吾輩はジムである   作:呼び水の主

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8話 私、どうすれば……

 

 私、リリィ・マルレーン。

 ここは月面都市フォン・ブラウン近海。

 月面を滑るように滑空する赤いモビルアーマーに追い立てられるように、私は2号機のバーニアを全開して回避行動を強いられ続けていた。

 

「ケリィさんやめて!私たちが戦う必要なんて……!」

『必要ないだと!?勝手に知ったふうな口を聞くな!』

「あなたが死んだらラトーラさんはどうなるの!」

『迎えに行くさ!この戦争に勝利してからな!』

「戦争!?戦争はもう終わっているのよ!!」

『終わっちゃいない!俺の戦争はまだ終わっちゃいないんだ!』

「この、わからずやぁ!」

 

 飛行したまま月面を抉るように蹴り上げて、強引にモビルアーマーの上を取る。ケリィさんは咄嗟に反応できない。

 

「これ以上暴れるのなら!」

 

 ビームサーベルを引き抜き、高速で後方から接近していたモビルアーマーとすれ違う瞬間に振りかざす。コックピットは避けて無力化を──

 

『舐めるなぁ!』

「うぁッ!?」

 

 2号機のサーベルを持つ右腕をモビルアーマーのクローが締め上げる。

 そのまま強力な推力で引き摺り回され、尋常ではない横Gが私を襲う。

 

『ヴァル・ヴァロだぞ!』

 

 そのまま月面へと叩きつられ、一瞬意識が朦朧とする。

 2号機が倒れ伏す周囲に、3基の大型の装置が撃ち込まれた。

 

「これは……!?まずッ」

 

 危険を感じバルカンで破壊する前に、その装置が起動してプラズマの結界がガンダムを包み込む。

 

「ああぁぁぁッ!?」

 

 プラズマに灼かれる地獄の中で、ケリィさんの叫びが耳に届いた。

 

『ソロモンでの借りは返させてもらうぞ!ララ・アンデルセン!』

「私の、名前をッ!?」

『マルレーン中尉!うぉぉぉぉ!』

『ガンダムがもう一機だと!?』

 

 アルビオンから緊急発進したウラキ少尉のフルバーニアンがビームライフルを連射する。プラズマ結界の装置、プラズマリーダーが撃ち抜かれ、2号機と私が解放される。

 シールドを放り出し、フットペダルを思い切り踏み込んで空中へ飛び上がる。

 

「ケリィ・レズナー!それ以上ジオンの将兵でいるつもりなら!」

『ガトーの無念!受け取れ!』

「そんなやつ知らないったら!!」

 

 2号機の肩に備わる大型ブースターが点火し月の重力をあっという間に振り切り宇宙を駆ける。

 両の手でサーベルを十字に構え、正面から突撃してくるヴァル・ヴァロの口から放たれたビームを斬り払う。そして、再び白と赤の二機が交錯する。

 

 一瞬の静寂。2号機の両腕が衝突に耐えられず肘から先が圧壊する。

 ヴァル・ヴァロもまたビームサーベルをモノアイスリットに刺しこまれ、内部から断末魔の火花を噴き上げていた。

 

「ケリィさん!?」

 

 瞬間、ラトーラさんの顔が脳裏をよぎり、自分でした事にどっと後悔が押し寄せる。ラトーラさんは、ケリィさんを普通の人に戻せたかもしれない人なのに!だっていうのに、私は!

 

『──流石は「連邦の魔女」。手も足も出んとはこの事だ。まあ、片方ないんだが』

「ケリィさん、生きて!?はやく脱出を!」

『この程度でヴァル・ヴァロは沈まん。……ガトーへの義理は果たした。俺はデラーズフリートへ合流させてもらう』

「どうしてそこまで……!何が貴方をそこまで突き動かすんです!」

『言ったはずだ!俺の戦争はまだ終わっていないのだと!』

『中尉!中尉から離れろぉぉぉぉ!!』

『フン、邪魔が入ったな。さらばだ!ララ・アンデルセン。次に会う時は覚悟を決めて俺を殺しにくることだ』

 

 ヴァル・ヴァロが高速で月面を離脱していく。

 あの損傷で、月の重力を振り切るのか……。

 

「ケリィ・レズナー……」

 

 元ジオンの軍人。そしてまたジオンへと戻ろうとしている人。

 故郷と両親の憎き仇、そして月面都市でチンピラに絡まれた私を助けてくれた恩人としての彼。

 ジオン軍人に顔見知りなんていなかったし、奴ら一人一人が何を想い生きているかなんて、ましてや一個の人間だなんて、そんな事これまで考えもしなかった。

 彼らにも大切な人がいて、同じように生きている。

 暫く一緒に過ごして、ようやくそれに気が付いた。気が付いてしまった。

 知りたくなんてなかった/知らなければいけなかった。

 

「私、どうすれば……」

 

 こんな時、アナタならどうするの?ねぇ?

 

【→】

 

「デラーズフリート、ようやく炙り出せましたな」

「やはり核弾頭を手にして活動が大胆になっているな。声明まで出すとはデラーズも強気な事だ」

「仕掛けてくるなら、やはり観艦式でしょうな」

「まず間違いないだろう。当日の警備はあくまでコンペイトウの防衛部隊だ。()()()()()()()()()()と伝えねばな」

「ハッ!お任せください閣下」

 

 ジャミトフとバスクがいつもの部屋で暗躍する。部下達からはこっそり暗躍部屋と呼ばれている事を二人は知らないが、その内バスクは気が付いて部下(バカ)を粛清するがそれはまた別の話。

 

「ところで、マルレーン中尉はどうか?」

「ここへ来て、期待以上の働きですな。トリントンでの追撃からここまで、ジオン残党に対する良い圧力として機能しております」

「やはりガンダムの力か。まさにジオンの天敵というわけわけだな」

「スペースノイドの馬鹿どもにはいい薬です。それと、ガンダム開発計画はコンペイトウのT3部隊へ引き継がせます」

「その名を語るには些か早いと思うが?」

「この度の動乱、ティターンズの名を世間に知らしめるいい機会となりましょう?」

「フン。準備は抜かるなよ」

「ハッ!」

 




6→8話の時系列。7話はここから少し未来。
次回で0083編は終了です。
自分の二つ名が多すぎて覚えられないララちゃん。
「ガトーって誰」
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