グリンデルバルドが勝った世界   作:ようぐそうとほうとふ

35 / 48
大いなる運命と複雑な関係性

 決闘は八面ある決闘場で次々と行われ、勝者が次の予選への出場権を得た。組み合わせもくじ引きでかなり運に左右されていたが、中には大番狂せの試合もあった。

 なんとハッフルパフの一年生がスリザリンの6年生を倒してしまったのである。しかも、レビオーサで。もちろん油断も大いにあったが、この試合はしばらく語り草になるだろうと皆が大いに褒め称えた。

 ルール無用の解釈はさまざまで、中には魔法薬で俊敏に動けるようドーピングをし、開始時の三歩後ろに下がるのを一瞬で動いてしまい失格になったものもいた。

 一番会場を混乱に陥れたのは噛む噛む白菜をばら撒いたリー・ジョーダンだろう。彼は勝ちではなく混沌を狙っていたため、相手のセドリック・ディゴリーに負けてしまったが目的は大いに果たせた。今回の予選で大技を使おうとした生徒は大体負けた。

 

 ハリーと同じくエントリーしたロンとドラコもなんとか次の予選に進めた。クィディッチクラブのメンバーは大多数がエントリーしており、半数強は勝ち上がれたので練習後は次の課題を予想したりで日々盛り上がった。

 

 そしてあっという間に次の予選についての告示がでた。

 しかし今回は内容を知らせる告示ではなかった。

 

「ダンスなんて踊れないよ」

「マクゴナガルがレッスンを開くらしいぞ」

「いや…そうじゃなくて…恥ずかしいよ」

 

 大雨の日の午後、恒例のフレイとの週末。はじめはピクニックだったがクィディッチを始めてからはもうこういう天気の悪い日に部屋でお茶をする会に変わってしまった。

 

 次の予選の内容はなんと当日のお楽しみで、メインの告知はクリスマスにあるダンスパーティーについてだった。

 三大魔法学校対抗試合では伝統的に各校代表のダンスがあったそうなのだが、今年は大会方式が変わり三校が集まるのは三月になってからだ。しかし一部教師陣の強い意向により学外のゲストも招いたクリスマスダンスパーティーが開催される運びとなったらしい。

 四年生以上、男女問わずパートナーを伴い参加可能との事で、生徒たちは誰を誘うか浮ついた雰囲気の中読み合いをしていた。

 

「フレイは踊れる?」

「意外なことに踊れるぞ」

「意外とは思ってないよ。だってほら…家柄踊る機会が多そう」

「なんだその偏見は。普通にあれだ。若い頃は娯楽が少なくて」

「なにそれ」

 

 フレイの年寄りめかした言い方にハリーは思わず笑ってしまう。様々なダンスを踊りこなすフレイは想像しにくかった。しかし去年三本の箒で酔いながらクルクル回っていたのを思い出し、踊ること自体結構好きなのかと思った。

 

「で、誰と踊るんだ?」

 

 フレイはにやにやと楽しそうに笑っていた。前からなんとなく察していたが、フレイは生徒の悩みを進路か恋愛かの二択しかないと思っている。まあ確かに、それらの悩みはほとんどを占めているのだけれども。

 

「男女問わずだし、見つからなかったらロンと行くよ」

「えー。気になる子を誘えばいいのに」

「いないよそんなの!」

「あれはそういうイベントだろうに」

「じゃあフレイは?誰と踊るの?」

「私は1人でも踊れるからな」

「つまらない。ぼくにそういう話をさせたいなら自分が話したら?」

「おっと。それは確かにその通りだな。…しかし生憎君に聞かせられるような話は…」

 フレイはうーんと悩んだ。悩んだ割に何も出てこなかったらしく、誤魔化すように笑った。

「まあ友達と踊るのもきっと楽しいさ」

 

 そういうわけでロンを当てにしていたハリーだったが、なんとロンはダンスパーティーに行く相手を見つけたというのだ。その相手がなんとグリフィンドールの5年生、ケイティ・ベル。彼女は青チーム(イーグルノワール)でチェイサーを務めている。

 さっぱりとした人で、クィディッチクラブの中では頼り甲斐のあるいい先輩としてみんなから慕われていた。その分ロンの誘いを受けたのは衝撃的だった。ロンからは「魔が差した。呆然として、気が付いたら誘っていた」という錯乱呪文でも食らったのか?という供述しか得られなかった。

