処女が許されるのは16歳までだよね~?   作:耳野笑

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 前回のあらすじ!

 フォンはベルに対して「僕のことオ○ズにした?」と尋ねる! が、オ○ズにしてもらえなかったと分かり「絶対オ○ズにさせてやる」と誓う!

 フォンはベルの同僚騎士に接触し、ベルの過去を聞き出す!
 その内容は――世間を騒がす怪盗『ヌーゼ』との因縁だった! ベルはヌーゼを追い詰めるが、彼の色仕掛けに引っ掛かって取り逃がしてしまい、それがきっかけで騎士団を3か月謹慎になったのだった!

 それをネタに、フォンはベルを煽る! さらに「色仕掛けに引っ掛からないようにする特訓」という口実で、ベルにハニートラップを仕掛けて拘束し、ハグ・耳舐め・生殺しで煽りまくる!

 翌日、宝石店の護衛中、怪盗ヌーゼが現れる! ふたりは彼を追い詰めるが、ベルが洗脳を掛けられてしまう! 
 万事休すかと思われたが、フォンが「後でおっぱい触らせてあげるからアイツ倒して!」と叫んだ瞬間、なぜかベルが覚醒する!
 そして、ふたりは無事に怪盗ヌーゼを倒したのだった!

 夜、ベルは「約束は果たしてもらいますわよっ!」と迫り、フォンのおっぱいを触る!
 その後、ついにフォンをオ○ズにオ○ニーしてしまったのだった!


第4話 インキュバスよりおっぱい大きいって、一体何者なんですの?

 

 僕とベルさんはふたりでクエストへ向かっている。馬車が入れないくらい細い道なので、徒歩移動だ。

 本日のクエストは、植物魔獣の討伐である。

 

 細路地を進んでいく。路地は全体的に薄暗く、雨も降っていないのに壁面が濡れているように黒く見える。

 

 僕はベルさんを見る。

 紅蓮色の瞳に、ツインテドリル。鋭い目つきに暗い場所なのも相まって、冷血な騎士団長のような近づきがたいオーラを纏っている。処女だけど。

 

「ところで僕のことオ○ズにした?」

 

「ぶふっ……!?」

 

 ベルさんが噴き出し、目を白黒させながら僕を見る。

 

「な、な、何を言ってるんですの貴方は!?」

 

「え~したんだ~?(笑)♡ こわ~い(笑)♡ 同僚のことオ○ズにしちゃダメだよ?(笑)♡」

 

「貴方が『していいよ』って言ったんじゃありませんの!」

 

「へぇ~(笑)♡ てことは、したんだ~?(笑)♡」

 

 ベルさんは「あっ……」と声を漏らした。やってしまった、という顔をしている。

 

「いやっ、そのっ」

 

「あんなに僕のこと『オ○ズにならない』っていってた癖に、ホントは僕のカラダに興味津々だったんだ~?(笑)♡」

 

「ぐっ……うるっさいですわ……!」

 

「い~っつも僕の胸元見てたもんね?(笑)♡ 遂に触れてよかったね~(笑)♡」

 

「ううっ……!」

 

 ベルさんは悔しげに表情を歪め、唸っている。拳を握り締めているが、何も言い返せないようだ。

 

「僕が屈んだ時とか『むひょ~!』みたいな顔で鼻の下伸ばして覗いてくるもんね?(笑)♡」

 

「そんな顔してませんし覗いてませんわよっ!」

 

「ウソ吐いてもバレバレだよ~?(笑)♡」

 

「してませんからっ! 貴方のおっぱいなんて興味ありませんわっ!」

 

「じゃあ今日からおっぱい触らせないけど」

 

「ごめんなさい触らせてくださいませ!!!!!」

 

 態度だけ強がっても、結局Iカップの魅力には勝てない。この世界の『女』とは、男のおっぱいの前では本心を隠せない生き物なのだ。

 

 そうこうしている内に、任務地に着く。

 

 住宅の壁一面に、びっしりとツタが這っている。そして、そのツタは全て屋上に繋がり――巨大な食虫植物が咲いていた。

 花弁中央の口から、粘液がこぼれ出している。その首元には、象の耳のような、巨大な葉っぱが付いている。

 

 魔獣は僕たちに気付くと、ブンッ!と葉っぱを振った。風に煽られ、ベルさんのツインテドリルが揺れる。

 

「遠いですわね。土魔法で足場を作っていただけますか?」

 

「うん、了解」

 

 僕は土魔法を発動する。ベルさんの足元の土が盛り上がり、住宅と同じ高さの角柱がせり上がる。

 

 そして、魔獣と相対するベルさんは――。

 

「聖騎士団流剣術、第一剣――光星の一太刀(リーシュ・ヴァリル)

 

 強大な魔力を帯びた一太刀が、魔獣を両断する。花弁は真っ二つに裂けて、茎まで分かたれている。完全に絶命していた。

 

「つよ~い! もう僕の出番な~い!」

 

 *

 

 帰り道、私たちはデリカテッセン*1でサンドイッチを買う。近くの公園に入り、ふたりでベンチに座って食べる。

 

