フォンはベルの実家で行われるパーティーに参加する! ベルの姉2人とご両親へ挨拶をして、外堀を埋めたのだった!
ふたりは中期クエストの期間中、共に生活することになる!
しかし、寝ぼけたフォンが布団に入ってきたり、胸や脚をチラ見してしまったせいで処女煽りをされたり、オ○ニーできない日が続いたりで、ベルは苦しい我慢を強いられる!
クエスト後、ラブホテルに寄ることになる!
今日で処女を卒業できる!と、期待するベルだったが、フォンの催眠に掛かってしまい、身動きできない状態で『処女煽り耳舐めASMR』をされる!
が、性欲と怒りが爆発して覚醒し、ついにフォンを理解らせたのだった!
そして、ベルの謹慎期間が終わり、騎士団へ帰る日まで、あと1週間――。
朝、食堂に入ると、フォンさんがイスに座って待っていた。
新雪のように透き通った銀髪。爽やかなスカイブルーの瞳。
猫のように小っちゃな顔で、目は
小動物のような、天使のような、100年にひとりの美少年。
なんと、この男の子は、私の彼氏だ。信じがたいことに、彼に選ばれた世界一幸運な女が、この私なのだ。
「おはようございます」
「おはよう、ベル」
フォンさんは立ち上がり、腕を前方に差し出す。――ハグ待ちの体勢だ。
私はフォンさんの身体を抱きしめる。小さく、温かい。愛らしくて、守りたくなる小ささだ。
フォンさんと恋人になって分かったことがある。
フォンさんは、とても甘えてくるタイプだ。毎日おはようのハグを求めてくるし、おやすみのちゅーをしてくる。仕事中でなければ手を繋ぎたがるし、私が背中を見せるとすぐ抱きついてくる。
フォンさんと触れ合える一秒一瞬が、嬉しすぎる。長らく男性と触れあえなかった身にとって、幸せな時間だった。
けれど、この幸せな時間はまもなく終わってしまう。
あと1週間で、私が騎士団に帰る期日だ。
*
ギルド会館へ入る。館内食堂で、私はフォンさんに話を切り出す。
「フォンさん、お話ししたいことがありますわ」
「なに?」
「私――」
話し出そうとした瞬間、私はフォンさんの後ろの方に、意外な人物の姿を見付けた。
赤い髪。騎士の鎧。腰に差した聖剣。――騎士団長だ。ギルド長と談笑している。
「ベル?」
「あっ、いえ、すみません。騎士団長がいたもので」
フォンさんも驚いて振り返る。
「あの赤い髪の人?」
私は頷く。
騎士団長も私に気付いている。彼女は私たちに近付いてきて――。
「すまない、取り込み中か?」
「いえ、問題ありません」
「近くに来たついでに、ベルの顔を見にきたんだ。元気そうでよかった」
「ええ、団長も変わりなく何よりですわ」
「あと1週間で復帰だ。よろしく頼むぞ」
団長がそういった瞬間――フォンさんの表情が
私は騎士団に帰らなければならない。フォンさんと一緒にいられる時間は、あとわずかだ。
私も、同じ気持ちですわよ、フォンさん。
「団長、10分ほどお時間をいただけますか?」
「構わないが、どうした?」
「大事なお話があります。……申し訳ありませんが、フォンさんは席を外していただけますか?」
フォンさんは頷き、一旦席を外してくれた。
残された私と団長は、改めて座り直し、相対する。
ちょうどフォンさんと話そうとしていた内容だ。まさか、先に団長に話すことになるなんて思ってもいなかった。
私は意を決して告げる。
「――騎士団を退団して、冒険者になろうと考えています」
団長は表情を変えず、寸秒の沈黙の後、口を開いた。
「男か?」
「……!?」
団長の瞳は、じっと私を見つめている。
見透かされていることに衝撃を受ける。
でも、一から話すより話が早いかもしれない。
「はい。このギルドで一緒にパーティーを組んでいる男性と、交際しています」
「さっきの男か?」
「はい」
団長は振り返り、遠くのテーブルに座っているフォンさんを見る。彼もギルド長と何かしら話しているようだった。
「凄まじいな、この大陸一の美少年といっていい」
「はい」
「あ、今のは夫には内緒にしておいてくれ」
「もちろんですわ」
団長は微笑する。
団長の夫も騎士団員である。確か団長と同じくらいの齢だ。
「今から話すのは、騎士団長としての言葉だ」
団長は微笑を崩さぬまま、そう前置きして――。
「退団は考え直してほしい。ベル、お前は騎士団の中でも抜きんでて優秀な人材だ。最年少で青騎士*1となった最強の騎士だ。お前は、騎士団に必要なんだ」
「……」
自分の能力の高さは理解している。むしろ私は、それだけを誇りにして標榜していた。
今でも『騎士』という立場は、自分にとって大切なものだ。
けれど、フォンさんと共に過ごす日々と、騎士として働く日々を天秤にかけたら、前者の方に傾く。
「お言葉は嬉しいのですが、今の私には、騎士としての自分より大切なものが出来てしまいました。考え直すつもりはありませんわ」
「そうか、分かった。その気持ちは理解できるから、飲み込む。その上で、本題に入りたい」
……本題? 今の話が本題で、もう話は終わったところではないんですの?
