吾輩はジムである   作:呼び水の主

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6話 私、ガンダムで出ます!

 

「ミデア、つけられましたな」

「フン。あの娘は目立つからな。トリントンの連中には悪いが、まんまと餌に食いついたか」

 

 鷲鼻のジャミトフとクソダサゴーグルのバスクの二人である。

 二人の密談はまさに悪の組織!という凶悪な絵面となっているが、この部屋には二人以外いないのでそれを指摘する者も誰もいない。

 ただ部屋の外で待つ憲兵だけが冷や汗を浮かべるのみである。

 

「しかし、あの小娘。3年前はどうなるかと思いましたが」

 バスク大佐の呟きに、ジャミトフは引き抜きに近い形で異動させたばかりの頃のララ・アンデルセンの姿を思い出す。

 いざ実戦に放り出してみれば、一年戦争時代の活躍はなんだったのか、という体たらく。必然、生き残っているジオン残党は歴戦のモビルスーツ乗りばかりである。何度も何度も乗機であるジム・スナイパーカスタムを壊すものだから、バスクがキレて機体をガードカスタムに改修。防御力を活かして敵陣に単騎突撃させるという無茶振りをしていたことも今ではいい思い出である。

 結果、今ではジャミトフの手駒の中でも屈指のエースパイロットに育った。多少手荒かったのは否めないが……。

 

 元より不思議ではあった。シミュレーター成績では中の下程度の彼女がなぜ実戦であそこまで活躍できたのか。おそらく、機体との相性が抜群に良かったのだろう。往々にして、そういうオカルトじみた話が軍にはある。彼女はある種、あのジムに憑かれていたのだ。ジャミトフはそう考えていた。

 

 思考に耽るジャミトフへ、バスクが本題を切り出す。

 トリントン基地、今後の動向についてである。

 

「例の弾頭、本当に連中に渡ってもよろしいのですか?」

「アレはあくまで囮だ。リリィ中尉が連中の尻尾を掴めばそれでよし。仮に……」

「取り逃しても、連中は強力な武器を手にしてノコノコ巣穴から出てくると言うことですな」

「脅威は根本から断たねばならん。多少の犠牲は織り込み済みだということだ」

「ジオンという脅威が健在となれば、益々我らの立場も盤石なものとなりますな」

「うむ。貴様は今しばらくコーウェンの下で動け。ガンダム開発計画は頓挫させるか、あるいはこちらで引き継いでしまってよい」

「ハッ!」

 

【→】

 

 基地全体に警報が鳴り響く。

 一定の間隔で地面が揺れ、遠く司令塔が爆発する光景を目にした。

 遠距離からの砲撃で指揮系統を撹乱・破壊、そして基地の南側から断続的な戦闘音、おそらくモビルスーツによる電撃的な侵攻。

 お手本のような、熟練の流れだ。こちらは完全に後手に回っている。

 狙いはなんだ?こちらから遠く聞こえる戦闘音。狙いはガンダムではない?このトリントン基地は戦略的な価値が低い。ではなぜこのタイミングで攻撃を?確かめる必要があるな。

 

「ニナさん。走れますか」

「は、はい!」

「では誘導に従って地下壕へ」

「中尉は?中尉はどうされるんです?」

「出撃します。これでもパイロットですからね。ミデアに戻れば機体が……」

 

 その瞬間、格納庫近くに待機していたミデア改に敵の砲撃が着弾した。

 勢いよく燃え上がるミデアとその積荷(私のガードカスタム)。

 

「いやぁぁぁ私のガードカスタムが……」

 

 立て続けに格納庫も被弾する。中のガンダム2機に瓦礫が降り注いだ。

 

「いやぁぁぁ私のガンダムが!!」

 

 ニナが絶叫する。わかるよ、あれだけ頑張って語ってたもの。心血注いで作った機体が壊れたら嫌だよね。2号機は厳密には部署が違うらしいけど。

 こうなったら仕方ない。慣熟訓練もなしに乗り込むのは不安だけど……。

 

「ごめんニナ。私、行くよ」

「……行くって、まさか」

「後で会おう」

「リリィ!」

 

 火の粉舞う瓦礫の中を駆け、崩れた格納庫へ入る。

 炎の中で、厳しい顔をした機体が仁王立ちして私を出迎えた。

 まるで昔図書館で見たニホンのフドーミョーオーみたい。

 人々を災いから救ってくれるホトケ?神様?だったっけ……。

 直撃は免れたらしく機体は無事だ。これなら……!