 昼下がりの陽気。静かな公園。穏やかで、時間がゆっくり流れているような気がする。

 

「ベルさんほんとに強いね。この国で最強なんじゃない?」

 

「それに近しい実力はありますわ」

 

「ベルさんに勝つ手段なんて、色仕掛けしかないね」

 

「んぐっ……! も、もう引っ掛かりませんわよ」

 

 私は半眼でフォンさんを睨む。私は色仕掛けに引っ掛かって謹慎処分を食らっている。この話は、私にとって汚点であり恥部である。

 

「ところでベルさん」

 

 フォンさんが、座ったまま急に近付いてくる。肩と肩が触れ合いそうな距離感――突然の接近に、ドキンと心臓が跳ねる。

 

「な、なんですの?」

 

「じっとしててね」

 

 フォンさんがさらに身を寄せてくる。そして、綺麗な顔が近付いてくる。

 

 え、なに、なんですの!? うわ、まつげ長っ! 肌白っ! かわいっ! え、ちょ、これ、もしかしてキスされ――!?

 

「きゃあっ!?」

 

 ――フォンさんは私の首筋に顔を埋め、すぅっ~!と深呼吸した。

 

 私は反射的に離れようとするが、ガシッと腕を掴まれ、余計に近づかれる。

 

「ちょっ、はあっ!? なにしてるんですの貴方!?」

 

「昨日、シャワー浴びる前なのに匂い嗅がれたから、そのお返し」

 

 そう言いながら、私の腕をがっしりと掴み、密着する形で首筋を嗅いでくるフォンさん。

 

「や、やめてくださいませっ!」

 

「いい匂いする~! ベルさん好き~!」

 

「し、しませんわよ!」

 

 え、なんで!? 嫌じゃないんですの!? 絶対臭うのに! 女の体臭嗅ぐなんて、私でも嫌ですわよ!? 男性なら尚のこと嫌がりそうなのに、なんでそんなことしてくれるんですの!?

 

 もしかしてこの人、私のこと好きなんですの!?

 

「は、離れてくださいませっ!」

 

「ダメだよ。セクハラしていいのは、セクハラされる覚悟がある人だけなんだよ」

 

「くぅっ……!」

 

 すんすんと、体臭を嗅がれる。徒歩移動が長かったので、汗をかいている。絶対にいい匂いではない筈だ。――こんな可愛い美少年に抱き着かれて、しかも匂いを嗅がれている。

 

 ほ、ほんとに恥ずかしい……! なんか、なんか……嬉しいけど、すごい恥ずかしいですわこれ!

 

「いい匂い……ベルさんすき……」

 

 なんとなく、しっとりした声になってきた。

 

 ……もう絶対私のこと好きですわよね、これ。そうとしか考えられませんわ。

 

 だって『体臭を嗅いで辱めたい』という動機だけでここまでできるんですの? いえ、できるわけありませんわ。

 これは、本当に好んで嗅いでいるはず。つまり――私のことが好き、ということになるはずですわ。間違いありませんわね。

 

「……」

 

「……」

 

 すんすんと、匂いを嗅がれる。鼻息が首に当たって、くすぐったい。

 

 な、なんですのこの時間……。なんか、身体が熱くなってきましたわ……。

 

 しばらく吸ってから、フォンさんは離れてくれた。満足そうな顔をしている。

 

「貴方、変態なんですの?」

 

「ベルさんだって同じことしたくせに」

 

 返す言葉がない……。でも、フォンさんはいい匂いなんですもの、仕方ないじゃありませんの。

 

 この後、私たちは馬車に乗って帰る。のだが、フォンさんは私の真横に座ってきた。普段は向かい合って座っているのに、どうして――。

 

 と思ったら、私の肩に、こてんと頭を乗せてきた。

 

「こ、今度はなんですのっ」

 

「えへへっ、だめ?」

 

 あっ。だめっ、これ、好きになっちゃう……。

 

 *

 

 ――私とフォンさんが出会ってから、1か月が経った。思い返せば、色々なことがあった。

 

 初対面で「ちっさ……」と言われた。

 

 初日から『処女には答えられないクイズ』で、処女バレした。

 

 処女宣言しながら、土下座させられた。

 

 改めて考えると、初日最悪すぎますわね……。

 

 けれど、そこからは――。

 

 初めて「あ~ん」をしてもらえた。

 

 健康診断の時に、後ろから抱きしめられた。私の方からも抱きしめた。

 

 そして、怪盗ヌーゼを倒したご褒美として、おっぱいを触らせてもらえた。

 

 あの日以来、毎日おっぱいを触らせてもらっている。

 『処女』だと煽られることは腹立たしいが、それよりも喜びが勝る。

 

 大きな、おっぱい。

 

 山脈のような、豊かな巨乳。むっちりとした肉付きのよい太もも。その気になればこの世すべての女を篭絡できる、魅惑の肉体を持つ男。

 

 貪りたい。腰を打ち付けて、肉欲に溺れたい。女の劣情を煽る極上の肉体を、好き放題したい。

 

 フォンさんのことを考えるだけで、体が昂る。――媚薬でも飲んだかのような発情。涎が止まらない。頭の中がフォンさんのことで一杯になっていく。

 

 理性が壊れていっている。

 

 おかしい。最近、性欲が収まらない。何かがおかしい。

 

 実は催淫魔法を掛けられていて、そのせいで興奮が止まらないんじゃないですの……? それか、もしかしてあの人、実はインキュバスだったりするんじゃないですの……? 

