのだろう。

 

「……もしかして、俺が風邪引いたとき桜ねーちゃん達から何か聞いたの?」

 

「……は、はい」

 

 ……やっぱりか。

 コレは俺の核心に迫ることだから、あんまり話したくはないんだけど…………

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………んー」

 

 さすがに、言い逃れはできないみたいだね……。

 それに、志摩さんになら打ち明けてもいいと心の内に沈んだはずの意識が訴えかけている。

 なんで。

 

「そのー、あまり、言いたくはないけど……」

 

「……」

 

「あのときに、見せた"アレ"が昔の俺だよ」

 

「やっぱり…………」

 

「でも、一番聞きたいことはそうじゃないでしょ?」

 

「っ!」

 

「なんで変わったのか、それを、知りたい?」

 

「…………」コクッ

 

 ここからは、なでしこにも、あやのにも、誰にも言っていない心の内側の話。

 なんで。

 

「まあ、なんというかさ、俺はお兄ちゃんなんだ…………」

 

「……え?」

 

「俺はなでしこのお兄ちゃんなんだ」

 

「そ、れは……」

 

「理由はそれだけ」

 

 それだけなんだ。

 くだらないと言ってくれて構わない。たったそれだけでと嘲笑ってくれて構わない。

 ただ、俺にとってはそれが何よりも重要で大事なことなんだ。

 なんで。

 

「俺はお兄ちゃんだからなでしこの前に立って道しるべになってあげないといけない」

 

「…………」

 

「なでしこが間違った道に行かないように道を示してあげないといけない」

 

「……」

 

「"お兄ちゃんらしく"しないと、母さんが、父さんが、桜ねーちゃんが……なによりなでしこが」

 

「…………」

 

「……悲しむ」

 

 はぁ、なんて重い感情なんだ。

 "あのとき"から、決して他の人には見せないようにしてたのに。

 だから俺は誤魔化し続ける。

 なんで。

 

「…………」

 

「…………」

 

「なーんてね、何言ってんだろうね。今の忘れてもらっていいよ志摩さん」

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「私は先輩は充分お兄ちゃんらしくやれてると思います」

 

「……え?」

 

「私は一人っ子なので兄妹についてあんまりわからないんですけど……」

 

「うん」

 

「先輩はなでしこのためを想っていつも行動してますよね」

 

「それは……」

 

「妹のためを想って行動できる、これをお兄ちゃんらしいとは言えませんか?」

 

「そ、それは兄妹ならあたりまえじゃ……」

 

「当たり前じゃないです」

 

 なんで。

 

「……」

 

「なんで……」

 

 志摩さんは認めてくれる…………? 

 

「私は…………」

 

「……」

 

「今のなでしこのために行動する先輩が好きです」

 

「……え」

 

「でも、あのとき会った素の先輩も私は好きです」

 

「っ!」

 

「だから、私の前では、特別"お兄ちゃんらしく"しなくても大丈夫です」

 

「……え」

 

「私は、全部ひっくるめて蒼也さんのことが……"好き"です」

 

 そのときの志摩さんの顔を、俺は生涯忘れることはできない。

 

「あ、え……?」

 

 今までにもこういう場面はあったはずなのに…………今までならすぐに出てきていた言葉は喉の奥でつっかえてて出てこない。

 かろうじて代わりに出たのは、言葉とはいえないような掠れた声。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……っ」

 

 ほんの少ししか経っていないはずなのに、永遠の時間を過ごしたかのような錯覚に陥る。

 さらには胸の鼓動が早く、やけに音を鳴らしてくる。

 顔も火が出るくらいに熱い。まるで風邪でもひいたみたいに。

 けれども頭だけは妙に冴えている。

 

「い、今のは…………」

 

「っ」

 

「今のは、そういう認識で……いいんだよね?」

 

「…………」コクッ

 

 ……って! 何言ってんだ俺! 

 そういう感情には人一倍敏感なはずだろ! 

 今もなおそういう感情を向けられているって分かってるのに、また…………また誤魔化そうとするな! 

 違うだろ……! 今、言うべき言葉はそうじゃない……! 