 当のケイティはからかい半分でフレッドになぜロンの誘いを受けたか聞かれたところ

「え?一番はじめに誘ってくれたし、彼キーパー頑張ってるじゃない」

 とこれまたさっぱりとした明瞭な答えを返した。

 

 このロンの英雄的行動により、寮だけでなく全体に気になる人にきちんとアプローチをするべきであるという空気が形成された。

 

 ハリーは頭を悩ませた。逆に言えば友達として誘おうとしてもその気があるという風に解釈されるという事でもある。だったらいっそのことフレイと踊りたかったが、そうもいかない。

 

 次の予選の中身よりもそちらが気になってしまい、ハリーは宿題も練習も手につかない状況に陥った。そんな最中、年内最後のホグズミード行きがあった。これはもうパートナーを見つける最後のチャンスとばかりに皆張り切った。

 しかし、ハリーはその前日に、あろうことかスネイプの魔法薬学の授業中。うっかり催眠ガスを発生させ全員を昏睡させかけるというヘマをしてしまった。

 スネイプは待っていましたと言わんばかりの残酷な笑みを浮かべ、ハリーに大鍋磨きの罰則を与えた。ハリーもこの時ばかりはスネイプよりも自分を恨んだ。

 

 そして、学校に居残りになって地下室で大鍋を磨き終えて絶望的な気分で寮へ戻った。談話室はほとんど空っぽで、宿題をする一、二年生がちらほらいるだけだった。普段は上級生が占めている暖炉の前には1人しか座っていなかった。

 その1人がハーマイオニーだったので、ハリーはちょっと驚いた。

 

「ホグズミードには行かないの?」

 

 ハリーの声かけにハーマイオニーの肩が跳ねた。

「ああびっくりした…こっちのセリフよ」

 ハーマイオニーはまた誰かの書いた小説を読んでいたようだった。ハリーが隣に座るとちょっと横にずれてくれた。

「ぼくはスネイプの罰則」

「ああ、気の毒にね。私は…そうね。浮ついた感じの雰囲気が苦手で…それに数占いの課題がもう本当に片付かなくて。ちょっと…よくないわ」

 ハーマイオニーはちょっとうんざりしているようだった。ハリーの知らないところで大きなプレッシャーを受けているようだ。

「また書評を書いてるの?」

「え?あ、これ?違うわ。息抜きに読んでたの。さっきまで勉強してたわ」

「最近勉強ばっかりだね。あ、いやいつもそうだけど。前にもまして」

 ハリーの言葉にハーマイオニーは顔を曇らせた。

「ええ。ちょっと…不安で」

 ハーマイオニーが不安というのは二度目だった。彼女らしからぬ弱気にハリーは思わず強く言い返してしまった。

「どうして。君は不動の一位じゃないか!二位のマルフォイだって差が詰められなくて毎年悔しがってるのに」

 ハーマイオニーは少し考えながら言った。

 

「そうね。一位を取ることは、私にとって当然の義務なの。でも来年にはフクロウ試験があるわ。そこでもし……ハア。私が、ヘマをしたらと思うと怖いのよ」

 当然の義務という言葉はハリーの胸をざわつかせた。ハーマイオニーはマグル生まれで、魔法使いの家庭に預かられている。もしかしてそこで辛い間に合っているのだろうか。

「あの…ッ、余計なお世話かもしれないけど。もし…何か家のことで困ってるなら…」

「…え?やだ。ちがうわ!…あのね。本当に家のことは大丈夫よ。多分私が勝手に気負ってるんだわ。私には…夢があるから」

「夢?」

「そう。その夢を叶えるために自分に義務を与えてるの。…まあ、時々息抜きが必要になっちゃうんだけど」

 そう言ってハーマイオニーは例の小説の表紙を撫でた。もうこれ以上聞くなと言いたげだったため、ハリーも違う話題をすることにした。

 

「その小説そんなに面白い?随分ハマってるね」

「えぇっと…」

 ハーマイオニーは言いにくそうな顔をしていた。恋愛小説だと言ってたが、ハーマイオニーがそういうものに夢中になるのは結構意外だった。しかし、確か彼女はロックハートのファンだった。彼の出ている映画はたしかロマンスもあったはずだ。

