なでしこ(兄)のゆるキャン△   作:てるまるまる

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野クル本格始動!

 

 長らくお待たせいたしました! 書きたいこと詰め込んだら意外にもかかってしまいました。

 なにぶん学生の身なもので……特に最近忙しくなってきたため小説書く時間がなくなってきているという事実。

 少しでも見てくださっている方たちに良い作品をいち早くお届けしたいと思っていますのでどうかお付き合いください。

 え? 既に読者が離れてるって? 冗談じゃないよ〜(byラーメン二郎店主)

 

 ────────────────────────

 

 食器等の片付けを終え、ブランケットにくるまりながらラジオを聴き夜の富士山を眺めたりする。チルだわー(きも)。

 

「夜の富士山やっぱりいいねぇ」

 

「このあたりは明け方よく霧が出るから朝は朝日で幻想的な富士山が見られるらしいよ」

 

「「へえー」」

 

「まあ、霧がよく出るのは春夏だけどね」

 

「霧のふじさんかぁ見てみたいなぁ」

 

 霧のかかった富士山か。霧が出るほどの朝ってことは相当早いと思うぞ。朝が苦手ななでしこは起きれるのか? 俺? ……起きれるに決まっとるやろ。

 

「日の出って何時頃?」

 

「6時くらいかな」

 

「起きれるかなぁ……」

 

「私は寝てるかな」

 

 6時くらいなら全然起きれるな。段々と眠くなってきているのかどちらも口数が少なくなってきている。とはいえ、俺も結構眠くなってきている。このままだとこの場で寝落ちして風邪をひく未来が見えるのでそろそろ桜ねーちゃんの車に戻るとしよう。っとその前に連絡しなきゃ。

 

『そろそろそっち行くわ』

 

『わかったわ。暗いから足元気をつけてね』

 

『了解』

 

「目覚まし掛けて見よっか、ふじさん」

 

「やだ、寝てる。起こすなよ」

 

「なでしこ、そろそろ車に行くよ。……起きろー」

 

 だめだこりゃ。完全に寝る体勢になってやがる。……しゃぁないなー。

 

「なでしこ、おんぶしてあげるから背中に乗りな」

 

「うーん……ありがとう……お兄ちゃん」モゾモゾ

 

 そう言ってしゃがんで背中を見せると芋虫のように這いずりながらなんとか俺の背中におぶさるなでしこ。……かわいいかよ。

 

「よいしょっと……じゃあ志摩さんまた明日。寒いから風邪引かないようにね」

 

「……はい、また明日。おやすみなさい」

 

「うん、おやすみなさい」

 

 志摩さんと別れなでしこをおぶりながらサイトを歩き桜ねーちゃんの待つ車へと向かう。開けた場所に女子1人おいてくるというのはなんだか気が引けたが、志摩さんは慣れているみたいだし何かしらの対策はしているのだろう。多分大丈夫だと思う。

 

「……むにゃ」

 

(……それにしても、大きくなったなぁなでしこ)

 

 ふとなでしこを背負っているとその重さに時の流れを感じる。そんなことを感じていると小さい頃もこんなふうによくおぶって帰ってたなぁなどと昔のことを芋づる式で思い出してくる。ちょっと爺臭いか。

 

(俺はちゃんとお兄ちゃんをやれているだろうか……)

 

 なでしこが誰にでも自慢できるような立派なお兄ちゃん。それが俺の目指している理想像だ。そのためならどんなことでもしてきたと自負している。

 

「……お兄ちゃん……むにゃ」

 

「……」

 

 お兄ちゃん……か……。そうだよな。俺はなでしこのお兄ちゃんなんだから、胸張って前を歩いてやらないといけない。なでしこが道に迷わないよう導いてあげなきゃいけない。それが、お兄ちゃんなんだから。

 

「ありがとうな……なでしこ」

 

 俺をお兄ちゃんでいさせてくれて。

 

 ────────────────────────

 

 ピピピピッピピピピッ

 

「……ふわぁ」

 

「……んー」

 

 時間は朝の5時40分桜ねーちゃんの車のアラームが鳴り起き上がる。ふとバックミラーに映る桜ねーちゃんに目をやると……わお超美人。いつもと違ってメガネを掛けず髪を下ろした状態で素のままの桜ねーちゃん。うーむ、眼福眼福。

 

「あら、起きたのねそうや。おはよう」

 

「おはー」

 

「なでしこ起きな、日の出見るんでしょ」

 

 前髪を上げてメガネを掛けたいつも通りの桜ねーちゃんがミラー越しに挨拶してきたので軽く返すと、隣の助手席で寝ているなでしこにそう声を掛ける。しかし、

 

「んぅー起きてるよ〜〜」

 

 返ってくるのは絶対起きてないであろう気の抜けた返事のみ。ぐぁっ! 可愛すぎる! まって、俺のエンジェルシスター可愛すぎん? 