 

 *

 

 僕とベルさんが出会ってから1か月が経った。思い返せば、色々なことがあった。

 

 胸をガン見していたことをきっかけに、処女であると気付き、『処女には答えられないクイズ』でそれを暴いた。

 

 あの日――僕は、ずっと探し求めていた『処女であることに強いコンプレックスを抱いている女の子』に出会えた。まさしく、理想の女の子だった。

 

 それから、ベルさんにとって因縁の相手である『怪盗ヌーゼ』を一緒に倒した。

 

 そして、おっぱいを触らせることになった。

 あれは誤算だったなあ……。でも、頑なに僕をオ○ズにしようとしなかったベルさんが、僕でオ○ニーしてくれた。

 それ以来、積極的なスキンシップをしたり、毎日おっぱいを触らせたりした結果――どんどんベルさんが僕に夢中になってくれている。

 

 でも、まだまだ足りない。

 

 もっと、遊びたい。弄びたい。『処女』をからかいたい。羞恥に歪むベルさんの顔が見たい。

 

 *

 

 ある日の朝。私はフォンさんと共に、クエストボードの前に立っている。

 依頼書を眺めるフォンさんを、後ろから見てしまう。

 

 白いうなじ、お尻、むっちりとした太もも。

 どこを見てもエロい。フォンさんに視線を向けたが最後、否が応でもエロいことを考えてしまう。

 

「あ、フォンっちと、噂の騎士さんだ! はじめまして~!」

 

 ――その時、後ろから話し掛けられた。振り向くと、3人の男性がいた。

 

 笑顔がまぶしくて体育会系な、猫人族。

 

 おしとやかで清楚そうな、エルフ。

 

 露出度が高く遊び人っぽい、インキュバス。

 

 種族もバラバラ。見た目の年齢は、みんな若そうに見える。というか、陽のオーラがまぶしいですわ。

 

 間にフォンさんが入り、『こっちはベルさん。こっちは誰々と――』とお互いを紹介する。

 

「フォンっちいいな~! 騎士さんと知り合えて、しかもふたりっきりのパーティーとか! 俺たちも女の子と遊びたい~!」と、猫人族さん。

 エルフさんは苦笑し、インキュバスさんは「うんうん!」と頷いている。

 

「え……? このギルド、女性の方が多いですわよね? 女性との出会いには困らないのでは?」

 

「男女比でいえば、3:7ですね。確かに女性の方が多いんですが……不思議なことに、既婚者や彼氏のいる方ばかりなんですよ」と、エルフさん。

 3人も頷いているので、本当らしい。

 

「不思議な環境ですわね。男性の取り合いになるどころか、むしろ男性の方が出会いに困るなんて、聞いたことがありませんわ」

 

「ほんとだよ~! この職場つらすぎ~! だからさ――」と、インキュバスさん。彼はそういいながら――。

 

「っ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ――私の左腕に、抱き着いてきた。

 

 え、え、え、うそ、えっ。なにこれ嬉しっ。えっ、ありがとう……!

 

「よかったら、今夜一緒に食事とかどう?」

 

「!!!!!!!!!!!!!」

 

 それを見ていた猫人族さんは――。

 

「あ~抜け駆けズルい~! ねえねえベルさん、俺と一緒に遊びに行かない?」

 

 ――といいながら、私の右腕に抱き着いてきた。

 

 え。

 

 えっ。えっ、えっ、えっ!? なにこれ!? 両手に花!? マジで嬉しすぎますわ! 

 まさか、これがモテ期ってやつですの!? 私の時代来ましたわ! お~ほっほっほっ!!!!!

 

 ――その時、周囲の空気が、急激に冷え込んだ。

 

 フォンさんが、絶対零度の眼差しで私を見ている。

 

 え、なんですの、その表情。というか、美少年の真顔、怖っ……。

 

「なにデレデレしてるの?」

 

「え、いやっ、そのっ」

 

「男の子に囲まれて嬉しい? ベルさん」

 

 氷像のような、無表情。静かな怒りを宿したスカイブルーの双眸が、私を射抜く。

 

 貴方、そんな顔できたんですのね……。

 

「あ~! フォンっちキレてる~! めずらし~!」

 

「ヤキモチだ~! フォンのそんな顔初めて見た~! ウケる~!」

 

 猫人族さんとインキュバスさんが煽ると、フォンさんの顔が険しいものになっていく。さらに続けて――。

 

「俺たちがベルさんと仲良くなるの、そんなに嫌なの?」

 

「というかベルさんとのパーティー変わってくれない?」

 

 フォンさんの顔が、無表情から怒りの形相に歪んでいく。彼は無言で私たちに近付き――ふたりを強引にどけて、私の腕に抱き着いてきた。

 

「ベルさんは僕のものだから」

 

「――」

 

 ――ベルさんは僕のものだから。

 

 ベルさんは僕のものだから。

 

 ベルさんは僕のものだから。

 

 ……え、なに、それ。え、私、フォンさんのものだったんですの?