「この小説は面白いとかそういうのじゃないわ。なんていうか…そう。私たちが見届けなければいけない物語…なのよ」

「へ?」

「これはね、単なる恋愛小説なんかじゃないわ。…大いなる運命と複雑な関係性が織り成す刹那の煌めきの積み重ねなの」

「そ…そうなんだ」

「まあハリーにはわからないでしょうね。まだダンスパーティーの相手も見つけられてないみたいだし」

「そうなんだよね。…君はどう?」

「え…私?」

 

 ハーマイオニーはきょとんとした。耳がパッと赤くなって目がキラッと輝いた気がした。しまった。今の聞き方だとまるでハーマイオニーを誘っているみたいだった。

 いや、むしろチャンスかもしれない。こんな風に口を滑らせでもしなければ自分はもう、パーティーには出られない気がした。それにハーマイオニーのことは好きだし、もっと彼女のことを知りたいという気持ちもある。

 

「よかったらぼくと行かない?その…友達として」

 

 日和った。と脳裏でフレイが煽った気がした。しかし、これがハリーにとっての精一杯だった。ハーマイオニーは顔を赤くして、少し上擦った声で答えた。

 

「ああ…なんだ!友達ってことなら全然、いいわね。ええ、いいわよ」

「よかった!じゃあ、よろしく」

「ええ、よろしく…」

 

 その後はなんとなくハリーは寝室に戻った。大鍋を磨くより100倍疲れた。

 しかしこれでダンスの相手も決まって、次の予選に集中できる。

 

 

 

 しかしノーヒントとなると備えることは難しい。どうにか情報が得られないかと生徒たちは皆先生相手に盗聴をしかけたり巧妙に聞き出そうと試みたりと、あらゆる手段を用いた。

 しかし偽情報がかなり出回り、どの情報も真実味を帯びているせいで予測しようという試みはもはや無駄なものも思われた。しかしある日突然、クィディッチクラブのスリザリン生から『情報源として確実で、まず間違いない』とされるスネイプのリークが回ってきた。

 それによると第二回予選の監督はフレイ・グリンデルバルドだという。

 ハリーはスパイしてくるようフレッドとジョージに命じられ、フレイのオフィスへ突撃させられた。

 

 1日の授業が終わった後に魔法史の準備室をノックをしてから入ると、中にはフレイとロックハートとスネイプが膝を突き合わせて難しい顔をしていた。珍しい組み合わせだったので(特にスネイプが)ハリーはみてはいけないものを見てしまった気がして思わずドアを無言で閉じた。

 

「おいおい、閉めるな。なんか変な事してるみたいだろう」

 フレイがすぐにドアを開けた。隙間から見える部屋の中ではロックハートとスネイプがお互い顔を背けていた。

「変なことしてたよね?」

「まあしてたがね」

 とフレイはイタズラっぽく笑い部屋から出て、ドアを閉めた。

「どうかしたのか?まさか魔法史の質問に来たなんて言わないよな」

「えーっと…何かヒントはないかなって…次の予選について」

「なぜ私に聞く?」

「フレイは一番頼れる味方だから」

「嬉しいね。騙されちゃいそうだが…どこかの寮監みたく贔屓してると思われたくないから」

 どうやらお見通しのようだった。何も聞き出せそうにもないので退散すべきと思ったが、ドアの向こうの奇妙な3人の会合は気になった。

「今の集まりも予選関係?」

「んー…?秘密」

 フレイは悪戯っぽく笑った。

「まあこんなイベントで死人を出すつもりはないから安心して待っててくれよ」

「死人が出るやつも作ろうと思えば作れるってこと?」

「そう。まあ、それは本戦でのお楽しみ」

 思っているより恐ろしい事がおきそうでならなかった。

 

 

 クリスマス当日の朝、そわそわしながら朝食を取る生徒たちに向けてフレイがふらっと壇上にあがりアナウンスがあった。

 

「えー。第二回予選についてお知らせします。予選は本日ただいまより行われます。学内のどこかに予選会場への入り口が出現します。参加者は会場への入り口を見つけ、挑戦してください。なお今回の予選はチームプレイも可能です。1人でも挑戦できますが…2〜3人で行くことをお勧めしますね。予選をクリアした先着順で合格者が決定します。では、楽しんで」

 

