天官よもぎは知りたい   作:ミルクセーキ

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早く思いついてる展開を書きたいけど、時間が無くてなかなか書けないこれが物書きのジレンマ…


天官よもぎは食べない

「それで?貴方はどうだったのかしら?」

 

早坂がよもぎのお出かけから帰り、一息が付いた後かぐやは、早坂にそう尋ねた。

なお、今回のかぐやと白銀の映画鑑賞は、斜めに座って観ることになってしまい、あまり楽しめなかったらしい。

早坂からすると、説明された今でも、どうしてそうなるのか分からなかったが、その疑問は表に出さないように、主人の話を聞いていた。

 

「?私ですか?」

 

「えぇ。きりきりと吐いてもらいますからね!?」

 

そう言うとかぐやは早坂を見つめる。

その眼からは絶対に問いただすという気合を感じた。

 

(ちょっと揶揄ってみますか…)

 

そう考えた、早坂は如何にも普通という演技をしながらその質問に答える。

 

「あぁ庶務君とデートしたことですか?」

 

デート!やっぱりデートだったじゃない!」

 

そう叫ぶと、かぐやは、座ってた椅子から立ち上がり早坂に詰め寄った。

 

「デ、デートってあなた達付き合ってたの…?」

 

「そんなわけないじゃないですか?まったくデートしただけで付き合ってるってかぐや様…」

 

そこまで言い、早坂は口元に手を置く。

 

