注意事項
・原作にBL要素があるため、念のためBLタグを追加しました。
嘘つきたち
親愛なる若き魔法使いの皆さんへ
ようこそ、すばらしい新世界へ!
ごきげんよう、ギルデロイ・ロックハートです!この輝かしいガイダンスへようこそお越しくださいました!
皆さんがこれから踏み入る社会は、この上なく合理的で美しい世界です。しかしながら、そのルールは少々込み入っているかもしれませんね。
ですが、ご安心ください!この私、ギルデロイ・ロックハートが、魔法の地図のように分かりやすく、この世界の仕組みをお教えいたします!
このガイダンスを受ければ、これから学校で過ごす日々も、社会の一員となるその日からも、人生を百倍――いえ、千倍――楽しめること請け合いです!
1. この世界の基本理念:「より大きな善のために」
まずは、この美しい世界を動かす最も重要で崇高なスローガン、「より大きな善のために」についてご説明いたします。
この言葉こそ、我らが偉大なる指導者、ゲラート・グリンデルバルド総帥が掲げた、この世界の中心思想なのです。
簡単に申し上げますと、これは我々優れた魔法使いが、魔法を持たないマグルたちをやさしく“
無秩序で危険なマグルたちを導くことで、世界はより善き方向へ進むのです。なんと高尚な考えでしょう!
この「善」は三つの柱から成り立っています。
まず第一に、魔法族による支配の確立です。1945年、グリンデルバルド総帥は国際魔法使い機密保持法を撤廃し、魔法使いがマグルを導く世界を築き上げました。これにより、我々は真の世界の指導者の地位を取り戻したのです。
第二に、『管理』による社会の合理化です。一日の始まりから人生の終わりまで、すべてを計画的に整えること――これこそが芸術であり、秩序の魔法なのです。無駄のない社会ほど美しいものはありませんよね?
そして第三に、脅威の排除です。マグルが作る爆弾や銃のような危険な技術を制御し、世界を破滅から守ることこそが、我々魔法使いの使命なのです。
世界を救う責務を担えるのは、我々のように魔法の才能とちょっとしたユーモアを兼ね備えた者だけなのですから!
2. 新しい社会の仕組み
さて、このすばらしい新世界は、明確な役割分担の上に成り立っています。エレガントでシンプル、実にわかりやすい仕組みです。
何よりも大切なのは、この世界が「魔法族のために存在している」という点です。
我々の社会は実力主義――つまり“魔法力主義”で動いています。優れた魔法の力を持つ者が社会を導き、支配階級として世界を豊かにするのです。ああ、なんて合理的で美しい響きでしょう!
一方で、魔法を持たないマグルたちは、これまでの混乱の反省として、我々の賢明な“管理”下に置かれました。
彼らは「マグル特別区」と呼ばれる場所で暮らし、建設や清掃、農業、修理といった労働を担っています。
中でも特別なのがシルヴァーレットと呼ばれるマグルです。彼らは魔法使いの血筋を持ち、銀の腕輪をはめています。屋敷しもべ妖精の代わりとして魔法使いに仕えることを許されており、労働環境もほんの少しだけ上等です。ええ、ほんの少しだけ、ですが!
3. 帝国の秩序を維持する仕組み
この美しい帝国の秩序は、いくつかのすばらしい仕組みによって支えられています。皆さんもきっと、その恩恵を日々感じていらっしゃることでしょう。
まずは教育制度についてです。
我々の未来を担う若き魔法使いたちには、正しく、美しく、そして誇り高い知識をお伝えしています。
ホグワーツをはじめとする各校では、皆さんの特技や特性を見定め、伸ばしていきます。偉大な力はその力にふさわしい場所で使われるべきですからね。皆さんのすばらしい人生の一歩はもう始まっているのですよ。
また、体に害を及ぼすとされるタバコなどの嗜好品は、教育的配慮のもとで禁止されています。これにより、若者たちは健やかで従順、そして美しい心を保つことができるのです。
次に、国家による安心の見守り体制についてご紹介しましょう。
屋敷しもべ妖精たちは、いまや「国家公務員」として社会全体に仕えています。
彼らは魔法省の管理局に正式に登録され、きらめく銀の首輪を誇らしげに身につけています。これは、忠誠と安全の証なのです。
おかげで、しもべ妖精たちは街の隅々まで目を配り、危険や不正をいち早く察知してくれます。
つまり――私たちは常に、優しいまなざしに見守られているというわけです!
