吾輩はジムである   作:呼び水の主

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18話 俺と天パ(29)

 

 ──pipipipi ─pipipipi

 

 んぁ……?

 夢現の中で、現実を突きつける無慈悲なアラームの音が聞こえてくる。

 その聞き覚えのない電子音で頭がグルグルとまとまりのない思考を回しはじめる。

 

 ……今って、朝?今日って月曜?そーいや朝から会議だったよーな……。外回りで普段あまり寄りつかないオフィスまで、車で1時間半。んぉ……6時半に出れば間に合う……。あと5分……ムニャ……。

 

 華麗な二度寝をキメこもうと寝返りを打った俺の頭が、なにか固くて生暖かいものに当たる。

 ん……?寝ぼけた頭に疑問符を浮かべながら、まだまだ重い瞼は閉じたまま、頬っぺたでその「なにか」の感触を確かめる。スリスリ……。こんな枕持ってたっけな……?

 

「ん〜?」

 

 スリスリを続けながら、そのなぜか安心させる感触の枕に頭をうずめる。しっとり柔らかくそれでいて適度な固さ。弾力、ハリもあって瑞々しい感触。いくらで買ったか覚えてないケド、お値段以上の性能だよぉ……。この枕、サイコー……──

 

「……ン。コラ、よさないかチェーン」

「キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!?!?」

 

 覚醒し枕(であってくれ)を薙ぎ払いベッドを離脱するまで、その間コンマ1秒。

 現実を現実として認識するのに更にコンマ1秒。

 見慣れぬ部屋。部屋に漂う汗とシャンプーの匂い。鳴り続けるアラーム。

 

「なんだよ、コレ……ん!?」

 

 声!声が出る!?

 気づいた途端、失われていた五感が得た情報が脳に波のように押し寄せてくる。視覚、嗅覚、聴覚!

 足裏に感じるカーペットの弾力!これは、触覚!

 

「足、指がある……エッ!?」

 

 全身を確かめようと視線を下げれば、そこには見慣れない二つの丘がくっついていた。これオッッッッッッ!いや待て!まず本物か確かめなければ危険だ!!!触覚がちゃんと機能しているかも兼ねてまずは手で触れて確認を──

 

「──ンムッ!?」

 

 ──味覚。

 

「まったく。朝から元気だな、チェーン。おはy──」

「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

 天パのみぞおちに腰を入れたフックを叩き込み、捻り突き込む。

 トドメに天パの天パを蹴り上げてフィニッシュだぁー!

 

「グワダンッ!?」

 

 謎の断末魔をあげながら倒れ伏す全裸の天パから目を背け、その場で蹲る。

 ファーストキスが男とか最悪だよぉ……!

 もぅマヂ無理。フリージアしょ、、、

 俺はひっそりと泣いた。

 アッ、柔らかい……。

 

【→】

 

 アニメじゃない!アニメじゃない!

 は?現実?ふざけろ。

 

 結論から言う。俺はチェーンに憑依転生(?)している!

 

 どういうことだってばよ!?状況を報告しろぉ!

 ホウコク!なんかジャブローで意識が遠のいて気が付いたらチェーン・アギでした!まるで意味がわからんぞ!?

 俺のジムボディは!?ララちゃんはどうなったんだ!?

 

 身体が変わっただけじゃない。時代がァ……!時代が変わっている!!

 時は宇宙世紀0093年。ジャブロー攻略戦の0087年から6年経ってるよ!

 

 アッ、アッ……アアア……。タス、ケテ……タス、ケテ……。

 なんてふざけているが、一番ヤバいことはそんな事じゃない。

 天パをK.O.し部屋を飛び出してから3日。

 幸いチェーン・アギとしての知識は体が覚えているらしく無難に過ごせている俺だったが、それが逆にまずかったのだろう。日に日に、自分が初めからチェーンだったんじゃないかと、無意識のうちに考えている自分がいる。その事実そのものが恐ろしくなって、眠れない夜に布団にくるまってひとり涙する。

 欠けた刃が零れ落ちていくように、少しずつ少しずつ俺のパーソナリティが失われていく。

 人の身体には眠りが必要なのに、ジムだった時の癖が抜けないのか、意識が眠りに落ちることはない。辛いが、それだけがかつての自分の残り香のような気がして、少しだけ救われたような気持ちになる。

 ぶっちゃけ言うと、俺のメンタルはボロボロだった。

 

「チェーン!なぜオレを避けるんだ!」

 

 うわ!?しまった!天パ!

 あんなことがあったので、軽いトラウマになっていた俺は天パを見つける度に逃げていたんだが……。

 手首を掴まれて、今日は逃げれそうにない。力、強っ……。

 

「ン、すまない……。チェーン。最近どうしたんだ。あの日以来、いつもの君とは違うようだ」

 

 痛がる俺を見て、天パが掴む力を緩める。

 いつものチェーンと違う?そりゃそうだ。中身が別人だからな。

 

「ブライトにも、お前が下手だったんじゃないかと揶揄われてるんだ……。いや、そんなことはどうでもいい。君を困らせてしまったのなら謝る。だから理由を教えてほしいんだよ、チェーン」

「流石のニュータイプでも好いた女の気持ちはわからないんだな」

 

 ここんところの疲れとストレスで、思ったより刺々しい言葉を吐いてしまった。

 やべっ、流石に怒ったかな……。

 チラリと天パの顔を伺うと、まるで幽霊でも見たような形相で俺を凝視していた。な、なんだぁ!?

 

「この感じ……、チェーンじゃない……?そうだ、違う。しかしオレはこの感覚を知っている?君は……いや、まさか……!」

 

 天パが壁に手をつき俺を逃がさない。

 や、やめ……近い近い!

 その血走った目で俺を見るのをやめろぉ!

 

「ジャブローの女神、ララ・アンデルセンのジム・アルフォンスか……!?」

 

 キッショ!?なんでわかるん──いや待ってその二つ名は初耳なんだが!?




T→人の思念を増幅し、ミノフスキー粒子に干渉し物理現象を引き起こす(独自解釈)

アクシズ→人の思念が集まって発生したミノフスキー粒子の干渉で押し戻される(独自解釈)

人の思念→アクシズ押し戻すだけでは飽き足らず集合体になる(貴様らの頑張りすぎだ!)

集合体→抱えた思念が溢れてヤバいことになってなんやかんやあって時代を遡りジムに憑依する(ガンダム界では特に珍しくない一般サイコフレーム現象)

ジム→世界を跨いで別次元の一般通過成人男性の思念を巻き込み合体事故して爆誕(俺「は?」)

チェーン(最後のTの保持者)→なんやかんやあってジムの魂に憑依される
↑イマココ!(NEW!)
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