目が覚めたら知らねぇ岩肌だった。
いやなんでだ?
ここはどこだ?
しかもまるで全身を拘束されているみたいに体が動かねぇときた。
絶望。
いしのなかにいる!
四天王の部屋の謎の黒い空間でレポート書くなよ。死ぬぞ。
シェイミやダークライなどいない。いいね?
なんて冗談言ってる場合じゃないのよ。
おーい!誰かいませんか!?ここから出してくださいよー。ふぅ、暑苦しいなここ……。
ん?今なんか足先に触れた感触。ゴソゴソと動いている。まさか、G!?いや、違うな。Gはもっとこう、カサカサーっと動くもんな。
なんとか視線だけ足元に向けてみる。
全身タイツのおじさん達が俺の全身に四角いなにかを取り付けているのが見える。
小さいおじさん!?自力で脱出を!?
よくよく見ると、俺の足元には小さいおじさんサイズの消火器とか、なんらかの工具類とかが転がっている。
まさかこれは、おじさんが小さいんじゃない。俺が大きいのか?
その時俺の脳内に溢れ出す、存在する記憶。
あっ!これ進研ゼミで見たことある光景だ!
機動戦士ガンダム!デデデーン!デデデーン!シャウッ!
俺、俺、ジムになってる〜!
そうはならんやろ!なっとるやろがい!
結論から話すがこのままだと俺は爆発して死ぬ!
詳細は省くがこれはガンダム30話「小さな防衛戦」の一幕なのだ。
ジャブローで目覚めの時を待つガンダムの量産型であるジム。
その工場にジオンの特殊部隊が潜入。爆弾を仕掛ける。
カツ、レツ、キッカのちびっこ三人組のファインプレーによってほとんどの爆弾が取り除かれ、事なきを得る。
うろ覚えだが大体こんなストーリーだ。
いや、そうか。ちびっこが来れば俺は助かるじゃん。
ちび達早く来てくれ〜。
待てども待てども、誰もこない。
爆弾の残り時間、3秒。終わった。死(爆発)
俺の全身に取り付けられた爆弾が爆発。いってぇ!でも生きてた。
ジムの装甲ってそんな硬いの?ジムってすごい。素直にそう思った。
爆発で流石に連邦側も気が付いたっぽい。
俺の周りにワラワラ人が集まってくる。
そんで俺のお腹のハッチがウィーン。この感覚怖い!小生お腹ウィーン開くのヤダ!
乗り込んでくる美少女パイロット。金髪碧眼身長165cmスレンダー美少女だ。ヨシ!通れ。貴様は俺を乗りこなす資格がある。(超上から目線)
ジム出ます!ジム発進!
俺のエンジンがウォン鳴り響き一歩を踏み出した。
俺、大地に立つ。いっきまーす!
【→】
はしる、はしる、はしる〜。
ジャブロー広すぎ。とりあえず全身タイツおじさん達のアッガイを追いかける。
ジオン星人は殲滅する!俺の正義の連邦の血が疼くぜ。
カションカションカション……。
ねぇ、俺の足音ダサくない?
兵器の足音じゃねえだろコレ。軽いよ、音がさ。
もっとこう、ガションガションとかさぁ〜。
濁点ないとかテンション下がるわ〜。
量産型の悲しい性ってヤツ?宿命。背負っちゃってるのよね〜。
そうこうしてたら見えてきた、敵。
赤くて3倍速いな?
シャアじゃん笑ウケる笑
カサカサーと来てズゴックの爪がブーンて。
これ死んだわ俺。
いや、ダメだ。お腹の娘(正しい表現)を守護らねばならないのだ。
フン!ジムパーンチ!爪を横殴り。逸れる軌道。驚くシャア。ザマァ。
正義の鉄槌をくらえ!うぉぉ!バァルカンッッッ!
スポポポポ!俺の頭が火を吹く。シャアはカサカサーと逃げていった。
知り得たか。正義の連邦ジム様を。貴様の敗北で俺は充実した一日となるがよろしいか?
背後からガションガションの音。この力強さ、ガンダムですね。
ガンダムと新型の2VS1は流石のシャアも臆したか。
やっぱジムじゃダメかジムじゃ。こんな俺程度で逃げないよなシャアも。ポイズン……。
オデ、ツカレタ。格納庫帰って寝よ。
【パイロット視点】
待機室に鳴り響く警報。
まさか、難攻不落の地下要塞、ジャブローに敵が潜入するなんて。
驚きもそこそこに体はとっくに機体めがけて走り出していた。
体に染みついたパイロットとしての動作。
元は戦闘機パイロットだったが、適正があった為に今ではモビルスーツパイロットだ。
とはいえ肝心の機体は完成しておらず、シミュレータでの訓練のみの日々を過ごしていた。
そして今日が待ちに待ったロールアウト当日、そのはずだったのだが。
その格納庫から火の手が上がっている。
消化活動にいそしむ整備兵を押しのけ自分の機体に駆け寄る。
周囲の被害に対して、機体の損傷は軽微だ。装甲が煤けている程度。
他のジムが大破しているものもあるのだから、この子は運が良かったのだろう。
「動かせる機体は全部出せ!敵が来るぞ!」
「ララ・アンデルセン、出撃します!」
「8番機出るぞ!道を開けろ!8番機発進!」
フットペダルを踏み込みジャブローを駆ける。
他にも数機のジムが続く。
指揮系統は混乱。
会敵次第、各個に応戦するしかない。
先行した機体が次々と爆散する。
岩陰から影のように染み出してくる赤色の機体。
まさか、赤い彗星のシャア!?
ルウム戦役で猛威を振るったジオンのエースパイロット。
記録映像で見た、尾を引くブースターの光、赤い装甲。
次々に沈められる戦艦。
死を覚悟する。
けど、モビルスーツに乗っている今なら!
シールドを構え、ビームライフルを連射する。
スプレーガンよりも収束率が高く命中率も高いはずのそれは、しかし掠りもしない。
動きが違いすぎる……!
ビームサーベルを抜く暇もなく、懐に潜られる。
コックピットのモニターいっぱいに広がる敵機のクロー。
走馬灯が流れる。
優しい家族に囲まれた暖かな日常。恋人との甘い日々。そして突然崩れ去った空の落ちてくる日。
「私、こんなところでっ……」
覚悟していた。はすだった。涙で濡れた情けない声が喉を震わせる。ここで死ぬ。なんにもできずに。それがひたすらに怖かった。
それでも、最期まで目を逸らさないちっぽけなプライドだけがあった。
『Bi!!』
ガキィンッ!
スローになった世界で、突然鳴り響くビープ音。遅れて届く金属の激突音。
操縦桿は動かしてない。
ジムの腕が、勝手に。敵機の腕をはたき落としていた。
「ッ!?なに!?」
『ppp……』
モニター中央にシステム作動中の文字。
なんのシステムなの!?
ヴゥゥゥゥゥン……。またも勝手に動いたジムがバルカンを斉射する。
至近からのそれを掻い潜り、赤い機体が後方の闇へと消えていく。
シャアの撤退を見届けるようにしばらく佇んだ後、自動で格納庫に帰還を始める自分の機体。
「アナタは、誰……?」
次があれば一年戦争編は終わりです。