こんなに安心できる社会が、かつてあったでしょうか?
帝国の街角には、私たちを励ます美しいスローガンが掲げられています。それぞれが、日々を輝かしく生きるための“魔法の言葉”なのです。
「忠誠と勤勉は、栄光への架け橋」
働くことは、もっとも誇らしい魔法です。
たとえ汗まみれでも、笑顔を忘れなければそれは立派な奉仕!
「私たちの魔法が社会を豊かにする」
魔法使いの力があるから、街は光り、世界は回るのです。
マグルの皆さんも、そのおかげで安心して暮らせる――なんて素敵な共生でしょう!
「魔法の名の下に平等を」
魔法を持つ者すべては兄弟姉妹。
同じ力を分かち合うことで、真の調和が生まれます。もちろん私、ギルデロイ・ロックハートもあなたの兄弟ですよ。
どの言葉も、見るたびに心を明るく照らしてくれますね。
スローガンは、考えるよりも“感じる”のがいちばんです!
4. この「すばらしい新世界」への脅威
もちろん、この完璧な帝国にも、光を妬む者たちが存在します。
まず、外部の敵・アメリカ連邦です。海の向こうでは、いまだにマグルと共生しているとか。まあ、哀れな旧時代の名残です。帝国は現在この愚かな国と戦争中ですが、ご心配なく。我々の魔法の前では、彼らの銃など杖の飾りにもなりません!
次に、内部の敵・ダンブルドア軍団です。
故アルバス・ダンブルドアの意志を継いだ反乱分子たちが地下で活動しています。捕まればディメンターのキスが待っていますが――まあ、あれもある種の“愛情表現”と言えるでしょうね。
そして最後に、過去の脅威・ヴォルデモートです。
1945年以降はじめて現れた、帝国を揺るがした狂信者でしたが、彼の掲げた「純血思想」は、我々の合理的で洗練された社会とはまるで相容れません。
英雄ハリー・ポッターが彼を打ち倒したとき、帝国は証明したのです。我々は、内部から生まれた脅威さえも打ち砕ける強さを持っているのだと!
脅威は必ず報告してください。
最後に。この“すばらしい新世界”を歩むあなたへ
さあ、これで帝国の基本はばっちりですね!
この完璧に整えられた世界の仕組みを知れば、日々の暮らしがいっそう眩しく感じられることでしょう。
なにしろ、秩序と管理が行き届いた社会ほど安心なものはありませんからね!
では魔法使いの皆さん、胸を張ってこの輝かしい帝国を歩んでください。
そして時々でいいので――このガイドを書いた天才俳優、ギルデロイ・ロックハートのことを思い出してくださいませ!
それでは、ごきげんよう!
ホグワーツ校長になってしまった私が最初にした仕事は三大魔法学校対抗試合中に起きたゴタゴタについて各校並びに協力した各国省庁に謝罪する事だった。
私は1ミリも悪くないのに。いや、むしろ被害者だと言うのに!
この理不尽に同情を示すものはいなかった。真の黒幕、バーティ・クラウチJr.を仕留め損ねたのがよくなかった。あいつの首根っこを捕まえ観客の前に引き倒せば私も被害者ヅラができていたかもしれない。
ヴォルデモートの復活は魔法省内で直ちに共有され、認められた。しかしながら民衆に対しては秘匿。強烈な箝口令が敷かれた。つまりそれは私の『謝罪』が形式に過ぎないと言う事を示す。頭を下げられたやつら誰しもがやつの復活を知っているくせに、知らんふりして茶番だと思いながらも私のつむじを見ているわけだ。全く馬鹿げている!
