吾輩はジムである   作:呼び水の主

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15話 私の新しい仲間たち

 

 敵艦隊から迎撃のモビルスーツ部隊が出てくる。

 無数のハイザックに、ガルバルディβ。それにあの赤い新型は!?

 動きもキレがある。少なくとも上位レベルだ。

 数も性能も圧倒的にティターンズの方が上。

 対してこちらはジャンクを寄せ集めて整備・改造された旧式モビルスーツ達。

 ザク、ドム、ゲルググの形に似たかつてそうだった魔改造モビルスーツ達がティターンズに斬り込んでいく。

 

【→】

 

「ティターンズが出てきたって、馬鹿正直に正面から相手してやることはないんだよ」

 

 出撃前のブリーフィングでシーマさんがそう切り出した。

 

「けどシーマさん。艦隊防衛となれば奇襲も難しいんじゃ?」

「まあ普通ならそうかもしれないねぇ」

「ララさん、ウチらは海賊だぜ?一年戦争からこっち、連邦相手に生き残ってきたのは実力だけに頼ってきたわけじゃねぇ」

 

私の疑問に、マリアさんがピアスをつけた舌を覗かせながら答える。

 

「主力がジムのカスタムタイプとかになってきた辺りで、モビルスーツの質も上がりましたからねぇ。正面から力任せに、という戦法が通じなくなっていったのですわ。まあ、わたくしのドムに貫けない物などありませんが……!」

「ちょい黙ってろオルトリンデェ……。敵さんの腕前も上がったからさ、生き残るためにウチらも色々と考えたワケ」

「マリアも無い頭で必死に考えたんですわよねぇ」

「オルトォ……!今日という今日はお前を殺す……!」デデン!

「オーホホホ!わたくしを殺してごらんなさーい!」

 

 茶化してきたオルトリンデさんにマリアさんが掴みかかるが、逆に関節技をキメられていた。マリアさんの圧倒的フィジカルを前に物ともせず組み伏せたオルトリンデさんが高笑いしている。モビルスーツの近接格闘に強い人は生身でも強いらしかった。

 

「まったくコイツらと来たら、マハルの時から全く成長しやしない」

「あはは……」

「けどコイツらがアンタの僚機だからね。しっかり躾けるんだよ」

「エッ!?」

 

 私が部隊を任せられるのは聞いてたけど、この人達なの……!?

 連邦軍にいた時の部下達とはまったくノリが違うんだけど、大丈夫かな……。

 エビ反りにされたマリアさんがオルトリンデさんに逆エビ固めされている。

 

「はな、はなしやがれぇぇぇ……!」

「オーホホホ!泣いてもやめませんわ!泣いてもやめませんわ!仕掛けて来たのはソチラですわ!これは正当防衛ですわー!」

「ウウッ、ウワァァァァァァァァァァァ……!」

「アラ!泣きましたわ!」

「ま、まあまあその辺で……」

「隊長命令なら仕方ありませんわね……。マリア、これに懲りたら貴女もサッサと格闘技を修めなさいな」

「……うるせーこのドリル髪女!ウチだってそこそこやれんだよ!お前が強すぎるだけだこのメスゴリラ!」

 

 二人がまた喧嘩腰になったあたりで、私の中の現役スイッチが入った。

 いたなぁ。私の事運が良いだけの成り上がりの女性士官だって馬鹿にしてくる人。枕までしてるなんてことも言われたっけ。

 そういう人は逆に無視したらダメ。軍隊だからね。軍隊流の対応方法をしなくちゃいけないよね。

 わかるまでわからせる。骨身の底まで。妥協なく。

 

「シーマさん?」

「……死なない程度に好きにしていいさね」

「ありがとうございます。ねぇ二人とも」

「「あぁ!?なんだ、よ(なんで、すの)……!?」」

「私の部下はね、人を煽らないし、暴言を吐かないし、やること全部に責任を持たなくちゃいけないの」

「ララ隊長ォ、なんだよ急に説教かよ!」

「マ、マリア!おやめなさい!」

上官()が喋ってる」

「「ヒッ」」

 

 その後、ティターンズでは鉄面皮と呼ばれた真顔でコンコンとド正論で詰めまくるララの姿に、逆らうと大変なことになると本能で察した二人はすっかり大人しく躾けられたのであった。