「お可愛いですね?」

 

~~~~っっ!

 

そう言われたかぐやは、その顔を悔し気に歪め、その場で地団駄を踏んでしまいそうになった。

その言葉というものは、かぐやの中でも1,2を争うほどに屈辱的なものだった。

その様子を見て、早坂は更に煽る。

 

「あぁそうか。かぐや様は、まだ、デートも、したことがなかった、ですもんねぇ?今回のも、デートとは、言えないものだったみたいですし?」

(この近侍はぁぁぁ!!!)

 

マウント!

それは自分自身が相手よりも優位な位置にいることを、相手に認めさせる行為。

早坂は、わざと強調するように、一言一言区切ってかぐやに伝えた。

それにより、さっきの発言のマウント力は急上昇!

かぐやはギリギリと歯ぎしりを立てながら早坂をにらみつける。

その眼からは今にも血涙が流れそうになっていた。

 

(ちょっと楽しい…)

 

早坂は、少し揶揄するだけのつもりであったが、いつもの早坂に対する無茶ぶりによる、ストレスを発散するようにかぐやを煽り倒していた。

 

(とは言え、そろそろやめますか…)

 

「かぐや様…」

 

「わ、私はあなたみたいな色ボケとは違うのよ!」

 

「色ボケ!?」

 

「そうです。色ボケです!私をどんな殿方とでも、出かけるような色ボケ近侍と、一緒にしないでほしいわ?」

 

そう言われた早坂は顔を赤く染める。

 

「そんな色ボケじゃないですし…それに誰でもいいわけでは…

 

(あら?)

 

早坂はかぐやのあんまりにもな発言に反論するが、その声はどんどんと小さくなっていく。

その姿にかぐやは、隙を見つけにやりと笑う。

 

「貴方、天官君の事を慕っているの?」

 

「そういうわけじゃないです!彼とは仕事上の関わりで、今回もその…友好的な関係を築くために…」

 

その声は先程まで、かぐやを煽っていた言葉と同じ人から、発せられているとは思わない程弱々しかった。

 

「早坂…貴方…」

 

「とにかく!彼とは何にもありませんから!それでは失礼します!」

 

そう言い早坂は急いで、部屋から出ていった。

かぐやは、早坂が出ていった後、その早坂が出ていった扉を暫く何とも言えない表情で見つめていた。

 

 

 

 


それからしばらくたったある日の昼

生徒会室には白銀とかぐやの2人がいた。

 

「あんなのはしたないですよ!」

 

「そんなにいう事か?弁当を分け合ってただけじゃないか。」

 

「弁当を分け合ってたんですよ!?あんなの…あんなのまるで物乞いです!」

 

「そこまで言うか…」

 

2人が何の話をしているのかというと、弁当についてである。

ここまで来る途中で、2人は仲良さげなカップルが弁当を食べさせ合う光景に遭遇した。

それを見たかぐやが、はしたないと過剰に反応してしまい、その興奮冷めやらぬうちに生徒会室まで辿り着いたという顛末である。

 

「とは言え、腹が減ったな…昼食にするか…」

 

そう言うと白銀は徐に弁当を取り出す。

 

「あら?会長今日はお弁当ですか?」

 

「あぁ田舎の爺様が野菜を送ってくれてな…しばらく弁当にするかなと…」

 

そう言い、開かれた弁当を見て、かぐやは眼を輝かせる。

中に入っていたのは卵焼きやハンバーグ、梅干しといったごく普通の弁当のレギュラーメンバーだった。

しかし、それは一般庶民にとっての『普通』であった。

 

かぐやにとって弁当というものは、時間を見計らって専属のシェフが作るものであった。

内容もその季節や、栄養バランスなどを考えて、作られた調和のとられたものであった。

そんな弁当が普通であるかぐやにとって、白銀の好きなものを詰め込んだ弁当というものは、まるで宝箱のように見えたのである。

しかし、先ほどあんなことを言ってしまった手前、分けてくれというのは、かぐやのプライドが許さなかった。

どうしたものかと、かぐやが考えていると生徒会室のドアが開いた。

 

「みなさん、こんにちは―!」

 

「失礼します。」

 

そうして入ってきたのは藤原とよもぎの二人だった。

藤原はテーブルの上にある白銀の弁当に目を移す。

 

「あ、これ会長のお弁当ですかー?一口ください!」

 

「あぁいいぞ。」

 

(え!?藤原さん!?)

 

そのやり取りの後、白銀は弁当についてた楊枝で、ハンバーグを差しそのまま藤原に差し出した。

それを受け取り、藤原はそのハンバーグを口に運ぶ。

 

「んー!おいしいー!」

 

藤原はその顔を緩めると、ハンバーグについてどこがおいしいのかを解説し始めた。

しかし、その話はかぐやの耳には、届いていなかった。

 

(藤原さん…友達だと思っていたんですけどね…もし目の前で倒れたとしても助けてあげません)

 

かぐやは、自分のしたかったことを、あまりに軽々しく行う藤原に対して憎悪の目線を送っていた。

白銀は、その視線を自分の弁当が、馬鹿にされているものだと勘違いしてしまった。

そして、そうはさせるかと張り切り、白銀はポットに入れてきた味噌汁を取り出し、熱々の味噌汁と冷や飯の美味しさを解説し、藤原にふるまった。

その結果…

 

(藤原さん…さようなら絶交よ)

 

