天官よもぎは知りたい 作:ミルクセーキ
後なんもしなくても生きてるでだけで偉いって、日給5万くらいもらえないかな……
あぁひなが一日小説書いてたい……
よもぎは激怒した。
必ずかの大変迷惑な自分の上司に一言文句を言ってやらねばならぬと決意した。
交流会の撤収作業も無事終わり、メンバーと別れ、家に着いたよもぎは真っ先に仕事用の携帯を取り出し件の上司に電話していた。
本来なら、解散した後すぐにでも文句を言ってやりたいところだったが、流石にこんなくだらない事で、外でアンバーとしての顔を出すのはためらわれ、家に着くまで我慢していたのであった。
そして、電話をかけて数コールの後、通話状態になる。
『あれ?さっき会ったばかりなのに電話?何か用事かな?』
「何か用事かなじゃありませんクォーツ。あの場ではあまり言えませんでしたが、この場を借りてもう一度言わせてもらいます。いったい何のつもりですか!?」
電話口から聞こえるその何事もないかのような上司の声に、よもぎの怒りは爆発した。
「僕は、一般生徒天官よもぎとして、あの学校に潜入してるんです!そんな中で不必要な接触など!現に一部の生徒には感づかれてましたからね!」
その感づいた生徒である早坂は、よもぎが考えている様な関心の持ち方ではなかったのだが、そんな事を知らないよもぎは、早坂に不信感を抱かせたのではないかと内心ドキドキしていた。
もし、協力関係にある早坂に不信感を持たれたとしたら、今後のミッション遂行に支障をきたす。
そう考えたよもぎは、あの場ですぐ、早坂にその女子生徒の正体を明かしたが、そんな出来事も相まってクォーツに対する怒りが限界突破していた。
そのよもぎの怒った声にクォーツは先ほどと、微塵も変わらぬ調子で返す。
『いや、だって気になったし。それに実際僕はフランス校の生徒に気づかれずに侵入出来てるんだよ?ここは、感心してくれてもいい所だけどね?』
「だってもへちまもありません!それに、今回の件には感心出来るような所は一つもありません!」
『全く……本当に君は遊び心ってものがないよね?』
「そんなもの任務遂行に必要ありませんから。」
『もっとゆとりを持って生きなよ?そんなカッカしてたらすぐに禿げちゃうよ?』
「誰のせいだと思って……!」
そのクォーツの、ちゃらんぽらんでいい加減な物言いに、怒髪天を衝くような気持ちであった。
(今すぐにでも、本部に向かってそのムカつく顔面に鉛玉ぶち込んでやりましょうか?)
そんな物騒な考えが、頭によぎったよもぎの様子を知ってか知らずか、クォーツは口を開く。
『まぁまぁ許してくれよ。学校での君の様子を見てみたかったのさ。』
「……報告書で都度都度報告しているはずですが。」
『君の報告書、硬っ苦しくて読む気起きないよ?前に言ったでしょ?もっと面白味を持たせてくれないとさ……』
「それはそれは……気が利かず申し訳ありませんでした……」
そのクォーツの言葉に、よもぎは怒りを沸々と再燃させる。
この男学習能力というものがないのだろうか?
