処女が許されるのは16歳までだよね~?   作:耳野笑

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 前回のあらすじ!

 フォンとベルは、ドスケベエロ魔道具『くっ殺SMウィップ』の回収クエストを依頼された!

 ふたりは雪山に登り、テントを立てる!
 ベルはフォンの背中をタオルで拭きながらチ○ポを覗こうとするが、尻尾で目隠しをされ失敗に終わる!

 ふたりは『くっ殺SMウィップ』を回収することに成功する! しかし、それを手にしたフォンは、ベルに対して使ってみたくなってしまう!

 ベルは突然洗脳を掛けられ、四つん這いにさせられる! そして、鞭で打たれながら「マゾ(笑)♡ マゾ処女(笑)♡ 一生男の子と繋がる予定のないザコマ○コ♡」と、耳元ASMR処女煽りをされる!

 ベルは興奮と屈辱に身を震わせながら、必ずやフォンを理解らせると誓ったのだった!


第8話 水着回!!!!!!!!!!

 

「フォンっち、ベルさん! 一緒に海行かない?」

 

 ある日、私たちはギルド会館の食堂でそう誘われた。

 

 誘ってきたのは、ギルドメンバーである3人の男性。陽キャ猫人族さん、清楚系エルフさん、露出多めインキュバスさんの3人だ。

 

「海ですの?」

 

「そうそう、遊び行こうよ! 俺たちの友だち何人か誘ってるんだけど、フォンとベルさんにも来てほしいな!」と、インキュバスさん。

 

 フォンさんを見ると、目が合った。

 

「ベルはどうしたい?」

 

「うっ……」

 

 行きたい。『男の子と海へ遊びに行く』なんて機会、騎士団にいたら絶対やってこなかった。

 

 でも――。

 

「その、海ということは、当然水着で遊びますわよね?」

 

「うん、その予定だよ」

 

 不本意ながら、私は胸が小さい。

 

 女性らしい膨らみのない胸。スポブラでも困ったことのない大きさだ。幸い服の上からだと大して目立たないが、水着を着ると露骨にラインが出てしまう。

 

 フォンさんと初めて会った時の記憶がフラッシュバックする。

 

 半裸を見られ――「ちっさ……」と言われた。

 

 さらに、ちらっと、清楚系エルフさんを見る。

 

 女性のタイプの話題で彼が言った――「最低Bカップあれば、それでいいよ」

 あの一言は、私に大きな絶望を与えた。Aカップは論外だと、一瞥の価値もない存在だと、ガラクタのように捨てられた気持ちだった。

 

 それが、男性のリアルな本音、なんですのよね。

 

 Aカップなんてバレた暁には、どういう目で見られるか……。

 

 でも、海には行きたい。フォンさんと遊びたい。

 

 私は煩悶し、呻き、悩み抜いた末に――。

 

「い、行き、ますわ……」

 

「じゃあ僕も行く~」

 

「やった~! ありがと~ベルさん! フォンっち!」

 

 了承してしまった……。ですが、私には秘策がありますわ。きっとなんとかなりますわ。

 

「ところでさ、いつのまにか呼び捨てになってるね」

 

「あ、確かに!」

 

「フォンって前まで『ベルさん』って呼んでたよね?」

 

 エルフさんの一言で、猫人族さんとインキュバスさんが目を輝かせて色めき立つ。

 

 すると、フォンさんが私の腕に抱き着いてくる。ぴたっと密着し、私の肩に埋めるように小首をかしげる。

 

「……えへっ」

 

 フォンさんは何も答えず、あざとい笑みを浮かべた。

 

 瞬間、3人は何かを察したような面持ちになる。

 

「あ、あぁ~」

 

「おめでとう、フォン、ベルさん」

 

「カップルになってもたまには俺たちと遊んでくれよ」

 

 な、なんか誤解されてるような……。い、いいんですの?

 

 これ、私と恋人になることを望んでいると、捉えていいんですの?

