吾輩はジムである   作:呼び水の主

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19話 俺は、諦めない!

 

「…………………何……だと……」

 

 アーカイブにあった戦没者名簿。

 その名簿に、たしかにあった。

 ララ・アンデルセンの名前。

 

「宇宙世紀0087。ジャブロー、エゥーゴとティターンズの攻防戦の末、当基地に仕掛けられた核爆弾に巻き込まれてMIAだと……!?」

 

「現実だよ、それが。残念だけれどな」

 

 圧倒的な喪失感に襲われ、足元がふらつく。

 アムロが俺を支えようとするが、それを振り払うように壁を支えに縋り付く。

 

 彼女が死んだ。短いながらも共に歩んだ俺の半身。

 それはたった一年。けど、それは一年と呼ぶには長すぎて。

 あまりにも濃密な時間だった。モビルスーツとしての俺が俺でいられたのも、きっと彼女と共にいたからだった。

 大切な人。かけがえのない人。失ってはだめな人。

 

 ……なんなんだよ。やっと再会できたんじゃねぇか。

 長い年月を経て、やっと見つけた俺の光じゃねえか。

 

「アルフォンス、キミに見せたいものがある」

「……」

 

 あまりにも意気消沈した俺を見かねたか。

 アムロが俺をとある施設へと連れ出す。

 アナハイムか?軍の施設か?

 意識もそぞろだった俺は、シャトルに乗ってどこかへと向かう、それだけしか認識できていなかった。

 

 案内されたのはモビルスーツ一機程度が格納できそうな、人には広くモビルスーツには狭い空間。

 そこは暗闇に包まれており、中に鎮座する物体が暗闇に慣れた目にうっするとその輪郭を返すのみ。

 アムロが格納庫の照明を入れる。そこに、あったのは──

 

「俺のボディ、か?」

「ああ、これだけ損壊しててもわかるんだな。そうさ。被爆地から文字通り掘り出されたモノだよ」

「わかっちゃいるが、コックピットは……」

「コックピットは残っていなかった。ここにあるのは頭だけだ。これが、彼女の唯一の形見だ」

 せめてお前に見せてやりたくて。それきりアムロは黙る。

 

 ララちゃんの唯一の形見。そうだな。なんもかんも、着の身着のままだったもんな。パイロットスーツも、他も全部。

 ティターンズから抜けて、シーマさんとこに世話になって、そのままエゥーゴだもん。

 唯一の形見。ソレを見上げる。

 バイザーは割れ、白い装甲は溶け落ち、内部のフレームがたわみ、まるで幽鬼の様だ。

 なんだよそりゃ、あんまりだ。あんまりにも悲しいじゃねぇか。

 何にも残せてねぇって事だろ?この、鉄屑以外っ!!!

 ……これが、ララを守れなかった無様なバカヤローのまぬけ面かよ!

 

「この……!馬鹿野郎がぁー!」

 

 そのまま、借り物のチェーンの事などお構いなしに、俺は感情のままに拳をソレに叩きつけた。

 

『イッテェェェェェェェ!!?』

 

 ガツン!という音とともに、汚い悲鳴が格納庫に響き渡る。

 

「ア”ァ”!?」

 

『ったく人が気持ちよく寝てるところによぉ……お?』

「お前……」

『おー。やぁっと来たのか。俺』

 

もう1人の俺が、そこにいた。

 

『天パもいんのか。んで?お!T字もあんじゃん!……そうか、そうか。……っつーことは、だ。役者は揃ったってわけだな?』

「オイオイオイオイ!どういう事だお前は誰だ!勝手に1人で納得すんな。意味わかんねーぞ」

『いいだろう。説明しよう。あれは今から36万……「殺すぞ?」……いや、1万4000年前だったか』

「こ、コイツ……!続けやがった……っ」

 

 他人から見ると、俺ってこんな頭のおかしいヤツだったのか……?

 いや、違うな、俺はもっとこう、知的で論理的でスマートでピキーンとした思考だもんな……。おい天パなぜ目を逸らすんだ逃げるな卑怯者!逃げるなァァァ!

 

『まあいい。単刀直入に言おう。俺は未来のお前だ』

「未来の俺……?」

『数多ある可能性、その全ての行き着く先だよ。わかりやすく言うと、どの未来でも、どの選択肢でもララ・アンデルセンは生き残れない。お前に彼女は救えない、はずだった。この瞬間を除いてな』

 

 ようやく辿り着いた……。そう言って、もう1人の俺は沈黙した。

 曰く。俺は36万回目なのだと。託したバトンの終着点なのだと。

 何度も何度も、この世界は。

 俺というイレギュラーを取り込んでしまったこの世界は。

 そのイレギュラーによって生まれてしまったバグ。

 つまりはララ・アンデルセンを。消去しようと躍起になっているらしい。

 創作では世界の意思、あるいは世界の修正力とも呼ばれる物。

 言われて気が付く一年戦争時代。あれだけのネームドパイロットが偶然、俺の配属されている部隊の、俺が戦闘する宙域にいる物なのかと。

 そうか、消しにかかっていたんだ。白血球のような物として。世界の尖兵として彼らは無意識に動かされていたのかもしれない。

 ある世界では、シャアのズゴックに腹を貫かれて。

 ある世界では、ビグ・ザムのクローに踏み潰されて。

 何度も、何度も、何度も死んで。

 けれどその度に、僅かだが経験や知識が別の世界の俺へと引き継がれる。

 世界が違えど、同一存在。ならばそれは無縁ではなく。

 例えばデジャヴ。それは別の世界の自分が既に経験した事だとか。

 どこかの俺が、それを発見し、そして繋ぎ、託し。

 何度も失敗して、そして辿り着いたのだと。

 