「さっき言ったことは、団長としての建前だ。ここからが本音だから、よく聞いてほしい」
「……!」
団長の表情から微笑が消える。必死さすら感じる、真剣な面持ちだ。
「退団は考え直すべきだ。お前が不幸になる」
「どういうことですの?」
「過去にも、遠征先で男ができて、騎士団を辞めたいと申し出た女がいる。私は彼女を、祝福の言葉と共に送り出した。本人の決めた道、望んだことだからな。
だが、彼女は1年と経たず男と別れた。結果、彼女は騎士という職業を失った上に、恋人もいなくなった。何もなくなったんだ」
「……!」
「知っての通り、30歳を超えると入団試験の受験資格を失う。その女は再入団もできずに、そのまま女工になった」
「それから、その女の人はどうなったんですの?」
「音信不通だ。……だが、明るい未来が待ち受けていないことは、想像がつく」
私はうつむく。夢見心地だったところへ急に現実を突きつけられて、心が急激に冷え込む。
悲劇としかいいようがない、ひとりの女の末路。もしかしたら、自分の未来になるかもしれない結末だ。
「今は付き合い立てで、毎日楽しいだろう。だが男というのは、興味が失せた女に対して、信じられないくらい冷たくなる。そういう生き物なんだ、男は」
ひどく実感の籠もった言葉だった。私の知らないこと。私がまだ経験したことのない、悲しい事実だ。
「しかもあの美貌だからな。女など選び放題だ。お前の意思に関係なく、あっちの気が変わればそれでおしまいだ」
ありえるのだろうか。そんな日が来るのだろうか。フォンさんが、私を好きでなくなる時なんて。
「騎士として生きていれば、そんな不幸は避けられる。騎士は安泰だ。人生の勝利者だ。その権利を賭けて、たった1回の、望み薄のギャンブルをするな」
「ギャンブル……」
「ああ、男の尻を追い掛けて騎士団を辞めるなんていうのは、女にとって相当分の悪いギャンブルだ」
みるみる怖くなっていく。覚悟が揺らいでいく。自分がとんでもなく不安定な道に進もうとしていることを、自覚してしまう。
「どうしても一緒にいたいというのなら『結婚したければお前が騎士になれ』と男に言ってやれ」
「……! そ、そんなこと……」
「女なら、それくらいいうべきだ」
フォンさんは、付いてきてくれるだろうか。
立場も、経験も、交友関係も捨てて、私に付いてきてくれるか。……難しい気がする。とてもではないけど、自信がない。
そして、団長は、独り言ちるように――。
「もう、団員が不幸になる姿は見たくないんだ」
「……」
「話は終わりだ。来週、また会おう」
団長は去っていった。そして、フォンさんが近付いてくる。
「ベル? なんか、すごい顔色悪いよ?」
「大丈夫ですわ」
「でも……つらそうだよ」
「……肉体的な失調ではないんです。仕事はできます。行きましょう」
私は立ち上がる。フォンさんは心配そうな顔をしていた。
*
クエスト終了後。フォンさんが私の部屋に来た。
フォンさんはベッドに仰向けになると、ぐいっと服を持ち上げておっぱいを露出する。
「えっ、なっ、なんですの?」
「ベル、なにか悩んでるみたいだったから」
「……はい」
「吸わないの?」
「吸いますわ」
フォンさんに覆い被さる。彼の乳首を口に咥え、吸啜する。ちゅうちゅうと吸って、舌で転がして、乳首を堪能する。
「んっ……!♡ あっ……!♡ んんっ……!♡」
フォンさんは感じているのか、甘い声を漏らしながら身悶えする。
あーエロすぎっ。えっろこの男……。
「なんだか、日に日に乳首弱くなってませんこと?」
「な、なってないよ」
私はフォンさんの左乳首を摘まみ、ぐいっと回すように抓った。
「んああっ!♡♡♡♡♡」
ひと際甲高い嬌声。淫魔としての肉体が喜んでしまっているのか、尻尾と翼が飛び出す。
