スガスバ放送局   作:こども

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凛として咲く花は癒しが欲しい

 

 

 

 

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 さ え お ・ライブ

 ろ わ だ 

【予告】対決列島〜南北甘い物合戦〜

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『やぁやぁ戒能良子プロ! 今年の初めに行われた白くま対決、貴殿の堂々たる戦ぶりと堂々たる勝利は敵ながらあっぱれだったよー』

 

『エクセレントな戦いでしたね』

『寒かった記憶しかないんですけど』

 

『しぃかぁぁぁしっ!』

 

『What?』

『何でそんな元気なんですか豊音さん……』

 

『番組構成上、本場の人間が相手だったとしても、このままおめおめと引き下がるわけにはいかないよー、ということでっ! ここに白くま対決の再戦を本場鹿児島にて執り行うことを宣言します!!

 

『ベリーナイス。京太郎、鹿児島に着いたら私のペアレントに会ってもらってもいいですか?』

『えっ』

 

『やぁやぁ戒能良子プロ!』

 

『リピート?』

『フルネームで言う必要はあるんですかね』

 

『まさか、白くま一杯でお祭りが終わると思っているのなら大間違いだよ? まずは函館で、北海道の領土を賭けて対決をしてもらいます! 北海道が終わったら次は青森へ移動して、また同じように領土を賭けて対決するのを繰り返して〜…』

 

『……すいません。ちょっとインポータントな用事が』

『諦めも肝心ですよ』

 

『鹿児島に向かう全ての道中できょーたろーくんと対決だぁ!! 』

 

『──エスケープ!』

『──させるか!』

 

 

『ルールはちょーかんたんっ!各地で対決して領土を争って、最終的により広い領土を確保した方が勝ち──日本列島は今日から五日間、対決列島になるんだよー!!』

 

 

 

 

 チャット

 ナ、ナンダッテー…なのよー

 お腹壊さんようにな〜

 トヨネ! キョータロ! fight!!

 そんなんほぼ全国ツアーやん…

 長時間の大食いはよくあるけど、長距離の大食いってなんなん?

 くれぐれも無理だけはしないでくださいね

 北海道は牧場プリンがおいしいですよーぅ

 プリン…くっ、塞げない

 アカンで京ちゃん! そっち(プリン)に行ったらアカン!!

 すばらくない……

 ……なんだこの流れ わっかんねー

 鹿児島は白熊よりも黒糖がおすすめ

 どうでもいいからはやく日本でろー!!

  甘い物なら宮永照プロの方が適任

 

 

 

「………………………」

 

「おいミーティング中だぞ」

 

「………もうちょっとだけ」

 

 

 

 

 ○ △ □

 

 

 

 

 

 

 ミーティングを終えて一息ついていると、着信音と共に携帯の画面に懐かしい名前が表示された。

 表示された名前は須賀京太郎。大学に進学するまで女所帯で生きてきた私、弘世菫の半生において数少ない親交のある異性。プロになった後輩達の中で、素直に慕ってくれて顔も立ててくれる貴重な存在である。

 大学時代はよく電話でやり取りをしていたが、プロ入りしてからは此方からかけることはあっても、向こうからかかってくることは滅多になかった。此方に気を使って最低限のメールで済ませているのだろうが、それはそれで壁を作られているようで寂しいと思う先輩心には気を配れないらしい。

 

 そんな先輩泣かせの後輩がわざわざ電話をかけてきたということは、それなりの急用があってのことだとは理解しつつも、久しぶりの着信に気持ちが高揚していくのを感じる。口角があがるのを隠すように素早い動きで廊下に出て、携帯に耳を当てた。

 

 

「なんだ彼女でもできたのか?」

 

『いきなりでそれですか!?』

 

 

 開口一番に揶揄い混じりの言葉を投げかけてやれば、電話の向こうから想像通りの反応が返ってきて堪らず吹き出してしまう。あの頃から短くない年月が流れ、お互い環境も立場もすっかり変わってしまったが、こうしてみるとあの私物で溢れた部室で過ごした日々が昨日のことのように感じられた。

 

 着信からはや数分。

 相変わらず弄りがいのある後輩で、このままかわいがってやりたい気分ではあるが、残念ながらそういう訳にもいかない。逸る気持ちで屋外に出る前に電話に出てしまった以上、あまり時間をかけすぎると不躾な横やりが入ってくるのが目に見えている。用件が気になるのも確かではあるし、ここらが潮時だろう。

 

 それに頼りになる先輩を意識している身としては、横やりを受けてあのポンコツ達の仲間だと誤解されるリスクは大きすぎる。ただでさえ大学の同期達は全員が高校時代の部長経験者で強敵なのだ。安易に欲を優先して先輩ポイントを減らしてしまえば、同期達と比べられて残念な先輩の烙印を押されてしまうだろう。むしろ同期達がそうなるように仕向けるまである。

