吾輩はジムである   作:呼び水の主

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11話 俺は……

 

 宇宙へと上がった俺とアムロを待ち受けていたのは、ティターンズの艦隊だった。

 合流予定のエゥーゴのサラミス改は撃沈され、俺たちは宇宙に身一つで取り残されている状況だ。そんな危うい状況の中、俺はかつてのパイロットであるララ・アンデルセンに再会する。7年の月日想い続け、そしてようやく叶ったこの再開が何を意味するのか。次回、機動戦士ジム「ララちゃん奪還作戦」ジムの拳が光って唸る!

 

 そう言うわけで、こっから先は全力だ!リミッター解除!後のことは後で考える!だから!モーターが焼き切れるほどに!気張れッ!

 

「……なんだ?操縦の違和感が消えたか。これなら!」

 

 流れるような動作でガンダムマークIIのビームサーベルを受け流す。

 アムロの操作を受け取り、俺が俺として最適な動きへと瞬時に最適化する。そこには僅かなラグも存在しない。

 

 両肩のブースターを点火して後退する俺に張り付いてくる黒いガンダム。圧倒的な機体性能の差でこちらを封殺するつもりだ。防御しようと突き出したシールドを、ガンダムのビームサーベルが貫通する。そのままパワーで押し込まれていく俺とアムロ。シールド越しに覗くガンダムの双眸が威圧的にこちらを睨め付ける。

 

「なんてパワーだ!しかし今のコイツならっ」

 

 アムロの操縦センスは高い。俺の可動域を、俺の体を俺以上に知り尽くしている。

 だから────弱い。

 アムロの思考に、機体が追いつかない。一年戦争の末期に、あのガンダムですらアムロについていけなくなった程、このアムロ・レイという青年の成長性は凄まじかったのだ。

 故に、無意識に機体に気を遣ってしまう。自分に制限をかけてしまう。思い通りに動かせば、機体が壊れてしまうから。

 

 俺という器が、アムロの枷になってしまっている。こんな半端じゃ、今の俺たちじゃ、ガンダムにのったララちゃんには勝てねぇ。

 

 だから俺は、俺自身を捨てる──

 

「そこだ!」

 

 シールドを手放すと同時に、そのシールドへ向けて右肩のクレイバズーカを全弾叩き込む。

 至近距離での爆発と破片を受けてたまらず後退するガンダムの頭上に回り込み、ビームライフルを連射する。相手から見たら瞬間移動にも見えるその死角からの攻撃が、流石に反応しきれなかったガンダムの両肩のブースターを貫いた。

 

『うぁ!?ッ、まだ!』

 

 離脱するこちらに追い縋ろうと加速したガンダムに、軌道上に置かれるように左肩から投射されていたグレネードランチャーが起爆して残るシールドブースターをも奪い去る。

 

『くっ!?手玉に取られている!?マークツーが、そんなモビルスーツなんかに!』

 

 そのシルエットを異形たらしめていた追加装備のほとんどを喪失し、ガンダムとしての本来の姿に剥かれたマークIIが、ビームサーベルを抜刀し急接近しつつ、残るビームライフルを連射する。

 

 飛来するビームの雨の中を、避けることなく直進する。

 直撃!いてぇ!けどぉ!!

 全身の増加装甲が一度だけビームライフルに耐える。

 爆炎の中を突き進み装甲をパージしつつ、こちらもサーベルを抜き放ってまっすぐ突き進む俺とアムロ。

 

 遂に両者の肩が激突し火花を散らす。アムロの意思を拡張した俺の真価が、ここに結実する。全身に配置された姿勢制御用のアポジモーターがさながら生き物のように噴射を繰り返す。腰を深く落とし込み、「ひねり」の動作を加えることで、肩を起点に激突した両者の持つベクトルを、俺の後方へと受け流す。

 

 アムロの操縦を、その意思をトレースし、その先まで拡張する。

 その為のリミッター解除。

 ここで壊れてしまってもいい。

 だから ありったけを。

 ムーバブルフレームなんて骨格のない俺にできる、今出せる最大限の全力を。この一刀に全てを注ぎ込む!

 

『こんな、こんなの……!ただのジムの動きじゃッ!?』

「うぉぉぉぉ!」

 

 肩から弾かれ胴がガラ空きになる。隙のできたガンダムマークIIの懐へ飛び込み、右腕のビームサーベルを振り抜く。

 ガンダム!ララちゃんを、返せッッッ!!

 肘から先の両腕と、コックピットハッチだけを斬り飛ばす絶技。

 そして勢い余って衝突し、もつれ合う俺とガンダム。

 その衝撃を最後に、俺の全身の関節が白い煙を吐き出して機能を停止した。

 

 ハァ……ハァ……ハァ……

   ハァ……ハァ……ハァ……

 

 ララちゃん!ララちゃんは、無事なのか……!?

 俺のバイザーがガンダムのコックピットを捉える。

 黒いティターンズのパイロットスーツに身を包んだララちゃんが、強張る表情で俺に拳銃を向けていた。

 

『嫌!イヤ!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 接触回線で伝わる絶叫。俺のバイザーを僅かに曇らせる拳銃弾。

 ララちゃん!?やめてくれ!俺だ!ジムだ!!

 やがて弾切れになり、しばらくカチカチと引鉄を引き続けたララちゃんは、フッと落ちるように気絶した。

 

 ……え?……なんで?俺のことが、わからない、の、か?

 

【→】

 

「前方のティターンズの艦隊、射程に入りました」

「こいつぁ大物だ。久しぶりにまともな食事にありつけそうですなぁ?」

「油断するんじゃないよ。手負いの獣ほど噛み付くからね」

「へい!ではシーマ様、大漁を期待しています」

「任せときな!【ゲルググ】、出すぞ!」

 

 黒いザンジバル級機動巡洋艦『リリー・マルレーン』から、専用カラーに塗装された継ぎ接ぎのガルバルディタイプが発進する。元はかろうじてゲルググだったと思わせるその特徴的な頭部も、度重なる改修で大きく姿を変えていた。

 

「とんでもない激戦だったみたいだねぇ。こりゃあいい。選り取りみどり……」

 

 カンカンと細かい音を立ててゲルググの装甲をデブリが叩く。

 原型を残したモビルスーツのパーツらしきものがモニターを横切っていく。

 

「まいったねぇ、とんだ大物を釣り上げちまったよ。こりゃ……ガンダムじゃないか!」

 

 偶然通りかかった宇宙海賊の存在によって、止まるはずだった運命の歯車が動き出す。




ララちゃん「イヤッ!イヤ!イヤ!!!」
ジム「言わないでしょそんな事ッ言わないよねェッ」
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