天官よもぎは知りたい   作:ミルクセーキ

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だんだんここに書くこともなくなってくる……



天官よもぎは喋れる

ある日の校長室

外は大雨が降っており、雨や風が窓に当たりビシビシと音を立てている。

そんな様子の校長室の中には2つの人影があった。

片方は我らが主人公 天官よもぎ。

そしてもう片方はこの部屋の主、校長。

その2人は、校長室にある応接用の席に向かい合って座っている。

普通に考えれば、ある1人の生徒が校長先生に呼び出されて、何か話をされている状況と捉えられる光景である。

 

しかし、今回の校長室の雰囲気に限っては、その様なものではなかった。

その椅子に座っているよもぎは、校長の方をニコニコと笑顔で見つめる。

それだけ聞けば、和やかなムードであると錯覚するが、実際はそうではなかった。

ところで皆さんは、笑顔は本来攻撃的なものであるという話をご存知だろうか?

その話の通り、よもぎが今回浮かべている笑顔は、普段真顔の事も相まって、どことなく校長を威圧する雰囲気を醸し出していた。

一方の校長は、その笑顔を前にして怒られる前の犬かのごとく体を小さくしている。

その様子は本来のら校長と生徒、もしくは依頼主と請負人の関係とは全く逆の様子である。

そんな様子の中よもぎは、徐に取り出したいくつかの紙を机の上に広げる。

 

「校長?」

 

「ハ、ハイ……」

 

「これらの書類……なんだか分かりますよね?」

 

「え、エェト…」

 

校長は、よもぎから漏れ出るオーラにビビってしどろもどろになってしまう。

そんな校長の様子を見ながら、よもぎは表情を変えずに校長へ話しかける。

 

「あぁ!分からないようでしたら一つ一つご説明しますね?」

 

そう言いながらよもぎは笑みを深くし、机に広げた紙を順番に指差しながら説明していく。

 

「これは講堂でのイベント開催の許可証。これはお相手の控室として使用する教室の許可証。これは今回のイベントに関する生徒会予算の許可証。加えて突発的な出費だった為、それに関する理由書。そしてこれは…」

 

よもぎはそれらの説明を淡々とこなし、最後の一枚まで説明し終えた。

最後まで説明する頃には、校長の顔からは冷や汗が止まらなかった。

 

「以上これらの書類全てに校長のサインと許可印が必要なので、お願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「あ、あのーもしかして怒ってマス?」

 

校長はその笑顔の裏にある威圧感から、おずおすとよもぎに尋ねる。

その言葉を聞いたよもぎの笑顔は、より迫力を増していく。

 

「いえ、全く?」

 

「ホ、本当デス?そ、それならよかっ……」

 

「イベントがある3日前にいきなり、フランス校との交流会を知らされて!」

 

「それに関する書類を優と分担しながら準備して!」

 

「それらと同時並行で、エージェントとしての調査書を作成して!」

 

「この大雨の中休日の学校に来て、用意できた書類を教師の方々に見てもらい許可印をいただき!」

 

「最後に校長に許可をいただこうと思って探してもどこにもいなく!」

 

「結局、ポケモンGOをやりに校外に出ていた校長をこの校長室でずっと待っていましたけど、そんな校長に対して怒るだなんて……」

 

(いや、メチャクチャ怒ってるじゃないデスカ!?)

 

校長は、話すたびに増していくよもぎの迫力にビビりながらよもぎに頭を下げる。

 

「スミマセン……ちょっとレイドが始まってシマッテ……」

 

その校長の発言に、よもぎはため息をつく。

 

「だからといって、こんな大雨の中行かなくたっていいでしょう?」

 

「大雨ごときでこのワタシの熱意は止められナイ!!」

 

「あ"?」

 

「ハイスミマセン……」

 

校長のちょっと調子に乗った発言に対して、よもぎは凄みを出して釘をさす。

その様子はよもぎというよりもアンバーとしての側面が滲み出てきてしまっていた。

そんなよもぎに対して、校長は完全に怯えてしまっておりこのままだと会話になりそうにない。

その校長の様子に、威圧を緩めよもぎは声をかける。

 

「ともかく、急にこういう事をするのは辞めて下さい。僕と優以外のメンバーも素材調達等で色々走り回っていたんですから。」

 