 ちなみにティターンズではララの真顔説教ファンクラブなる酔狂なものが存在したが、今はもう昔の話である。

 

「……さて、話を戻すが、今回の作戦の肝はアタシら特製特殊ミサイルさ」

「このミサイルが意外にも強いんですわー!」

「中にトリモチ詰めるんだよトリモチ。敵の近くで破裂させれば相手の動きを封じられるってワケ」

 

 なるほど、駆動系に絡みつく特殊弾頭って事ね。

 トリモチとは言っても、溶剤によって薄められたそれは粘性を持ったポリマーの様になっており、破裂した弾頭の一定の範囲に散布されモビルスーツの動きを阻害するだろう。

 

「密集した艦隊にこそ、コイツは威力を発揮するのさ」

「恐ろしい武器ですね……。けど、数を揃えるのが難しいんじゃ」

「シャングリラの今の特産品知ってるかい?」

「えぇ……まさか」

「いやー、ウチらがドカドカ発注するもんだからさぁ」

「コロニーのジャンク屋たちはみーんな餅屋にジョブチェンジですわー!」

「エゥーゴから大量発注が入ったからね、今頃シャングリラじゃお祭り騒ぎだろうよ。元々需要はあれどそれで儲けようなんて物じゃなかったからね。原材料は一年戦争でそこら中に漂ってるしね」

「マージンだけでウチらもウハウハなんすよねぇ!これでライフル改造できるし、遂にEパック方式に改造しちゃったりして!?ジェネレータに掛かる負担ゼロになるから機体のペイロード爆上がりじゃん!ハッ!?ってことは実体弾携行できるんじゃ!?」

「趣味の世界ですわねぇ……」

「回ってるなぁ、経済……」

 

 外壁破損などを緊急で補修できるトリモチは、宇宙に住む者に取って生命線である。そして今回のエゥーゴからの大量発注。それがスペースデブリから原材料を調達できるということで、今ではサイド1近辺の宙域は非常に綺麗になっていた。

 少し未来の話であるが、このトリモチ弾頭は今後戦場で広く長く使われて行く事になる。

 シャングリラを中心に、苦しい経済状況が改善されつつあった。

 

【→】

 

「なんだこれは!?粒子が機体に絡みついて、動きが!?」

「そんな所で突っ立ってるなんて、ただのカカシですわぁー!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 敵の弱小部隊を正面からすり潰す作戦だったティターンズは機体を密集させ過ぎていた。シーマ艦隊からのトリモチミサイルで動きを鈍らせたモビルスーツ達が、次々とゲルググに討ち取られていく。

 オルトリンデのドムがその右腕に装備したドリルのように回転するヒートパイルでハイザックのコックピットを貫き、その凄まじい衝撃で敵機の四肢は弾け飛んだ。

 

「ツィマッドのたましぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 土星エンジンでカッ飛びながら、ドリルが迫る!

 

「そんな小手先の戦法でぇ!」

 

 しかしティターンズは腐っても連邦軍の精鋭である。

 即座にシーマ艦隊の作戦に適応してきたモビルスーツ達が、新たなトリモチ散布はないと踏んでシーマ艦隊へ突撃をかける。

 その予想通り、トリモチの効果はもちろんシーマ側も影響を受けてしまう。遠方からの先制攻撃が鉄則の武器である。しかし、例外は存在する。

 

「狙い撃つぜぇ!」

 

 マリアのハイザックスナイパーカスタムが、頭部に備えた特徴的な3つのレンズを回転、精密狙撃モードに切り替えてトリモチ弾頭を次々とピンポイントで敵機に打ち込んでいく。

 近接信管で爆発する特殊弾頭が、極小の範囲でトリモチ粒子を撒き散らしその足を鈍らせる。機動兵器が機動できなくなれば、宇宙ではたちまち的である。

 

「くそ!?メインスラスターが不調!?」

「機体の動きが鈍くなった程度で、貴様ら旧式に遅れをとるものかよ!……ぐぁ!?」

「なんだ!?敵機!真上からだと!?」

 

 ハイザックが真上からのビームに貫かれ爆散する。

 立て続けに放たれる正確無比な射撃が次々とティターンズの機体を削り取って行く。

 

「動きが違う!?あれは……!あの機体は!?」

 

 見上げるハイザックの視線の先。スラスターの尾を引いて宇宙を翔けるその機体は──

 

「まさか……!」

「まさか!?」

「ガンダムだと……!?」

 

 ジムだよ!