 突然のことで皆とにかく朝ごはんを口の中に詰め込んで立ち上がった。

「チームプレイだって?」

「トライウィザードは個人戦なのに」

「フレイ先生のことだから…」

「あのフレイ先生が場当たり的なものじゃなくてちゃんとしたものを用意してくるとはッ…」

 とにかく試験会場への入口を見つけなければならない。出現という言い方からしてある場所が一定ではないか、時間によってあったりなかったりするのだろう。

 合格者は早いもの順なのでもたもたしてられない。

「法則性とか目印とか…そういうのもヒントなし?」

「みたいだね」

「解かせる気あるのかなあの人は!」

 そう呟きながら同じ量の参加者は散って行った。ロンとハリーは顔を見合わせ頷き合って、とりあえず城の入り口の方へ歩き出す。

「どうする?ハリー」

「とりあえず情報が必要だ。えーっと…同じように協力できる人がいるといいんだけど…」

 入口に続く階段を降りると予選参加者が何人か溜まって相談していた。その中心にいたセドリック・ディゴリーがハリーを見つけ、声をかけてきた。

 

「やあ。ちょっといいかな?」

「なに?」

「協力しないか?今回は協力プレー推奨だし、予選会場の入り口を見つけるのには人手が必要だろ?」

 正直渡りに船だった。セドリックの周りにいるのはハッフルパフの生徒と彼の率いる黄色チーム(ウルトラグラスリーズ)の選手が数名いた。

「いいね。でもどうやって見つけるの?」

「アッ!ほらあれ見て!」

 

 ウルトラグラスリーズのチェイサーの女子がばっと腕を挙げ天井を指差した。かなり高い位置だが、チラチラと瞬く何かが飛んでいた。

「あれ、羽がついた鍵なの。今朝から飛び回っているのよ。絶対に何かのヒントだと思わない?」

 セドリックは頷いた。

「だから僕らが探すべきは鍵穴だ。君たちもチームで予選に臨むんだよね?僕らも同じさ。チームメンバーのうち1人があの鍵を捕まえて、ほかは鍵穴を探す。校内は広いけど、今朝突然鍵が飛び始めるくらいなんだからきっと見つかるさ」

 セドリックは爽やかに笑う。チームでキャプテンを務め、クィディッチクラブ内でも一番人望の厚い彼だ。なんだかすぐに見つかりそうな気がした。しかしロンは懐疑的だった。

「こんな情報ぼくたちに教えていいの?抜け駆けされるかもしれないのに」

「そんな事しないだろ?それに声をかける人も選んでるさ。前回の予選は個人戦だったけど今回の予選は団体戦だ。人数が多い方が勝率が上がる」

 ロンはまだセドリックを信用しきれていないようだった。しかしハリーは昨年度の吸魂鬼襲撃事件の後、セドリックが試合無効にするよう真っ先に声をあげたのをよく覚えていた。

「わかった。ぼくが鍵を捕まえるよ。ロンは鍵穴を探して」

「鍵は手に入れた人のもの?」

「いや、ぼくらは3チームだ。三匹捕まえるまで協力しよう」

「…わかった。頼んだよハリー」

 

 鍵を捕まえるグループはハリーとセドリック、そしてウルトラグラスリーズのアリシア・スピネットになった。

「当然、箒だよね?」

 アリシアは楽しげだった。セドリックはもちろん!と言って3人は慌てて箒を持ってきた。

 

 羽鍵に気付いたものは少なくなく、空中に向かって呪文を発射するものや同じく箒に乗って鍵を捕まえようとする生徒が数名いた。それにつられてブンブン飛んでる鍵に気づくものが増え、ほとんどの生徒が空を見上げて右往左往していた。

 

 そんな中颯爽と箒で羽鍵を捕まえるのは爽快だった。セドリックもハリーもシーカーだったし、捕獲はお手のものだった。アリシアは結局捕まえられず、セドリックがもう一個余計に捕まえた。有言実行の男だった。

 

 一方で鍵穴探しは難航した。なんといってもこの広い校舎の中で特別な鍵穴を探せなんて無理な話だ。

 必死に探しているうちにレイブンクローの7年生が予選会場に辿り着き、一番乗りしたというニュースが飛び込んできた。

 どこかに必ず鍵穴がある。

 そのレイブンクロー生が彷徨いていた場所をみんなぞって探し始めた。しかしここでも誤情報が拡散され、参加者は混乱した。

 