 

「……」ユサユサ

 

「おきてるってぇ〜〜」スピー

 

 そんな感じで精神的ダメージを負っていると(ご褒美)、しびれを切らしたのか桜ねーちゃんがなでしこをゆすりはじめた。そろそろ出るか? あの秘技が……! 

 

「むゅあ〜~…………っ!」バッ

 

「わお」

 

 出た〜桜ねーちゃんの秘技"鼻摘まみ"! なでしこを一発で起こすことのできる伝説の技だ。それを平然とやってのける、そこにシビれる! あこがれるゥ! 

 

「コンビニで朝食買ってくるけど何にするの?」

 

「やきにくちゃーはんとぷりんとからあげとあんぱんとぽてちとばーむくーへんとあいすととんこつ」

 

「おにぎりとお茶ね」

 

 起きたなでしことなでしこ用のブランケットと俺のブランケットを両方持った俺が車の外に出ると、窓から顔を出した桜ねーちゃんが朝食を何にするか聞いてくる。なでしこ、食べたいものを何でも言っていいわけじゃないから。あと、そんなに朝から重いの食べたらお腹壊すよ。

 

「そうやは?」

 

「俺も同じので。あとでお金渡すから」

 

「わかったわ。じゃあ行ってくるわね」

 

「うん、気を付けて」

 

 桜ねーちゃんを見送りなでしこと共に志摩さんがいるテントのところまで手を繋いで歩いていく。……めっちゃ寒いんだが。早朝だからかはたまた標高が高いからか知らんがめちゃくちゃ寒い。寒いの嫌いなんだよな〜。

 

「うーん……」コクリコクリ

 

「なでしこ、ちゃんと歩かないと危ないぞ」

 

「わかってるよぅ」

 

 フラフラと歩くなでしこに注意しつつ寒さに耐えながらテントを目指しているとようやく志摩さんのテントが見えてくる。まだ、志摩さんは寝てそうだな。

 

「……」スッスッ

 

「……」ストン

 

 志摩さんのキャンプチェアに座ろうとしたなでしこを先読みし、キャンプチェアが濡れていそうだったのでハンカチで先に拭いておく。お尻が濡れると不快感やばいからな。

 

「……おっそろそろだぞなでしこ」

 

 座ったなでしこにブランケットを渡していると段々と視界が明るくなってきており、朝日が朝の幕開けを報せてくれる。というか、まじ寒い。俺もブランケットにくるまっとこ。

 

((……まぶしい))

 

 富士山の後ろから登ってくる朝日を見る。ま……まぶしい。だが、その景色は壮大でたしかに幻想的だった。そこそこに霧がでており、富士山も隠れていないため1番いい状態での景色なのではないだろうか。

 

「……」ゴソゴソ

 

「……あらら、寝に行っちゃったよ」

 

 幻想的な景色に見入ってると後ろから音が聞こえたので何事かと思ったらさすがにまだ眠かったのか、なでしこが志摩さんのテントに入り込んで寝に行ってしまった。まあいいか。

 

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「二人ともみてみてー。富士山撮ってきたよー」

 

 場所は変わって野クルの部室。週末にそんな濃い1日を過ごして今日はいつも通りの学校の放課後。正式な手続きをし正式に野クルの部員となった俺たちは野クルの部長である大垣さんに呼ばれ部室へと集まっていた。

 

「このキャンプ場から見える富士山すごかったー」

 

 部室に集まったそばからなでしこは週末のキャンプについて嬉しそうに犬山さんと大垣さんに話していた。厳しいって。可愛すぎるって。(ジョージ風)

 

「その後道の駅行ってー。富士山見ながらアイス食べたんだー」

 

 さすがに寒すぎて俺は食べなかった。だって、朝日見たとき普通に寒すぎて動けなかったからね。そんな俺とは対照的になでしこは元気で強い子だな。えらいえらい。

 

「富士山Tシャツとマスコットも買っちゃったよー」

 

「富士山そんなに好きなら登山部の奴らと行ってこいよ。あいつら毎年登るみたいだぞ?」

 

 富士山の話を多くするなでしこに対しそんなふうに大垣さんが言う。ふーん、登山部の人たちって毎年富士山登るのか……キツそう。ちなみに俺もしっかり富士山Tシャツとマスコットは買っている。おそろっちだね! 