「やっぱりクソザコじゃありませんの」
「ザコじゃない! ザコじゃないから!」
駄目だ、ムラムラしてきた。もしかしたら、あとわずかしか味わえないと思うと、余計惜しくなってくる。
「ベル……」
「フォンさん、私のつよつよおマ○コで、貴方のクソザコおチ○ポいじめてさしあげますわ」
「S○Xの誘い文句キモすぎでしょ!?」
私はフォンさんの服を乱暴に脱がす。興奮が止まらない。男を征服する瞬間は、何度経験しても至上の悦楽だった。
「ちょっ、加減してよ!」
「でも貴方乱暴にされるの好きじゃありませんの」
「うぐっ……そ、そうだけど……」
気持ちよさそうに啼いてくれるので、感じているのが分かりやすい。乱暴にすればする程気持ちよくなるドMインキュバスだ。
「じゃあ行きますわよ、覚悟なさいませ」
「ちょっ、待っ――」
――この後、1時間超、フォンさんのバカデカ喘ぎ声が響き続けた。
*
事後の、ゆったりとした時間が流れている。
フォンさんの目は蕩けていた。気持ちよさそうに、とろんとした目で私を見ている。
私は彼の髪を撫でながら黙考する。
私が理解らせたオスガキ。私に夢中になってくれているはずの男性。
そんなフォンさんが私から離れていく姿が、想像できない。
「フォンさん」
「うん」
「……」
「……ベル?」
「……いえ、なんでもありませんわ」
私は打ち明けようと思っていたことを飲み込んだ。「騎士団を辞めて冒険者になります」とも、「冒険者を辞めて騎士になってください」とも言えない。
駄目ですわ、怖くて、言えませんわ……。
*
――1週間後。ベルが仮冒険者として働く、最終日。
僕とベルのパーティーにおける最後のクエストは、薬草の採集クエストだった。
特に苦労もなく、アクシデントもなく、簡単に依頼を達成してしまった。
ギルド会館に帰ってくる頃には日も暮れて、辺りは薄闇に包まれていた。
晩夏の夜。涼やかな風が吹いて、ベルのツインテドリルを揺らした。
薄闇のせいで、お互いの顔がはっきりと見えない。そのせいか、ベルの面持ちは物悲しげに見えた。
ギルド会館に入り、受付で完了報告を済ませる。
こうして、あっさりと、僕たちのパーティー関係は終了した。
「ベル、おつかれさまでした」
そういった瞬間。
感情が込み上げてきて――ぶわっと涙があふれる。
もう終わりだって、実感してしまう。明日からは、ベルのいない生活に戻る。
ベルも涙ぐんでいた。紅蓮色の瞳が潤み、光っている。
「……ありがとうございました、フォンさん」
「うん……ありがとう、ベル」
言葉にする度、今日で終わりなのだと改めて実感してしまい、辛くなる。
僕は涙をこらえ、ベルに向き合う。
「話したいことあるんだ。ここだと話せないから、会議室でもいい?」
「……? はい、分かりました」
僕とベルは会議室に移動した。
僕とベルはテーブルを挟んで、ソファに座る。
「覚えてる? ここで、僕とベルが出会ったんだよ」
「ああ、そういえば、そうでしたわね」
あの日のことは、今でもはっきりと覚えている。
ドアを開けると、そこに半裸のベルがいた。スポブラを纏う彼女の胸があまりにも平らで、垂直で、ぺったんこで、つい「ちっさ……」と呟いてしまったのだ。
「初対面の印象は、最悪でしたわ」
「あはは、ごめんね」
ベルはかんかんに怒った。それで戦うことになって、ゴーレムの撃破数で競うことになったのだ。
結果、僕が勝利し、パーティーとしての3か月がスタートした。
あれから、まさか恋人になるなんて。こんなに大切な人になるなんて、思ってもいなかった。
――拳を握る。覚悟を決め、真っ直ぐベルを見つめる。
「僕、騎士になるよ」
「……。……えっ」
紅蓮色の瞳が見開かれる。
