グリンデルバルドが勝った世界   作:ようぐそうとほうとふ

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あなたも同罪です。


 

スパイには容赦なし!

 

帝国の秩序を脅かす者、そしてそれを助ける者には、容赦はありません。

スパイ活動に加担する者、見逃す者は、同じ罪を背負います。反逆は厳しく罰せられ、逃げ場はありません。

 

あなたの沈黙は裏切りと同じです。

怪しい行動、危険な噂…小さな疑念でも必ず報告してください。

家族や未来を守るために、今こそ行動する時です!

 

見過ごせば、あなたも同罪です。

疑わしい者を見かけたら、今すぐに通報を。沈黙は許されません

 

 

 

 


 

 

 

 空は雲が暑く覆い被さっていて、今にも雪がひらりと舞いそうなほど寒かった。吸魂鬼が飛び交う夜の闇はどこまでも続く穴のように感じた。

 ハリーから借りた透明マントは、触ったらすぐに特別なものだとわかった。仕立てがよく、透明度に一切の曇りがなかった。一体どこでこんなにいいマントを仕入れたのか、あとでよくよく聞いておかなくては。

 

 禁じられた森の入り口には闇祓いがいた。全員魔法省の制服と紫のローブを身につけているので一目瞭然だった。彼らもまた治安警察で、吸魂鬼のコントロールのため駆り出されているのだ。友人のアレックス・サロウも治安警察だが事務方で、実働隊の治安警察に知り合いはいない。見つかったら面倒だ。

 

 魔法生物飼育学用の建屋に行き森を進むと、そう深くないところに大きな黒い犬が待っていた。シリウス・ブラックだった。その後ろにある大きな木の虚にリーマスが力なく横たわっていた。満月まであと1日。相当具合が悪いらしい。

 

 とりあえずリーマスを担いだ。シリウスは犬の姿のまま足元をウロウロしてから先導した。

「すまない」

 とリーマスが言う。私は返事をしなかった。森の出口近くまで来て、シリウスの足が止まった。私が追い抜き振り向くと人の姿に戻っていた。

 

「2人は行け」

「…なんだ?忘れ物でも思い出したのか?」

「ああ」

「シリウス…」

「この森には今、奴がいる」

「おい、ちゃんと説明しろ。こっちは危険を犯して助けに来てるんだぞ」

 私の文句にリーマスが答えた。

「ピーター・ペティグリューなんだ。昨日ここに逃げ込み、吸魂鬼を招き入れたのは」

「はあ…?」

 

 リーマスが順を追って説明してくれた。ピーターとシリウス、そしてジェームズ・ポッターは未登録の動物もどきであること。ダンブルドア軍団に入る際隠密行動などに有利と考えて習得したそうだが、無謀すぎる。

 そして重要なのは、吸魂鬼は動物もどきの変身を見抜けないこと。

 

「ピーターは私に見つかり、変身して逃げた。どうにかして私を巻きたかったのか、人間に戻ったり変身したりと繰り返し吸魂鬼に私を捕まえさせようとしたんだ。咄嗟のことでここが浮かんだんだろうな。気づけばホグワーツの敷地に入っていた」

「…で、ピーターとやらは何に化けるんだ」

「ねずみだ」

 私は白目を剥きそうになった。なんとか堪えてツッコミを入れる。

「見つけられるわけないッ…」

「私は鼻がいいからね。それにあいつが吸魂鬼を引き込んでくれたおかげでここは今巨大な檻になっている。人の姿に戻れば吸魂鬼、動物の姿でいても闇祓いの貼った守護呪文を突破できない」

「…軽く考えてるようだな。奴らは逃亡者が出るまで絶対に帰らないぞ。しまいにゃ森中の動物の尻の穴まで調べるだろうな!」

「おいおい下品だぞ。…まあ上手くやるさ」

 バカな考えを。しかしここで口論をしていたら見つかってしまう。今は犬の姿でいれば吸魂鬼に見つからないという奴の主張を信じるしかない。

「君はリーマスを頼む」

「…捕まったら私の名前を出す前に自分で始末をつけろよ」

 私はリーマスを連れて森を出た。冷気はますますひどくなって、ついには周辺に白い霧が漂い出した。リーマスが身震いする。透明マントは吸魂鬼に効くのだろうか?