 

「そんな! 私が富士山に登るだなんて!」キャー

 

 かわいい。

 

「遠くからみてるだけで私は満足なんだよぅ……」

 

「片思い少女か」

 

 なにっ! なでしこが片思いをしているだと!? 一体どこの馬の骨の馬の骨だ!? 許さんぞお兄ちゃんはまだ結婚なんて許しませんぞー! (気が早い)

 

「あ、これお土産の飲むヨーグルトだよー」

 

「ありがとなーなでしこちゃん」

 

「……うま」

 

 なでしこがキャンプでのお土産を渡していたため俺もこの場で渡すことにする。あとは、志摩さんにも渡したいところだが、学年が違ううえに図書委員っぽいから会える気がしないんだよな……どうしよ。

 

「俺からは特選牛乳とコーヒー牛乳の2本セット(保冷バック付き)だ」

 

「うわ〜ありがとうございますー先輩」

 

「あざっす!」

 

「家に持ち帰って冷やして飲んでも大丈夫なようにしてるから安心してくれぃ」

 

 麓キャンプ場から最も近い道の駅である"道の駅朝霧高原"では雄大な富士山の西麓に広がる朝霧高原で育てられた乳牛から採れる牛乳が朝霧高原の特産品として売られており、先ほどなでしこが渡した飲むヨーグルトもそのうちの一つである。というか、実際に飲んだらめちゃ美味かったんだよなー。

 

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「よーし、お前らよく聞け。野クルも4人になったことだ……」

 

 土産話もほどほどにして我々野クル一行はジャージに着替えてグラウンドに集まっていた。集まった俺たちに大垣さんが声をかける。おそらく集合した目的をこれから大垣さんが言うのだろう。ドキドキ。ワクワク。ムネムネ。

 

「本格的に"冬キャン"の準備を始める!」

 

「おす!!」

 

「オス!」

 

「オースッ!」

 

 うおー! ついに我々もキャンプをするときが来たのかー。苦節三十五年……ここまで来るのに長かった……(なわけ)。三者三様の返事をし気合を入れて、大垣さんの次の言葉を待つ。

 

「ぶちょう!! いつキャンプやるんですかっ!?」ワクワク

 

「これから決めてくぞー」

 

 待ちきれないのかなでしこが手を挙げながら早速大垣さんにキャンプの期間を聞く。うむ、今日も元気ななでしこは偉い! 

 

「ぶちょう!! どこでキャンプやるんですかっ!?」わくわく

 

「それも決めるぞー落ち着けー」

 

 楽しみなのはわかるが大垣さんの言う通り少し落ち着こうななでしこ。話が進まなくなっちゃうからねー。

 

「ぶちょう!! おやつは「おまえちょっと黙ってろや」……むー」

 

 案の定話が進まなくなることにしびれを切らした大垣さんがなでしこに一言物申す。どうどう。落ち着けーなでしこー。

 

「ぶちょー、楽しみすぎて夜しか眠れませんどうしたら「知らん」……」 

 

 あァァァんまりだァァアァ(号泣)! なでしこに続いて少しふざけてみたら、めちゃくちゃ塩対応された。そりゃそうか。話進まんって。

 

「じゃ、まず持ってく物。私メモるから上げてってなー」

 

「「「おー」」」

 

「テントと寝袋」

 

「着替えと歯磨きセット」

 

「なでしことなでしこ用の食材」

 

「ランタンと懐中電灯」

 

「マンガとお菓子!」

 

「調理器具」

 

「ウクレレとハンモック」

 

「わんことフリスビー!」

 

「なでしこ用の非常食」

 

「別に持ってくるのは自由やけどさー。てか途中変なの混じっとったし……」

 

 変なのとは失礼な。なでしこに美味しいものを食べさせるのは俺の生きがいなのだー。というか調理器具は結構必要な部類に入る気がするんだが……。

 