しかし、こんな事を言っているよもぎは知らないが、この前日に、よもぎが居ない生徒会室にてフランス校相手へのコスプレ大会であったり、買い出しに行くメンバーを決めるNGワードゲームが行われていた。

まさしく知らぬが仏である。

因みにそのNGワードゲームでは、白銀とかぐやが買い出しに行く事になっていたが、今日のこの天気でその予定も流れてしまっていた。

そんな事を知らないよもぎは、校長に対して再度声をかける。

 

「それと、他のメンバーには会った時謝罪しといて下さいね?」

 

「ハイ……分かりまシタ……」

 

もうここまで来ると、どちらが教師か分からない。

よもぎは、その返事を聞いた後机上の資料を指さす。

 

「とりあえず、早くこれにサインお願いします。結構ありますから、終わるまでここで仕事しておきますので、終わったら声かけてください。」

 

そういうと、よもぎは校長を待っている間に行っていた仕事の続きを始める。

その様子に校長は流石にゆっくりやるとまた怒られそうだと感じ、急いでそれらの書類に目を通す。

しかし、しばらくすると校長は徐によもぎの方を見ながら質問をする。

 

「天官くん。」

 

「はい?もう終わったんですか?まだなら早く……」

 

「今楽しいですか?」

 

その言葉に、よもぎは顔を上がるが、校長はニコニコとこちらを眺めるだけだった。

よもぎはその問いに少し考えた後に答える。

 

「……まぁ新鮮ですよ?今まで無かった体験の毎日なので。なので楽しいか楽しく無いかと言われると楽しいですね。」

 

「それは良かった。」

 

よもぎの答えに満足したのか、校長は優しく微笑む。

よもぎは、その微笑む様子が自分のよく知る上司にダブって見えた。

 

「本当にそういうところも似てますよね……」

 

「ハイ?何か言いまシタ?」

 

「なんでも無いですよ。さっさとやっちゃってください。」

 

そう言うと、よもぎは自分の作業に戻って行った。

校長も、早く終わらせてよもぎを早く帰すために、作業を再開した。

その後校長がその書類の一部にコーヒーをこぼし、また作り直す羽目になるのだが、この時の2人はそんな事を知る由もなかった。


そして、週明けの月曜日

白銀達生徒会メンバーは、講堂の扉の前にぐったりと座り込んでいた。

 

「間に合った〜!」

 

思わずその言葉を口に出した藤原を咎める者は誰もいなかった。

その忙しさは、バイトを何個も掛け持ちをして体力が有り余っている白銀であっても床に座り込む程であった。

よもぎは、顔を上げて目の前に立つ人物に声をかける。

 

「早坂さんも設営の手伝いありがとうございます。」

 

「いやいや全然大丈夫だし!それよりも皆お疲れ様!」

 

そう言い早坂は手に持った、ペットボトル飲料を生徒会の面々に手渡した。

この早坂に設営を手伝ってもらうという案は、よもぎからの提案だった。

早坂はかぐやの近侍として、四宮家別邸の全ての使用人を統括している存在である。

その業務の中にはもちろん四宮家別邸で行う、パーティーなどの設営及び全体への指示出しも含まれている。

その様な仕事ぶりを把握した上で、よもぎはかぐやからだと誘えないからという理由で、今回の設営を依頼した。

かぐやもかぐやで、こっそりと早坂を使って設営の準備をこなそうと思っていた為、このよもぎの提案は渡りに船であった。

しかし、白銀はそれ以外のところが気になって仕方がなかった。

 

(あの早坂という女子生徒……あれ確実にあの昼によもぎが会っていた相手だよな……結局2人はどういう関係なんだ……)

 

そんな気になっている人物は白銀の他にももう1人いた。

 

「それにしても、早坂さんとよもぎ君が仲良いなんて初めて知りました〜。どういう関係なんですか?もしかして〜」

 

そう藤原である。

藤原は自称ラブ探偵として、人の恋路や恋バナに参加するほど恋愛に関する興味関心が高い。

そんな藤原にとって、この2人から漂うラブの波動というものは恰好のターゲットなのであった。

そんな藤原の質問にまるで興味がなさそうな雰囲気を醸し出しながら白銀は耳をそばだてる。

そんな興味津々な藤原に向かって、早坂は笑いながら答える。

 

「庶務君とはそんな関係じゃないし!ねぇ庶務君。」

 

「えぇそうですね。藤原さんが想像している様な関係ではないですよ。」

 

