吾輩はジムである   作:呼び水の主

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17話 俺、刻が見える

 金色(こんじき)の彗星が空を翔ける。

 赤熱した大気がみるみる本来の青を取り戻し、はるか眼下に雲を抱えた一面の空の海が広がりを見せている。

 

「……綺麗。綺麗だね、アルフォンス」

 

 意識を取り戻していたララちゃんがポツリと呟く。

 そうだな。本当に綺麗だ。

 俺たちを死の淵に立たせた後に見せる景色がこれとは、本当に地球ってやつは罪深い。

 そして地球に殺されかけていた俺たちを助けてくれたこの金色の機体。

 一見戦闘機に見える鋭いフォルムは、複雑かつ精緻に組み上げられた繊細さを感じさせる。

 Zガンダムと百式を足して二で割ったようなこの見た目。

 ──デルタガンダム。完成していたの!?(2号機パイロット風)

 大気圏突入能力に変形能力。ムーバブルフレームの強度不足だかなんだかで未完成となり、いくらかの路線変更後百式としてロールアウトされたアナハイムの幻の機体。

 この世界では開発が間に合ったらしい。

 顔も知らないアナハイムの技術者よ!本当にありがとう!おかげで俺たちは助かったぜ!

 

『降下ポイントから大幅なズレはない。……ジャブローか。今回は空からとはな。──聞こえるか。シーマ艦隊のパイロット』

 

 デルタガンダムから聞こえてくるよーく聞き慣れたこの声。

 天パの永遠のライバルにしてちょっと情けない男!

 シャア・アズナブル(キャスバル坊や、またはクワトロ・バジーナ)!

 偽名の上に偽名を重ねていくストロングスタイル、嫌いじゃないよ。

 

 ウッヒョー!本物のシャアだぁー!テンションあがるなぁ〜!

 俺、ガンダムキャラの中でもシャアが一番好きなんだよなぁ!

 

「は、はい!聞こえます!助けていただき、ありがとうございます」

『礼はいい。私はこれからジャブロー攻略戦に参加する。敵の少ないポイントに君を降ろすので機体を捨てて脱出しろ』

「ッ、はい。お願いします!」

 

 俺が金色の機体によこしまな視線を送っているととんでもねぇ発言が飛び出した。

 ホワッ!?ララさん!?俺、捨てられるの!?

 嘘だと言ってよバーニィ!お願いします!なんでもしますから!

 

「大丈夫だよ、アル。貴方を捨てたりなんかしないからね」

 

 クゥ〜ン。ララちゃんがコンソールを子どもをあやす様に撫でる。

 ビックリしたぜ……。でもそうだよな。普通に考えたら敵の本拠地にバックパックの壊れたモビルスーツでいるのは自殺行為だよな。

 くそぉ、シロッコめ。せっかく宇宙に上がったと思いきやすぐまた地球に蜻蛉返りさせやがって。

 

 ……ジムに転生してからこっち、初めて本気で死を覚悟させられた。

 やっぱ本編ラスボスをはれるレベルのネームド相手はキツイ。

 俺もアムロに色々魔改造(アップデート)されてるとはいえ、所詮は現地改修。ガンダムマークIIのボディだって、Ζ本編ではマラサイあたりからもうスペック的にキツくなってくるし……。

 ララちゃんを守護る為にも、ジャブローを無事攻略して俺もしっかり整備してもらわないとな。

 

 ジャブロー。ジャブローかぁ。

 懐かしいなぁ。俺の生まれ故郷で俺とララちゃんが出会った始まりの地。久方ぶりの里帰りが攻略戦とはねぇ……。

 

 ……はて。なんか大事なことを忘れているような。

 大気圏突入。ジャブロー。攻略戦。

 その後カミーユ達はなんでアウドムラに乗ることになったんだっけか?

 うーん?喉元まで出かかってるんだけどなぁ?

