吾輩はジムである   作:呼び水の主

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13話 今日から俺は!

 

「ザクもどきめ!」

 

 シーマのゲルググが2機目のハイザックを戦闘不能にする。

 

『腕の立つ奴がいるな!』

 

 声だけで強力だとわかるプレッシャーを持った敵機がシーマが子供たちと過ごした食堂や広場やプレハブ小屋を薙ぎ倒しながら進撃する。

 

「これ以上はやらしゃしないよ!」

『焦っているなぁ!宇宙海賊ぅ!』

「チッ!ゲルググがザクに押し込まれるなんて、癪だねぇ!」

『そんな継ぎ接ぎでよくやる!』

 

 ゲルググのナギナタが空を斬る。

 ハイザックはシーマの剣筋を的確に捉えて回避と反撃を差し込む。

 フェイントを織り交ぜた歴戦のエース同士のモビルスーツ近接戦闘は、それだけで互いの体力を消耗させ周囲の被害を拡大させていく。

 そして僅かな隙が決着となる。

 

「シーマさん!負けるなー!」

「ジュドー!?隔壁の外なんか出るな!死にたいのか!?」

『もらったァ!』

「しまった!?」

 

 ハイザックのビームサーベルがコックピットに迫る。

 ジュドーの顔が絶望に染まる。

 

(ジュドー!リィナ!すまないねぇ……。アタシらがここに来たせいで、アンタらを危険に晒しちまったよ……。つくづく、救えないねぇアタシは……)

 

 死を覚悟するシーマ。

 最期まで後悔ばかりして、何も掴めない人生だった。

 つかの間の幸せさえ自分で壊して、守りたいものも守れない──

 

「ッッッ」

『死ねぇーい!』

 

 その時、シーマのゲルググに庇われるようにして立っていたジュドーの目にしていた風景に異変が起こる。世界の色は反転し、スローモーションになる。

 自分のせいで、シーマさんが死んじゃう。

 俺は、俺はなんてことを……。自分勝手な判断だけで……。

 もう一人の母親と心の中で慕っていた恩人を殺してしまう。

 

「俺が……!嫌だ……!誰か、誰でもいい!誰か!助けてぇ!」

 

 ジュドーの魂の悲鳴がコロニーに木霊する。

 そして無慈悲に粒子の刃は振り下ろされて──

 

 

 

 ──そして、その刃はゲルググを貫くこと無く霧散する。瓦礫の山から突如飛び出してきたジムが、ザクを思い切り殴り倒した。

 それは腰の入った、見事なグーパンであった。

 

 その日、ジュドー・アーシタは。

 彼の人生を大きく変える「ヒーロー」に出会った。

 

【→】

 

 私 が 来 た ! ! !

 

 瓦礫を突き破って 私 が 来 た ! ! !

 

 なんだなんだぁ!?

 もしかして俺、チョーカッコいいタイミングで登場しちゃいましたぁ!?

 ヘッヘッヘ。シンパイスルコトハナイ。

 もう一度言うぜ!

 

 私 が ! 

 

「もう!行くわよ!」

 

 あぁ!俺のカッコいい決め台詞が!?

 ララちゃんの操縦で俺の決めポーズがキャンセルされハイザックとゲルググの間に体を割り込ませる。

 

『なにぃ!?もう一機いただと!?』

 

 なんだコイツ……!

 尋常じゃないプレッシャーを感じるぜ!

 サイキック・インプレッション……とかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。こいつは人間の野生を凝縮したような、生命の力強さ。本能に訴えかける「恐怖」だッッッ!

 俺を通して、ララちゃんも感じたのだろう。

 目の前の敵は、エースだ。

 俺とララちゃんの力を合わせても、勝てるかどうか……。

 

「お願い、私に力を貸して!」

 

 ララちゃんの滑らかな手が俺の操縦桿を力強く握りしめる。

 あたたかい。

 かつてないほどキミを感じる。キミの心伝わってくる。

 守りたい、そのひたむきな想いが俺の炉心を震わせる。

 ああ、そうだな。

 今の俺たちは人機一体。

 俺はキミで、キミは俺だ。

 行くぜ、ララちゃん!シャングリラを、みんなの命を守るんだ!

 敵が強いくらいで、怯えてられねーぜッ!!!

 

「pppppppppp.........!」

「ありがとう!行くわよ、アルフォンス!」

 

 アルフォンス!?俺の、名前か……?

 アルフォンス、アルフォンスか。

 いいねぇ!

 今日から俺は!ジムあらため、ジム・アルフォンス!

 気合い!入れて!行きまーす!

 

『なんだぁこの旧式はぁ!』

 

 俺は旧式じゃないやい!