「えぇ?本当ですかぁ?おかしいなぁラブの波動を確かに感じたんですけど……」

 

藤原はその返しに疑問を感じながらも、2人どちらにも否定されてしまうとそれ以上は突っ込まなかった。

そんな様子に白銀は、もやもやした気持ちを抱えながらも、生徒会長としての面子を保つ為に突っ込んで聞くわけにはいかず、更にもやもやを積み重ねていた。

 

そんな風に休憩している生徒会メンバー+αのところに、校長が微笑みながらやってきた。

 

「皆サマお疲れ様デス。いやはや急ナお願いでしたが、よくぞ形にしてくださいまシタ。」

 

そんな校長に向かってキッと睨みつけながら、白銀は口を開く。

 

「まぁこれくらいは……ただ次から直前に言うのは止めてください。他の役員たちに負担をかけるのは俺の方針じゃありませんから」

 

その視線を感じながら、校長は白銀の方を笑って見つめる。

 

「ハッハー!わかってマス!もうしまセンヨ!えぇ本当ニ……

 

校長は、白銀の後ろでこちらを見つめるよもぎの姿から2日前の出来事を思い出し、語尾をすぼめる。

よもぎは、その校長の様子に周りに気づかれないように小さくため息をつく。

 

「で、ではミナサンも楽しんでクダサイ!」

 

校長は気を取りなおす様にそう言うと、背中を押して、白銀達を講堂の中に入れた。

その講堂内の和気藹々と盛り上がっている様子を見て、白銀達は安堵の表情を浮かべる。

 

「良かった。恙無く(つつがなく)盛り上がっているみたいだな」

 

「えぇもとより日本に興味のあるフランス校の生徒と、フランス語を習っている有志希望のパーティーですから。」

 

そう言うかぐやに対して白銀はふとある疑問が頭をよぎった。

 

「そう言えば四宮はフランス語いけるのか?」

 

「いえ、あまり得意ではないですね。会長は?」

 

そのかぐやの言葉に白銀は、得意げに鼻を鳴らすと口を開く。

 

コマンタレブーマドモアゼル。(ご機嫌ようお嬢さん。)ジュマペルミユキ シロガネ。(私は白銀 御行)

 

「おぉ、流石です。これなら通訳もいらなそうですね。」

 

そう言い、かぐやは小さく拍手をする。

そんなかぐやの様子に白銀はより得意げな表情を見せる。

 

「いやなに、フランス校の生徒が来ると聞いたものだからな。少しハンドブックで予習しただけの付け焼刃だよ。実践では使えんさ。」

 

「そんなご謙遜を……」

 

そんな会話をしている二人のもとにフランス校の生徒がやってきた。

 

『本日はお誘いいただきありがとうございます。』

 

「えっと……」

 

そう言いフランス校の生徒は深々と頭を下げる。

白銀は突然のフランス語にパニックになり、ポケットに忍ばせたパンフレットを取り出そうとする。

しかし、そんな白銀の一歩前にかぐやが踏み出し、フランス校の生徒に向かって話し始める。

 

『遠方からお越しくださり、誠にありがとうございます。こちらにいる間に忘れらない思い出を作って頂けるよう、できる限りのサポートをさせていただきます。何かありましたらおっしゃってください。』

 

『ありがとうございます。』

 

そんな会話を聞いて白銀は愕然とする。

 

(噓つき!あまり得意ではないって言ってたのに!ハンドブックの付け焼刃程度で、得意げに自慢してた自分が一番恥ずかしいわ!)

 

そんな事を考えながら白銀は、震えた声でかぐやに話しかける。

 

「な、中々……達者ではないか……」

 

「いえいえ全然ですよ。ネイティブの発音は難しいですし。やっぱり鼻母音は普段から使わないとどうしても綺麗に出ませんから。」

 

(鼻母……?いや、なに?)

 

因みに鼻母音というものは、母音を発声する時に鼻からも息を出す形になる母音の事を言い、日本語の例としては一部の単語(恋愛等)に入っている「ん」などがそれにあたる。

しかし、こんなものは知らない人間からすると全く意味の分からないものであり、それはもちろん白銀も同様であった。

白銀は、逃げるように藤原の方へ向かう。

 

「藤原書記……どうやら俺達の出る幕はないみたいだ……」

 

『日本コンテンツのほとんどは国内市場に焦点をあてており、その為日本は海外で宣伝する方法を確立できていません。輸出向けの価格高騰、画像ライセンスの値引き販売の問題も……』

 

(!?)