「こんなところやな」

 

「結構あるねー」

 

「テントは980円テントがあるから良し」

 

「ちょっとまった。980円テントって4人も入るものなのか?」

 

 犬山さんが書いたメモを見ながら最低限必要なものを羅列していく中でテントの話になったのだが、980円テントって4人も入る気がしないし、なんなら2人で限界なくらいの大きさだったような気がするんだが……。てかそもそも俺男だし同じテントはたとえなでしこであってもありえないだろ。倫理的に。

 

「確かにあれは4人も入らんな」

 

「せやなー」

 

「ふむ、ならこれから先もキャンプしてくだろうから一個買っておくか……」

 

「「!?」」バッ

 

 え……なに? テント一つに4人も入らんしそもそも男だから、それにどうせキャンプこれからもやるんだからテントの一個くらい買っておかないと(主に俺が)困るだろうからという理由でそんなことを呟いたら、大垣さんと犬山さんに驚いた顔をされながら勢いよく振り向かれた。なんなん。まじで。見返り美人の真似? 

 

「各務原パイセン……金もってるんすか?」

 

「……ふっ。あたぼうよ」(-д☆)キラッ

 

「きゃー、パイセンかっけー」

 

(なんなんこれ……?)

 

 大垣さんと茶番を行っていると犬山さんから呆れたような視線をもらう。とはいえ、本当にちょっと良いテントを買えるだけの貯金(頑張ってバイトして貯めた)はあるため、本来はロードバイクのコンポーネント(ブレーキや変速機の総称)をランクアップさせるために貯めていたものだったがここで使ってもさして問題はないだろう。また貯めればいいし。

 

「じゃあテントはこれでオッケーやな。えーっと、カセットコンロは……」

 

「はいっ!! うちにあるよ! リンちゃんとキャンプで使った信頼と実績があります!」

 

「こいつもOK」

 

「ランタンは防災用のがうちにあったな」

 

「こいつもOK……っと」

 

 犬山さんが持ち物の確認をし各々が自前で使えるものを提示し持ってくることで着々と冬キャンに向けての準備が進んでいく。サクサクプレイやなー。

 

「あ、焚き火セットはどうする?」

 

「ホームセンターか百均でいいんじゃね?」

 

「焚き火セットって何持ってくの?」

 

 焚き火セット? 薪でも持ってくのか? (なわけ)俺と同じように焚き火セットについて詳しく知らないなでしこが大垣さんと犬山さんに尋ねてみる。わたし、気になります。

 

「火バサミと着火剤と軍手とライターとかやねー」

 

「百均で全部揃えられそうだな……」

 

「最近の百均は炭とか焼き肉の網とかまで売っとるらしいからなー」

 

「まじか、すげーな百均…………まーこの辺一軒もないけどな」

 

「「そうなの!?」」

 

 まじかよ、この辺百均一軒もないのかよ……。そういえば、この前百均で自転車用の積載ポーチが売ってるって知って桜ねーちゃんに聞いたら車で20分位の場所にあるって言ってたな。なら、チャリだったら30分か……。

 

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「他の持ち物はほぼOKなんやけど……」

 

「やはりネックはシュラフか……」

 

 一旦寒くなってきたため部室に戻ってきた俺たちはシュラフ、ようは寝袋を前にして悩んでいた。うむ、これは死活問題であるな。

 

「うちら夏用のコレ(夏用シュラフ780円税込)しか持っとらんしねぇ」

 

 そう、我々野クルは夏用の生地がうっすいシュラフしか持っていなかったのだ。これで、冬にキャンプをすることは死地に自ら赴いているのと同義であるぞってどっかのキャンプ雑誌で読んだ気がする。

 

「夏用だとどうなるの?」

 

「低体温症で死ぬ」

 

「ひいぃぃぃ!」

 

「最悪の場合だけどな」

 

 そこ! なでしこを怖がらせて遊ばない! なでしこが可愛い(?)でしょうが! 