 青いハイザックがムチのような武器を振り回し俺の腕を絡めとる。

 

「これは!?海ヘビを持つハイザックはヤザン大尉か!」

『その声はリリィ・マルレーンだなぁ!寝返ったか!いいぞぉ!お前とヤッてみたかったんだッ』

 

 その声、その武器、お前ヤザンかよぉ!

 Zネームドの中でも最強格のパイロット(オールドタイプ)じゃねえか!

 道理で!そりゃあ俺も死の恐怖を直感するわ!

 けど悪いな!今の俺にはララちゃんがいるのさ!

 故に!今の俺は無敵!

 だからぁ!そんなもんがぁ!効くわきゃあねーだろぉ!!

 ムチに電流が流される僅かな隙に左腕でビームサーベルを抜刀!目にも留まらぬ早業で切断する。

 海ヘビを切断されハイザックが素早く後退しビームライフルを構える。

 

『いい反応だが、こいつはどうだ!』

 

 銃口から吐き出され眼前に迫る粒子ビーム。この距離は避けられない。

 逆に考えるんだ。避けなくってもいいさと。

 だからさ!

 ビームサーベルはぁ!

 

「こう使う!」

 

ビームサーベルを持つ手を高速で回転させてビームの盾を作り出す!

ハイザックのビームライフルの連射を全て受け止め、散らして前へ進む。

 

『なに!?ビームを盾にして使うだとぉ!?』

「強いパイロットほど、アルフォンスのトリッキーさは隙になる!」

 

 なんとぉー!!

 敵の懐に飛び込み渾身の左回し蹴りィ!

 更にバーニアで加速して左のダメ押しキックでハイザックの腹部を蹴り飛ばす!

 ムーバブルフレームだからこそできる、ヒトのカタチを最大限に活かした戦闘術。劇場版ZでマークIIのプラモをアホほど販促した「なんかかっこいいキック」だぁー!

 

「ここから、ここから!でていけぇー!!」

 

 蹴り飛ばされたヤザンのハイザックがコロニーベイへと吹き飛ばされていく。そのまま頭部をグワシと掴んで最大推力!

 俺の拳が真っ赤に燃える!お前を倒せと轟き叫ぶ!

 

『ぬぉぉぉぉぉ!?なんなんだこの力はぁ!リリィ・マルレーンはティターンズじゃなかったのかぁ!?』

「ティターンズのリリィは死んだ!今の私は、ララ・アンデルセンだぁー!」

 

 ララちゃんの昂ぶりが俺へと伝播して、俺の炉心が震えるぜビートォ!

 ヒィィィィィィトッ!エェェェェェェェェェェェェェェンッ!

 

 コロニーから宇宙へと一つの光点となって勢いよく飛び出していく。

 俺の手に掴まれたハイザックの頭部が、推力に耐えられず遂に圧壊する。ジムファイト国際条約第一条!頭部を破壊された者は失格となる!

 それで言い訳つくだろ!帰っちまえ!

 

 ここでの殺生はコロニーへの報復に繋がってしまうかもしれない。

 だから今日はこの辺で勘弁してやらぁ!

 

 ヤザンを回収したアレキサンドリアに、コロニーから進発してきたリリー・マルレーンが砲撃を加える。

 その砲撃に押されて、アレキサンドリアは遂に回頭しシャングリラから離脱していった。

 ふぃー。なんとかなった。

 いや、落ち着いたら手の震えが止まりません……。

 あのヤザンによくまあゴリ押しが通じたよ……。

 俺とララちゃんのシンクロ率が無限大じゃなかったら危なかったぜ。

 

「……アル、ありがと」

 

 お、おう?

 アルって愛称だよな?

 な、なんか、妙に照れるな……。

 なんか変だ、俺……。

 

 いつまでも手のかかる娘のような感覚でいたけどさ。

 いつの間にか、ララちゃんも大人になったんだなぁ。

 当時が16歳だから、今は23か?

 大きくなったなぁ。

 なんだか寂しいような、嬉しいような。

 俺に子どもがいたら、こんな感覚を覚えたのかねぇ。

 もうララちゃんじゃなくてララさんだなぁ。はっはっはっ。

 お父さん嬉しいゾ⭐︎なーんちゃって。

 

「もう絶対に離れないからね、私のアルフォンス?」

 

 ……んーーーー???




ジムくん「今日から俺は!」
ララさん「私の家族です」
ジムくん「スレッタ・マーキュリー……ッ!?」
割と理由のある依存癖がジム・アルフォンスを襲う──!

「アル!キミを私色に染め上げる!」
「ミスター・ブシドー!?」
次回、機動戦士ジム エゥーゴの魔女
14話「私だけの専用カラー」
ララ、お前の路線がわかんないよ……
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