 

しかし、そんな白銀の考えも虚しく藤原はペラペラとフランス語を喋っている。

その内容は白銀には分からないが、先ほどの会話よりも高度なものであることが伝わってきた。

 

「藤原書記……喋れたのか?」

 

「はい!母が外交官だったので少しだけですが。小さい頃から叩き込まれたので、むしろ日本語に苦手意識あるくらいですよ~」

 

そう藤原はにこやかに話すが、白銀の内心は全然にこやかなものではなかった。

 

(そうだよもぎは?)

 

そう思い立ち、藁にも縋る思いで白銀はよもぎの方を見やる。

 

『あぁそれじゃあ宝石関連の?』

 

『はい。うちの会社では主に宝石を取り扱っております。とは言っても貴女がつけられているような、フランスのジュエリー関連の歴史には遠く及びませんが。』

 

『あら、口がお上手ね?そうこの宝石も……』

 

(そうだった!あいつ編入だけど、ちゃんとしたとこのお坊ちゃんだった!)

 

白銀は、そのことを思い出し頭を抱える。

よもぎは、宝石を扱う会社の一人息子で、親は海外にいるため、日本で一人暮らし。

そんな親の仕事の影響で、海外にも明るいという()()である。

実際のところ、エージェントとして様々なところに潜入するために学習したものであり、先程の会話も潜入用の定型文を少しアレンジしたものであった。

 

(嘘だろ!もしかしてこの中でフランス語喋らないの俺だけ!?)

 

その考えに行き着いた白銀は頭を抱える。

そんな絶望している白銀から離れたところで、よもぎを見つめる人影があった。

そんな人影に対して、その隣にいる女性達は話しかける。

 

「愛。熱い視線送ってるね~」

 

「もしかして嫉妬?」

 

「っちょそんなんじゃないし!」

 

その人影とは、愛たちいつもの三人組であった。

今回、愛はパーティー会場の設営の関係で招待されたが、本来他2人は来るつもりはなかった。

しかし、よもぎに招待され、面白いものが見れるかもと愛の付き添いできたのであった。

 

「それにしても場違いなところ感すごくね?」

 

「私たちフランス語喋れないしね~」

 

「それ!」

 

そう3人は笑いあうが、この中に1人噓つきが混ざっている。

それは、我らが早坂愛さんである。

かぐやと同じ教育を受けた早坂が、フランス語を喋れないわけがないのである。

しかし、学校ではそこまで頭が良くないギャルとして売っているため、安易にフランス語が喋れるところを見せるわけにはいかなかった。

そして、話題はよもぎに戻っていった。

 

「それにしても色んな人と話しているよね天官くん。綺麗な女の子ともしゃっべてるし。」

 

「本当に。というか天官くん何気にスペック高いよね~女子人気も意外と高いし~」

 

そう言って2人は意味ありげに愛の方を向く。

その視線にあきれた表情を返しながら、愛は2人に話しかける。

 

「だから庶務君とはそんなじゃないし!」

 

「でも、それにしては熱視線送ってない?」

 

「だ・か・ら~!」

 

「うわ愛が怒った!」

 

早坂は、こんな風に弄られるのなら来るのではなかったと思いつつ、その会話を心のどこかで楽しんでいたのだった。

 


 

一方でよもぎは、何人目か分からない相手と話をしながら周りの様子を観察していた。

これは、よもぎの職業病のようなもので、エージェントとしてこういうパーティー会場にて怪しい動きをする者がいないかを観察する癖がついてしまったのである。

そのせいで、よもぎはいつもよりも周囲に気を張っていた。

 

(他言語で色んな人と喋っているとつい仕事気分が抜けませんね……)

 

そう思いながら、一息つく為に近くの机から水を取ろうと、移動したよもぎの前に水の入ったコップが差し出される。

 

『良ければどうぞ』

 

『あ、あぁすみませんありがとうございま……』

 

そう言って見上げたよもぎは、そのフランス校の女子生徒の顔を見て言葉に詰まった。

その生徒は、何も言わずによもぎの方を見てニコニコと笑う。

よもぎは、ため息をつきその生徒に話しかける。

 

『……久しぶりですね?こんなところで会うなんて思ってませんでした。』

 