 

 フォンさんの顔を見る。猛獣のような鋭い目つきで、猫人族さんとインキュバスさんを睨んでいる。

 けれど、耳が赤い。

 

 ほんとに、ヤキモチ……? 嫉妬してくれてるんですの……? あのフォンさんが……?

 

 静かに、胸の中で温かい喜悦が灯るのを感じる。嬉しくて、たまらない。

 

 なにこれ、なにこれなにこれなにこれ!? なんですのこれ!? えっ可愛いっ! 可愛いっ! 嬉しいっ! なんか……幸せですわ~~~~~~~~~~!

 

「え、ガチじゃんフォンっち。ベタ惚れじゃん」

 

「すごいねベルさん、どうやってフォン口説いたの?」

 

 猫人族さんとインキュバスさんが驚いている。エルフさんも口元を抑え、目を丸くしている。

 

「ベルさんも他の男に抱き着かれてデレデレしないで。この浮気者」

 

「っ……!」

 

 フォンさんの、ジト目。

 

 不健全かもしれないという自覚はあるが、心が昂揚する。フォンさんという絶世の美少年の独占欲が、自分に向けられている。嫉妬心を燃やして、こんなにも怒っている。

 

 胸に湧き上がる、感じたことのない種類の喜悦。口角が上がるのを抑えられない。嬉しくてニヤニヤしてしまう。

 

 き、気分いい……! さ、最高ですわねこれ……!

 

「そっちのふたりも。ふたりがベルさんと付き合うなんて無理だから」

 

「な、なんで無理なの!」

 

「そうだそうだ! そんなの分かんないだろ!」

 

「だって、ベルさんはおっぱいにしか興味ないから!」

 

 ――ギルド会館が、静まり返った。

 

「キミたちみたいな貧乳に、ベルさんは興味ないから!」

 

「何言ってくれてるんですの貴方!?!?!? ちょっ、違いますわよっ! そんな不埒な嗜好は、私にはありませんわよっ!」

 

 私は慌てて訂正する。猫人族さんとインキュバスさんは、一瞬呆けた直後――。

 

「いや貧乳じゃないけど!?」

 

「俺だってGカップあるんだけど!?」

 

 え、G……? さすがインキュバスですわね……。確かにでっか……。

 

「ベルさんはIカップ以上じゃないと『おっぱい』と認識しない人間だから!」

 

「不名誉のバーゲンセールやめてくださいませ! これ以上私の印象落とされたらここで働けませんわっ!」

 

 猫人族さんとインキュバスさんが、がくっと膝をついて項垂れる。

 

「Iカップって……そんなのフォンっちしかいないじゃん……!」

 

「大体人間種(ヒューマン)なのにIカップって何……!? フォンがおかしいんだよ……! フォン基準にしないでよベルさん……!」

 

「してませんわよ!!!!!!!!!!」

 

 *

 

 その夜。

 

「「あっ」」

 

「「「あっ」」」

 

 クエスト帰りの私とフォンさんは、偶然にも猫人族さんたち3人と出会った。

 

「やっほ~フォンっち、ベルさん。一緒に夕飯どう?」

 

 瞬間――見せつけるように、フォンさんが腕を組んでくる。

 

 か……可愛いっ!!!!!!!

 

「いやいや、普通に5人で食事するだけだって。フォンっちも一緒ならいいでしょ?」

 

「……まあ、それならいいけど」

 

 こうして、私たちは、猫人族さんたちと一緒に夕食を取ることになった。

 食堂に入り、テーブル席に座る。片側に私とフォンさん。反対側に、猫人族さん、エルフさん、インキュバスさんだ。

 

 す、すごいことしてますわね、私。こんな綺麗な男性たちと、1:4で食事するなんて……。こんな日が来るとは思いませんでしたわ。これもうハーレムじゃありませんの、最高ですわ。

 

「ねえねえベルさん、ズバリお願いしたいことあるんだけどさ」

 

「なんですの?」

 

「いい騎士さんいたら紹介してくれない?」

 

 猫人族さんの言葉は予想外のものだった。彼は更に続ける。

 

「ベルさんがフォンっちのものなら、他の騎士狙えばいいんだよ!」

 

「頭いい~! 俺も! 俺にも紹介してよ!」

 

「ぼ、僕もお願いしていいですか……?」

 

「え、ええ。いいですわよ。騎士団も女所帯ですから、男性との出会いを求めている方は大勢いますわ。今度知り合いを紹介いたします」

 

 3人は「やった~!」と喜ぶ。更にテンションが上がったインキュバスさんは――。

 

「できればカッコよくておっぱい大きい子で!」

 

「ぐはっ……!?」

 

 ――グサリと、私の心に、突き刺さる。

 

 不意打ちすぎて、一瞬息ができなくなる。

 

「俺も俺も~! イケメンで、おっぱいでっかい子がいいな~!」

 

「ぐふっ……!!!!!」

 

 猫人族さんの言葉が、更に私の心を抉る。

 

 い、痛った……。つら……。

 

 そうですわよね、男の子は、みんなイケメンが好みですわよね。まあ百歩譲ってそれはいいとしても……。

 

 胸……ですのね……。やっぱり、胸は大きくないと駄目なんですのね……。そうですわよね……。Aカップなんて、男性に相手にしてもらえないんですのよね……。泣きたい……。

 

「あ、あの、ベルさん。僕は……ルックスは気にしないよ。どんな人でも、まずは会ってから仲良くなれるか確かめたいな」

 

 エルフさんが控えめに手を上げながら、そういった。

 

 うわ、やさしい……。いい人だ……。清楚で綺麗で優しいとか、天使ですの……?