「ああ…もう!アロホモラで全部解決すればいいのに」

 アリシアと組んでいたスリザリンの女子の言葉にハリーは急にピンと来た。

「そうだ、怪しい鍵穴にアロホモラし続ければいいんだよ」

「は?何言ってるんだ。鍵はこれだろ?」

「つまりこれ以外で開かないものを探せばいい」

「そんな単純な話かな…?」

「そっか。どこか変な場所に特別な鍵穴があるんだと思い込んでいたけどこれなら普通の鍵っぽく見えるものでも可能性があるのか」

「とにかく、鍵開け呪文を試してる奴はたくさんいるだろうけど、この羽鍵を入手できたやつは少ないはずだ。急ごう!」

 セドリックたちとはハイタッチして別れ、ハリーとロンは大急ぎで鍵穴を探した。廊下や階段を血眼にして見つけた鍵穴に片っ端から呪文をかけた。

 地下通路を探していると、誰かがぬうッと立ち塞がった。

 

「何を探している?ポッター、ウィーズリー」

 

 ドラコ・マルフォイだった。彼も予選参加者のはずだがなぜか余裕そうな顔をしている。クリアしたというわけではなさそうだったが、なぜそんなにゆっくりしていられるのだろう。

「別に?君こそこんなところで何をしてるんだ?鍵を追いかけろよ」

「ああ。だが鍵より鍵穴の方が探すの大変だろう?」

「まあね」

「ポッター、お前は鍵を持っているな?」

「まさか追い剥ぎしにきたっていうのか…!」

「は?え、違う!そんな下品なことをするか!僕は呪文で開かない不審な鍵穴を見つけた。だが鍵はもってなくてね。どうだろう、僕を仲間に加えたらその場所を教える」

「なんで君が鍵穴の位置を知ってるんだよ」

「そりゃ羽鍵が飛んでるとわかったら、自ずとそれでしか開かない鍵穴を見つけるだろう?でもフレイ先生がそんな校内を駆けずり回って鍵穴を仕込むとは思えない。だから特定の空き教室か何かの鍵穴が時間で当たり外れが切り替わるんじゃないかと推理したわけだ。そしたらビンゴ。見つかったよ。今回の予選はチームプレイ可。だったら情報と引き換えに鍵を手に入れたやつとチームを組めばいい」

「ちょっとそれ卑怯だろ!」

「いい考えだろ」

「時間で切り替わるって言ったけど、今はその鍵穴は使えるの?」

「あと…10分もすれば使えるようになるはずだ」

「…わかった」

「えー、ハリー。本当にマルフォイとやるの?」

「ロン。君マルフォイとは同じチームでプレイしてるじゃないか」

「こいつ、シーカーとしてちょっと頼りないんだよな」

「なんだと?ウィーズリー、お前こそキーパーのくせに打たれ弱くて…」

「ああ、よし。とにかく急ごう!他の人もそれに気づいたかもしれない」

 

 ドラコはよし来たと言わんばかりにハリーたちを先導した。なんとその場所は魔法薬学の教室の鍵だった。

「本気か?」

 ロンの言葉にドラコは自信たっぷりだった。

「からかってると思うなら自分で探しにいけ」

 そして懐中時計を確認して「よし、いまだ」と言った。ハリーは頷いて鍵を鍵穴に差し込んだ。

 すると体がぎゅっと上に引っ張られるような不快な感覚が3人を襲った。

 そして気づくと見知らぬ扉の前に立っていた。

 

 

 


 

 

 ソール・クローカー。

 

 無言者だと聞いて身構えていたが、人当たりの良さそうな笑みを浮かべた普通の魔法使いに見える。ホッグスヘッドにはある意味全く似つかわしくなかった。

 クローカーは私の目の前に座り、紅茶を注文した。しかし店主はぶっきらぼうに「ないよ」とだけ言いそれ以降彼を無視した。クローカーは肩をすくめると私の方を向いて穏やかに微笑んだ。

 

「私を怪しんでいるでしょう?」

「ええ。情報を餌に会おうと誘ってくる人を信用するほどバカじゃありませんよ」

「おっしゃる通り。ただこうでもしないとあなたを捕まえられないと思って」

「じゃあセバスチャンの行方を知っているっていうのは嘘ですか?」

「いや。それは本当ですよ」

「だったら早く教えてください。もう一年以上も彼を追ってるんです」

「慌てないで。まずは経緯から話させてください」

 

 クローカーはとても穏やかに話す人だった。彼曰く、セバスチャンが神秘部の人間と接触したのはスコットランドのある遺跡だったという。闇の魔術に関する調査をしていたところでお互いばったり出会ったらしい。