唖然。驚愕。ベルの表情は、これまでで最大級の衝撃を受けているであろうことを物語っている。
「えっ、えっ、えっ」
「ベルと一緒にいたい、です。冒険者を辞めて、騎士になって、ベルの隣にいられるようになりたい」
「えぇっ!?!?!?!?!?」
ずっと考えていたことだった。
ベルと一緒にいるにはどうすればいいのか。悩んで、考えて、この結論になった。
ベルは脱力したように、ソファの背にもたれかかる。信じられないような表情で「……マジですの」とつぶやいた。
「マジだよ。ベルのこと大好きだから」
ベルは困ったような、嬉しそうな、恥ずかしそうな、幸せそうな、不思議な表情だった。どんな感情なんだろう。
「フォンさん、実は私も貴方に話したいことがあるんですの」
「うん、教えて」
「私、騎士を辞めて冒険者になろうと考えています」
「……っ!」
今度は、僕が驚く番だった。
ベルの表情は真剣だった。だからこそ――。
「そ、それは……ダメだよ。ベルにとって、騎士であることって、大切なことでしょ?」
「……はい。誇りであり、精神的支柱。拠り所といってもいいものでした」
ベルと出会って2日目のこと。僕は「早く騎士団に戻りたい?」と訊いた。その時のベルの答えは――。
――はい、一刻も早く、戻りたいですわ。
静かに、しかし力のこもった声で、そういった。
あれは、ベルの本音だったと思う。人生のほとんどを努力に費やして騎士団員になったベルにとっては、誇りに思って当然で、大切なもののはずだ。
「なら、僕のためにそれを捨てるなんてダメだよ」
「いいえ、誤解ですわ。私にとって騎士の立場とは、最上の価値があるものではなくなったのです」
「え……?」
「今でも大切ではありますが、それよりも。フォンさん、貴方のことが大切なんです」
愛の告白。ベルにとっての一番になれたということが分かる言葉。
心臓を打たれたような衝撃。
嬉しくて、嬉しすぎて、笑みをこらえきれない。
「……嬉しい」
「なら……」
「でも、あんまり納得いかない! 僕が一方的にベルの足引っ張ってるみたいで嫌!」
「そんなことありませんわよ!」
「ベルも勇気出してくれたの分かるけど、僕も頑張って覚悟決めたから! 騎士になるよ!」
「駄目ですわ! 私が冒険者になりますわ!」
僕とベルはお互いに譲らなかった。しばらく進展のない言い合いが続いて――。
「じゃあ、あれで決めよっか」
「あれってなんですの?」
「僕たちが初日にやった、ゴーレム撃破数で競うやつ」
「……! いいでしょう、望むところですわ」
僕たちは立ち上がる。僕も、ベルも、あの日よりも闘志に燃えていた。
そして、併設されている訓練施設へ移動した。
休憩席にはギルド長が座っている。たまたま近くにいたギルド長を捕まえて、カウント役をさせることにしたのだ。
ギルド長がレバーを引くと、反対側の通路から
「改めて、確認ですわ。私が勝ったら私が冒険者になる。フォンさんが勝ったら貴方が騎士になる。それでいいですわね?」
「うん、いいよ」
そして、ベルは金貨を取り出し、宙へ弾いた。
*
私の弾いた金貨が、回転しながら落ちてくる。
――予想外の展開だった。フォンさんが付いてきてくれるかどうか悩んでいたら、フォンさんの方から「騎士になる」といってくれた。
でも、それを聞いて覚悟が決まった。フォンさんが私から離れていくことなんてない。深く、誠実に、私を愛してくれている。
金貨が地面に跳ねる。――私は剣を抜き、駆け出す。
初めに
「聖騎士団流剣術、第――」
瞬間、地面が発光した。
これ……魔方陣!?
フォンさんの方を振り向く。彼は杖を構えながら笑っている。
まさか、こうなることを考えて、予め魔方陣を描いておいたんですの!?