 

 *

 

「すご~~い!!!! 窓から海見える~~~~~~~!」

 

 私たちは海沿いの宿に着き、それぞれの部屋に入った。私とフォンさんは同室である。

 

 窓からは海辺が一望できる。紺碧の海、白い砂浜、澄んだ青空。窓を開けると、夏の海の匂いが香る。

 

「じゃあ、水着に着替えちゃおっか」

 

「……」

 

「ベル?」

 

「…………」

 

 ついにこの時が来てしまった。海へ来ると決めた以上、避けては通れない道が。

 

 私は大きく深呼吸をする。そして、覚悟を決めてフォンさんへと告げる。

 

「フォンさん、恥を忍んでお願いしますわ。どうか笑わないでくださいませ」

 

 私のただならぬ様子を見て、フォンさんも事情の重さを悟ったのだろう。碧色の瞳を見開き、剣呑な表情を浮かべる。

 

 そして、私は服を脱ぎ捨て、水着姿になる。瞬間――フォンさんは「ぶふっ……!!!!笑笑笑笑笑笑」と噴き出した。

 

「笑わないでくださいって言ったじゃありませんの!」

 

「べ、ベルっ……! なにそれっ……どうしたのっ……!?」

 

 私はワンピース風の水着を着ている。露出面積は少ない。

 騎士として、令嬢として、自然で慎み深い装いだ。

 

 けれど、問題はそこではなく――胸に入れたパッドである。

 

 私は今、胸にシリコン製の人工おっぱいを入れて、Bカップを装っている。

 

「あははははははっ!!!!笑笑笑 お腹痛いっ!!!!笑笑笑 偽乳騎士面白すぎてっ……!!!!笑笑笑」

 

「偽乳騎士とか言うのやめてくださいませっ!」

 

 フォンさんは爆笑し、そのまなじりには薄っすらと涙が光っている。

 

 くっそ……! だから嫌だったのに……! わざわざ「笑わないで」って前置きまでしたのに……!

 

「Bカップくらいかな? 絶妙だね、服の上からだと気付かなかったよ」

 

「……変でしょうか?」

 

 フォンさんが私に近付き、目の前で胸をじっくり観察する。上から覗き込み、さらに横からも下からも確認する。

 

「いいパッドだね。全く偽物には見えないよ」

 

 とりあえずホッとする。質の良いものを買ったとはいえ、パッドが自然に見えるかどうかは不安だった。

 

「それに、盛ってるのに平均より小さいなんて想像もしないから、誰にも疑われないと思うよ(笑)♡」

 

「こいっつ……!」

 

 フォンさんは目を細め、私を見上げる。碧色の瞳には、獲物をいたぶるような嗜虐の色があった。

 

「恥ずかしかったんだ、貧乳だってバレるの(笑)♡」

 

「ぐぅッ……!」

 

 Aカップのまま水着を着れば、胸の小ささがバレる。

 女として劣っていると。自分の力で男性を獲得する魅力を欠いていると。歴然と、明白に示されてしまう。

 

 Aカップだとギルドメンバーにバレたら、どうなるか。

 

 彼らが悪い人なら、冷ややかな目で見られ、陰であだ名を付けて笑われるに違いない。

 

 いい人だとしても、生温かい目で見られ、気を遣われるに違いない。

 

 どちらにせよ、辛い未来が待っている。

 

 だから――盛るしかなかった。

 

「偽乳騎士(笑)♡ 偽乳令嬢(笑)♡ 偽乳ベル(笑)♡」

 

「っ……!」

 

「見栄張ってパッド入れるのかわいい~(笑)♡」

 

「ぐぅううううううううっ……!!!」

 

 悔しい悔しい悔しい悔しいッ……!!!!!!

 

 女としての劣位を笑われている。コンプレックスを馬鹿にされている。

 

 血潮が燃えるように熱く、顔から火が出そうなくらい恥ずかしく、頭が沸騰しそうなくらいムカつく。

 

 くっそおッ……!!!!!! 

 

 憤死しそうッ……!!!!!!!!!!!

 

 フォンさんは喜色満面、愉しそうな笑顔を浮かべ、私へさらに近づいてくる。

 

 ――半ば抱きしめるような距離感。背伸びをして、私の右耳へ向けて、直で罵倒を吹き込んでくる。

 

「素のままじゃ男の子の前に出れない処女(笑)♡ しょ~じょっ(笑)♡」

 

 ――頭の中で、なにかがブチッ!と切れる音がした。

 

 私はフォンさんをベッドに押し倒した。乱れる銀髪。驚きに見開かれる、碧い瞳。

 

「もうガマンなりませんわっ!!!!! 今日こそマジで襲いますわこのオスガキッ!」

 

 私は彼の首筋に顔を埋め、すぅ~っ!と深呼吸する。ミルクのような甘い香り。男の子のいい匂いだ。

 

「なんで嗅ぐのっ!?」

 

「なんですのこのエロい匂いはっ!? やっば……! マジで下半身に響きますわっ……!」

 