声色から、その怒りの雰囲気を感じ取ったのか、クォーツは軽く咳ばらいをして話を続ける。
『い、いやそれにしても楽しそうな仲間達が多いみたいで何よりだよ。特に君の協力者の早坂さんだっけ?上手い擬態だよね?君から聞いてなかったら騙されるところだったよ。』
「はぁ……」
『後君の友人の白銀君。あれだけの罵声を浴びても笑顔で受け流すとは……いやー器が大きい子なんだね?』
そのいきなり学校生活での知り合いの話をクォーツが始めた事から、この話が長くなることを察知したよもぎは、早急にこの会話を締めることにした。
「あの、もう切りますね?あまりふざけて他の部下の方に迷惑をかけないように。それでは。」
『あぁちょっと待って!』
そう言ってクォーツはよもぎにある質問を投げかける。
『今楽しいかい?』
「それは……」
そのクォーツの質問に一瞬黙ったよもぎであったが、すぐに口元に笑みを浮かべて答える。
「えぇ。少なくとも本部で貴方の我儘をこなしているときよりはよっぽど。」
『そうかい。それは悪かったね?次からはもっと面白そうな物を用意しておくよ。あっそうそう最近パイプオルガンとか始めてみたんだけど……』
その言葉から、煽るつもりが余計な事を言ったことに気づいたよもぎは、急いで電話を切ろうとする。
「すみません。明日も早いのでそれでは失礼します。」
『あ、そう?分かったよそれじゃあこの話は今度にしよう……あっそうだ』
よもぎは、完璧に逃げ切ることが出来なかったことから、数秒前の自分の発言を呪う。
そして、そのクォーツの発言の続きを待つ。
クォーツは先程までと変わらぬ様子でよもぎに、話しかける。
『そろそろ動きがあると思うから。』
「……了解しました。そろそろというのは?」
『うーん早ければ明日。遅くても今週中かな?また、オペレーターから連絡あると思うから。それじゃあ』
そう言って、電話は切れてしまった。
よもぎは、いきなり切れた電話を暫く見つめ小さく息を吐いた後、明日から起きるかもしれないという、
一方四宮家別邸
こちらでは、ある近侍が先ほどの出来事について悩んでいた。
(うーん……何故私はあの時……)
「ちょっと早坂?貴方話聞いてるの?」
かぐやはそう不審そうに早坂に問いかける。
交流会から帰った後かぐやは、自室で今日あった出来事を早坂に話していたところだったが、その早坂はあらぬ方を向いて自分の話を聞いていなそうだった為、思わず声をかけた。
思えば交流会から帰っている途中から、早坂はどこか上の空であった。
その件の早坂は、かぐやからの問いかけによって、意識を思考の海から現実に引き戻された。
「す、すみません。少し考え事をしてしまっていて……」
早坂は珍しく、少々焦った様子でかぐやに頭を下げる。
その早坂の様子に、かぐやは大きなため息をついた。
「はぁ……貴方最近四宮家の人間としてたるんでいるんじゃないかしら?」
「はい?たるんでるですか?」
早坂は、その言葉が聞き捨てならなかった。
去年の秋口にかけてから、酷くなった主人の無理難題をここまでこなしてきたと言うのにまさかそんな事を言われるなんて思ってもみなかった。
思わず、かぐやに対して言い返す。
「確かに今回は考え事をしていて、反応が悪くなった事は認めますけどそれだけでたるんでると言われるのは些か……」
「……夜の天官くんに対する電話だんだん長くなっているそうですね?」
「な!?」
早坂は、いきなりのかぐやからの指摘に言い返していた言葉も出てこなくなる。
その姿を見て、かぐやは少々呆れた顔で話を続ける。
「あーそれと?最近は、天官くん用のお弁当。一部は貴方が自分で作っているそうじゃないですか?」
「ど、どうしてそれを……」
(その事は、かぐや様が聞いたらめんどくさくなるから、絶対に話さないようにとコック長に言いつけてたはず……!)
早坂は、知るよしのない情報をかぐやが握っていることに対して驚きを隠せない。
その早坂の姿に、少し得意げになりながらもかぐやは口を開く。
「私に隠し事が出来ると思わない事です。コック長に聞いたらすぐに教えてくれましたよ?」
(コック長!)
哀れかな、人の子はいつの世も権力にはかなわない。
実質的に四宮家別邸の使用人に関する権利を握っている早坂は、コック長の来月の給料を幾分かカットすることを決定した。
とんだとばっちりである。
そんな様子の早坂に、呆れた視線を送りながらかぐやは口を開く。
「別に貴方の交友関係にあれこれ言うつもりはないですけど……男性に対してそこまで熱を入れるというのはいかがなものかと思いますけどね……?」
そのかぐやの様子に、早坂は言い返すことが出来ない。
そのかぐやから、語られた言葉はどれもまぎれもない真実であったため、否定する所が見つからなかったのである。