更に、藤原を見る目がきつくなってしまう事となった。

 

(なんだ…あの目線はどういう事なんだ…?一体何故…?)

 

「そういえば、よもぎ君はどんなお昼ごはんなんですかー?」

 

藤原はそんなやり取りがあるとは露知らず、テーブルに向かってパソコンで作業しているよもぎに向かってそう問いかけた。

 

「あぁそう言えば、まだ食べてませんでしたね。ここでいただいても?」

 

「えぇもちろん!よもぎ君って不思議君だからどんなご飯食べてるのか気になります!」

 

「あぁーその―なんだビックリするなよ藤原書記…」

 

ワクワクしながらよもぎを見つめる藤原の隣で、白銀は微妙な顔をしている。

 

「…?会長はよもぎ君のお昼ご飯知ってるんですか?」

 

「あぁまぁ1年生のころからの付き合いだからな…一応…」

 

そんな話をしている間に、よもぎはカバンから昼飯を取り出す。

よもぎは、カバンから取り出した、銀色の長方形の包み一つと、中に数種類のカプセルが入ったカプセルケース、小さい水筒を机に並べると、手を合わせる。

 

「いただきます」

 

「えっ?これが…お昼ですか…?」

 

「はい。あぁこれできっちりカロリーと、必要な栄養素は補給できてるので大丈夫ですよ?」

 

「…あぁ!お昼ご飯だけこういうので済ませて、他のご飯をしっかりとるアスリート的な…」

 

「いえ、3食ともこれですね。栄養素の兼ね合いによって少々変化はありますけど。」

 

「……じゃ、じゃあその長方形の奴が凄くおいしいとかですかね!」

 

「なら、少し食べてみますか?少しだったら、カロリーとかも大丈夫だと思うので。」

 

そう言い、よもぎは銀色の包みを開け、中に入っていた薄茶色の棒状になっている物の先っぽを折り、藤原に差し出す。

その欠片を受け取り、藤原は口に運んだ。

しばらく藤原は口を動かしていたが、段々と顔から表情が消えていった。

つい先ほど、ハンバーグの美味しさに感動していた人と、同一人物だと思えない程無表情になっていた。

 

「何ですかこれ…?固形状の甘い砂というか、何というか…口の中の水分が一気に持ってかれるというか…まだ、マズい方がリアクションとれるんですけど、マズくはないし、かと言って美味しいわけでもないですし…総合的な感想が食べれるってだけというか…」

 

そう言った、藤原はよもぎの方に近づき心配そうな顔をする。

 

「あの…もしかして虐待とかされてます…?あんなもの食べさせられてるの虐待以外の何物でもないと思うんですけど…」

 

「いや、どちらかというと、これは僕が好きで食べてますね。保護者はどちらかというと普通の食事をとらせたがるというか…ほら、普通の食事と違って、これなら一瞬で食べ終わるから、時間効率良いですし。栄養面もばっちりです。」

 

そう言って、モソモソとその棒状の物を食べ始めた。

実際、このよもぎが食べている物と、数種類のカプセルは、よもぎが所属する組織が科学の粋を集めて作った、高性能完全携帯食であった。

3本で一日分のカロリーを取ることが出来るエネルギーバーと、最適な栄養素を補給できる栄養カプセルというものは、忙しいエージェントの強い味方であった。

因みに、これを常に食べているエージェントが、よもぎ以外にいるのかは現時点では不明である。

 

藤原はそう言い食べ進めるよもぎを、まるで宇宙人を見るかのような目で見てその後白銀の方を見つめる。

 

「何でこうなるまでほっといたんですか?」

 

「いや、俺があった時からこんな奴だよ!というか俺も、見かねて弁当を作るといったことがあったんだが…」

 

『気遣ってくれてありがとう。でも大丈夫です。御行もそんなずっと作るだけの余裕はないでしょうし、それに昼飯を食べる時間が長くなってしまいますから。』

 

「と言われてしまってな…」

 

そんなこんなしているうちによもぎは、昼飯を食べきり、また、パソコンに向かって作業を始めていた。

 

「私…よもぎ君に対するイメージが変わった気がします…」

 

「本人に悪気はないし、変わったところあるけど良い奴なんだよ…」

 

そう遠い目をしながら話す二人を見ながらかぐやの脳内にはある計画が出来上がっていた。

 

 

 

 

 

 

そして、その日の夜。

かぐやは早速早坂を呼び出していた。

 

「お呼びでしょうかかぐや様。」

 

「早坂。明日は飛び切り豪勢な弁当を用意しなさい。」

 

「は?弁当ですか…?」

 

早坂は突然なかぐやの申し出に、戸惑っていた。

 

「また、会長さんと何かありましたか?」

 

「えぇ…明日こそはあのたこさんウインナーを手に入れるのよ…」

 

かぐやはそう言い、今日生徒会室で起こった白銀の弁当に関することを早坂に伝えた。

 

「…書記ちゃんとは仲良くしてたんじゃないんですか?」

 

「もう知らないわよあんな生き物…私の欲しい物を奪っていく女…」

 

そんな、アニメの悪役令嬢のようなことを、ぶつぶつと呟く主人にため息をつきながら、早坂はかぐやに話しかける。

 

「分かりました。取り敢えずシェフには伝えておきます。それでは…失礼します…」

 

「ちょっと待ちなさい早坂。」

 