 興奮が止まらない。フォンさんの首筋に舌を這わせ、撫で上げるように舐める。

 

「このっ……! ひゃあっ!?」

 

 生理反応か、防御反応か、インキュバスの翼が生えて、尻尾が飛び出す。

 

 黒い尻尾が私の目を覆うように巻き付いてくる。――ので、私は尻尾をぱくっと咥えた。

 

「えっ……!?」

 

 さらに尻尾を口に含んだまま、れろれろっ♡と舌で舐める。

 

「あっ♡ あっ♡ あっ♡♡♡」

 

 執拗に舌で舐り、口の中で転がすように舐め回す。

 

「んんっ!♡ んぅっ!♡」

 

 身体をびくっと跳ねさせながら、髪を振り乱すフォンさん。整えられた綺麗な銀髪が千々に乱れる。

 

 息は荒く、スカイブルーの瞳は涙で潤んでいる。頬は紅潮し、身体が火照っているのが分かる。

 

「フォンさん、貴方ちょっと気持ちよくなってませんこと?」

 

「は、はあ!? なってないけど!」

 

 私はフォンさんの服を乱暴に弾き、インナーをぐいっと引っ張り上げて、おっぱいを露出させる。

 

 ――ピンク色の乳首が、ピンと立っていた。

 

「乳首、びんっびんに勃ってますわよ」

 

「ち、違うしっ」

 

 両乳首を摘まみ、ツマミを回すように思いっきり抓る。

 

「んひゃあんっ!!!!!!!!!♡♡♡」

 

 右乳首を時計回りに、左乳首を半時計周りに、ぐいっ!ぞりいっ!と抓り上げる。

 

「んんっ!!!!!♡♡♡ んあっ!!!!!♡♡♡」

 

「随分可愛い喘ぎ声ですわね?」

 

「喘いでないし! 驚いただけだかっ――んあっ!♡ んぅっ!♡ だめっ!♡」

 

 言葉を遮るように乳首を抓ると、たちまち甘い声で啼くフォンさん。

 

 さっきまでの私を嘲笑っていた余裕はなく、与えられる快楽に身悶えしながら必死に耐えている。

 

「んぅっ……!♡」

 

「え、エッロ…………」

 

 乳首を抓るたびに、腰をビクンっと跳ねさせ、甘く官能的な声を上げるフォンさん。

 ツマミの部品のように、右、左、右、左と捻ってあげると、その度にいやらしい嬌声が上がる。

 

 もっと喘がせたい。もっと辱めたい。

 

 私は欲望の赴くまま、乳首を抓る強さを上げていく。ぞりぃっ!と抓ると、フォンさんは――。

 

「んあああああああっ!!!!!!♡♡♡ あっ!♡♡♡ ああんっ!♡♡♡ らめっ!♡♡♡ もう乳首だめっ!♡♡♡」

 

 フォンさんは気持ちよさそうに身体を海老反りにし、可愛らしく煽情的な声で啼く。雌の興奮を煽る、エロい喘ぎ声だ。

 

 ――恍惚。自分の手でオスをひいひい言わせるという状況に、たまらなく支配欲が満たされる。

 

 愉しい。

 

 愉しすぎて、どうにかなりそうですわっ!!!

 

「このドスケベ男っ! Aランク冒険者なのに乳首だけクソザコEランクなんですのねっ!」

 

「誰が乳首だけクソザコEランクだ!!!!!」

 

 怒りながら吼えるフォンさん。でも、ぜんぜん怖くない。むしろ嫌がる様子がますます加虐心を煽って、興奮が止まらない。

 

「んっ……!♡ このっ……! もうだめ! おっぱいおしまい!」

 

「口ではそういっても、貴方の乳首はこんなにも虐めてほしそうにびんっびんに自己主張してますわよ?」

 

「してないから!」

 

 青色の瞳はうっすら潤んでいる。顔は熟れたリンゴのように紅潮していた。

 

 フォンさんは悔しそうに唇を噛みながら睨んでくる。

 

「処女には分からないだろうけど、こんな拙い愛撫で男が感じるなんて幻想だから!」

 

「へぇ……」

 

 ウソだ。どれだけ口では強がっても、身体は正直だ。

 

 私は尻尾を口に含み直し、思いっきり舌ビンタしながら、両乳首を抓り上げる。

 

「んあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ まってっ!♡♡♡ らめええええええええええええええええええええっ!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」

 

 断末魔みたいな大音声。自分が性交しているのではないかと錯覚するほど、バカデカい喘ぎ声で啼き散らすフォンさん。

 