 

『よし。そろそろ降下ポイントだ』

「了解!あの、本当に助かりました!私はララ!ララ・アンデルセンです!貴方の名前は?」

『──ララァ?……私はクワトロ。クワトロ・バジーナ大尉だ。幸運を祈る。ララ・アンデルセン』

「大尉も幸運を!」

『ありがとう』

 

 シャ、クワトロやっぱ未練たらたらかよ!

 なーんてやりとりをしつつデルタガンダムから飛び降りる。

 俺にバックパックがないのを気遣って敵地ど真ん中で超低空飛行してくれるあたり、なんだかんだシャアって優しいんだよな……。トゥンク……。

 

「いい人だったね、アルフォンス?」

 

 ……ソーデスネ。

 ララさん?俺の操縦桿をギリギリ絞るように握り締めるのやめてくれます?音出てる。ギシギシミリミリ鳴ってるからね?

 痛覚ないのになんかこう、すごく痛くなってくる気がするよ。

 幻肢痛?幻肢痛なの?こえーよぉ!

 

【→】

 

 ジャブローを走る。

 なんなんだ、この違和感は。まったく敵の抵抗がない。

 連邦軍の本拠地だぞ?警備もいなけりゃ普通の職員もいない。

 まるでゴーストタウンだ。

 

 どうやって内部に侵入したかって?

 フッ。俺はここの生まれなんだぜ?

 掟破りの地元走りで華麗に忍び込んだのよ。っていう冗談はさておき、普通に偽装隔壁が開いてたんだよな。

 んでそこから入らせてもらったってワケ。

 

 ここはジャブローの中でも比較的中枢に近いな。

 断続的な戦闘音も聞こえてきた。

 なるほど?連邦軍は部隊を中枢に集結させて一気に押し返すつもりなのか?

 他を手薄にしないといけないほど戦力が乏しいとも思えないが、まあ連邦だって一部がエゥーゴに寝返ってるから内部事情もゴタゴタしてるみたいだな。

 

 さてさて、俺は戦闘を避けてさらに奥へ……。

 バックパックがないのにこんな奥まで来たのには勿論理由がある。

 それは俺の出生の秘密。なんで俺はジムに転生した?なんで意思持つ機械(マシーン)になったんだ?

 俺はその真相が知りたい。

 

 この世界にはサイコ・マシーンがいくつも存在する。

 人智を超えた超常の力。人の意思を拡張して現象として発現させる力。

 もし俺に、サイコミュが組み込まれているとしたら。

 なんで創った?どうやって造った?サイコミュ技術のない一年戦争時代の連邦軍が。なんでただのジムにそれを組み込んだ?

 

「アルフォンスが普通のモビルスーツじゃない理由。私もずっと、知りたかった」

 

 ごめんな、俺が普通のジムだったら、ララちゃんにこんな苦労させなかったかもしれないのに。

 

「ううん。それは違うよ。貴方がアナタじゃなかったら、私はあの時シャアにやられて死んでいたもの。アナタがいたから、私は生きてる。アナタがいたから、ここまで来られたんだよ」

 

 そうか。そんなこともあったな。

 へへ!ありがとうよ!

 ちょっとナイーブになってたが、気を取り直して進みますか!

 

【→】

 

「ここだ……」

 

 眼下に広がるのは、草臥れて半ば打ち捨てられたかつてのモビルスーツ工廠と格納庫。シャアのジャブロー侵入で破壊され、その後そのまま放棄されたのだろうその一角に、俺たちは足を踏み入れた。

 

 流石にモビルスーツの部品は回収されたのか、俺の兄弟たちの骸を見る事はなくてホッとする。

 照明もカットされ暗闇に沈む廃墟を、俺の頭部に備えられたライトが照らす。

 ぼんやりと浮かび上がった焼け焦げ崩れた壁面に、傷付き倒壊したメンテナンスベッドが寂しく横たわっている様は、心霊スポットに来たようなほのかな焦燥感とスリルを感じさせた。