 城にたどり着いてようやく生きた心地がした。リーマスもやっとホッとしたような顔をして私をみた。あともう一息だ。

 

 校内の見回りはザルだった。私たちは簡単にマートルのトイレに辿り着き、入り口を開けることができた。リーマスは穴の中に入ることに難色を示したが突き落とした。秘密の部屋を開くと体調が悪い中でも驚きの声を漏らした。

「本当にここが伝説の?」

「ああ。バジリスクも封印できてたわけだし狼人間一匹ならチョロいな」

「たしかに」

 部屋にはあらかじめ毛布と数日分の食料、あとは適当に持ってきた本を置いておいた。リーマスはすぐに倒れこむように座った。

「ありがとう。君にここまでする義理はないだろうに…」

「ハリーが悲しむ。…それにほら。バレてこの職場をクビになりたくないんだ」

「どうしてだ…?」

「ここが好きなんだよ」

 私は秘密の部屋を出ようとしたが、リーマスは私の袖を掴んだ。振り向くと、蒼白な顔をしながらも強い眼差しで私を見ていた。

 

「シリウスを…頼む」

「…私に色々頼みすぎだ」

 

 私は今度こそ部屋を出た。こんなところに数日閉じ込められたら気が狂いそうだよな。まあ私にできることは全部してやったわけだ。しかし私の性格上、このままさて眠るか。とはいかない。

 

 マートルのトイレからかけだして外に出た。森には銀の光が点々と灯っていた。おそらく闇祓いの人数は10人もいないだろう。森の方へ行こうとすると、道すがらの暗がりにセブルスが立っていることに気がついた。

 

「…どこへ行く?」

「吸魂鬼を見に」

 セブルスは見るからに呆れていた。

「君は我輩のなんだったかな」

「は?」

「君と我輩の関係は?」

「…共犯だ」

「ならばなぜ隠れて秘密の部屋に?」

「君、監視してたのか?」

「当然だ。トム・リドルが悪用する危険もあった。それに…」

「私も、だな。本当に君は私を全然信用してないな」

 嫌味のつもりはなかったのだが、セブルスは苦い顔をした。

「君がトム・リドルと冒険するのはいい。だがこれは別件だろう。一体何をしている?」

「……まあ言うなればおせっかいかな…」

 

 私は空を仰ぎ見た。雪がひとひら降ってきた。ここでリーマス・ルーピンのことを洗いざらい話してしまいたかった。どうせ止められるに違いないが、シリウスを助けに行こうとしていることも。

 そう、動物だったら吸魂鬼には見つからないかもしれないな。しかし、闇祓いは追いかけてるのが動物もどきだと知っていたら?ネズミならまだしもあんな大きな犬絶対に怪しまれる。

 

 私には彼ら個人の義務感や罪悪感は一切関係ないし、助ける義理もない。死んでもらった方が助かるくらいだ。

 なのに森に向かおうとしているのは、私の個人的な感傷のせいに他ならなかった。

 

 父と呼んだ男の事を思い出したんだ。

 世界から隔絶された谷でボタンを掛け違えたまま死んだ男。

 今シリウス・ブラックやリーマス・ルーピンを…ひいてはライアル・ルーピンを助けたところで、今更誰が救われるんだろう。こんな世界、本当は全てがどうでもいいはずなのに。

 

「でもそうしたいんだよ」

「……きちんと後で説明があるんだな?」

「するよ、全部。秘密の部屋だって開ける。だから今だけ何も言わずに通してくれ」

 

 私の言葉にセブルスは納得こそしなかったものの、退いた。止めても無駄なことを悟ったのだろう。

 私が進むと、セブルスも後ろをついてきた。

「…監視か?」

 冗談めかしていうと、頷いた。

 

 

 森に踏み入ることは容易だった。吸魂鬼たちはおおよそのあたりをつけた外周から中心へ向かって包囲網を狭めているらしい。あわせて闇祓いたちが盾の呪文を応用した防御呪文をはり、次第にその範囲を狭めて行っている。普通の魔法使いならそのまま逃げられず餌食になるし、守護霊を使える魔法使いならそれが目印になる。