 初めてフォンさんの乳首に触れた時は、こんな絶叫みたいな嬌声ではなかった。ここまで派手に喘いでいなかった。

 

 これが、淫魔の覚醒。性欲と、感度が2倍になっている。インキュバスの血を半分しか引いていないとはいえ――明らかに感じ方が違う。

 

「凄い感度ですわね……これが、淫魔(インキュバス)としての覚醒を迎えた身体……」

 

 興奮のせいか、涎の分泌が止まらない。

 

 もっと、もっといじめたい――。

 

 ――瞬間、指が動かなくなった。自分の身体の末端から芯に掛けて、動かなくなっていく。

 

 あれっ……?

 

「はあっ……はあっ……! やっと効いた……!」

 

 馬乗りされていたフォンさんは私を押しのけて、体勢を整える。

 

 ま、まさか、私の愛撫を受けながら、洗脳を掛け続けていたんですの!?

 

「耐性付いてきてるのかな……前はもっと早く効いたのに」

 

「ぐぎぎ……身体が、動かない……!」

 

「残念だったね。処女が僕を理解らせようなんて100年早いよ」

 

 フォンさんは乱れた着衣を整える。そして、立ち上がり――。

 

「じゃあ、海行こっか。みんな待ってるだろうし」

 

 *

 

 今回の海水浴に参加するメンバーは7人。

 

 女性は、私と、犬人族さんと、ダークエルフさんの3人。

 

 男性は、フォンさん、猫人族さん、エルフさん、インキュバスさんの4人。

 

 ちなみに、犬人族と猫人族さんさんは、同じパーティーのメンバーであり、元カノ元カレの関係らしい。私の知らない世界だ。

 

 また、エルフさんとダークエルフさんは一夜だけ共にしたことのある男女――つまり、お互いワンナイトの相手らしい。私の知らない世界だ。

 

 私たち7人は水着姿で砂浜に出る。

 

 ――その中でも、フォンさんの姿はひと際目を惹く。

 

 白銀の髪が、陽射しを跳ね返して煌めく。その銀髪は、神聖さすら感じさせるほどの透明感を纏っていた。

 青い瞳は、真夏の空と同じ涼やかさを宿している。

 

 そして何より、黒ビキニに覆われる――おっぱい。肉感的。涎が出そうなほどの、官能。

 みっちり♡と淫猥に膨らんだ、厚い胸板。その肌色を見ているだけで劣情を煽られる、大きな胸。

 

 可憐な天使の美貌と、妖艶な淫魔の肉体。女の理想をこれでもかと詰め込んだような、最高の男がそこにはいた。

 

「どう?」

 

「……最高ですわ」

 

「えへへっ、ありがとっ」

 

 フォンさんは真夏の太陽のような、弾ける笑顔を浮かべた。

 

 その一方――猫人族さんとエルフさんは、テンション低めだ。

 

「フォンっちの前でビキニ着るの嫌すぎ……」

 

「残酷な格差社会だ……」

 

 ふたりは自分たちの胸を見ながら肩を落としていた。

 

 男女では胸の価値が違いますが、気持ちは分かりますわよ……。

 

 そして、犬人族さんとダークエルフさんは「海来てよかった!」「眼福だあ!」と、正直に盛り上がっていた。私も同じ意見ですわ。

 

「じゃあ、みんなで遊ぼっか!」

 

 猫人族さんの言葉をきっかけに遊ぶこと1時間――砂の城造り、ビーチバレー、目隠しスイカ割り。どれも、初めての体験だった。

 

「……」

 

 ふと、空を見上げる。まぶしい太陽。澄んだ夏空。

 

 ――私の青春は、ここにあったのかもしれませんわね……。

 

 男性4人がビーチバレーで遊んでいる。私たち女性陣は3人とも休憩中である。

 

「ねえねえベルさん」

 

 犬人族さんが小声で話し掛けてくる。

 

「その、さ。海へ出る前に、各自の部屋で水着に着替えたわけじゃん」

 

「そうですわね」

 

「私たちの部屋、隣だったんだけど、聞こえちゃってさ」

 

「聞こえたって何のこと――」

 

 瞬間、先ほどのフォンさんの痴態が頭をよぎる。

 

 ――んあああああああっ!!!!!!♡♡♡ あっ!♡♡♡ ああんっ!♡♡♡ らめっ!♡♡♡ もう乳首だめっ!♡♡♡

 

「あっ……」

 

 血の気が引く。

 

 ヤバっ、あれ、聞かれてたんですの……!?