 

「キャンプ道具の本読む? シュラフ特集のやつ」

 

「よむーっ!」

 

 かわいい。てか俺もシュラフ買わないとだめだろうな。正直雨風がしのげるテントさえあれば基本どこでも寝られる俺としては必要なさそうに思えるが、どこのディスカバリーチャンネルだよとツッコまれそうなので買っておくとしよう。……寒いの嫌いだし。俺も一緒に見とこ。

 

「どれどれ……封筒型にマミー型、人型とな」

 

「うちらのは封筒型やね」

 

「リンちゃんのはマミー型だったよ」

 

 封筒型は夏用に多く見られ、材料費があまりかからないからか価格も比較的安価でマミー型は体全体を包める芋虫みたいなやつ。人型は手足が分かれており自由に歩くことができるやつと……。まあ、買うとしたら無難にマミー型かな。

 

「"熊が来ても走って逃げられます"だって! これいいなー!!」

 

「よく考えてみろなでしこ、奴らの走る速度は自動車並み……走れようが走れまいがクマの一人勝ちだ!」

 

 なでしこに対して熊の走る速度を力説する大垣さん。自動車並みってことは大体60km/hか……ぎり負けるな(フィジカルチート)。ロードバイクなら勝てるだろうが走るとしたら体力的に追いつかれて食い散らかされるな。

 

「これ化学繊維とダウンの2種類があるがどう違うんだ?」

 

「それなー、細かい違いは色々あるんですけど大まかにはこんな感じですー」

 

 シュラフの生地について化学繊維とダウンの2種類あると書いてあるので違いを犬山さんに聞くと以下のようなことを説明してくれた。化学繊維はダウンに比べ圧縮しづらいが乾きやすく値段も安い。ダウンはコンパクトに圧縮できる代わりに乾きづらく値段は高いと言う感じらしい。なら、冬用はダウンで圧縮できたほうが便利そうだな……。

 

「冬用は中綿がもっさり入っとるから圧縮に優れたダウンのほうがコンパクトに収納できていいんやけど……」

 

「「けど?」」

 

「同じ耐寒温度で化繊の物より2〜3諭吉ほどお高くなっとります」

 

 わーお。冬用は中綿があるから圧縮できるダウンのほうがいいなぁとか思ってたら犬山さんが現実を教えてきた。まぁ、たしかに圧縮できるっていう機能がついてる時点で金かかってるのわかるしなー。

 

「化繊でも安くて5000円かぁ……」

 

「あ、そういえば。西部開拓時代のカウボーイは野宿するとき朝まで焚き火して気温が上がってから寝とったらしいよ」

 

 ふむ、とはいえキャンプ場で薪が無料なところは珍しいし毎回朝まで焚き火してたらどのみち破産するから、やっぱり最初にいい装備を買っておいたほうがいい気がするな。

 

「暖を取ってやり過ごすのもありだな。焚き火の他だと暖まる方法は……」

 

「使い捨てカイロ」

 

「湯たんぽ」

 

「全力ダッシュ」

 

「温泉」

 

「激辛スープ」

 

「筋トレ」

 

「……おしくらまんじゅう」

 

「かんぷまさつ?」

 

「プロレスごっこ」

 

「いや無いならムリに出さんでええわ。というか一人脳筋おるし」

 

 脳筋とは失礼な。実際体を動かせば結構暖は取れると思うんだけどな……。人間の体って不思議だね! 

 

「正直に言えば俺は夏用でも寝れる気がする…………我慢すればな」

 

「マジっすか」

 

「まじまじ」

 

「そっか! お兄ちゃん体鍛えてるから体温高いもんね!」

 

「そそ」

 

 とはいえ寒さには弱いから結局我慢すればっていう前提条件がついちゃうけど。基礎代謝量が多いから体が常に燃えてて、逆に夏だと結構暑くて大変なんだよなー。そんぐらいだから夏用にブランケットでもかけとけばそれなりに平気なんじゃないかな。

 

「へー、ちょっと触ってみてもええですかー?」

 

「いいよー」

 

 犬山さんが俺の体温がどのくらい高いのか知りたかったのかそう聞いてきたので腕をまくって犬山さんの前に差し出す。なんか、献血とか点滴打つときみたいだな。

 

「……! (なんやこれ……)」サワサワ

 

「…………?」

 

「先輩……風邪引いとりません?」

 

「いや、引いてないけど……」

 

「どうした? イヌ子?」

 

 なんだ? そんなに普通の人と比べて体温高いのか俺? 