 

「最低Bカップあれば、それでいいよ」

 

「ぐはっ!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ――心が砕ける音がした。

 

 Aカップって、もうそういう扱いなんですの……!? こんな優しくて清楚な男の子にすら『最低Bカップ以上じゃないと女じゃない扱い』されるんですの!?

 

 きっつ……。

 

 いや、きっつ……。

 

 きつ……。

 

 あ、ヤバいですわ。ほんとに泣きそう。

 

 なんで、なんで、私、Aカップなんですの……? つらい……この世界、貧乳の女に世知辛すぎますわよ……!

 

 もう、何の味もしなかった。何を話したのかも、あんまり覚えていない。

 

 覚えているのは――とにかく辛かったということだった。

 

 *

 

「うぅ……あんまりですわ……」

 

 ベッドへうつ伏せになり、さめざめと泣いているベルさん。余程堪えたのだろう。自室に戻ってくるなり、ずっと死んだように倒れている。

 

「ぐすっ……あのエルフさんは優しくて良識ある素敵な男性だと思ったのに……『最低Bカップ』って言われましたわ……。あんな優しい人にすら恋愛対象外にされるって、辛すぎますわ……」

 

 僕はベッドに腰掛け、ベルさんの頭を撫でながら話し掛ける。

 

「だいじょうぶ? おっぱい触る?」

 

「触りますわ!!!!!!!!!!」

 

 ベルさんは直ぐに起き上がった。

 僕はごろんと横になる。そして、装束を脱ぎ、キャミソールをたくし上げ――おっぱいを露わにする。

 

 たちまち――ベルさんの目がギンッギンになる。性欲全振りの男子高校生のような、エロいことしか考えてない顔だ。

 

「はあッ……! はあッ……! えろッ……!」

 

 瞳孔が開き切っている。カッ!と見開かれた紅蓮色の双眸が、僕のおっぱいを凝視する。

 

「どうぞ、ベルさん」

 

 ベルさんはすぐさま馬乗りになり、僕のおっぱいを触ってくる。いやらしい手付きで摩られ、撫で回される。

 

「硬った……! なんですの、このエロすぎる胸は……! 女性の劣情を煽るためにあるとしか考えられませんわ……!」

 

「ドセクハラだ……」

 

 ベルさんは興奮状態で、僕の胸をまさぐっている。

 

「さっきは、つらかったね。今日は特別におっぱい吸っていいよ」

 

「マジですの!?!?!?!?!?!? す、吸いますわよ! やっぱり駄目っていっても遅いですわよ!」

 

「うん、どうぞ」

 

 瞬間、ベルさんは僕に重なってきて、右乳首を口に咥えた。そして、ちゅ~っと吸引する。

 

「んっ……♡」

 

「ふぅッ~ふぅッ~!!!」

 

 鼻息が胸にかかってくすぐったい。生温かい唇が、僕の乳首をちゅうちゅうと吸う。

 

 僕はベルさんの頭を撫でながら、優しい声で語り掛ける。

 

「よしよし、つらかったね、ベルさん」

 

 ベルさんは赤ちゃんのように僕のおっぱいを吸う。さらにもう片方のおっぱいを手で触り、その感触を堪能している。

 

「あぁ……最高ですわ……心の傷が癒えていくのを感じます……」

 

「ふふっ、よかった」

 

 僕はベルさん(18)の頭を撫でてあやす。

 

 無言のまま、ちゅうちゅうとおっぱいを吸い続けるベルさん。

 

「ベルさん」

 

 僕が名前を呼ぶと、一度唇を離してくれる。

 

「なんですの?」

 

「僕は、ベルさんがAカップでも、ベルさんのこと好きだよ」

 

「……真に受けていいんですの?」

 

「うん。優しい男の子からすら異性として見られないくらい、女として情けない、とっても貧しい胸でも、僕は愛してあげるから」

 

「馬鹿にしてますわよね!?!?!?!?!?」

 

「してないよ。18歳貧乳処女だからって自信なくしちゃダメだよ」

 

「コイツっ……! あんまり調子乗ってると襲いますわよっ!」

 

「同意のないえっちはダメだよ。襲ったら、もう二度とおっぱい触らせないし、パーティーも解散するから」

 

「えっ……」

 

 ベルさんの表情が、世界の終わりみたいな絶望的なものに変わった。そして、縋るように、僕のおっぱいに顔を埋める。

 

「襲いませんから、おっぱいは吸わせてください……」

 