 

「ベルさん! 実は私の彼ピ、行為中全く声出さないんだけどさ! どうやればあんなに男を喘がせられるの!? 教えて!」

 

「いや、ちょっ」

 

 頼み込んでくる犬人族さんに、困惑する私。すると、ダークエルフさんも――。

 

「私も気になる! 前にえっちした時、『下手くそすぎ』って言われて悩んでたんだよ! お願いだから教えてくださいベルさん!」

 

「ちょ、まっ、待ってくださいませっ」

 

 犬人族さんとダークエルフさんが、私に懇願してくる。どちらも切実そうな、真剣な面持ちだ。

 

 私、処女なのですけれど。

 

 処女なのに、陽キャリア充たちから性行為のテクニックについて教えを乞われているのですけれど。

 

 ど、どうすればいいんですの?????

 

 そもそもS○Xなんてしたことないんですのよ?

 

 私が授けられる技術なんて何ひとつないんですのよ?

 

「と、というか、おふたりのお相手の男性のことを知らないと、具体的なアドバイスは難しいですわ」

 

「マグロ。無反応。全然反応してくれない。喘ぎ声なんて1回も聞いたことない」

 

「私とS○Xしてる時、どんどん機嫌悪くなっていって、最後に『下手くそ』って言われて泣いた」

 

「う、うわぁ……」

 

 きっつ……。私が初体験の時それ言われたら二度とS○Xできなくなりますわね……。

 

 というか、フォンさんってやっぱり、身体がザコすぎるんじゃありませんの?

 

 元々乳首弱かったのに、インキュバスとして覚醒を迎えて感度が2倍になったから、ますますザコ体質になってるんじゃないですの?

 

 でも、それを言う訳にもいきませんわ。

 フォンさんは半魔であることはカミングアウトしてませんものね。インキュバスは元被差別種族なので、やっぱり抵抗があるようですし。

 

「その、遠慮せず思いっきり責めた方がいいと思いますわ。私がしているのはそれだけですわ」

 

「それで上手くいくの!? そんなのベルさんくらいだよ!?」

 

「ヤバすぎ! 凄すぎて参考にならない!」

 

 おふたりは尊敬の眼差しで私を見る。

 

 いや、やめてくださいませ……。いたたまれませんわ……。

 

 うぅ……。どうしてこんなことに……。私悪くないのに……。フォンさんのばかデカ喘ぎ声のせいなのに……。

 

 *

 

 海岸線を歩いていくと、岩壁に囲まれた入り江があった。陸地を抉るように海水が侵入していて、半月型の空間が空いている。

 

 その空間に、巨大な廃船があった。船首の木材がぽっきりと折れている。

 

「おっきな船~!」

 

「すご~い! ねえねえみんな! かくれんぼしない?」

 

 猫人族さんの提案に、みんなも賛同する。ジャンケンにより、鬼役はインキュバスさんの担当になった。

 

「瓦礫でケガしないようにね~!」

 

「まあ、万が一ケガしたとして、治癒術士(ヒーラー)いるから平気だけどね!」

 

「あははっ、いつでも任せてね」

 

 エルフさんが胸を張る。あの人治癒術士(ヒーラー)なんですのね。

 

 私たち6人は船に入り、各々の隠れ場所を探す。

 

 暖炉と豪奢な机のある談話室。撞球やダーツのセットが供えられた遊戯室。華々しい大食堂。そして、同じ内装の部屋がいくつも続いたエリア。

 

 これ、客船だったんですのね。

 

 私は、食堂の調理室に隠れる。普通に客船に乗っても入れない場所なので、ちょっとワクワクする。

 

 木箱を積んで死角となるスペースを作る。何かしらの食材が入っていたであろう麻布を床に敷き、壁に背中を預けて座る。

 

 すると、足音が聞こえてきた。こつこつ、と靴音を響かせ、こっちに向かってくる誰か――あれ、これあっさり見つかりそうですわね。

 

「あ、ベルだ」

 

 フォンさんだった。隠れ場所を探すために別れたのに、たまたま合流してしまったようだった。

 

「いいところ見つけたと思ったんだけどな~」

 

「申し訳ありませんが、早い者勝ちですわ」

 

「ん~やっぱり遊戯室に隠れようかな――」

 

 その時、別の足音が近づいてきた。今度こそインキュバスさんかもしれない。

 