 

「いや、結構熱っぽいというか……」

 

「うーん、お兄ちゃんはいつもこのくらいだよー」サワサワ

 

「えっ? ほんまに?」

 

「うん」

 

(…………てか、各務原先輩結構ええ腕しとるなー。引き締まっとるというか)

 

 何やら風邪引いてる疑惑をかけられていたが、なでしこが触っていつものことだと言うとその疑いが晴れていく。うーむ、大丈夫だよな……本当は平熱が高いから熱になっても気づきませんでしたーみたいなオチじゃないよな。

 

「…………」サワサワ

 

「…………」

 

 ところで俺はいつまで犬山さんに腕を貸してないといけないんだ? なにこれ? 何かの検査されてる? 

 

「……おーい、犬山さーん」

 

「なんですー?」

 

「いつまでこれやるのかなー……と」

 

「……! ああ、すいませんちょっとボーッとしとりましたわー」パッ

 

 そう言ってから犬山さんはようやく手を俺の腕から離したのでまくっていたジャージの袖を戻す。もしかして、犬山さんって看護師目指してるのか? 私だったらここの血管に針を通すでーみたいな。

 

(なあ、イヌ子。パイセンの腕どうだった?)

 

(……正直やばいで。力入れとらんのに石みたいな硬さやったわ)

 

(まじか!? あたしも触らせてもらおうかな……)

 

(やめとき、あき。あれは間違いなく惚れてまうで……)

 

「あ! あきちゃんこれ見てー」

 

 シャツを戻しよくわからん思考を回していたらコソコソと大垣さんと犬山さんが密談しているところになでしこが話しかけていた。コソコソ話ってなんか怖いよね。わかる? ……わからんか。

 

「シュラフカバーか。でもこれ化繊の冬用シュラフと価格あんま変わらんぞ?」

 

「えっと、そうじゃなくて。近くにあるものでこれの代わりにならないかな? 非常用の銀シート(サバイバルシート)とか」

 

 なでしこが指差す雑誌の一面を大垣さんが見ながら問題点を指摘するが、シュラフカバー(5000円)の代用品を探すことで夏用シュラフを冬用シュラフにアップグレードできないかという話だった。なるほどな、夏用シュラフの上から被せ物をして冬用シュラフにできるというシュラフカバーなるものがあるのか。

 

「そっか、夏用シュラフでも着込んでさらに断熱する何かがあればなんとかなるかもしれんなー」

 

「確かにな。さすがなでしこ」

 

「えへへー」

 

 さすがマイハイパーシスターなでしこ。略してさすなで。

 

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 ということでデモンストレーションってことで実際に夏用シュラフを冬用シュラフに大変身させるべく検証スタート! まずは、夏用シュラフを普通に外(気温8℃)で使ってみる。

 

「どんな感じ?」

 

「普通に寒い。特に肩から上が」

 

 夏用シュラフに入った大垣さんに犬山さんがコメントを求めると、そう感想を述べる。普通に寒いらしい。そりゃそうだわ。マフラーもニット帽も何もつけてないからな。ということで、マフラーとニット帽をプラスする。

 

「全体的にまんべんなく寒い」

 

「せやな。非常用のサバイバルシートはアルミホイルで代わりにならんかな?」

 

「アルミホイルだね! 借りてくる〜!」ダッ

 

「転ぶなよ〜」

 

 サバイバルシートの代用品をアルミホイルで済ませられないか犬山さんが提案すると、なでしこが善は急げと言わんばかりに走って校舎に走っていったので転ばないように忠告しておく。なでしこ、かわいい。

 

「理科室で借りてきたよ〜!」

 

 少ししてなでしこがアルミホイルを持って戻ってきたので早速夏用シュラフにくるまった大垣さんをアルミホイルでぐるぐる巻きにしていく。なんか、シュールだな。

 

「むぅ……さっきより暖かくなっ…………やっぱりよくわかんねー」

 

「空気の層があると断熱効果が上がるってどっかの本で読んだ気がするぞ」

 

 再び大垣さんに感想を求めると、若干迷った末やっぱり違いが分からなかったらしく変わらないと言ったので記憶の中の棚から使える情報を引っ張り出して提案してみる。

 

「ほなら、梱包用のプチプチシートとかええかもしれんな〜」

 

「プチプチだねっ! プチプチーー!」ダッ

 

 犬山さんが俺の案に具体的な解決策を付け加え、それを聞いたなでしこが再び校舎へと素材集めに向かった。素材集めってモンハンみたいだな。今どきモンハンやってる人っているのかな? ……えっ? いるの? 