「うん、立場分かってくれてよかった~(笑)♡ ベルさんは僕に『処女』って煽られても反撃できないし、しちゃいけないんだよ~(笑)♡」

 

「ぐうっ……ぐぬぬぬっ……!」

 

「ベルさんは~処女~(笑)♡ 男の子から相手にされなくて毎日オ○ニーしてるのに、S○Xは1回もしたことない処女~(笑)♡」

 

「ふんぬぅうううううううううううううっ! ちゅううううううううううううううう~!」

 

「怒っててもおっぱいは吸うんだ……」

 

 *

 

 翌週。ギルド会館がザワついていた。

 

「なんだか騒がしいね」

 

「ですわね。何かあったのでしょうか」

 

 僕は辺りを見回す。クエストボードとは異なる掲示板に、同じ貼り紙が何枚も貼ってある。

 

 そこに書かれていたのは――。

 

 市内北部1番地から『猫の魔獣』が逃走。召喚者(テイマー)が老衰で亡くなった際、契約関係(テイム)が解除されて脱走。

 もし見つけて連れてきた方がいたら『100万G』お支払いします。ただし、怪我なく生きて連れて帰ってくることを条件とします。

 

「ひゃ、100万!?」

 

「すごい額ですわね。クエスト何回分でしょうか」

 

「ベルさん、今日はクエストお休みして、この猫探しに行こうよ!」

 

「え? ま、まあフォンさんがそういうのであれば……」

 

 僕たちは、猫が脱走したという大金持ちの邸宅へやってきた。辺りには、猫を探していると思しき市民たちがいる。中には、ギルメンの姿もあった。

 

街中(まちなか)の方は探されちゃってると思うんだよね。だから、僕たちは反対側を探そう」

 

「反対側というと……」

 

 邸宅の反対側へ回ると、森があった。

 

「森ですのね。確かに、人と同じ所を探すよりかは期待できそうですわね」

 

「じゃあ行こっか」

 

 僕たちは森の中へ足を踏み入れる。

 

 森の中にも、数名の冒険者を見かけた。更に、白銀の鎧に身を包んだ騎士たちまでいる。非番の騎士だろうか。

 

「騎士と冒険者が揃いも揃って猫探しなんて、平和だね~」

 

「……いえ、非番の時は私服のはずですわ。何か別のものを探していますわね」

 

「えっ」

 

 僕はベルさんを見る。彼女は訝し気な眼差しで、騎士たちを見ていた。

 

「何かってなに……?」

 

「そこまでは分かりませんわ。ただ……何かよくないことが起こっている気がしますわ」

 

 僕たちは森の奥へ進みながら、猫を探す。その時、ベルさんが何かに気付いたのか、小さく声を漏らした。

 

「……っ、あれは……」

 

 こちらに向かって歩いてくる騎士がいる。

 

 ――乳白色の長髪。紫色の瞳。目許には泣きぼくろがある。穏やかな笑みを浮かべた、綺麗な人だ。

 

「ごきげんよう、ベルさん」

 

「……ごきげんよう、ジュリアさん」

 

 ベルさんは嫌そうな顔で挨拶をする。

 

 仲よくないのかな……?

 

「なぜこんなところに、こんな大勢の騎士がいるんですの?」

 

「猫の魔獣を探しています。仮にも魔獣ですから、私たち騎士が動くべきという判断です」

 

「違いますわね。こんな小事(しょうじ)で騎士団が動いたことなんて、一度もありませんわ。本当は何をしているんですの?」

 

「ふふっ、なんでもありませんよ?」

 

 そういって、彼女は微笑む。

 

「ところで、そちらの男性とはどのようなご関係で?」

 

「彼は、パーティーを組んでいるギルドメンバーですわ」

 

「フォンだよ。はじめまして」

 

「ジュリアです。ベルさんとは騎士団員養成学校時代からの同期です」

 

「へ~そうなんだ!」

 

「この先に進むおつもりなら、私も同伴します。戦力は多い方が良いですから」

 

「こんな魔獣も出ない森で猫探しをするのに、戦力がいるの?」

 

「ふふっ、秘密です」

 

「え~? 教えてよ~?」

 

「可愛くいっても駄目です」

 

 妖しい笑みを浮かべるジュリアさん。一方のベルさんは、どことなく不機嫌だ。

 

「ねえねえベルさん、ジュリアさんと仲悪いの?」

 

「貴方どんなメンタルしてるんですの!? 本人の前でなんで訊けるんですの!?」

 

「その質問には、私が答えましょう。私とベルさんの間には、悲しい確執があるのです。養成学校時代、私は、常に次席でした。剣技でも、魔法でも、座学でも、私は二番手。主席はベルさんだったのです。ですが――私の方が男性騎士からモテまくってしまったために、ベルさんは羨望と嫉妬を募らせ、私に憎悪を向けるに至ったのです」

 

「至ってませんわよ! 別に何とも思っていませんわ!」

 

「うわ~。自分の方が優秀なはずなのにモテないって辛いよね。がんばったねベルさん、よしよし」

 

「頭撫でないでくださいませ!」

 