 だが今回の獲物は動物もどき2匹だ。それも片方はネズミ。この森に何匹ネズミがいるかと思うと気が遠くなる。

 そもそもはじめから吸魂鬼包囲網の中にいないかもしれないのに。

 

 シリウス・ブラックが残ったのはけじめをつけるためだ。

 

 自分が捕まれば丸く収まる。ピーター・ペティグリューが見つかろうと見つからざろうとも。

 それを止めようとするのは丸く収まる事態を悪化させるだけだ。私が取るべき選択肢は確実に保護できるリーマスだけは守りきりとっとと国外へ逃がすこと。あの犬が死ぬのなんて放っておけばいい。

 

 でもそんなのハリーが悲しむ。

 

 

「はあ…私は何やってるんだろうな」

「聞きたいのは我輩だ」

 私とセブルスはマントを被り防御呪文をはる闇祓いのすぐ後ろに来ていた。全員で協力して張るタイプの防御呪文は1人でも倒すと呪文がダメになりすぐにバレて大騒ぎになる。故にこういう場合の解決法は一つ。

「インペリオ」

 服従の呪文を使えば中に入るも自由だった。セブルスは禁術をホイホイと使う私を信じられないという目で見た。こんなの序の口だ。

 いそいで結界の中に駆け込むと、中は外より3度は低かった。息が白くなり、足元には霜が降りてるのがわかった。

 守護霊の呪文は出せない中、吸魂鬼の群れを突破する必要がある。

 が、私に関して言えば()()()()()()()()()()

 

「君、死喰い人だし吸魂鬼は怖くないよな?」

「…そのレベルで奴らを制御できるのは闇の帝王だけだ」

「ああ、そうなのか。じゃあちょっと自慢にならないかな…」

「は?」

 私はセブルスの肩を抱え込み、頭をぐっと下げさせた。私の体でセブルスを隠すようにして歩き始める。どんどん冷気が濃くなって、透明マント越しにあの忌まわしい黒い影が見えた。

 しかし彼らはすっと道をどく。

 私たちはまっすぐ歩けばいいだけだった。

 このように…闇の魔法使いは吸魂鬼に襲われることはない。フクロウ試験にも出るぞ。いやはや、お恥ずかしい。闇の魔法使いのつもりはないのだが、あいつらが勝手に退くんだよね。

 とはいえ私の精神が落ち着いていて、さらに静かに歩き去ればという条件付きだ。ヴォルデモートはこいつらを操れる?だとしたら本当に規格外だな。

 

「これは…さすがグリンデルバルドの孫だな」

「皮肉?」

 

 吸魂鬼の群れを抜けると、動物たちの気配が濃くなった。吸魂鬼と呪文に追われ追い詰められた動物が集まっているようだった。

 ケンタウルスやトロールのような強い魔法生物はともかく、普通の動物や小さな魔法生物はあの守護呪文に弾かれてしまうのだろう。うっすら血の匂いがした。普段は緩やかな縄張りの上で衝突を避けていた生き物同士が集められ、殺し合いが始まっている。

 

「今からするのはネズミ狩りだ」

「ネズミ?一体何匹…」

「承知の上だよ」

 私は自分の髪をつまんで切り取った。そしてその髪一本一本を蛇に変身させる。どさっと蛇の塊が地面に落ち、一斉に周囲に散らばった。

 私は中心に向かって歩きながら呟いた。

「それと…ええと…犬がいるはずだ。犬は助けなくてはならない…」

「犬…?フレイ、いい加減全て話せ」

「この森にはハリーにとって大切な人がいるんだよ」

「ポッター…?それは…」

 

キィ!という音があちこちから聞こえた。私の蛇がネズミを次々とらえたらしい。

 私は立ち止まり杖をあげ目を瞑り、感覚を研ぎ澄ました。蛇に捕まったネズミは本命ではない。捕まえ損なったネズミこそが動物もどき、ピーター・ペティグリューである。

 私の髪から作り出した魔法の蛇の痕跡は普段見るレベリオでの形跡よりもはるかに見つけやすい。そのうち殺され変身呪文が解けたもの。ほんとうにごく僅かだったが、気配をみつけた。

