俺、ジムさん。今地下格納庫のなかにいるの。
展開が唐突すぎて目眩がするぜ!
博物館はどうしたって?いやいたよ。最初の1年間くらいな!
1年間の間、真夜中に博物館に潜入してきた全身タイツの整備兵のおっちゃん達に毎夜毎夜少しずつバラされて、トラックに積まれてドナドナされる日々。
ある日を境に意識が途絶え、目が覚めたら見知らぬ格納庫だった。
俺の魂がどこに宿っているかわからないが、体を少しずつ精巧なダミーパーツに取り替えられていく恐怖は2度と味わいたくないね……。思わずSAN値チェックするところだったぜ。
さて、話を戻そう。
ここへ来たのは今から36万……、いや、1万4000年前だったか。まあいい。今の俺の状況を説明する前にこの銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるから今回は割愛するぞ。
そう。ここへ来た当時の俺をなんて呼べば良いのか……。たしか最初に会ったときは──
「ジム」
そう。ただのジムだった。スズキジムニーでもポケモンジムでも、ましてやジム神様でもなかったはずだ。そうだよな?アムロ?
俺の脳内の呼びかけを無視して地下格納庫の中をこちらにツカツカ歩いてくるアムロ。
おい!聞いてるのかアムロ!お前に言いたい事が山ほどあるぞ!
この俺を何年も地下格納庫に閉じ込めやがって!
本当に地下にモビルスーツを隠してるヤツがあるか!
お前自分の置かれた状況理解してるか?今軟禁されてるんだぞ!フラウ・ボゥとか実質人質だぞ!
カツに「地下にモビルスーツを隠してあるとくらい言ってください!」って言われた時に「ン?あるぞ」じゃねーーーーーんだよ!
尊敬してた人への落胆が憧れに戻るカツの生き生きとした表情が目に浮かぶようだわ!全世界の男の子がお前のこと好きになっちまうわ!
おい返事をしろアムロ!あ!?俺のコックピットに入ってくるな!
ソコはララちゃんの為だけの場所なの!触らないで!
やめ、ちょ!?どこ触って!?ああっ!
「いける」
いけません!!!どこへ行くつもりだ!
「アムロ、いきまーす!!」
いくなァァァァァァァァッ────────!!!
アッ────(ドップラー効果)──────!!!!
【→】
アムロが軟禁されていた屋敷の地下から飛び出した俺は、夜の闇に沈む山岳地帯をひたすら北に向かって疾走していた。
俺のレーダーが背後から迫る2つの飛行物体を捉える。戦時下じゃあるまいし、ミノフスキー粒子が散布されてるわけじゃないからな。みるみる迫る二つの影。こいつは──
「追手が来たか!」
『止まれ!アムロ・レイ、命令により貴様を拘束する!抵抗する場合はモビルスーツごと破壊する!』
「ザク!?これでティターンズと名乗るのか!」
『止まらないなら破壊すると言っただろう!』
「久しぶりだが、やれるか!?」
『抵抗するのか!?そんな旧式でハイザックに!』
「おぉぉ!」
俺の腕が俺の意思とは無関係にビームサーベルを抜き放つ。
ベースジャバーから飛び降り迫るハイザックと空中で交差するその刹那、抜刀された粒子の奔流が敵機のコックピットだけを突き穿つ。
沈黙したハイザックからビームライフルを奪い取り、今まさに頭上を通過したもう一組のハイザックとベースジャバーを一撃で2枚抜きにする。
初出撃のシーブックかよぉ!これだからニュータイプはよぉ!
「少し操縦に違和感があるな……」
違和感ありでこの戦果?れ、連邦の白い悪魔は化け物か……。
っていうか待て待て待て!
咄嗟のことすぎて流してたけど今のハイザック!?ハイザックだったよな!?って事は相手ティターンズじゃねーか!?今宇宙世紀何年だ!?教えてくれアムロ!