 ――こうして、僕たちは3人で行動し始める。一見、ジュリアさんも猫を探しているように見えるが、何か別の思惑があるのは確実だ。

 

 5分ほど歩きながら猫探しを続けていると、ジュリアさんが声をかけてきた。

 

「ところでフォンさん」

 

「なに?」

 

「今夜、予定は空いていますか?」

 

「うん、空いてるよ」

 

「では、一緒にお食事などいかがでしょうか」

 

「えっ」

 

 ジュリアさんは僕に一歩近づき、僕の顎に指を添える。俗にいう、顎クイだ。

 

「貴方ほど可憐な男の人を、初めて見ました。ぜひお近づきになりたいのです」

 

「お待ちくださいませっ!」

 

 間にベルさんが入り、ジュリアさんの手をはねのける。

 

「この女は養成学校の頃から男を食いまくっている遊び人ですわ! 絶対ホテルに連れ込むつもりですわよ!」

 

「男性のおっぱいを触ろうとして謹慎処分を食らった方に、異性関係の倫理を説かれる筋合いはありません」

 

「そ、それとこれとは関係ありませんわ!」

 

「ベルさんの旗色悪くてウケる~(笑)」

 

「ウケないでくださいませ!!!!!」

 

 余裕の笑みを崩さないジュリアさん。彼女は更に続けて――。

 

「確かに男性経験が多いことは否定しませんが、その人たち全員に対して一途であったことに偽りはありませんよ。一度として同時期に複数の男性と交際したことはありませんし、現に今もフリーの身です」

 

「へ~。ちなみにセフレは?」

 

「5人います」

 

「ゴリゴリのヤリ○ンじゃないですの!?!? えっ、貴女そんなにセフレいるんですの!?」

 

「はい。それで、どうでしょうか、フォンさん。貴方がこれまでに経験したことのないような、素敵な一夜を提供すると約束しますよ」

 

 ジュリアさんはそういって、僕を真っ直ぐ見詰める。

 溢れ出る自信。男慣れした振る舞い。毒蜜のような甘い声に、妖艶さを醸す泣きぼくろ。全身から漂う『強い女』の色香。

 

 でも――僕には、効かない。僕は既に、好みドンピシャの、最高の女の子に出会ってしまっている。

 

「ごめんね。僕はベルさん以外の人に、興味ないんだ」

 

 そういうと、ジュリアさんはひどく驚き、狼狽えた。

 

「べ、ベルさん、貴女……!? ギルドで見栄張るためにレンタル彼氏まで依頼してるんですか!?」

 

「してませんわよ!!!!!!!!!」

 

 その時――森の奥から、木の倒れる轟音が聞こえた。

 

「今の、なに……?」

 

 ジュリアさんが剣を抜いて走り出す。僕たちもそれに続いて走る。

 

 倒木音の発生地へと辿り着く。そこにあったのは、根元から裂けた大木と――。

 

「えっ」

 

 ――肢の先に付いた、凶悪な大鋏。漆黒の甲殻に覆われた体。全長3メートルはあろうかという、巨大なサソリがいた。

 

 魔獣!? どうしてこんなところに、いや、それより――。

 

「ベルさん、あれ!」

 

 巨大サソリの睨む先には――怯える猫がいた。例の100万Gの懸賞金を掛けられた魔獣だ。

 

 サソリは今まさに飛び掛からんとしている。

 

「「聖騎士団流剣術、第二剣――彗星の一太刀(ルリア・ヴァリル)!」」

 

 ベルさんとジュリアさんが同時に駆け出し、サソリへと刺突を繰り出す。

 

 しかし――ガキン!と甲高い音が響き、剣が弾かれた。

 

「硬いっ……!?」

 

 巨大サソリは鋏を振りかぶり、ふたり目掛けて振り下ろす。――ブゥン!と、重たい風切り音。ふたりは咄嗟に距離を取って躱した。

 

 僕は猫とサソリの間に岩人形兵(ゴーレム)を召喚する。そして、サソリの注意がベルさんたちに向いている間に、岩人形兵(ゴーレム)の壁に隠れ、猫を保護する。

 

「「聖騎士団流剣術、第一剣――光星の一太刀(リーシュ・ヴァリル)!」」

 

 魔力を帯びた剣が光り輝き、サソリへと振り下ろされる。

 

 ――勝った、と確信する。あの技は、僕の岩人形兵(ゴーレム)を一撃で両断したものだ。しかも、それが二撃同時に叩き込まれる。どんな魔獣でも、生き残れるはずが――。

 

 剣戟音が鳴る。

 

 サソリの甲殻は鋼鉄がごとく、ふたりの剣を跳ね返した。

 

「うそっ……!?」

 

 ふたりの顔色に焦りが浮かぶ。彼女たちは一度体勢を立て直そうとするが――サソリは鋏を振り回し、攻撃してくる。凌ぐのに精一杯。隙がない。

 

「フォンさん、10秒あれを止めてくださいませ!」

 

「10秒!? ……分かった、任せて!」

 

 何か考えがあるのだろう。きっと10秒あれば何とかしてくれる。

 

「召喚術――大精霊・木賊の杜の大神樹(セオフィリオ・ゴッデスランド)!」

 