 私は小声で「早く移動してくださいませ」と伝えるが、フォンさんはニヤっと微笑んで――。

 

「いっしょに隠れよう?」

 

「!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ――フォンさんは私に覆いかぶさるように座ってきた。

 

 フォンさんのいい匂いが、鼻腔に直撃する。

 

 何度も触れてきた身体。なのに、不意の接近にドキッとしてしまう。

 

 男の子のカラダ。お互い水着姿なので、温かい体温が直に沁み込んでくるように伝わる。

 

「ほら、もっとくっつかないと、見えちゃうよ?」

 

「あっ、あっ、あっ」

 

 フォンさんが密着してくる。私の背中に腕を回し、抱き着いてくる。

 

 腕も、腰も、華奢だ。抱きしめ返すと、折れてしまいそうに細く、男の子の小ささを感じる。

 

 想定していない接触が、嬉しい。こう、スケベ心に刺さる。幸せホルモンがドバドバ放出されてる。

 

「ベル、心臓の音すごいね」

 

 やかましく、ハイペースで脈打つ心臓。

 

「僕とくっつけてドキドキしてる?」

 

 小声で、耳元で、直に吐息を吹き込まれるような、淫靡な囁き。

 

 妖しく蠱惑的な声が耳をくすぐって、気持ちよさとくすぐったさに耐えきれず体を逃がそうとする――けれど、密着されているせいで、身動きできない。

 

「男の子に触るだけで発情しちゃう処女(笑)♡」

 

「ひぅっ……!」

 

「処女(笑)♡ 処女(笑)♡ しょ~じょっ(笑)♡」

 

「あっ、あっ、あっ……!♡」

 

 逃げることを許されず、弱点を責められる。

 

 砂糖菓子のような甘い声で、一番触れられたくない「処女」を馬鹿にされている。

 

 悔しくて、熱い。吐息をかけられる右耳だけ、異常に熱を帯びる。

 

「男の子と3秒話すだけで恋しちゃう、くそザコ処女(笑)♡ ざぁ~こ(笑)♡」

 

 なにこれっ、腰浮くっ。エロすぎて腰抜けそうっ……。

 

 堪えきれず、ぎゅっとフォンさんの身体にしがみつく。その間にも絶えず右耳を責めるあざとい声。生温かい吐息と、甘い声がこそばゆくて、びくびくっと反応してしまう。

 

 その時――。

 

「あ、フォンとベルさんみっけ」

 

 いつの間にか近付いてきていたインキュバスさんが、木箱の向こうから私たちを見下ろしてそういった。

 

 彼は密着し合う私たちを見て、数秒の沈黙の後――。

 

「もしかしてヤってた?」

 

 私は肩で息をしながら否定しようとするが、フォンさんは――。

 

「ふふっ、他の人には秘密にしてくれる?」

 

「りょーかーい。それにしても、ホントラブラブだね」

 

 インキュバスさんは次の人を探しに行く。

 

 ……いいんですの? もう、冗談では済まないくらい皆に誤解されてますわよ?

 

 それとも、もう誤解ではなく、真実にしてしまってもいいんですの?

 

 *

 

 日が沈み、僕たちは宿へ戻った。夕食と入浴を済ませて、各自の部屋へ戻る。

 

 窓を開けると、海風が髪先を揺らした。

 

 宿から見える海は一面真っ黒で、月だけが蒼白く輝いていた。潮騒がこの部屋まで聞こえてくる。

 

 ベルが隣に立つ。僕と同じように、夜の海を眺めている。

 

 お風呂上がりで上気しているのか、白皙の頬に朱が差している。黄金の髪も、夜闇に混じり溶ける。

 

 月を見上げる紅蓮色の双眸だけが、燃えるように赤く輝いていた。

 

 高貴さ。上品さ。慎み深さ。静けさを纏い、髪を下ろした彼女の姿は、花も恥じらう深窓の令嬢のように淑やかだ。

 

「きれいだね」

 

 そういって、僕はベルに微笑む。

 

「……っ」

 

 ベルが息を飲む音が聞こえた。

 

「どうしたの?」

 

「貴方が、あまりにも綺麗で」

 

 *

 

 頬を撫でる海風。

 

 こちらを見て微笑むフォンさん。

 

 銀髪の髪が、月光を吸い込み、照り返す。淡い蒼銀色の光を纏う彼は、湖面を漂う小精霊のようなこの世ならざる美しさを帯びていた。

 

 月光に照らされ、仄かに潤むスカイブルーの瞳。清涼で、静謐で、神秘的。

 