そう言い、部屋から出ていこうとする早坂をかぐやは引き留めた。

 

「まだ、何かありますか?」

 

「明日の弁当。貴方の分を天官君に分けてあげなさい。」

 

「は?」

 

そのかぐやからの一見意味の分からない命令に早坂は首を傾げた。

確かに、かぐやの弁当を豪勢にするという事は、その分一緒に作られる早坂の弁当も、比例して多くなる事は確かである。

だからといって、それをよもぎに分けるというのはいささか不自然である。

早坂は、またこないだのように、かぐやがからかっているのだと判断してため息をつく。

 

「はぁ…あのですねですから彼と私はそのような関係ではないと…」

 

「彼、あまりきちんとしたものを食べていないみたいですよ?」

 

「はい?」

 

「さっきの話の後そういう話になりまして…何でもエネルギーバーと栄養剤のみで生活しているとか…」

 

「………」

 

その話をかぐやから聞いた、早坂は少し考え込んだ後、また部屋の外に向かう。

 

「取り敢えず、シェフにこのことを伝えてきますから。今日はもうお休みくださいかぐや様。」

 

そう言うと早坂は完全に部屋から出て、扉を閉めていった。

かぐやはその姿を見てクスリと笑い、ベットに腰かけた。

 

「これで、少しは何か起こると良いのだけれど…」

 

そう言う、かぐやの表情は、先ほどまでの従者に向ける顔ではなく、友人に向ける顔のようになっていた。

 

暗い廊下を歩く早坂はシェフに連絡するためのメモを作る。

一通り書いた後に、早坂は少し考えてそのメモに新たに書き込みを入れた。

そこには、「早坂分弁当 量多め」と書かれていた。

 

 

 

 

 


次の日の昼

早坂は同じクラスのギャル仲間である、火ノ口と駿河に呼び止められた。

 

「あれ?愛ご飯食べんの?」

 

「でもお弁当は持ってきてるよねー?というかいつもより大きくない?」

 

すると、早坂はその弁当を持って、教室の外に向かう。

 

「ごっめーん!ちょっと今日行くとこあって。じゃあまた後でだし!」

 

そう言うと、小走りで教室から出ていってしまった。

その後ろ姿を教室に残された二人は見つめる。

 

「怪しい…」

 

「うん。怪しい…」

 

よもぎは手早く昼食を済ませようと、授業が終わってすぐ教室から出て、作業が出来るところを探して、廊下を歩いていた。

すると、前から早坂が何やら包みを持ってよもぎの方に歩いてきた。

 

「あ、いたし!」

 

「早坂さん?何か…?」

 

「ちょっとこっちに来るし!」

 

「ちょっと早坂さん?」

 

そう言うと早坂は包みを待っていない方の手でよもぎを掴み、引っ張っていった。

そして、そのままたどり着いたのは、人通りが少ない中庭の隅っこの方であった。

そこにあるベンチに近づくと早坂はよもぎの手を離す。

 

「早坂さん、いきなりどうしたんですか?まさか緊急で何か要件とか…?」

 

その早坂の様子からよもぎの頭の中では、様々な緊急事態のシミュレーションがなされていた。

 

「突然すみません…あのですね…良かったらお昼一緒に食べませんか?」

 

そう言いながら早坂はおずおずと手に持った包みを差し出した。

それを見たよもぎは申し訳なさそうな顔をして、早坂に伝える。

 

「すみません。折角の好意ありがたいのですが、僕昼は…」

 

「えぇ知っています。昨日かぐや様から聞きました。」

 

「…?それなら、何故?」

 

「理由付けですよ。」

 

「理由付け?」

 

「はい。いま私と庶務君には表上なんの関わりもありません。けど、お昼を一緒に食べるという理由があれば、2人が一緒にいても不思議じゃありません。それにこの時間に情報共有なんかを行えば良いですし、今後庶務君自身が、私を介さずに、他の人に話を聞くことも自然になるかもしれません。」

 

(これは、食事をきちんと取らない庶務君に食べさせないといけないからの理由づけで、決して好きというわけでは…って誰に説明してるんですか私!?)

 

早坂は、一緒にお昼を食べる事のメリットについてよもぎに説明したが、内心自分の発言に混乱していた。

よもぎは、その理由を聞き、暫く考えこんだ後口を開いた。

 

「確かに、一理ありますね…でもそれは早坂さんにご迷惑をおかけしませんか?」

 

「いえ、元々料理の量が私には多かったりしたのでちょうど良いです。今回は特にかぐや様の命令で…」

 

「…早坂さんも苦労してますね。そういう事ならお言葉に甘えさせていただきます。」

 

そう言い、よもぎは早坂の隣に座って、情報交換しながら一緒に同じ弁当を食べ始めた。

早坂は表面上平然を装っていたが、内心では心臓がバクバクと音を立ててなっているようだった。

その証拠によもぎは気づかなかったが、早坂の耳は真っ赤に染まっていた。

 

そして、その日から何日かに一度、早坂とよもぎは一緒に中庭で弁当を食べる事となったのである。

 

本日の勝敗 早坂の勝ち(よもぎと一緒に昼を食べる約束をとりつけた為)




次話 白銀御行は困惑する。
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