『そうですか?私はあなたに会いに来たんですけど?』

 

『……どうやって?』

 

『招待されてですよ?』

 

そう言われたよもぎは、頭の痛そうな顔をする。

そして、その様子は早坂達もばっちりと見ていた。

 

「あれ、なんか親しげじゃない?天官くんとあの人」

 

「ね?遠すぎるからなに話してるのか分からないけど。」

 

その親しげな様子に早坂を除く2人は大盛り上がりだった。

 

「これってやっぱりそういうことじゃない?ねぇ愛は……」

 

そう言って振り返った火ノ口達の目には寂しそうによもぎを見つめる愛の姿が映った。

早坂自身自分がそんな顔をしていることには気づいていないようで、何の反応もない。

そんな中早坂は、その光景に何かモヤモヤとしたものを感じていた。

 

(あの親しげなあの人は、庶務君とどういう関係なのでしょうか……?いや、これは別に庶務君が好きだとかじゃなくてただ単に関係が気になるだけで……というか何で私勝手に悲しくなってるんでしょう……?)

 

その暗い感情に引っ張られてか、早坂の顔は暗くなる。

 

「愛……」

 

そんな様子の早坂を2人は茶化すことも出来ずに見つめることしかできなかった。


 

そして、時間は経ち交流会はお開きになり、早坂はその撤収作業を手伝っていた。

途中、校長の用意した刺客とかぐやの、壮絶な人格否定合戦が起きた以外は平和そのもので、交流会は大成功に終わった。

しかし、早坂の心の中にはまだ暗雲が立ち込めていた。

そんな早坂の前に、よもぎがペットボトル飲料を持ってやって来る。

 

「お疲れ様です。これ良かったらどうぞ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

火ノ口たちは先に帰っており、更に幸運なことに周囲に人影はなく、早坂はギャルモードを解除して応対する。

 

「その、お疲れ様でした。」

 

「いえ、こちらこそ。流石にあの人数と喋ると疲れますね……」

 

そんな事を言いながら、よもぎは、手に持ったペットボトルを飲む。

そんな様子のよもぎに早坂は意を決して質問する。

 

「あの一つ聞いていいですか?」

 

「はい?」

 

「あの途中に話してたフランス校の人。結構お話されてましたが、お知り合いですか?ずいぶん親しげでしたけど」

 

そう聞くと、よもぎは体をビクッと反応させて早坂の方を向く。

 

「あーやっぱり変でしたかね……?」

 

「まぁ他の人より親しそうだなと……それで?どういうご関係で?」

 

そう問う早坂は自分の中で先ほど感じたモヤモヤが大きくなるのを感じた。

それを表に出さないように気を付けながら、早坂はよもぎの方を見た。

その様子に、観念してよもぎは話し始める。

 

「あーその……お恥ずかしい話なんですけど……あれ、私の上司なんです。」

 

「へ?」

 

その予想外の言葉に早坂は目を丸くする。

そんな早坂に向かってよもぎは話し続ける。

 

「ほら、良く愚痴っている上司がいるじゃないですか。あの人変装が大の得意で、良く変装しては部下をおちょくったりもするんですけど、まさかこんなところにも来るとは……大体僕が任務遂行中だというのに、あんな不審な行動を……」

 

「えっでも確か男性ですよね……?」

 

そう早坂が聞いていたその人物は男性であった。

しかし、あの場で喋っていたのは紛れもなく女子生徒で、しかもかなりの美形であった。

その為早坂の頭の中には、ハテナマークがいっぱいになる。

 

「それなのにあそこまで変装できるから僕の上司なんです……」

 

そう話すよもぎの姿は、年相応なものであった。

その様子を見て、呆然としていた早坂は思わずクスッと笑う。

それと同時に早坂は自分の中にあったモヤモヤが消えてなくなるのを感じた。

 

(良かった……)

 

そして、そう感じた後、早坂にふと疑問が生じた。

 

(良かった?何で私は、喜んで……?それと何でモヤモヤしてたんでしょう……?)

 

どうして早坂が喜んでいるのか、なぜモヤモヤと感じてしまったのか。

その早坂の疑問に早坂自身の答えが出るのはまだもう少し先の話となる。




因みにフランス語のシーンは、原作雰囲気翻訳でございます。
なので厳密には違うかもしれませんので悪しからず。
次話 早坂愛は垣間見る
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