 そんな彼が私だけに向けてくれる、楽しそうな姿。その笑顔に、もう何度目かも分からないけれど、心臓を射抜かれる。

 

 こんな理想の美少年が、夢想家の書いたおとぎ話の中でもなく、芸術家の描いた価値ある名画の中でもなく、現実にいる。

 存在していることそのもの――その事実が恐ろしくなる程の、圧倒的な美。

 

 だから、思わず言ってしまった。

 

「貴方が、あまりにも綺麗で」

 

 自分が何を言ったのか理解し、急に恥ずかしくなって居た堪れなくなる。

 

 フォンさんも、びっくりして言葉を失っている。

 

 大きくて、つぶらな瞳。不意を打たれ、わずかに紅潮した頬。言葉を探し、言いあぐねる唇。恥ずかしそうにうつむく姿。

 

 驚いた顔すら、可愛かった。

 

「……ベル」

 

 数秒の沈黙を、フォンさんはするっと脱して、口を開いた。

 

「好きです。付き合ってください」

 

「――」

 

 ……え?

 

 …………。

 

 ………………え。

 

 えっ!?!?!?!?!?!?!?!?

 

 好きです。付き合ってくださいって言った!? 言われた!?

 

 私、いま、告白されて――。

 

「返事、ほしいな」

 

 フォンさんは余裕の笑みを浮かべて、私を試すように上目遣いで覗き込んでくる。

 

 なんっっっで告白した方がそんな余裕で、告白された方がこんな狼狽えてるんですの!?

 

 でも――息を整える。心の整理なんてできるわけないけど、せめて、言葉を間違えないように。

 

「喜んで。私も、貴方のことが好きですわ」

 

 自分の中にハッキリと存在する答えを、フォンさんに告げる。

 

 彼は一度目を閉じて、ゆっくりと開いた。表情は笑っていたけれど、まなじりが薄っすらと光っている。

 

「よかった」

 

「――」

 

「どう? 人生で初めて、恋人ができた心境は?」

 

「……実感できるほど、心の整理ができていませんが」

 

 理解が、遅れてやってくる。

 

 私に、恋人ができた。

 

 彼氏ができた。

 

 唐突に、過去の記憶がフラッシュバックし、高速で脳裏を流れていく。男性が全く、全く、まっったく出てこない灰色の思い出たち。

 

 養成学校時代も、騎士団に入団してからも、一度も男の子との縁がなかった。男性との交際なんて、夢のまた夢。

 

 優秀だったせいでプライドばかりが膨らんでしまった、ただの拗らせ根暗処女だった私。

 

 そんな私に、恋人がいる。今。

 

 私の頭の中にではなく、現実に。今、目の前に、私の彼氏がいる。

 

 ……理解の次に、実感がやってくる。

 

「フォンさん」

 

 胸に熱いものが込み上げる。一瞬で涙腺が崩壊し、涙が溢れ出す。

 

「私、わたくしっ……嬉しい……! 幸せです……!」

 

 彼氏、できた。

 

 彼氏、できたあっ……!

 

 やったああああああああああああああああああっ!

 

 フォンさんは半歩私に近付く。お互いの距離は、ほとんどゼロ。

 

 彼は私の目許に指を当て、涙を拭う。そして、ゆっくりと、目を開けたまま顔を近づけてきて――。

 

 唇に触れる、柔らかな感触。

 

 近くて、目の前に、青い瞳があって。

 

 ――数秒して、フォンさんの顔が離れていく。

 

「大好き」

 

 フォンさんの瞳は、恋をしていた。向けられる恋慕が、甘く、重く、私の心に浸透する。

 

 一旦整理できた思考が、また熱を上げて、千々に乱れる。

 

「今の、僕のファーストキスだよ」

 

「……わ、わたくしも、です」

 

 うわごとのように、私はそういった。

 

 ファーストキスだった。

 

 キスをした。私が、男の子と。

 

 フォンさんと、唇を重ねた。

 

 昨日まで、年齢=彼氏いない歴だった喪女の私が、彼氏もいて、キスもしている。

 

 あまりの人生の激変っぷり。心も、体も、ただただ驚愕を無抵抗に受け入れ震えるしかない。

 

 すっっっっっっご……。

 

 私、すっご……すごいことしてる……。

 

 キスしちゃった……彼氏と……。うわ、すご……。

 

 すごぉおおおおおおおおおおおおおおっ!