 コックピットハッチを開き乗り込む直前、背後から若い男の声に呼び止められた。こんなところにまだ人がいる!?

 

「待ってください!僕ッ、自分も戦います!」

「キミは……!?いや、今は……!キミ!あっちの1号機へ!早く!」

「は、ハイ!」

 

 融合炉に火を入れる。機体が目覚めようと身じろぎする。

 各部損傷、異常なし。システムオールグリーン。やはりこの機体、頑丈だ。これが、ガンダム……。

 モニターの端で、瓦礫に押され屈んでいた1号機が立ち上がる。

 白亜の装甲から燃え盛る瓦礫を振り落としながら、2機のガンダムの双眸が瞬く。

 

「リリィ・マルレーン。ガンダム、発進します!」

 

 頼むわよ、ガンダム。災いを振り払ってちょうだい!

 

【→】

 

「1号機!前に出過ぎないで!」

『ウラキ少尉!吶喊します!』

「ダメだったら!!」

 

 基地内に侵入したモビルスーツは6機。いずれも機動力に優れたドムタイプ。

 基地の守備隊は遠方からの砲撃でまともに機能していない。

 トリントン基地の練度の低さは否めない。けれど、小隊単位で巧みに応戦する人たちもいる。こうも押されているのは、単純に敵の戦力が多過ぎる!

 

『うぉぉぉぉぉぉ!』

 

 ウラキ少尉の1号機がドムと斬り結ぶ。敵は2機で互いを援護しつつ1号機を翻弄する。敵の方が何枚も上手だ。けれど、至近からのマシンガンの射撃を1号機の装甲がモノともせず撥ね返す。

 しかし敵も歴戦。ガンダムの装甲に気圧されることなくジャイアントバズを構える。流石にそれをその距離はまずいよね!?

 フットペダルを蹴り上げて、2号機の両肩のバーニアを点火する。

 ッ!?なんて殺人的な加速力!でも、これなら!

 

「ジオンの亡霊どもがぁぁ!!」

「なに!?もう一機いただと!?」

 

 死角からの突撃。我ながら完璧な奇襲。もらった。

 腰にマウントされたビームサーベルを抜き放ち、こちらに振り返るドムの背後を袈裟斬りに斬りつける。

 緑色の粒子で形作られた刀がドムの装甲を容易く両断した。

 倒れ込む相方に一瞬の虚を突かれたもう一機の隙を見逃さず、ウラキ中尉がビームサーベルをコックピットに突き立てようとする。

 

「連邦の白い悪魔が、2機ッ!?しかし!」

 

 しかし流石は3年も生き残ってきた古強者。突き出した左腕でサーベルを受け、溶断されながらもその軌道を逸らしてみせる。そのまま背部へマウントしているヒートサーベルを抜き放とうと構える。けれど。

 

「やらせるか!」

 

 ドムにシールドを叩きつけ、そのまま機体の推力を全開に、力任せに引き摺りながら建物へと自分ごと叩きつけた。

 衝突の勢いでドムのコックピットがひしゃげ、モノアイが僅かに明滅した後沈黙する。

 

『あ、ありがとうございます』

「すごい……」

『あ、あの?』

「これが、ガンダム……」

 

 ジムとは文字通り規格が違う。この圧倒的なパワー。

 この力があれば、ガンダムがあれば、ジオンを全部全部綺麗にできるかも!お父さん、お母さん!待ってて、私……!




これがガンダム!悪魔の力よ!
ガードカスタムくん「ぐわぁぁぁぁ!?」

ドムを圧殺し炎の中こちらを振り返る2号機。
ウラキ(こわい)
バスク「ガードカスタムで学んだシールドバッシュ術が活きたな……!」
2号機のシールド「僕はシールドじゃないです……」
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