「召喚術――
一気に勝負を決めるつもりのようだった。
最強の魔獣を召喚される。土が隆起し――大樹が飛び出した。私は打ち上げられたが、空中で体勢を整えて、着地する。
大樹から枝が伸びる。極太の幹を束ねた剛腕を振りかぶり――ブゥンっ!という重音とともに、
30体近い
ああ……本気なんですのね。私のために、本気で騎士になるつもりなんですのね。
「フォンさん」
「なに?」
「私、自分が恥ずかしいですわ。貴方が付いてきてくれるって、信じられませんでした。貴方を疑ったこと、申し訳ありませんでした」
「いいんだよ、誰だって不安になるもん。僕たちは、ちゃんと話し合ってこなかったし、時間も足りなかったよ」
たった3か月しかなかった。人生のパートナーを決めるのに必要な時間を、たったそれだけしか与えられなかった。
始めから、ちょっと無茶だったのかもしれない。
でも、今は――。
「聖騎士団流剣術、第一剣――
魔力を籠めた斬撃を放つ。
大樹の二撃目より先んじて、その攻撃線上にいる
更に、魔力を束ね――。
「聖騎士団流剣術、第三剣――
剣を振り下ろす。――大樹もろとも、
大樹の魔獣は焼失した。それに対し、フォンさんは
私も魔力を惜しまず大技を連発し、
そして――わずか3分で、98体が破壊された。
お互いの撃破数は、49体。残りの2体を倒した方が勝者となる。
私とフォンさんはほぼ同じ位置にいて、当然
走っても、間に合わない。
私は剣を振る。剣身に付着していたゴーレムの泥が飛んだ。――この行動は、フォンさんから見て、ただ邪魔な泥を振り飛ばしたようにしか見えないだろう。
しかし、今私が仕掛けた魔法――第五剣は『待機』ができる。その場に発射前状態として留まり、任意のタイミングで発射できるのだ。
ただ、普通に撃ってもフォンさんの妨害を受けてしまう。だから、彼が数秒動けなくなる隙ができなければならない。
私は剣を収め、フォンさんに近付く。
「フォンさん」
「ベル?」
突然戦いを放棄したように見えるのだろう。フォンさんは不思議そうな顔で私を見ている。
そして――。
「愛していますわ」
――フォンさんの唇を奪う。驚愕し、見開かれる青色の瞳。唇から伝わる、溶けそうな熱。
フォンさんの意識が、完全に戦いから離れたその瞬間――私は魔法を発動する。
聖騎士団流剣術、第五剣――
遅れて出現した斬撃が、風を切って発射される。
フォンさんは一瞬だけ「あっ」という顔をしたが、愛おしげに目を細めて、抵抗することなく私に身を委ねる。
――着弾。
夏を撃ち抜く、最後の花火。目映い光に照らされながら、私たちは唇を重ねた。
*
炎も鎮火し、光も収まった後の訓練場。
僕とベルは改めて向かい合う。
「負けちゃった」
「私の勝ちですわ。約束通り、私が冒険者になります」
ベルは晴れやかな表情だった。
勝負の結果なので、僕も二言はない。
むしろ、これからもベルと一緒にいられるということが嬉しかった。
「フォンさん」
紅蓮色の瞳は、朗らかに澄んでいる。ベルは笑顔のまま、僕を見つめて。
「結婚してくださいませ」
「うん、喜んで!」
考える間もなく、即答した。
僕はベルに抱き着く。ベルも強く、僕を抱きしめ返してくれる。
幸せだった。幸せすぎた。感じたことのない程の喜びが心から溢れて、わけもなく笑い出しそうになる。
「ありがとう、ベル、愛してる!」
「私も、愛していますわ」
*
翌日、私は騎士団長のもとを訪れた。
退団届を出すと、再び引き留められた。でも、私の意志が固いことを理解したのか、最終的には受理してくれた。
部屋を後にしようとした、その時。
「幸せになれよ、ベル」
「……はい。団長もお元気で」
そして、私は騎士団を去った。
*
フォンさんの援護を受けて、魔獣を斬り裂く。真っ二つになった魔獣の屍体が地面に倒れた。
「おつかれさま、ベル」
「お疲れさまですわ、フォンさん」
私は新米冒険者として働いている。公私ともにパートナーである、フォンさんとともに。
クエストの帰路で、私は偶然、騎士団の男性騎士を見かけた。たまに同じ任地に着くこともあった人だ。