 自分の持つ最強の魔獣を呼び出す。巨大サソリの真下の土が隆起し――大樹が飛び出した。巨大サソリは打ち上げられ、宙で一回転し、地面に落ちる。

 

 さらに、大樹から枝が伸び――全重圧を掛けてサソリを抑えつける。枝の帯びる鋭い棘が、サソリの身体へと食い込む。

 

 ――甲高く、耳障りな絶叫。サソリが藻掻く度、枝が軋み、木片が散る。

 

 一方、ふたりは剣を大上段に構えていた。

 魔力が剣に凝集していく。――熱と、赤光。いつ爆ぜてもおかしくない爆弾のように、絶大な魔力が溢れ出さんとしている。

 

「「聖騎士団流剣術、第三剣――超新星の一太刀(バストロード・ヴァリル)!」」

 

 剣が振り下ろされ――大樹もろともサソリは光に飲み込まれる。森全体を揺らすような爆音が轟き、極太の熱線が天へ昇る。

 

 後に残ったのは、抉れた地面と、黒煙だけだった。

 

「つっよ……」

 

 ベルさんとジュリアさんは剣を収める。

 

「危ないところでしたわね。まさか魔獣に襲われているなんて」

 

「うん、でもよかった」

 

 猫は安心したように、僕の腕に抱かれている。

 

「では、話してもらいますわよジュリアさん。なぜここに、こんな魔獣がいたのか」

 

「仕方ありませんね。今からする話は内密にお願いします。実は、研究所の生物実験のために飼育されていた魔獣が脱走しました。私たちは、その駆除のために駆り出されたのです」

 

「それ、だいぶマズいんじゃ……」

 

「研究所始まって以来の大事故だそうです。国家機関の起こした重大事故なので、秘密裏に処理する必要があったのですが、ちょうど『100万Gの猫』がカモフラージュになってくれました」

 

「なるほど、そういうことでしたのね。なんにせよ、人的被害もなく、猫も無事で何よりですわ」

 

 そういってベルさんは猫の頭を撫でようとするが「シャーッ!」と威嚇されてしまった。

 

「な、なんでですの……」

 

「じゃあ僕の方撫でる?」

 

 ベルさんは僕の頭に手を乗せ、優しく撫でてくれる。

 出会った頃のベルさんだったら、絶対こんなことはしてくれなかったと思う。でも、今では毎晩おっぱいを触っているので、あまり緊張せず僕に触れるのだろう。

 

「ごろにゃ~ん♡」

 

「うわかわいいっ……!」

 

「何を見せられているんですか私は」

 

 ジュリアさんは冷めた目で僕たちを見ていた。

 

 ――この後、僕たちは森を出て、屋敷の主に猫を引き渡し、報酬金の100万Gをもらった。分け前はしっかり3等分だ。

 

「ところでフォンさん」

 

 屋敷を出て帰ろうとしたその時、ジュリアさんが真面目な顔で話を切り出してきた。

 

「貴方、何者ですか?」

 

「え? な、何者ってどういうこと? 冒険者だけど」

 

「いえ、そういうことではありません。貴方が召喚したあの魔獣は人間種(ヒューマン)が1人で使役できるものではありません」

 

「え、そうなの?」

 

「……。もしご自身の出自に疑念を覚えたことがあるのなら、一度専門機関で検査してもらうことをお勧めします。おそらく貴方は……人間ではありません」

 

 そういって、ジュリアさんは去っていった。

 

 残された僕は、しばらく無言で立ち尽くす。

 

 僕が……人間じゃない?

 

「考えすぎだとは思いますが、検査、受けるんですの?」

 

「ん~どうしよっかな」

 

 *

 

 後日、僕は病院を訪れた。半信半疑で、検査を受けてみた。

 

 まあ、どうせ「普通の人間」という結果が出るに決まって――。

 

「貴方には、人間のものではない血が混じっていますね」

 

「……え?」

 

 医者が、手元の検査結果を見ながらそう告げた。

 

「おそらく、人間種(ヒューマン)と何かのハーフでしょう。特定は難しいですが」

 

「え、ちょっ、待ってください。だって、僕のお母さんとお父さんは、どっちも人間なんですよ……?」

 

「お伝えしにくい話ですが……何か事情のあるご家庭なのでしょうね」

 

 僕は動揺して、その後どんな話を聞いたのか覚えていない。ひとりの帰り道が、なんだかひどく不安で寂しい。

 

 胸を抑え、立ち止まる。青空を仰ぎ、誰にともなく呟く。

 

「僕は、何者なの……?」

 

*1
総菜パンなどを売っているお店





『フォン』

性別:男性
種族:?
容姿:銀髪、水色の瞳。この世界においてIカップ相当の巨乳(胸板が大きい程カップ数が大きい)
職業:Aランク冒険者・召喚術士
備考:処女をからかって遊ぶのが大好き。

『ベル』

性別:女性
種族:ヒューマン
容姿:金髪、ツインテドリル、紅蓮色の瞳。Aカップ。
職業:騎士団員(謹慎中)→仮冒険者
備考:処女であることに強いコンプレックスを抱いている。
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