『お前が立っているその場所は、俺たちがララ・アンデルセンを助けたいと願ったからこそ辿り着いた瞬間なんだ』

「……シュタインズ・ゲートかよ」

『的確な例えだなぁ。名作だったよねアレ』

「めっちゃわかる。でもどうやって未来、いや過去を変えるんだ?タイムマシンなんてものはないんだぞ」

『その為のサイコフレームだろ』

「いやそんな万能な物じゃないしコレ」

『ユニコーンとナラティブ未履修かよ俺』

「ハァ?見てるが?謝れよ。劇場で8回観に行った俺に謝れよオイ。……いや、待てよ?そうか!」

『なんか時間巻き戻してるっぽい描写あるからイケるってジム思うワケ』

「天才か!閃いた!アガペー!いやちげぇな?アルケー!」

『エウロペだマヌケェ……』

 

 今まで俺と俺(ああややこしい!)の会話を黙って聞いていた天パがツッコミを入れる。

 

「……エウレカじゃないのか?」

『細けぇこたぁいいんだよ!』

「そういう男は嫌われるぜ?」

「なんだ、この違和感は……?なぜオレが哀れまれている?」

『まあいいや!とりあえず天パ!ちょっとツラ貸せや!」

「よくはないが?……ン?いや、何を考えている。無理だよそれは!」

『やってみる価値はありますぜ!』

「キミはややこしいから黙っててくれないか!」

「俺に言ってんのかテメー!?」

『酷いわ!?私とは遊びだったのね!?』

「エッ!?あれだけ調教しといてか!?」

 

 キチクー!テンパー!と叫ぶ俺たちに頭を抱えるアムロ。

 ニュータイプ、噂ほどではないな(暗黒微笑)

 フハハ、怖かろう?(脳波コントロールはそのうち出来るようになる)

 

「まかせろ、俺はジムなんだぜ!」

 俺の本来のボディ。

 アムロのニュータイプとしての才能。

 アナハイムからチョロまかしたT字のサイコフレーム。

 そして未来の俺と現在の俺が交わる時、物語は始まる!

 

 そもそもユニコーンとかナラティブの時点でシンギュラリティ・ワンとかなんとか設定ねじ込んでるんだから、もう何でもアリだろ?俺は好きだよガンダムのそういう懐の深いところがよ。

 だからできないって最初から諦める選択肢はないわけだ。

 臍の下辺りに力を込めて、背筋をピンと張りグッと仁王立ちで腕を組む。

 気合にハチマキも巻いちゃうゾ!デンドンデンドンデンドン...

 人の心の光が小惑星だって動かすんだ。

 たかが理不尽な未来ひとつ、この俺が叩き潰してやる!

 叫ぶ。

 

「ここにはサイコフレームがあって!」

『サイコフレームさえあれば不思議なパワーが出せちゃう天パがいて!』

「『そしてなにより!!【俺】がいる!!!」』

 

 ジムヘッドから虹色の光が溢れ出す。

 最初はゆっくり。やがてはうねるように。

 俺と俺を取り巻くように。

 

『イメージしろ!最強の自分を!』

「……最強のジム!?赤くて、角が付いてて……星とかバァーと切り裂くような……」

『それはジムじゃないからダメだなぁ……』

「だったらやっぱり」

『そうだな。その通り』

【やっぱジムと言えば元祖でしょ!】

 

 俺の意識がチェーンから離れ、もう1人の、いや数多の俺と融合する。

 あ、やべ。手の甲擦りむいてちょっと血が出てる。

 メンタルグシャグシャだったとか言い訳できないぞコレ……。

 

「まったく。こんな無茶苦茶な状況で今更冷静になるのだものな」

【天パ……。いやアムロ、本当にすまない。俺は……】

「戻ったらチェーンの代わりに一発殴らせろよ」

【それお前が怪我するだけだが?】

「νガンダムで殴るに決まってるだろ。……だから、お前の大事な人を連れて、また……ココに戻ってこい」

【ガンダムはダメだろガンダムはよ。……ま、1発だけな。それ以上はただで殴られる気はないんで、そこんとこヨロシク』

 

 そうして光が集まって、俺のボディが再構築される。

 凸型の緑のバイザーが雄々しく光る!(キュピーン⤴︎)

 角ばったボディが鋭く光る!(ギュュゥン⤴︎)

 元祖とは唯一違うそのカラーリング。

 それは唯一無二の!

 俺の!

 俺だけの!(ドワォ)

 パーソナルカラー!

 ララちゃん色で!

 俺自身を染め上げる!

 ブッピガァン⤴︎(効果音)

 ジム!再誕!

 

 そして!ララちゃん専用機の俺がこの時代、この世界に居るという事は!

 逆説的にララちゃんも居るという事である!つまり!

 ──発生する!タイムパラドックスが!

 世界は否定する。

 この世界に、ララちゃんはいない。

 この世界に、俺がいる事はおかしいのだと。

 違うな、間違っているぞ!

 間違っているのは俺じゃない。世界の方だ!

 だから!

 世界よ、思い知れ──!

 俺はララ・アンデルセンを──諦めない!!




Tを逆さにすると凸になる
(凸)つまりはそういう事だ

ノリと勢いでチェーンに憑依させたらよく分からんくなったのでノリと勢いで不思議な事が起こって元に戻る事になったけどなんかイイ感じにパワーアップしたからこれは実質ジャンプ修行回ですいいね?
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