天官よもぎは知りたい   作:ミルクセーキ

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1週間ぶりの投稿!
リフレッシュしてきたんでここから、また投稿頑張っていきます!
(でもここからも忙しくなるから、たまに休むかも……)


生徒会は涼みたい

さて、交流会という突発的なイベントを乗り越えた生徒会。

後は、夏休みまでまっしぐらと考えていた面々であったが、そんな彼らに未曾有の危機が訪れていた!!

それは……

 

「この部屋暑すぎます〜!」

 

そう!絶望的なまでの猛暑!

昨今の異常気象のせいで、まだ6月頭だというのに真夏日を迎えるなどという事態が起きていた。

秀知院学園でも、早くから冷房を入れ、生徒職員が過ごしやすい様にしていた。

それはもちろん生徒会室も同じであり、本来なら暑さなど感じずに、優雅に生徒会の職務をこなす事が出来ているはずであった。

しかし、現在生徒会室の空調は故障しており、業者もこの時期忙しく、すぐに来る事は出来ないということであった。

その為現在生徒会室では、備品として用意されていたサーキュレーターをガンガンに回して、どうにか涼しくなる様にしていた。

しかし、サーキュレーターにも限界はあり、生徒会室は外よりはマシだが、かなり暑くなっていた。

それに耐えられない藤原は、作業用の机に腕を伸ばした状態で突っ伏す。

それを見たかぐやは諭す様に藤原に話しかける。

 

「藤原さん?確かに暑いですけど、そう言ってもかえって暑くなるだけですよ?」

 

「かぐやさ〜んでも〜」

 

そう言って藤原は顔を上げ、隣にいるかぐやの方を見る。

見ると、かぐやの頬にもじんわりと汗が滲んでいた。

さしものかぐやであっても、暑いものは暑い。

淑女として、藤原のように騒ぎ立てる事はしないが、内心暑くて騒ぎ出したいのを我慢していた。

もしここが自室であったら、早坂に文句の一つでも言っているところだろう。

藤原は、かぐやに賛同が得られないと事を察すると、今度は自分の椅子に座って作業をしている白銀の方を向く。

 

「会長は暑いと思いますよね〜?」

 

「……まぁ暑いが、そこまで騒ぐ事でもないだろう、藤原書記。生徒会メンバーとしてどんな状況にも対応を……」

 

「いや、そんなに汗かいているのに説得力無いですよ会長!」

 

そう藤原が言う様に、白銀はここにいる誰よりもダラダラと汗をかいていた。

それもそのはず、白銀とよもぎ以外の面子はもう夏服に着替えており、かなり涼しげな格好をしている。

一方の白銀は、生徒会長としての証である純金飾緒を身につける為に、年中学ランを身につけなければならない。

そのせいで、白銀の汗は止まらず、しかし、かぐやの手前で弱気な発言をするわけにも行かず、その暑さに耐えていた。

 

「いやいや、本当!こんな暑さどうってことないさ!なぁよもぎ?」

 

「まぁ耐えられるものではありますね。」

 

その強がりは、いつでも続いていくものではなかった。

その為、白銀はよもぎに声をかけることによって視線をそちらに向けることにした。

その白銀の思惑通り、藤原は目の前に座るよもぎの方に視線をやる。

 

「……よもぎ君も暑そうじゃありませんね?」

 

「えぇ。これくらいでしたら。」

 

そう言うよもぎの顔は、長袖の冬服に身を包んでいるにもかかわらず、他のメンバーと違い涼しげな顔をしていた。

その様子に、藤原は訝し気な視線をよもぎに送る。

 

「よもぎ君って本当に人間ですか?」

 

「何ですか急に?」

 

「だって訳わからないの食べてますし、全然暑がりませんし、超がつくほどリアリストですし!人間らしさが全然無いですよ!まだロボットって言われた方が納得出来ます!」

 

「なんか凄い勢いで罵倒されたのですが……」

 

その藤原のあんまりな物言いによもぎは苦笑いをする。

他2人は、その失礼な物言いの藤原をやんわりと注意する。

 

「藤原さん。流石に天官くんが変わっているからと言って、人間らしさが無いだなんてそんな事言っては失礼ですよ?」

 

「そうだぞ藤原書記。よもぎは確かに常識無いところもあるが、立派な生徒会のメンバーだ。そんな事言うとよもぎも傷つくぞ?」

 

「……なるほど、皆さんが僕の事をどんな風に見ているのか良く分かりました。」

 

よもぎは、その注意に見せかけた罵倒に、顔を引き攣らせる。

もちろん本人達にその気は無く、言った後に「あっしまった」という顔をするが、言った言葉の訂正は出来ない。

藤原はあわあわする2人の様子を見てニンマリと顔を歪める。

 