 

 一つ下が色んな意味で後輩らしくなかった弊害で、須賀含む四人の二つ下の後輩達をちやほやしていた彼奴らならこれ幸いとやりかねない。私だって他が先輩ポイントを失点すれば喜んで蹴落とす自信がある。

 

 過酷な先輩界*1を明日も生きるためにも、名残惜しいが本題に入ってもらうことにした。

 須賀がチームの勧誘に首を縦に振ってくれていれば、と思うと歯痒い気持ちになるが、起きなかったことを悔やんでも仕方ない。前向きに考えよう(移籍という道もある)

 

 

『同窓会のお誘いです。なんでも臼沢先輩が近々東京に来る予定があるみたいで、せっかくだから同窓会を開こうって話らしくて……俺達の代は行けなさそうなんですけど、他の先輩方は行けるみたいですよ』

 

「お前達は不参加なのか……」

 

『憧だけは行けるかもって感じだったんですけど、他の三人が無理そうなら今回は見送って、都合の良い時に同期で集まろうって。今回がダメでもまた部員全員で集まる機会がありますしね』

 

「……そう、か」

 

 

 個人的には来れるなら新子一人でも来てほしかったが、まぁ、横の絆が強かった麻雀部の中で特に仲が良かった二つ下の後輩達が今でも変わらず仲良しなようでなによりだ。でもやっぱり寂しい。

 

 頼んだら後日の集まりに誘ってくれたりしないだろうか。

 いや、快く受け入れてくれそうではあるが、同期の集まりの中に先輩が居たら要らぬ気を使わせてしまいそうだ。

 

 

「話は分かったが、何で不参加の須賀が幹事のような真似を?」

 

『それがですね……同窓会の話が出た時、やえさんに命令されたんです。どうも連絡を全然取ってなかったのは俺だけみたいで、参加の有無を聞くついでに旧交を温めてこい、と』

 

 

 もはやついでが本命になっているその言葉に、勝ち気に笑う面倒見の鬼の顔が脳裏に浮かんだ。廃れていた麻雀部を共に立ち上げた小走やえという女は、あの個性的な部員を部長として引っ張っていただけあって誰よりも気配りができる奴だった。

 同窓会を計画したのは竜華あたりだと思っていたが、この分だと案外やえが立案者だったりするのかもしれない。

 

 今なら須賀を取られたことを許せる気がした。*2

 

 

「お前達が来ないのは残念だが、喜んで参加するよ」

 

『俺達も先輩達に会いたかったです。和なんて部活でも聞いたことないくらい悔しがってましたよ。ああ見えて、人一倍情に熱いやつでしたから』

 

「……目に浮かぶな。早めに同期会を開いてやれよ?」

 

『もちろんです。そう遠くないうちにみんなで集まりますよ』

 

「それを聞いて安心した。……ところで夢乃は将来どうするんだ?」

 

 

 私達が卒業した次の年に入部してきた部の末っ子は、部員不足で麻雀部が存続出来なくなった後も須賀の下で麻雀を続けていたと聞く。ムラのある打ち筋ではあったがポテンシャルは目を見張るものがあったし、少数精鋭の『函館』のあの面々に揉まれたのなら、私が知っている頃よりも見違えているだろう。

 

 まだまだ後輩に負けるつもりはないが、もしも夢乃がプロ入りするのなら一部リーグのチームの一員として、勧誘するなり対策を講じるなり動かないといけない。すでに『函館』に囲われている以上、勧誘は手遅れになりそうだが。

 

 

『プロも気にはなってるみたいですけど、今のところは先生になるために実習を頑張ってるみたいですよ。この前も臼沢先輩のところに教育実習に行ったと聞きました』

 

「何処かで聞いたような話だな」

 

『いやいや、二択で悩んでるだけマホの方が偉いですよ。俺なんて迷走しまくって一時は将来の候補に執事が入ってましたから』

 

「執事って……」

 

 

 ちょっと……いや、すごく見たいな。

 そうか。そっちの選択肢もあったのか。そうか……。

 

 

『良ければマホの相談に乗ってあげてください』

 

「相談、ねぇ。別に構わないがそれはお前達で間に合ってるんじゃないか?」

 

『判断材料はあればあるほどいいでしょ?』

 

「ふっ、確かにな」

 

 

 

 ○ △ □

 

 

 

 それから二言三言、言葉を交わして電話を切った。もう少し会話を楽しみたかったが、これを機に須賀の方からも連絡をくれるだろうし、今日の分は次の機会のとっておくことにする。

 

 次は何の話をしようかと軽い足取りで部屋に戻ろうとして──邪な気配を察知して立ち止まった。通話中は気が付かなかったが、よくよく耳を澄ましてみるとぶつぶつ恨み言のように何かを呟く若い女の声が目の前から聞こえる。