生徒たちが夏休みに入ってからも、校長の仕事はまだあった。人事だの安全対策だの、全てをマクゴナガルに任せてしまいたかった。だがあの人は私の怠惰に対して非常に手厳しかった。
まず広大なホグワーツ敷地内の保安対策が業務の一つとしてあり、これが一番厄介だった。禁じられた森には管理しきれなかった生きとし生けるもの全てが潜んでいて、それがうっかり校庭に迷い込んできた日にはもう目も当てられないほどの始末書の山ができるはずだ。
そしてしもべ妖精の統率も取らねばならなかった。以前説明した通り屋敷しもべ妖精は家ごとに仕える契約ではなく魔法省に仕える契約を結んだのちに各家庭へ再度配属されるようになった。(これにより閑職だった屋敷しもべ妖精登録管理室は現在は治安における最重要部門となった)ホグワーツの屋敷しもべ妖精も同様である。
校長となった魔法省の目である屋敷しもべ妖精たちを適切に配置し、日々報告を取りまとめ治安を維持せねばならなくなった。
しかし校長になってみてわかったこともあった。それは屋敷しもべ妖精たちが思ったよりも魔法省に忠誠を誓っていないという点だ。魔法省と契約した彼らはみな銀の首輪を嵌めており、反逆すればそれがぎゅっとしまって彼らの首を落とす。しかし、魔法省が考えているよりもその『契約』の効力は弱いのではないか。
彼らは思ったよりもサボっているし、黙っているし、気ままだ。魔法省の監視任務よりもホグワーツにいる生徒たちが快適に過ごせるようにすることを優先している。屋敷しもべ妖精の生まれ持っての習性…つまり家系に使えるという本能をそう簡単に契約で上書きできてるとは思えなかった。
私はハリーを1人家に残すのも、かと言って誰もいない学校に置いておくこともできずに途方に暮れていた。そんな私に手を差し伸べてくれたのはかつてハリーが暮らしていたグラストンベリーのチャリス・ウェル孤児院だった。私はその申し出に飛びついた。
ハリーくらいの年代の子はほとんど養子にもらわれているが、ハリーは嫌な顔ひとつしなかった。変わらない笑顔で私を許してくれた。
ハリーには記憶処置が行われている。だから彼はヴォルデモートの復活を知らない。私はその『変わらない』笑顔を見るのが嫌だった。
私には校長の仕事のほかにもいろんな悪事の音頭取りという大変名誉な仕事が山ほどあった。
ジークフリート、ジブリールとの孫連盟クーデター会議に、ダンブルドア軍団へ渡す情報の整理。
そんな忙しい日々の合間を縫って、私はセブルスを呼び出した。
「呼び出すとは珍しい。いったい何用か、グリンデルバルド校長」
皮肉たっぷりの物言いに私は思わずにやついてしまう。
「クーデター決行日も近いし、三重スパイ殿を抱き込んでおこうと思ってね」
「ならば相当のもてなしがあると期待してもよろしいかな」
「もちろん。誰にも話してない昔話に…ヌルメンガードから盗んだ酒もあるぞ」
「昼から?」
「そろそろ日暮れだろ」
「…てっきりR.A.Bの鑑定結果への礼かと思ったのだが」
「それはもうしただろ?」
「されていない」
私たちは校内を無言で歩く。
夏のホグワーツの姿を知れるのは教師の特権だ。
青々と茂った葉が少し湿った風に吹かれて、漣のような音を立てる。
誰もいない校舎は靴音を響かせて、どこかの花を攫った風が私の髪先を揺らす。
少し肌寒い影から一歩でた途端、飽和する光が視界を塗りつぶし陽だまりが体を包む。
変わらない美しさに触れるたびに私はこの世界を愛おしく思う。
そしてその美しさを心から愛することができないから、私は世界を壊したいほど憎んでる。
セブルスはどうだろう。
彼もまた世界を愛することができなさそうなのはわかっているけれど。ただ息をしているこの一瞬。なんてことのないこの一瞬にどうしようもない虚無感を覚えるだろうか。
どれほどの喪失を味わっても、生きている理由は何?
私は世界をやり直したい。それを叶える力がある。それこそが本当の不幸なんじゃないかと思う。
久々の必要な部屋はどこか空寒く感じる。あんなに明るく思えた蝋燭の光も、それを柔らかく反射する捨てられた瓶の山も、大鍋の曲面も、すべてに感じられていた優しさの名残が拭い去られたように、冷たい。
「久々だな」
いつも使っていたカウンターの埃をはらい、私は実家から持ってきた特別高価な酒のボトルを掲げた。
「飲みながら話すようなことなのか?」
「酔わなきゃ話せないような話だから」
私はセブルスの分もグラスに注ぎ、半ば強制的に盃を交わした。
セブルスにも多少は酔っていてもらわないと困る。私の昔話と引き換えに、セブルスのことを知りたかったから。私に協力する彼が、私と似た眼差しの彼が何を感じていたのか知りたかった。
「それじゃあ…早速話そうか。おとぎ話を」
「……は?」