彼は同じく騎士団の女性騎士と交際していた。たまにカップルで談笑しているところを見かける度「クソが」という怒りと、「死にてえ」という絶望感に苛まれていた。
「ベル?」
やけに低い声で、フォンさんに名前を呼ばれた。フォンさんを見ると、ジト目で私を睨んでいた。
「今、男の人見てたよね?」
「あ、知り合いなんですのよ、あそこの彼」
「ベルの浮気者」
「なんでですの。違いますわよ、それだけは絶対にあり得ませんわ」
スカイブルーの瞳に睨まれる。なんだか黒い感情のような気もするが、「愛されている」と実感してしまい、喜ばしく感じてしまう。
「なにニヤニヤしてるの」
「申し訳ありません。嫉妬されるの、嬉しくて」
「ベルのばか」
その時、男性騎士も私に気付いたようだった。手を振ってくれている。
すると、フォンさんはぎゅっと私の腕を抱きしめながら、手を振り返した。まるで、自分のものだとアピールするように。
男性騎士はびっくりしながら、そのまま歩き去っていく。
もし、謹慎にならず、フォンさんに出会わなかったら――私は今も騎士団にいた。そして、仲睦まじく話すカップルの一挙手一投足を見るたび、心を曇らせていた。
カレシ持ちに嫉妬しながら過ごす日々。天才と呼ばれようと、青騎士であろうと、恋人を得ることができず、寂しい人生を送っていた。
でも、偶然と幸運のおかげで、私はフォンさんと出会えた。
私は今、恋人としてフォンさんの隣に立っている。
「私、貴方と出会えてよかったですわ」
「僕も、ベルに出会えてよかったよ」
フォンさんと腕を組んだまま、街を歩いていく。かつて憎悪と羨望と嫉妬心をこじらせていた処女の影は、もう私の中にはなかった。
*
私とフォンさんはラブホテルに来ていた。ちょうど私が処女を捨て、フォンさんの童貞を奪った、あのホテルだ。
既に2人でシャワーも済ませ、ベッドの上でぴったりとくっついて話している。
「今では、フォンさんに処女を煽られていたことが信じられませんわ」
なんとなくそう呟くと、フォンさんはじっと私を見ながら――。
「初めて会った日『処女には答えられないクイズ』出したの覚えてる?」
「うぐっ……あれトラウマなんですのよ。今でもたまに夢に見て嫌な気分になりますわ」
「あははっ(笑) ウケる~(笑)♡」
「ウケないでくださいませ」
あの日の出来事は、しっかりトラウマになっていた。
胸チラを覗いているのがバレて。
処女には答えられないクイズで、処女バレして。
処女が許されるのは16歳までだよね~?と煽られ、心を傷付けられた。
今思い返してみても、苦しい。息できなくなりそうですわ。
「でも、感慨深くもありますわ。私、もう処女じゃなくなったんですのね……」
万感の思いだった。もう、処女ではない。私は、処女ではない。
そのことが、本当に、今でも嬉しい。
「……フォンさん」
私はフォンさんにキスをして、彼の上に馬乗りになる。愛おしげなスカイブルーの瞳が私を見つめている。
「では、今日もドスケベおチ○ポいじめてひいひい言わせてあげますわ」
「相変わらず語彙がキモすぎるんだけど!」
処女が許されるのは16歳までだよね~? 完!
『フォン』
性別:男性
種族:ヒューマンとインキュバスのハーフ
容姿:銀髪、水色の瞳。この世界においてIカップ相当の巨乳(胸板が大きい程カップ数が大きい)
職業:Aランク冒険者・召喚術士
備考:ベルのことが大好き。
『ベル』
性別:女性
種族:ヒューマン
容姿:金髪、ツインテドリル、紅蓮色の瞳。Aカップ。
職業:Eランク冒険者
備考:フォンのことが大好き。
*
あとがき!
ご愛読、ありがとうございました!
皆さんに笑ってほしくて書いた作品なので、楽しんでいただけたなら幸いです!
これまで感想をくださった方、応援してくれた方、ありがとうございました! 嬉しかったです!
またどこかでお会いしましょう!
https://x.com/mimino0314
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