「……あっちだ」

 私はかけだす。セブルスもそれに続いた。木々が高く、岩場と洞穴の多い場所へ。ジャック・ドゥという生徒の屍がある洞窟に酷似した場所だった。ってああ、彼はここでは天寿をまっとうしたんだったな。

 

 入り口に入ると早速どこからか悲鳴が聞こえてきた。

 

「セブルス、探してくれ」

 私が洞窟に入るとセブルスも続いた。いくつか枝分かれしている上に音が反響するので正確な位置を掴みかねた。

 

「なぜ、お前が!」

 

 やっと位置がわかったのは、これまで聞いたことのないセブルスの怒声のおかげだった。

 

 駆けつけると、3人の男がいた。ひとりは小汚い格好をした初めて見る男。その男に杖を向けるシリウス・ブラック。シリウス・ブラックに杖を向けるセブルス・スネイプ。

 

「それはこっちのセリフだスニベルス。邪魔をするな」

「貴様が吸魂鬼を招き入れたのか。この…」

「招き入れたのはこいつだ。薄汚い裏切り者、ワームテールめ!」

 ワームテールと呼ばれた男は悲鳴をあげる。状況的にこの男がピーター・ペティグリューなのだろう。なんと、結界から逃げられずにいたとは鈍臭いことだな。シリウスの粘り勝ちと言ってやるべきかな。まあこのままじゃ共倒れだがな。

 

「見つかって良かった。早くそいつの死体を外に置いて逃げよう」

 

 私の言葉にワームテールは愕然とした。この場で私だけが部外者であり、このどこか投げやりで淡白な発言に冷や水をかけられた如く、全員の感情の昂りがわずかにおさまった。

「こいつは生かしたまま引き渡す。リーマスと約束した…」

「お前も捕まるぞ」

「いいや、二匹とも捕まえる。こいつは密入国者だ」

 セブルスは強い憎しみの念を込めてシリウスを睨みつけていた。やはりジェームズ・ポッターと同様にシリウスともよっぽど険悪だったようだ。

「私の邪魔をしたら、殺してやるからな。スニベルス。ずる賢いコウモリめッ…!」

 明らかに人選に失敗したなと私は困り果ててしまった。ここで揉めてたらじきに吸魂鬼に追い詰められるだろう。私は平気でも3人は襲われる。

 早いとこ奴らが引き上げる口実、つまりはピーター・ペティグリューの死体が要る。

 

「おい、ワームテールだったか?お前は1981年に死亡されたとされるピーター・ペティグリューで間違いないな」

「ヒッ…」

 小男は両手をあげて投降するポーズで私をみようともしなかった。怯えて縮んでる。その手は指が数本欠けていた。まあこれで十分か。

「よし…では私が手を汚してやるから君たちは落ち着け」

「やめろ!」

「なんだよ。どうしたいんだよ?私はそのリーマスに頼まれてお前を助けに来てやったんだぞ」

「リーマス・ルーピンだと…?」

「ああ、秘密の部屋に匿ったのがリーマスだよ」

「なぜそれを早く言わないッ…」

「フレイ・グリンデルバルド!お前は何が目的なんだ?!」

「はあ…私だって関わりたくてやってるんじゃないんだ。お前らが死んだらハリーが悲しむだろう。嫌なんだよ。1人くらいは幸せのままにしてやりたいだろ…」

「フレイ。それでもこいつは…」

 

 サァ…と漣のような音が洞窟にこだました。ハッとして周囲を見渡すと冷気が漂いはじめ、吐く息が白く染まった。

 

 タイムリミットだ。

 

 私が杖を振りかぶるとシリウスが体当たりしてそれを止めた。私の手から杖が吹っ飛んだ。

 私は転び体を岩肌に強かに打ち付ける。閃光が走った。セブルスがシリウスに失神呪文を放ったのだ。

 シリウスが気を失うと、さっきまで怯えて縮こまっていたピーター・ペティグリューがニヤリとわらった。

 とっさにピーターに向かって手を伸ばしたが、彼はあっという間にねずみに変わり、立ちこめた白い霧の中に姿を消した。

 