 

「あおいちゃーん。事務室でプチプチもらってきたよ〜!」

 

 またしばらくして、なでしこがプチプチを持って戻ってきたので先ほどと同じように夏用シュラフの上にアルミホイルを巻いた大垣さんにプチプチを巻きつけていく。

 

「あ、これなかなか暖かいわ」

 

「お? まじか」

 

「この上からさらに断熱効果のあるダンボールでも巻けば完璧やないかな?」

 

「ダンボールだねっ! もらってくる〜!」ダッ

 

 プチプチを巻きつけると空気の層で断熱され暖かくなったのか大垣さんがプラスの感想を述べたので、さらに断熱効果を得るために犬山さんがそう提案すると再びなでしこが校舎に向けて走っていった。

 

「もらってきたーっ!」

 

(フリスビー犬みたいやなぁ)  (フリスビー犬だ)

 

 しばらくして元気よく走ってくるなでしこにフリスビー犬を幻視しそんななでしこに和む。かわいい。そうして、ダンボールをアルミホイルの上にプチプチを巻いた大垣さんに巻いていく。

 

「こんな感じかな……どう? お兄ちゃん」

 

「うん、いい感じだと思う」

 

 そうして巻きつけたダンボールをガムテープで止めしっかり固定していると……

 

「ふぁ、は…………ハックション!!」

 

「……あ! あきちゃん危ない!」「あき!」「危ねぇ!」

 

 突然大垣さんがくしゃみをしバランスを崩してガッチリ梱包されているため防御体制もとれずそのまま倒れそうになる。それを持ち前の動体視力で倒れ込む場所を先読みし、なんとか倒れる前に体を滑り込ませ大垣さんに怪我がないよう抱きかかえる形でクッション代わりに大垣さんの下敷きとなる。

 

「お兄ちゃん!」「あき! 大丈夫!?」

 

「──ーっ! …………? 痛くないぞ?」

 

「無事か? 大垣さん」

 

「うぉわ! ぱ、パイセン!?」

 

 なんとか間に合ったのか怪我がない様子の大垣さんが閉じていた目を開けると、ちょうど向かい合うような形となっていた俺と目が合う。うむ、無事そうで何より。

 

(か、顔が近ぇ……てかパイセンの顔面偏差値高すぎんだろぉ///)

 

「とりあえずどっちか大垣さんを起こしてやってくれ〜」

 

「わかった!」「了解や!」

 

「「せーの!」」

 

 駆けつけていたなでしこと犬山さんに俺の上に乗っている大垣さんを持ち上げて起こしてもらうように頼む。すると、すぐさま返事をした二人は大垣さんの肩と足の付近を持ち上げてそのままベンチに大垣さんをねかせる。

 

「ふぅー」

 

「大丈夫? お兄ちゃん?」ペシペシ

 

「うむ」

 

 体の上の障害がなくなったことで起き上がれるようになった俺が立ち上がって体についた砂埃を払っていると、なでしこが寄ってきて安否確認とともに背中の砂埃を払ってくれる。優しい。大好き! 

 

「すんません! 各務原パイセン! 怪我とかしてないっすか?」

 

「なんともないから安心してくれ。大垣さんこそ怪我してないか?」

 

「……あ、あたしはパイセンのおかげで大丈夫っす///」

 

「ならよかったよ」

 

 こちらの身を心配した大垣さんがダンボールに包まれながらも申し訳無さそうに声をかけてきたので、こちらの安否を伝え大垣さんの方の安否も確認しておく。すると、少し顔が赤い気がしたが無事だと言うのでそのことに安堵する。顔打ったとかじゃないよな……? 

 

「とりあえずシュラフの調子はどう?」

 

「あ、あぁー……結構あったかい感じ……です」

 

「(なぜ敬語?)……だってさ」

 

「これなら夏用シュラフでも大丈夫そうだねー!」

 

「せやなー助かったわー」

 

 とりあえず当初の目的であったシュラフの調子を聞くと結構効果があったのか夏用シュラフでも寒くなくあったかいとのことなのでなでしこと犬山さんに振り返りそのことを伝える。まあ、寒さの問題は解決できたが……

 

「「これ、トイレ行くときどうすんだ? (の?)」」

 

「「あ──」」

 

 そうなんだよな、しっかりと何重にもプチプチやらアルミホイルやらが巻き付いているおかげで寒さは問題ないのだが身動きが一切取れないという問題が残ってるんだよな。俺と大垣さんがその問題点について聞くと二人も思い出したように声を出す。