「なんだ〜2人も思ってたんじゃないですか〜」

 

「いや、これはそうじゃなくてだな!よもぎも違うからな!」

 

「そ、そうですよ天官くん!貶そうとかそういう気があったわけではないです!」

 

「別に大丈夫ですよ。人と違うところがあるのは理解しているつもりなので。」

 

その2人の訂正にそう返すと、よもぎは目の前のパソコンで作業を再開した。

そのよもぎの気にしてなさそうな様子を見て、藤原はため息をつく。

 

「そーゆーところもですよ!変わってるって思われるの!なんか、苦手な物とか嫌いな物の1つとか無いんですか?」

 

「苦手なものですか……?」

 

そう言われたよもぎはしばし考えるが、特に思い付かない。

 

「すみません……あまりそう言うのは思いつかなくて……」

 

「そんな訳無いじゃないですか!人なら苦手な物の1つくらい……」

 

藤原はそんなよもぎの反応にムキになったのか、問い詰める。

そんな様子の藤原を白銀は嗜める。

 

「落ち着け藤原書記。そこまで躍起にならなくても良いじゃないか。」

 

「……それもそうですね。あーもういっぱい喋ったらより暑くなってきちゃいました!」

 

そう言い、藤原は手うちわで顔を仰ぐ。

白銀はその様子に、なんとなしに藤原とかぐやの方を向く。

その2人は、汗をかいていることも相まってか、どこか扇情的な雰囲気をまとっていた。

モンスター童貞の白銀にとってその光景は片方が思い人で無かったとしても、とても魅力的に映った。

 

白銀はその光景に生唾を飲み込みながら、赤くなった顔を隠す様に2人から顔をそらす。

幸い、白銀から見て2人は何も気づいていないようで、白銀は一先ずホッと一息をついた。

そんな白銀の葛藤を知らずに、藤原は何か思いついたようにパンッと胸の前で手を合わせる。

 

「あっそうだ!涼しくなるために怪談しましょうよ!」

 

怪談!

それは古くは平安時代の頃からもあった、俗にいう怖い話の総称である。

有名どころで言うと、四谷怪談、番町皿屋敷、牡丹灯籠などが挙げられる。

しかし、この場での怪談というものは、そのような怖い話というよりは、怖い話をしてその気味の悪さから涼もうというニュアンスの物であった。

 

その話を聞いた各々の反応はまちまちであった。

まず、かぐやは表面上不安そうな顔をしながら、藤原の提案を聞いていたが、内心ガッツポーズしていた。

 

(その通り、よく言ったわ藤原さん!あなたのその言葉を待ってたのよ!)

 

というのもその藤原の発言は、幾分かぐやによって誘導されたものである。

今回、かぐやは白銀を篭絡する為にある計画を立てたのである。

その名も「怖がる女の子は可愛い作戦」

今回の作戦は、怪談によって怖がる少女を演出することによって、白銀をメロメロにするというものだった。

その為には、白銀と一緒に怪談話をする方向に話を持っていく必要性があった。

かぐやは、その為に近侍や使用人を用いて藤原の近くで、怪談噺に関する話を何度も出し、藤原の頭の中に怪談話の印象を植え付けた。

そして、その思惑通り、今回藤原は怪談の話題を出したというわけである。

かぐやは、内心ニヤリと笑う。

 

(さぁ会長?今日こそ告白してもらいますからね?)

 

一方その白銀は、心の中で苦々しい顔をしていた。

 

(くっ藤原書記……余計な事を……)

 

白銀は、ホラーに関して苦手というわけではないが、その本来のビビりの気質が影響してそこまで得意というわけではなかった。

そして、友人とそのようなものをすることもなかったため、怪談話のレパートリーも数少なかった。

 

(そう、この様なテーマにおいて話題を持ってない者に与えられるのは死!)

 

そう考えている白銀は、かぐやに話題の出せないカッコ悪い男と思わせないために、その頭をフル回転させ始めた。

また、そんな様子を横目に見ながらよもぎは、カタカタとパソコンを打ち続けていた。

 

「怪談か……お、面白そうじゃないか……」

 

「怪談……ちょっと私怖いです」

 

そう言いかぐやは、白銀の方に目線を送る。

その視線に、白銀は先ほどまでの色っぽい光景を思い出し、思わず顔を背けてしまう。

その反応からかぐやは確かな手ごたえを感じていた。

またしても何も知らない藤原は、怖がるかぐやを見てにんまりと笑みを浮かべる。

 

「そうやって怖がることによって涼しくなるんですから!それじゃあ早速始めていきますね!」

 

