誰が善で誰が悪か。
 誰が聡く誰が愚かか。
 誰が紡ぎ誰が破くか。
 

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 作者が風呂に入ってたらイラついてきたので急遽筆を執りました。
 急造品の駄作です。
 どうぞ。


賢者と愚者

 吹きすさぶ砂と砂と砂。暴力的な突風が砂を抱えて殴りつける。全身白ずくめの人間たちにとっては痛々しい茶飯事だ。

 目に入ろうが、旅の仲間が砂に還ろうが日常である。

 そんな日常も変わったことがあれば非日常となる。

 睨み付ける太陽、安穏とした空気、騒がしくなる人気、賑わう街。

 ならば、この些事も非日常なのかもしれない。

 

 身なりの整った白装束の男がボロ布を腰に巻いただけの男に下卑た笑みを浮かべながら語りかけた。

 「人は俺を賢者と呼ぶ。」

 手には宝石をあしらった指輪にブレスレット、首には様々なネックレス、白装束は汚れを知らない純白。

 「へえ、賢者様がわたくしめにどのようなご用で?」

 しわがれた声でみすぼらしい男が声を返す。骨に皮膚を付けたというのが妥当に思うほどに痩せこけている。

 「歌を聞かせろ。」

 「……歌と言われましても、わたくしめに出来るのは物を乞うだけでして。」

 「戯けたことを」

 嘲笑う男は懐に手をいれながら痩せぎすの男に語りかける。

 「何が欲しい。」

 軽薄な笑みを浮かべながら問うた。

 「…………水を。」

 「ハッ!」

 ラクダの内臓で出来た水筒を男は取り出した。

 が、男は中身を骨人間の頭からぶちまけた。

 「ほら、水だぞ。」

 「嗚呼、ありがとうございます。私の最期の夢でした。」

 「夢を叶えてやったんだ。歌の一つくらい聞かせろ。元吟遊詩人。」

 「わたくしめの歌でよろしければ。」

 ポツリ、ポツリ。

 かすれた声で紡がれるは草木が生い茂る平原、生き物たち。

安穏とした光景であった。

 「……ここまでにございます。」

 「フン、愉しませるには不足だな。」

 不満そうに男はぼやく。

 「何分、琴は埃を被って久しいので……。」

 「チッ、くれてやる。」

 男は死体もどきに銅貨をぶつけた。

 「おぉ、ありがとうございます。では……」

 牧歌的な風景は陰りを帯び、雨という空からのオアシスと神の怒りが降り注いだ。

 「……申し訳ありませんが、ここまで」

 「さっさと話せ。俺の時間がもったいない。」

 ぶっきらぼうに清潔な男は不潔な男に銀貨を投げつけた。

 「へぇ、有難い。では、続きを。」

 語り部に苛つく聞き手。

 そんなことは露知らず、物語は続いた。

 神の怒りは激しくなり、大地を巻き上げた。生きとし生けるものは天へ舞い上がり、生まれた死が母なる大地へ降り注ぐ。

 遠くへ遠くへ……果てへ。失敗した絵を握りつぶすように慈雨と稲妻は災禍をばら撒く。

 「早く話せ。」

 話を小出しにされていると思った男は腹を立て話し手に金貨をぶつけた。

 「では……。」

 木々も、植物も、動物も、臓物も等しく造形物として漂白され地上に残るのは虚無だった。

 「ふざけるな!」

 激昂した男は奏者を殴りつけた。

 「俺の!」

 鳩尾を殴った。

 「時間を!」

 喉を蹴り潰した。

 「無駄に!」

 鼻を叩き折った。

 「しやがって!」

 目をえぐり出した。

 「はぁ……はぁ……」

 指揮者は物言わぬ肉塊となりつつも、紡ごうとした最後の歌をそらんじた。

 母なる大地へ降り注いだ生命の欠片たちは次の生命を育むのであった。

 憲兵に連れていかれる愚者は癇癪を起こして最後の小節を掻き消した。

 抉られた目から最期の景色を見る賢者は美しい世界に別れを告げた。




 お目汚し失礼しました。
 では、別の作品でお会いしましょう。

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