「ppp……」
「ン?うるさいな」ポチッ
音を止めるなーーー!アラームじゃねぇぇぇぇぇ!俺の声をきけぇぇぇぇぇ!アムロォォォォォ!
【アムロ視点】
かつてのホワイトベースの仲間であるハヤトから、今置かれている世界の状況を知らされる。スペースノイドの過剰な弾圧を行う特殊部隊「ティターンズ」。地球へと落下コースにあった、まだ人の残るコロニーへの核攻撃。デモ鎮圧を目的にしたコロニーへの毒ガス散布を行った30バンチ事件。どれもこれも、度し難いほど人間の尊厳を踏み躙る行いだ。
その蛮行を止めるために立ち上がった、スペースノイドを中核にした反連邦組織「エゥーゴ」。そしてハヤトの属するエゥーゴの支援組織「カラバ」。
ハヤトからの協力の願いを受けて、自ら閉じこもっていたあの牢獄から抜け出そうと思ったのは、いい加減ララァの影を抱えて鬱屈とした日々を送ることに嫌気がさしていたのか。あるいは、ハヤトの伝手で地下に運び込まれた「英雄の機体」の存在故か。
鮮やかなブルーグリーンで塗装されたジム。最初に出会ったのはジャブローだったか。当時はまだ赤と白のカラーリングではあったが、妙な感じのするパイロットだと当時は直感的に感じたものだ。
その後もソロモンでビグ・ザムを共闘で倒したり、ララァとの戦いを手助けされたりとアムロにとっても馴染み、いや因縁深い機体である。
ララ・アンデルセン。奇しくもララァと似た名前に、思わず眉間に皺がよる。一年戦争以降、彼女の名前はとんと聞かない。死んだという話は聞かないから、後方に下がったか、あるいは退役し故郷へ帰ったか。
ニュースや軍の広報誌で顔を知っている程度で、直の交流はなかったが。機体から感じた思念のようなモノが、まだこの機体「ジム」から感じられた。ジムを正面から見上げれば、無機質なはずのバイザーが不服そうにアムロを見下ろしていた。
「お前もララさんに会いたいんだな」
ジムのバイザーが鈍く光を反射する。疑問に感じているような気がして、アムロはぽつりぽつりと語りかけた。
「みんなが彼女を探してる」
ララ・アンデルセン。所詮は過去の英雄と言う勿れ。今まさにエゥーゴが旗頭として欲しているのが彼女その人である。
儚げな美貌と誇大広告と言われかねない圧倒的な戦果、ジオンに住処を追われ家族を奪われた人々の文字通り救世主。
「連邦のアイドル」?「ロードローラー」?そんな二つ名で呼んでいたのは一部の軍人だけだ。
地獄のような戦地にあって、颯爽とモビルスーツを駆り敵から救ってくれる可憐な少女。地上のあらゆる激戦区に赴き敵を掃討し味方を助けるその姿からついた渾名だ。老若男女、官民問わず、全ての人に等しく降り注ぐ光。
彼女の協力があれば、世間から絶大的な支持が得られるだろう。
ティターンズの悪行を世に知らしめる為に、エゥーゴはその名声を欲している。彼女が今どこにいるのか。今何をしているのか。エゥーゴもカラバも血眼になって彼女を探している。
その作戦の一環で、ララがエゥーゴに属しているという欺瞞工作の為に、アムロにララのジムに乗ってティターンズと戦ってほしい、というのがハヤトからの依頼であった。
「そういうわけだ。しばらくの間だがよろしく頼む」
もう一人の英雄が、その名を偽り戦場へと舞い戻る。
日刊ランキング入り、コメント、評価、誤字脱字修正ありがとうねぇ!
ンって言わせとけばアムロになる風潮。
外見は旧式、中身は…っていうの好き。
インターセプトからノーマル(前期量産型)な外見に戻してるのは世の中に浸透しているララ専用ジムの世間のイメージがそれだからです。