「クソッ!!」

 

 倒れた私にセブルスは近づき、杖を構える。吸魂鬼の姿が見えた。私は倒れたシリウスの胸ぐらを掴んで抱き寄せた。私は見逃してもらえるか微妙だ。痛みで少し心が乱れている。それに私がどんなに手を広げても2人分の生気を前に通り過ぎてもらうのは無理そうだった。

 案の定吸魂鬼はセブルスとシリウスに向かってゆっくりと滑るように近づいてくる。

「…セブルス」

 私の声にセブルスはこちらをチラと見ると、セブルスは顔を歪めた。葛藤、そしてなんと言えばいいのかわからない表情をしてから本当に渋々、杖を振った。

 

 白い光が杖先から現れた。

 それは牝鹿の形をとって、私たちと吸魂鬼の前に立ち塞がる。吸魂鬼は身を翻して逃げ出した。

 あたりに充満した冷気は急に消え、元通りの暗い、闇に満ちた洞窟へ戻った。

 

「…なんだ、出せるのか…やるじゃん」

「誰にもいうな」

「羨ましいよ」

 セブルスはシリウスを足で蹴って完全に気絶していることを確かめた。私は杖をなんとか見つけて拾った。

「ブラックは置いていく。でないと我々が捕まる」

「…いや、連れて行く」

 私は勝手にシリウスを担いだ。が、重すぎる。魔法で浮かせてガンガン壁にぶつけながら勝手に出口を目指した。そんな私を背後からセブルスが睨みつけてるのがわかった。多分いざとなったら背後から私に呪文をかけるつもりだ。

 

「君は随分とポッターに過保護なようだが…全てをポッターにとっての楽園にしようなどと無茶なことだ。そんなのわかっているだろう、グリンデルバルド。これは、向き合わなくてはいけない現実だ」

「とか言って…君はシリウスが憎いだけだろ」

「……ああ、憎い」

「何があったんだよ、学生時代に」

「………君には教えない」

「私のこと信用できないから?」

「違う」

 いよいよ口数が少なくなってきた。相当お冠だな。これからシリウスをどうするか、全然アイディアが浮かばないのだがどうするか。ここあたりに学校への抜け穴が残っていたりしないだろうか。

 

 しかし洞窟から出ても吸魂鬼の襲来はなかった。それどころか彼らの気配も、闇祓いたちが張っている防御呪文すらもなかった。

 まさか逃げたピーター・ペティグリューが捕まったのか?シリウスは洞窟の入り口近くに隠し、私とセブルスは透明マントを被りながら慎重に城へと戻った。

 やはり吸魂鬼も闇祓いすらもいなくなっていた。

 

 学校につき、マントを脱いでそろそろと廊下を歩いていると怒り心頭のマクゴナガルと鉢合わせた。

「まあ!どうしたんですか2人揃って」

「あー…見物を?」

 私の物言いにセブルスがバカッ!と言いたげな顔でこっちを睨んだ。案の定マクゴナガルは怒った。

「こんな異常事態を見物だなんてッ…!いいですか?あなた方は教師なんです。いつまでも学生気分が抜けていないのかもしれませんが、生徒が真似したらどうするのです?吸魂鬼は誰彼構わず襲うのですよ?あなた方は子どもを守らなくてはならないのです、何があっても!」

「ご…ごめんなさいぃ…」

 ガチの説教だった。反省した私をみてマクゴナガルはため息をつき、何が起きたか教えてくれた。

 

「犯人が………出頭しました。治安警察は引き上げたので、もう心配はありません」

「え?どんなやつだったんです?」

「それが…信じ難いことなのですが…」

 マクゴナガルは額に手を当ててかなり困惑した声で言った。それは彼女にしては珍しく動揺と落胆、そして悲しみが隠しきれない声色だった。

 

「ライアル・ルーピン先生です。ダンブルドア軍団として、マグル収容所に忍び込んでいたとか…」

 

 私とセブルスは顔を見合わせた。

 城を覆う雲は晴れ、満月の光が窓から差し込んだ。寒寒とした空気のおかげで月の光は何かを切り刻みそうなくらい鋭かった。

 

 

 

 

 

 

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