 

 私は感情の赴くまま、フォンさんを抱きしめた。小さく、愛くるしい男の子。大好きな彼を抱きしめて、温かな体温を感じる。

 

 私たちは、しばらくそうやって抱き合っていた。

 

 やがて、どちらからともなく離れ――窓を閉めて、ふたりでベッドに入る。

 

 私はフォンさんに覆い重なり、彼に顔を近づける。抵抗なく、キスを受け入れてもらえた。お互いの唇の熱が、溶け合う。

 

 一度唇を離す。

 

 青色の瞳が、じっと私を見ている。

 

 ――これ、イケる。

 

 絶対イケる。処女、卒業できる。

 

 私は、生唾を飲み込む。興奮と緊張で手が微かに震える。でも、それを振り払い、フォンさんの服を脱がそうと手を伸ばす。

 

 瞬間、がしっと手首を掴まれた。

 

「えっ」

 

「まだダメ」

 

 フォンさんはにっこりと笑っている。可憐な男の子のあどけない笑顔ではなく、オスガキ特有のあくどい笑顔だった。

 

「今日はしないよ。このまま寝よう?」

 

「な、なんでっ!?!?!?!?!?」

 

「うるさっ」

 

「今S○Xする雰囲気だったじゃないですの! 完全にS○X1秒前じゃないですの!?」

 

 全力で迫るが、フォンさんは冷静に私を見つめる。

 

「ごめんね。僕、ベルに言ってなかったことがあるんだ」

 

「な、なんですの?」

 

「僕、ベルと出会うまで『処女をからかって遊ぶ』のが、ずっと夢だったんだ」

 

「……はい?」

 

 フォンさんの表情は大真面目だった。

 

 え、なに、なんの告白ですのこれ?

 

「処女であることに劣等感を覚えてるプライドの高い女の子を、からかって、弄んで、処女を煽るのが、一生の目標だったんだ」

 

「最低の目標ですわね」

 

「でも、切実な願いだったんだよ」

 

「切実なら尚悪いですわよ?????」

 

 フォンさんは真剣な面持ちだ。たぶん、嘘でも冗談でもなく、本気で言っている。

 

 「処女をからかって遊ぶ」のが好き。邪悪極まる悪性ですけど、これまでのフォンさんの振る舞いを見ていると真実に違いないのでしょうね。

 

「だから、ベルと出会ってから、毎日が最高に楽しいんだ」

 

「私にとっては屈辱の日々ですが」

 

「だからね、ベル」

 

 フォンさんは、幼子のように無邪気で、天使のように可愛らしく、同時に――小悪魔のような魔性の笑みを浮かべる。

 

「ごめんね。まだ煽りたいから、もうちょっとだけ処女でいて?」

 

「嫌ですわよ!!!!!!!!!!!! 絶対今日で卒業してやりますわっ!」

 

 私はフォンさんの手を振り払い、服のボタンを外そうと手を伸ばす。寸前――フォンさんは身体を起こし、私の唇を奪った。

 

「んっ!? ん、ん……」

 

 ついばむような、唇同士を合わせるキス。

 

「んんぅっ!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 かと思いきや、急に舌を入れられる。侵入してきた舌が、口腔内を侵し始める。いやらしく私の舌に絡みついて、暴れるように口壁を隅々まで舐め回す。

 

「ん、んっ、んんっ♡」

 

 八重歯、すごい舐められてるっ……! エロすぎっ……!

 

 頭がぼーっとする。エロすぎて、脳味噌が溶けそうで。思考力が下がり、意識に靄が掛かる。

 

 あれ、なんか、眠くなって――。

 

 身体ががくんと重くなる。強烈な睡魔に襲われ、意識を保てない。

 

 しまった……!? 睡眠魔法……!?

 

「おやすみ、ベル」

 

 喜色の滲むフォンさんの声が聞こえ、意識が奈落に落ちていく。

 

 ち、ちくしょうっ……! もうちょっとだった、のに……。

 




『フォン』

性別:男性
種族:ヒューマンとインキュバスのハーフ
容姿:銀髪、水色の瞳。この世界においてIカップ相当の巨乳(胸板が大きい程カップ数が大きい)
職業:Aランク冒険者・召喚術士
備考:処女をからかって遊ぶのが大好き。

『ベル』

性別:女性
種族:ヒューマン
容姿:金髪、ツインテドリル、紅蓮色の瞳。Aカップ。
職業:騎士団員(謹慎中)→仮冒険者
備考:処女であることに強いコンプレックスを抱いている。
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