 その時接触した無言者がいうには、彼は死の秘宝を探しているという。

 

 死の秘宝。

 

 その存在は御伽話や神話の中のものとなっている。しかし古代魔術を使える私がそんなことを言うのはなかなかに滑稽だ。そう、セバスチャンも古代魔術の存在を知っている。ならば死の秘宝だって存在していると信じて行動してもおかしくない。

 

「セバスチャン・サロウは死の秘宝を探す旅をしています。おそらくはニワトコの杖を。これは実在が証明されていますから」

「…まさかとは思ったけれど…そうか。ありがとうございます。少しは私も追いかけやすくなったかもしれない」

「時々彼から手紙が届きます。殆ど一方通行ですが、手紙の写しを差し上げましょう」

「これ、タダってわけないですよね?」

「当然、私の頼みを聞いていただくのと引き換えです」

「やっぱり」

「安心してください。断っても手紙はお渡しします。ですがこれを見ればあなたも少しは私の研究に興味をお持ちになるはずです」

 クローカーはニコリと笑って懐から砂時計を取り出した。中身はキラキラとした砂粒で、回転させても動かないよう魔法がかかっていた。

「これは…?」

「それは逆転時計です」

「…はあ?」

 私の間抜けな声にクローカーはふふっと笑った。

「時間を遡る道具ですよ。私の研究成果です。とはいえ、まだ試作品ですが」

「時間を…?からかっているんですか?」

「実演して見せたいところですが…残念ながら指定の実験室以外で使うのは非常に危険でして。あなたにはこちらを差し上げましょう」

 そう言ってクローカーから差し出されたのはキラッと輝く砂粒の入った試験管だった。私はますます混乱してクローカーを見返す。

「逆転時計の砂の一粒です。これは時間を遡るのに必要な魔法の力が圧縮されたもの。これは私の研究とは全く異なる部門の副産物でした。資料を読むに、作るのに多くの時間と人員が必要だったようですね」

「ええっと…この砂粒で時間を遡れるんですか?」

「いいえ、遡るには私の作った制御装置…つまりはこの砂時計が必要です。私があなたに期待するのは、あなたならこのような砂を効率的に作ることができるのでは?ということです」

「…なるほど。だんだん話が読めてきました」

 

 この砂粒は要するに失われた技術なのだ。逆転時計を作動させるために必要なのに数を増やせず困っている。そこに失われた魔法を持った私が現れた。

 

「私の知る魔法の痕跡はこれには見られません。残念ですがお力になれると思えません」

 私が試験管を返そうとするとクローカーは辞した。

「差し上げます、と言いましたよ。どうか大切に持っていてください」

「はあ…」

「それでは。またお会いしましょう」

 

 クローカーはそういうと私を置き去りにしていった。私はしばらくその砂粒を眺めてから、ホッグス・ヘッドの店主に金を余計に払ってからホグワーツへ戻った。

 私が帰ってくるなりルーカン・ブラトルビーが私を見つけて駆け寄ってきた。

 

「フレイ!ずいぶん探したんだぞ。急いできてくれよ」

「君が私を必要とするってことは面倒な事でも起きたのかい」

「ちがうって!杖十字会にすごい新人が入ったんだよ」

 

 ブラトルビーは私を引っ張って時計台の中庭まで連れて行った。そこは杖十字会の決闘場所で、いけばいつでも何人かたむろしていて声をかければ誰とでも決闘できる。今日はいつもよりギャラリーが多かった。

 

「ほら!ほら!連れてきたぞ」

 

 私を見ると何人かの生徒が歓声を上げた。人だかりが割れてその中心にいた背の低い少年が緊張した面持ちで私を見上げていた。ブラトルビーはその子の肩をたたき、興奮気味に言った。

 

「この子、まだ2年生なのに異常に強いんだ!まるで去年の君みたいに!」

「へえ?そうは見えないけど」

 

 繊細で穏やかな面持ち。優しいブルーの目をしたナイーブそうな少年だった。キラキラした目が私を見ていて、なんだか面はゆい。少年は息をすうっと吸い込むと私に自己紹介をした。

 

 

「はじめまして、デッサウアーさん。ぼくはアルバス・ダンブルドアです」

 

 

 差し出された小さな手を握る。その手は華奢で温かく、そして力強かった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。