「お、お言葉ですけど、それだとしたらかぐや様も随分と腑抜けたご様子で?」
しかし、そのまま黙っておくことは出来なかった早坂は、かぐやに対して反撃を開始した。
「私ですか……?私はそんな……」
「人間ってあんな暴言がすらすらと出てくるものなんですね。あれが淑女の姿と聞かれるとかなりの疑問が残りますが」
「あ、あれは会長がひどいことを言われてたからで!」
その予想外の攻撃にうろたえるかぐや。
早坂はここぞとばかりに畳み掛ける。
「それに、いくら好きな人に映画誘ってほしいからと言ってチケットの懸賞自分で細工する人がいますか?」
「あ、あれは映画に誘いたいのに誘えない会長のために……というか好きな人って何ですか、好きな人って……別にそんなんじゃ……」
「そう言えば、庶務君との関わりが出来たのも、会長関係でかぐや様が調査を命じたからですよね?」
「だからあれは会長がじゃなくて生徒会のメンバーとして……」
早坂の怒涛の攻撃に、このままだと分が悪いことを察知したかぐやは、早急に話を終わらせるように動く。
「と、とにかく!今後は四宮家の人間らしく気を付けて行動する事!それが分かったらすぐに部屋に戻りなさい!」
そう言うとかぐやは無理矢理早坂を部屋から追い出し、扉を閉じてしまった。
(逃げましたね……)
そう思いながらも、早坂は自室に向かう。
しかし、かぐやと言い合いをしたことによって考えがクリアになったのか、自室につく頃には、先ほどのよもぎとの出来事に結論を出すことに成功していた。
(あれは、自分の協力者が不審な人物と交流しているかもしれなかったことに対する不信感と、実際にはしていなかったことに対する安堵に違いありません。あースッキリしました……)
そう結論を出してスッキリした早坂は自室に入っていった。。
しかし、この時点で早坂のこの考え方に、以前と変化が起きていることに早坂は気づいていなかった。
そして、次の日の放課後
早坂は雨の降る外を眺めながら、途方にくれていた。
というのも本来今日早坂はかぐやと一緒に車で帰るつもりでいた。
その為、雨の中傘をさして帰る友人たち見送り、帰りの車を手配するように四宮家別邸に連絡した。
しかし、別邸においてある車が
更に、かぐやからの連絡で今日は自分で帰るため、早坂は一人で帰って欲しいと言われてしまった。
今日早坂は雨が降ることを知っていたが、珍しく傘を忘れてしまった。
しかし、どちらにしろ車で帰るだろうと思い、取りに戻ることもせずに放課後を迎えてしまったのである。
(どうしましょうか……どこかで傘を買うにしろ借りるにしろ、雨に濡れないといけませんし……)
雨に濡れる。
これが男子だったら、苦肉の策としてどうにか走って帰るという方法も取ることが出来ただろう。
しかし、早坂はおしゃれを楽しむ花の女子高生。
どんなことがあろうと雨の中で全力ダッシュという選択肢は取りたくなかった。
(とは言え、この雨も降りやみそうにないですしね……)
そう早坂の言葉に賛同するかの如く雨脚は強くなるばかりであった。
(仕方ない、せめてどうにか出来るだけ雨に濡れないルートで……)
その最終手段を取ろうとする早坂に対して、その後ろから声がかけられる。
「あれ、早坂さんどうしたんですか?」
「あ、庶務君ですか。」
その声の主とはよもぎであった。
しかし、今の時間本来だったらよもぎは、生徒会としての仕事を行っているはず。
その点について早坂が質問してみると、どうやら今日は仕事がなかったため、オフという事になったらしい。
「だからかぐや様もあんなことを……」
「で、どうしたんですか?四宮さんも玄関の方に向かったので早坂さんももう帰ったものかと。」
その疑問に対して、早坂は正直に今自分の身に起きていることを説明した。
それを聞いたよもぎは、心配そうな顔で早坂の方を見る。
「それは大変ですね……他に帰る手段とかは……?」
「いや……まぁどうにかしますよ。少しくらい濡れても誤差ですし……」
本心では気にするが、早坂はよもぎに心配させまいと咄嗟に噓をつく。
その様子を見てよもぎは少し考えてから口を開く。
「ちょっとついてきてくれませんか?」
「?」
そうして連れてこられたのは、学園の地下にある教員用の駐車場であった。
早坂はそこの入り口で待っているようによもぎに言われ、おとなしく待っていた。
(駐車場って……いやいやまさかそんな……)
早坂はある想像が頭に浮かんだが、咄嗟にそれを振り払いよもぎを待った。
すると、程なくして車のクラクションが聞こえる。
「お待たせしました。早坂さん」
その声にまさかと思いながら、そのクラクションが鳴った方を振り向くと、車の運転席にスーツに身を包んだよもぎが座っていた。