 

「ていうか、バッチリ梱包されてあたしはこれからどこへ発送されるんだ?」

 

「「「……」」」

 

 その後、そのまま部室に戻った(大垣さんは俺が担いで運んだ)俺たちはダンボールに宅配シールや取り扱い注意のシールなどを貼り、なでしこの思いつきで志摩さんにその姿を写真に撮り送りつけるのだった。

 

「なにやってんだあいつら……」

 

 ────────────────────────

 

 とある日の放課後……

 

(今日こそは志摩さんになでしこの件のお礼も兼ねてお土産を渡さなくてはな)

 

 今日は野クルの活動がない日なのでなでしこに用事があるからと先に帰ってもらい、志摩さんにお土産兼お礼を渡すため俺は図書室に来ていた。何で図書室かって? 多分志摩さん図書委員だと思うから。シランケド。

 

「……の本……だったんだー」

 

「……む……けど……」

 

 図書室に近づくにつれて中からの話し声が聞こえてくる。人数は……2人か? 聞こえてきた話し声以外の話し声が聞こえてこないため図書室の人数がおそらく2人であると予測を立てる。志摩さんいるか怪しくなってきたな……。

 

「ねぇ、今週はどこか行くの?」

 

「……」じとー

 

「もうなでしこちゃんに言わないからーっ」

 

「……長野行ってみようかと思ってる。今週バイトだから来週にね」

 

「……こんちはー……」カラカラ

 

 本格的に中からの声がはっきりと聞こえるようになり、志摩さんらしき人の声がしたので図書室の戸を開け一応挨拶しながら中に入る。

 

「……!」

 

「こんにちは、志摩さん……と斉藤さん」

 

「こんにちはー」

 

 中に入るとすぐ近くのカウンターに志摩さんが座っており、そのカウンターの前に980円テントを直してくれた斉藤さんがいたため挨拶をする。とりあえず志摩さんがいたことに安心しつつささっと当初の目的を果たすとする。

 

「早速だけど志摩さん、これこの間のお土産」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「家に持ち帰って冷やして飲んでも大丈夫なやつだから、ぜひ飲んでみて」

 

「わざわざありがとうございます」

 

「斉藤さんもこの間はありがとう」

 

「私もいいんですか? ありがとうございます〜」

 

 まず初めにふもとっぱらでのお土産を志摩さんに渡す。斉藤さんにもテントの件でお礼をしたいと思っていたために買っていた品(志摩さんとは別のもの)を渡しておく。

 

「あと、志摩さんにはこれも……」

 

「? ……これは……カリブーの紙袋?」

 

「この前なでしこを助けてもらったお礼がまだだったからね」

 

 ようやく志摩さんになでしこを助けてもらったときのお礼を果たす。志摩さんの言う通り紙袋に包まれたソレは身延のアウトドア用品店"カリブー"に(自転車で)行って、キャンパーの志摩さんならおそらく喜んでもらえるだろうと思い買ってきたものだ。

 

「……開けてみてもいいですか?」

 

「いいよー」

 

「……! カトラリーセットだ。しかも結構いいやつ」

 

「カトラリーセット? 食器?」

 

「うんそんな感じ……こんないいもの貰っちゃっていいんですか?」

 

「もちろん、志摩さんのために買ってきたものだからさ。それに、志摩さんがなでしこを見つけてくれたおかげでなでしこが大変な目に合わずに済んだんだから、このくらいさせてほしいな」

 

 そう言って志摩さんに笑いかける。そう、志摩さんがいなかったらなでしこがどうなっていたかは本当に分からなかったのだ。だから俺だけでなく桜ねーちゃんひいては各務原家は志摩さんに感謝してもしきれない大きな恩があるんだ。ありがたや~ありがたや~。

 

「……あ、ありがとうございます///」

 

「……(おやおやー?)」

 

「じゃ、とりあえずここに来た目的は果たしたから帰るね。志摩さん、斉藤さん、これからもなでしこのことをよろしくね」

 

「は、はい。さようなら」

 

「はーい。さようなら〜」

 

 さてと、帰りますかね〜。

 

 ────────────────────────

 

 色んな人とフラグが立つ男各務原蒼也。ちな誰とくっつけるかは考えてない。

 

 

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