そう言った藤原は部屋を暗くしてカーテンも閉めてしまった。

暗い部屋の中でぼんやりと浮かぶ4人の顔……煌々と輝くパソコンの画面……カタカタと響くパソコンのタイプ音……

 

「ちょっとよもぎ君!雰囲気台無しじゃないですかぁ!せめてもっと離れたところでやって下さいよ!」

 

「えぇ……」

 

哀れなりよもぎ。彼は遊びのための犠牲となったのだ……

部屋まで暗くされている以上、よもぎに選択の権利はなかった。

よもぎは、白銀と席を代わり、画面の明るさを落としたうえで、なるべく音を立てないように注意を払いながらタイピングを続けていた。

その様子に、白銀は自分も仕事を行う雰囲気を出したが、その瞬間謎の殺気を感じ、すぐにその考えはなかったことになったのであった。

 

「誰から行きます?」

 

「それじゃあ俺から行くことにしよう。」

 

「おっじゃあお願いします。」

 

(フフフ……さぁ何時でもどうぞ会長?)

 

こうして様々な思惑が交差した怪談がスタートしたのであった。

 

「これは、俺の友人が体験した話なんだがな?」

 

「その友人は仕事をしていて、出張で一か月地方に行くことが決まったらしい。」

 

「その為、家の諸々を終わらせて、その友人は出張に向かったらしい。」

 

「そして、一か月後。向かう頃には炎天下だった暑さも落ち着いてきた時にその友人は家に帰ってきた。」

 

「久しぶりの我が家を楽しむつもりで、コンビニで色々と買ってきて、鍵を開け家に入る。」

 

「すると、スッと涼しい風が家の中からその友人の方に流れてきた。」

 

「そんなわけはない。暑さも落ち着いていたとはいえ、まだまだ暑い日が続いていたため、そんな涼しい風が家からするわけがないのである。」

 

「そんな友人は、一つの可能性に気づき、家の中に走りこむ。」

 

「するとそこには、27℃で付きっぱなしの冷房が……!」

 

「いやちょっと待ってくださいよ会長!」

 

藤原は勢い良く、白銀の話を止める。

白銀はその言葉に得意気な顔を作って、藤原の方を見る。

 

「何だ藤原書記。怖すぎてやめてほしいという話か?」

 

「いや違いますよ!何か変化球来るのかと思ったら、直球でよくある話ですし!」

 

「な、何だと!」

 

白銀は数少ないレパートリーの中でひねり出した話が、良くある話と言われ愕然としてしまう。

そして、かぐやは首をひねりながら藤原に尋ねる。

 

「あ、あの藤原さん?今の話どこが怖いのか良く分からなくて……」

 

(このブルジョアが……!)

 

そうこの話の肝は、電気代が高くなってしまったことに恐怖を感じるという落ちである。

この落ちは、貧乏である白銀にとっては本当に怖い話であるが、国内随一の御令嬢であるかぐやにとっては、その程度の出費は誤差でしかなかった。

その為、この話の怖い所が分からないのであった。

その様子に、白銀は膝をついてうなだれてしまった。

 

「じゃあ次は、かぐやさんお願いします!」

 

「えっえぇ分かりましたそれでは……」

 

「これは、私の知り合いの話なんですけど……」

 

「その知り合いは、会社を経営していて最近業績も良かったらしいんです。」

 

「そんなある日、その人が社長室で作業していると社員の人がタブレットを持って走りこんできたそうです。」

 

「その画面には、株の所有率が表示されていて……」

 

「ちょっと待ってくださいかぐやさん!?」

 

その話の流れに思わず藤原はストップをかける

そんな藤原の様子にかぐやは得意気な顔を作って藤原の方を見る。

 

「どうしたんですか藤原さん、もしかして怖すぎましたか……?」

 

「嫌そうじゃなくて、怖い話は怖い話でも全然ジャンルが違う気がするんですけど!」

 

「なっ」

 

その藤原の言葉にかぐやは固まってしまった。

そんな様子のかぐやと白銀の様子を見て、藤原は溜息をつく。

 

「はぁ皆さん全然怪談がなってないですねぇ……」

 

「それじゃあお手本は、言い出しっぺの藤原書記にやってもらおうじゃないか。」

 

そう言う白銀は「俺たちに出来なかったのに本当にちゃんとできるのか」と言いたげな目をしていた。

そして、その横でかぐやも同じ目をしながら藤原の方を見る。

 

「分かりました!それじゃあ私が話させてもらいます!」

 

そう言った藤原は雰囲気だしのためか少し顔を俯けて、話し始める。

 

「これは、私の知り合いが実際に体験した話なんですけどね……」

 

「私の知り合いは、塾に通ってて行きと帰りにバスを使って通ってたんですよ」

 

「そのバスも行きは結構乗っているんですけど、帰りはかなり人が少なるバスで……」

 