 

「アルフォンス!」

 

 合点承知!

 ハイザック3機のビームライフル斉射を掻い潜る。

 ビームサーベルを抜刀し、こちらに怯んだハイザックを次々に袈裟斬りにする。

 エゥーゴの降下部隊には近づけさせない!

 

「アル!?右ッ!」

 

 うぉぉぉぉぉ!?

 咄嗟に構えたシールドに完全に意識の外から飛んできたビームが叩きつけられる。

 なんて出力だよ!?モビルスーツのビームじゃない!?

 

『言葉が走った!面白いな!そこのモビルスーツ!』

 

 げぇー!?お、お前は!




機体解説
シーマ隊
・ゲルググ
ゲルググマリーネをベースに海賊業で手に入れたジャンク品で、日に日に進歩していく連邦軍のモビルスーツの性能に対応するべく現地改修を重ねた機体。主にジオン系の技術を取り入れ発展したゲルググの系譜であるガルバルディβのパーツと親和性が高く、またガルバルディが連邦軍に広く普及していたことも手伝い比較的ゲルググとしての見た目を残しつつ性能の向上に成功している。その機体性能は元の機体の優秀さも相待って状況によってはハイザックを上回る。
武装はビームライフルとビームナギナタ、シールド。ライフルはガルバルディβの物。ナギナタは連邦系のビームサーベルを2本連結した改造品であり、幅広い刀身が特徴的だった本家のビームナギナタとは違い、普通のサーベル状のビーム刃を形成する。シールドはカラバで運用されていたアムロ搭乗時のジムと同じく、鹵獲品が多く出回るジム・カスタム系のシールドを装備している。
シーマ機と一般機の違いはカラーリングのみであり、ジャンク品で補修を受けながらも整備性のためほぼ改造具合や使用パーツは共通している。
ちなみにカラーリングについては、一時シーマが資金難から塗装を渋ったが、シーマ艦隊総員が士気向上を理由に続けるよう懇願した。

ララ隊
・ドム・ボーレン
シーマ艦隊の女性パイロット、オルトリンデの乗機。元々は一般的なリックドムだったが改修を重ねるうちに彼女の性格が色濃く反映されたゲテモノ機体へと変貌した。バックパックに担架されたドリル状の巨大なヒートパイルは、元々は資源掘削用の工業製品である。ボーレンとはドイツ系の言葉でドリルの意。サブ兵装としてヒートナイフを左肩に取り付けている。近接に特化した機体だが、リアスカートにMMP80マシンガンを装備可能でドリルのアウトレンジもカバーしている、意外と器用な機体。しかし携行頻度はあまり多くないようだ。それは、彼女の相棒への信頼の表れである。
 搭載された土星エンジンは補給のままならない現状では整備が困難で、愛故にオルトリンデ自身がジャンクを使って日々維持している。

・ハイザックスナイパーカスタム
シーマ艦隊の狙撃担当、マリアの機体。元はザクⅠスナイパーだったが、度重なる改修で素体はほぼ完品で鹵獲したハイザックに換装。頭部はより精密な射撃が可能になるザク強行偵察型の強化機体、ザクフリッパーの物を取り付け狙撃性能を向上させている。ビームライフルは当時のままの外観だが最大の特徴は実体弾を装填可能な特製バレルを使用できる点で、ビームと実弾を状況に応じて選択できる適応能力が売り。ビーム使用時は専用ケーブルをハイザックのジェネレータに直結させて使用する。しかしハイザック自体あまり出力に余裕のある機体ではなく、ビームライフルとビームサーベルの同時使用ができない特性も受け継いでしまっている。その為近接戦闘に備えてドム・ボーレンと同様のヒートナイフを2本リアスカートに担架している。またバックパックにはショートバレル化したMMP80マシンガンを携行している。しかし、これらの近接用の装備が使用される頻度は少ないようだ。それは、彼女の相棒が彼女に敵を寄せ付けないからである。

・ジムMk-Ⅱ
ガンダムマークIIとニコイチにされたジム。
以上
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