 

 格納庫にはめぼしいものは何もなかった。正直ホッとしている自分がいる。知ってどうすんだって気持ちは正直ある。

 今回の自分のルーツ探しだって、ジャブローに来たついでにポンと浮かんだ思いつきにすぎない。そう思いながらも、俺の足は止まることなく進み続けた。

 

 残すのは管理棟のみ。設計図面やらが残っているとは思えないが、行ってみるか。

 

「流石にここにはアルフォンスは入れないね。私、行ってくる」

 

 ララちゃんがコックピットから降りて崩れかけた管理棟へと入っていくのを見送る。しばらくするとララちゃんが記録デバイスを手に戻ってくる。

 

「流石に設計記録とかはなかったけど、ジャブロー襲撃前の監視カメラの映像が残ってたよ!」

 

 ウキウキしながら俺にデバイスを挿入するララちゃん。カワイイ。

 ウィーン。再生シマス。今から俺は巨大人型兵器兼音楽映像再生機器だ!高画質!高音質!4DX対応!

 

「映った!ジムがたくさん並んでる……。あ!真ん中がアルフォンスだよ!8番機!なつかし〜」

 

 あったなぁそういうの。あ、全身タイツのおっさん達が潜入してきた。あとはみなさん知っての通り。爆弾が爆発して、そこで映像は途切れている。

 

「うーん。何もわかんないね。もう一回見てみよっか?」

 

 ちょっと待ってくれ、今破損してるファイルを修復して……お、修復完了!さっきの映像より10分くらい前だ。多分何も映っちゃいないだろうが、ここから再生してみるか。

 

 ベッドに横たわる俺。静けさをたたえた格納庫の映像が延々と流れていく。うーんやっぱなんもないかぁ。

 

「え!?今!」

 

 え!?何!?ララちゃんの指示で映像を巻き戻す。

 タイツおじさん達が侵入してくる5分前、一瞬、俺の頭上が緑色に光った。

 ここか!?停止!

 光を拡大する。なんだ?何が映ってるんだ!?

 ズーム。ズーム。更にズーム。

 ボヤけた映像に補正をかけて、そこに浮かび上がってきたのは……。

 

「これ、アルファベットの、T……?」

 

 それは、T字状の──

 なんかめちゃくちゃ見覚えのある──

 それは突如空中に顕現し、光って解けて、俺に吸い込まれて消えていった。

 そして、俺の脳内に溢れ出した存在しない記憶。

 

『ララァ!ヤツとの戯言はやめろ!』

『シャア、覚悟!』

『あぁー!』

『ララァ!?』

『人はいつか、時間さえ支配することができるさ──』

『ああ。アムロ……。刻が見える──』

『ハサウェイ!どきなさい!』

『クェス!?』

『やめなさい!あなたのやっていることは!』

『やっちゃいけなかったんだよ!そんなことをわからないから!』

『ララァが死んだ時の苦しみ、存分に思い出せ!』

『情けない奴!』

『ちくわ大明神』

『大佐の命が、吸われていきます……』

『ロンド・ベルだけにいい思いはさせませんよ!』

『やってみる価値はありますぜ!』

『この暖かさをもった人間が地球さえ破壊するんだ!それをわかるんだよ!アムロ!』

『νガンダムは伊達じゃない!』

 

 駆け抜けていく光の奔流に、俺の精神が押し流されていく。

 何もない無の空間を、人々の想いだけが光って、ここではないどこか、遥か遠くへと旅立って──

 うぅ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 

 俺は……!

 僕は……!

 私は……!?

 




てっしー「精神がマルチバースに接続したっちゅう……」
タキクン「壮大に何もわからねぇ!」

次回、君の名は。
え?放送2016年?嘘だぁぁぁぁぁ!

『BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜』でも流しておくか……(これで有耶無耶にする)
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