「そんな中で、ある日自習なんかをしててその知り合いが塾を出るのが遅くなったらしいんですよ」

 

「その知り合いは早く帰りたくて急いでバス停まで走ったそうなんです」

 

「すると、ちょうどいいタイミングでバスが来てその知り合いは急いでバスに乗り込んだそうなんです」

 

「中は相変わらず人が乗ってなかったらしく、なんとその知り合いの貸切状態だったらしいんです」

 

「ちょっとテンションの上がったその知り合いは、意気揚々とバスの後部座席の方に座ったらしいんですよ」

 

「すると、前からは陰になって見えなかったところに女の人が座っていたそうなんです」

 

「その女性は髪が長くて、不思議な事に体がずぶぬれだったそうなんです」

 

ガタッ

 

「その日は雨も降ってないのにおかしいなぁと思いつつ、知り合いを乗せたバスは走り始めたそうなんです。」

 

 

「しばらく走った後にその女性は突然」

 

「お嬢さんはどこから?」

 

「と尋ねてきたそうなんですよ?」

 

ガタッ

 

「というのも普段から、田舎なもんですからそのバスでは乗っている乗客同士の会話が頻繫にあったそうなんです。」

 

「その知り合いも何回か話しかけられた事があって、今回もその類だと思ったそうで返事をしたそうなんです。」

 

「塾の帰りでというその知り合いの返事を聞くとその女性は」

 

「そう」

 

「とだけ一言言ってまた座り直したそうなんです。」

 

「聞いといて不愛想な人だなと思ったのも束の間」

 

「その女性はすたすたと歩き、バスの運転手の方に向かったそうなんです。」

 

「そして、二言三言話した後、急に停車駅でもないのにバスが止まり、ドアが開いてそのまま女性は降りていったそうなんです。」

 

ガタッガタッ

 

「その知り合いは……ってさっきから何ですかこの音!」

 

藤原は怪談をいったん取りやめ、怪談の途中からなっていた音の出所を探るように、周囲を見回す。

 

(良かった……このままだと四宮の前で不甲斐ない姿を見せるところだった……)

 

(思ったよりも怖いですね……ふぅ……)

 

白銀もかぐやも思ったよりも、上手い藤原の語りに少々ビビっていた為、ほっと息をつきながら、藤原と一緒に音の出所を探る。

そして、その音の出所はすぐに見つかった。

 

「よもぎ君……?」

 

「はい、何ですか?」

 

その音の出所は、よもぎであった。

よもぎの様子をよく見ると、少し体を震わしていた。

藤原はその様子に、にんまりと笑みを浮かべて口を開く。

 

「あれ~何ですか?もしかして怖いんですか~?」

 

「……そんなわけないでしょう。幽霊やおばけなんて所詮科学的にあり得ないものなんです。そんな、存在があやふやなものに恐怖を覚えるなんてそんな……」

 

「実は、さっきの話私が体験した話なんですよね……」

 

その言葉を聞いたよもぎは、すごい勢いで立ち上がり藤原から距離をとる。

 

「……絶対に近づかないでください。」

 

「やっぱり怖いんじゃないですか!」

 

藤原はけらけらと笑いながら、よもぎの方を煽るように見る。

 

「あれあれぇ?苦手なものないとか言ってましたけど、お化けが怖いんですか?人間らしい所もあるんですねぇ」

 

その顔は、はたから見てもイライラするほどの煽り顔であった。

 

「あー別に怖いものは怖いで良いと思うぞ」

 

「えぇそうですね。人間だれしも苦手なものはありますから。」

 

白銀とかぐやは、自分自身も怖いと思ってしまった手前、同情するようによもぎに話しかける。

そして、一通り笑いつくした藤原は、息を落ち着かせて席に戻る。

 

「はー笑った笑った……それじゃあよもぎ君の弱点も分かったところで話の続きを……」

 

そう藤原はが続きを話そうとした瞬間、部屋にひんやりとした空気が漂う。

そして、その空気の発生源であるよもぎは、笑みを浮かべながら藤原に話しかける。

藤原は、そのよもぎの目の笑っていない笑みに、ダラダラと冷や汗をかく。

 

「藤原さん……やめましょうか……ね?」

 

「ひ……ひゃい」

 

そのよもぎの一言に、静まり返る生徒会室

その日の生徒会室の温度は他の教室よりも低くなっていたらしい

 

今回の勝敗

よもぎとかぐやの負け&よもぎの勝ち(生徒会メンバーに怖いものが露見してしまった為、立てた作戦がうやむやになってしまった為。&一番部屋の温度を下げることが出来た為。)




誰かにまんじゅうこわい話させるか迷った。

次話 天官よもぎは隠したい
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