 

「あー……えっと」

 

「……」

 

「その……俺はそういう感情が分からない、んだけど」

 

「はい」

 

「今感じているこれが、今までとは違うことは……分かる」

 

 走っていないのに心臓の鼓動が早く、胸が苦しくなる感じ。

 そして、湧き上がる今までとは違う感情に戸惑っている。

 ただ、それが悪い感情ではないことは確かだった。

 

「志摩さん」

 

「はい」

 

「俺も志摩さんのことが好きだ」

 

「っ///」

 

「おそらく恋愛的な意味で、ね」

 

「!」

 

「今は…………いまはその断定ができないけど、必ず応えてみせるよ」

 

「それは……」

 

「だから、待っててもらえるかな?」

 

「……はいっ」

 

「そのときは俺から言わせてもらうよ」

 

 その大切な言葉を。

 

 ────────────────────────

 

「ところで先輩」

 

「ん?」

 

「私たちの関係ってこの場合どうなるんですか?」

 

「うーん…………友達以上恋人未満ってことになるのかな」

 

「…………」

 

「ごめんね、曖昧な関係で」

 

「ぜ、全然! そんなこと……」

 

「都合がいいかもだけど、この気持ちを理解できたら今度は俺から言わせてもらうよ」

 

「……」

 

「だから、志摩さんにはそれまで待っててほしい」

 

「……もちろんです」

 

 今のこの曖昧な関係に、安易に名前をつけるべきではない。

 だけど、この関係に名前がつけられるとしたら……それは多分この気持ちを理解できるようになった時だろう。

 

「そ、その各務原先輩……」

 

「ん?」

 

「えと、お近づきのしるしに…………」

 

「うん」

 

「こ、これからお互いに"名前"で呼び合いませんか?」

 

「えっと……それは」

 

「……」

 

「俺が志摩さんのことをリンちゃんって呼ぶってこと?」

 

 さ、流石にそれはキモくないか……? 

 

「ち、違いますっ」

 

「あ、そうなの」

 

「えっと……各務原先輩には呼び捨てで呼んでほしいんです」

 

「あー、そっちか」

 

「私は各務原先輩のことを蒼也先輩と呼ぶので」

 

「んー……」

 

 それは……ちょっと距離があるくない? 

 

「いや、蒼也先輩じゃなくてそっちも呼び捨てで呼んでよ」

 

「え、流石にそれは……」

 

「じゃあ先輩つけるのやめてほしいな、せっかく"お近づき"になったんだしさ」

 

 先輩つけると距離あるように感じるじゃん? 

 

「わ、分かりました……蒼也、さん」

 

「うん、そっちのほうがいいね……リン」

 

「…………」

 

「…………」

 

「「ふふっ……」」

 

「呼び慣れてないから違和感あるなぁ」

 

「はい……でも、いいですね」

 

「ね」

 

 また一段と距離が近づき、理解が進んだ気がする。

 

「さてと……じゃあそろそろ戻りますかぁ」

 

「あ、蒼也さん」

 

「んー?」

 

「寝る前に渡したいものがあるので待っててもらってもいいですか?」

 

「いいよー」

 

 何かあるのだろうか? 

 思いのほか離れたところまでは歩いていなかったのか、俺とリンのテントが設営されている場所まではすぐだった。

 

「じゃあ、ちょっと待っててください」

 

「うん」

 

 そう言ってリンは隣の俺のと同じ形をしたテントに入り込んでいった。

 なでしこはすでにリンのテントで寝ていそうだな。

 ……これー、テントの前で待ってればいいのかな? 

 

「ふー…………」

 

 ……それにしてもだいぶ冷えてきたなぁ。

 桜ねーちゃんと同じモッズコートを羽織ってても、中にどれだけ重ね着をしててもやはり寒いのは苦手だ。

 あ、流れ星。

 

「そ、蒼也さんっ」

 

「ん」

 

 リンに呼ばれて振り向くと同時に、先ほどまで感じていた寒さが和らぐのを感じた。

 

「これは……」

 

「蒼也さん、寒いのが苦手だって聞いたので……」

 

 寒さを和らげてくれていたのは、首に巻かれた毛糸のマフラーだった。

 

「これは、私からのおもてなしですっ」

 

「……これ、リンが編んだの?」

 

「はい、ちょっと不恰好になっちゃいましたけど……」

 

「いや、嬉しいよ」

 

「っ」

 

「ありがとう、リン」

 

「ど、どういたしまして……です///」

 

 さっきまでの寒さが嘘のように身体の内側から熱が溢れてくる。その熱の正体を俺はまだはっきりとは分からない。

 

「じゃ、俺は自分のテントで寝るから」

 

「はい」

 

「……それじゃあおやすみ、リン」

 

「おやすみなさい、蒼也さん」

 

 これから知っていこう、理解していこうこの感情を。

 今ならそれができるような気がする。

 灰色から色づいたこのカラフルな日常でなら、この感情(いろ)を理解できる気がする。

 

 ────────────────────────

 

 感情は色だ。

 

 

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