そのまま、そのシルバーの車を早坂の隣まで運転すると、よもぎは自分の左隣を指しながら早坂に声をかける。
「さぁ乗って下さい。送ります。」
「いやいやいや!何当然のように車に乗っているんですか!?」
その自然さに早坂は声を大きくしてツッコミを入れる。
その様子に首を傾げていたよもぎであったが、しばらくして納得がいったかのように早坂を見る。
「あぁ!免許とかでしたらもう持ってますし、車の運転も慣れてるので大丈夫ですよ?安全運転でお送りします。まぁ免許は偽装ですけど……」
「いやそうじゃなくて!いやそこも何ですけど!」
早坂は、真面目な人間だと思ってたよもぎが急にこんな行動をとったことに対して驚きを隠せない。
そもそも、異性の同級生が傘がなくて困っているから車で送っていくという発想が、大学生ではなく高校生の口から出ていることに驚きである。
しかし、早坂はそのよもぎの様子から、完全に善意で言ってくれたことを察し、大人しく車に乗り込む。
中は2人しか乗るスペースがなく、少々狭く感じるが、席に座ると早坂はいつも自分が乗っている車と同じような感覚がした。
このことから、この車は四宮家が使っている物と同じくらいの高級車であると推測した。
そして、早坂が乗ったことを確認すると、よもぎはアクセルを踏み、低いエンジン音をたてながら発進した。
早坂は、その車の速さに少々驚きながらも、よもぎに質問をする。
「これ右ハンドルですけど外車ですか?」
「えぇイギリス車です。なので外車にしては珍しく右ハンドルなんです。」
そういうよもぎは、いつもより顔を引き締めながらハンドルを握っている。
早坂は、そのいつもと違う様子に少し、ドキドキしながらも再度よもぎに質問をする。
「この車かっこいいですね……これは庶務君が?」
「いえ、上司の趣味です。何でもエージェントが乗るならこの車にしなきゃと。」
そう言うよもぎの顔は、昨日交流会の後で見た顔にそっくりだった。
その先ほどまでの顔とのギャップに驚きながらも、早坂はクスッと笑ってよもぎに問いかける。
「庶務君の事気にかけてるんですね?その上司さん。」
「そうでしょうか……?まぁ色々貰ったのでそこは感謝していますが……」
そこまで行ったところでよもぎの携帯がピリピリと音を立てる。
よもぎは、早坂の方を見て目線で謝る。
早坂が気にしてないという事を目線で伝えると、よもぎは片手で携帯を取り出し、そのまま出る。
「はいもしもし。はい……なるほど……了解。」
そうよもぎが答えた瞬間、早坂は息がつまるような重圧感を感じた。
恐る恐る、早坂が横を見るとよもぎが今までに見たことがない恐ろしい表情を浮かべていた。
特に恐ろしいのは目で、そうそれはまるで、この世の全てに興味がないような目であった。
そのままよもぎは早坂の方を見やる。
その瞬間。早坂は、ひゅっと自分の息がつまるのを感じる。
(そんな目で見ないで……)
早坂は今まで感じたことがない恐怖に襲われ、自然のうちに身構える。
しかし、この場では誰も気づいていなかったが、その体は静かに震えていた。
よもぎが早坂を見ていた時間は一瞬であった。
すぐに視線を前に戻すと、電話先の相手に向かって話しかける。
「すみません。20分後に合流します。それから、現在の僕の地点から、目的地まで交通規制をアンバーの名前で要請します。はい……はい……承認ありがとうございます。それでは。」
そう言ってよもぎが携帯を切ると、一気に目の前の道路の信号が青に変わる。
そのまま車は発進したが、そこから四宮家別邸に着くまで先程のような会話は一切行われなかった。
片方は気持ちを切り替えたため、片方は恐怖のため……
車内には、重い空気が立ち込めたのであった。
四宮家別邸の近くに着くと、よもぎは車を路肩に止める。
あの電話以降、車が信号に引っかかることもなく、早坂はいつもよりも早く四宮家別邸に着くことが出来た。
しかし、早坂はそれを素直に喜ぶ事が出来なかった。
「それじゃあまた明日学校で。」
よもぎは早坂の方を一瞥しそう短く声をかけると、エンジン音を立てて走り去っていった。
早坂はそのよもぎの言葉に何の返事もすることが出来ず、その車の走り去る方向を見つめることしかできなかった。
「あれが……庶務君……」
分かっているつもりでいた。
しかし、早坂はよもぎの事を何も知らなかったのである。
特にあの恐ろしい、全てを拒絶するようなあの目を。
早坂はその日、昨日よりもミスを連発したが、その雰囲気にかぐやは、何も言うことが出来なかった。
注 未成年の運転は法律で禁止されています。この小説は未成年運転を助長するものではございません。
コンプラの厳しい昨今一応書いておきます。
追記6/20までお休みいただきます。
次話 生徒会は涼みたい。