 一見するとただのホラーだったが、私はこの現象を引き起こすことができるマネージャーの存在をよく知っていた。というか呟いてる内容が恨み言じゃなくて嘆きだった。

 

 

「どうして私は東京で独り身寂しく働いているんすかね……? あの時、照ちゃんの魔の手を振り払って、トキちゃん先輩の誘いに乗っていたら、今頃北の大地で京ちゃんさんといちゃらぶランデヴー間違いなしだったっす……」

 

「今時ランデブーってお前な」

 

 

 声だけが聞こえる無人の空間に目を凝らすと、ぼんやりと蓄光パズルのように現場マネージャー ──東横桃子の姿が浮かび上がった。色々と規格外な照はまだしも、須賀が幼少期から目の前のステルスマネージャーのことを普通に見えていたというのだから驚きだ。須賀が麻雀の女神に目をつけられているという照の言葉も、あながち間違いではないのかもしれない。

 

 

「うぅ、きっと私はすこやんやはやりんみたいに一生独り身で寂しく生きていくっす……。こんな男っ気のない職場で京ちゃんさんみたいな素敵な出会いがある訳ないし……やっぱり私には京ちゃんさんしかいないっす──っ!!

 

「おい、やめろ馬鹿!? 私にも飛び火するだろうが!?」

 

 

 悪い例ばかり見るからそんな考えになるんだ。私達はまだ若いし、彼氏いない歴イコール年齢だとしても結婚適齢期に入ったばかりなんだからまだあわてるような時間じゃない。あきらめたらそこで試合終了だ。

 

 それに須賀はまだフリーなんだから可能性は残ってる!

 

 

「言いたいことはたくさんあるが、まず影が薄いからって目の前で堂々と盗み聞きするな。曲がり角に隠れて盗み聞きしている照を見習え──体は隠せてもツノが隠せていないがな!

 

「弘世プロはいいっすよね、京ちゃんさんから連絡をもらえて。私なんて照ちゃんのおこぼれを頂戴するばっかりで……」

 

「お前だって須賀の連絡先くらい知ってるだろ? 同郷の同い年で知らない仲じゃなんだから電話すればいいじゃないか」

 

「……京ちゃんを追いかけて上京したのに結局、近場の大学に逃げたヘタレモモが京ちゃんに電話なんてできる訳がない」

 

「ぐっ」

 

「そんな理由で大学を選んだのかお前は」

 

「挙げ句の果てに、なんの接点もなかったはずの親友に抜け駆けされる始末」

 

「ぐはっ!?」

 

「……あぁ、あの副将か」

 

 

 曲がり角からしれっと出てきたツノ──もとい宮永照が辛辣に吐き捨てながら此方にやってきた。普段からドライなところがあったが、長い付き合いだからか照は東横に対して特に厳しい。さぞかし仲が悪いのかと思いきやそんなことはなく、現に東横の交友関係を把握しているし、東横もなんだかんだで照に懐いている。

 

 そもそも東横を連れてきたのも照だった。

 

 

「それで? 久しぶりの後輩との電話をコソコソ──あぁいや、片方は隠れていなかったが盗み聞きしていたお前達は、一体全体どういうつもりなんだ?」

 

「後輩といっても京ちゃんは要警戒のチームの選手。菫が情に流されて、チームの弱点とか漏らさないように監視するのは当然のこと」

 

「そうっすよ! なんたって京ちゃんさんはつよつよっすからねっ! 照ちゃんとガイトプロのペアに勝っちゃうくらいっすから!!」

 

「モモ、あとで事務所裏」

 

「ひぇっ」

 

「お前らな……」

 

 

 後ろめたさを全く感じさせない様子のポンコツ共に、自分の顔が引き攣るのが分かった。よくもまあスラスラと思ってもいないことを言えたものだ。『函館』が要警戒のチームなのは確かだが、今更バレるような弱点などないだろうに。むしろ資料の少ない向こうの方が、情報漏洩のダメージは大きいのではないか?

 相手チームに合わせて基点やパターンを変幻自在に変えることで、メディアからカメレオンと呼ばれている『函館』の情報は関係者なら喉から手が出るほど欲しいものだろう。その情報が役に立つかは置いといて。

 

 やはり全員がオールラウンダーというのは、こういう情報戦で強い。

 もちろん他チームでも、やろうと思えば同じことが出来るし、なんならオーダーを変えてしまえばいい。だがそれでは、本来の得手を潰すだけで『函館』のようにはいかないだろう。単純に団体戦向きの雀士が集まっているというのもある。

 

 

「でもでも! 照ちゃん達に勝ったのは事実じゃないっすか!」

 

「確かにな。……まったく、荒川と別チームだからと安心していたのに、あれを超えるペアが誕生してしまうとは」

 

「えっ、京ちゃんさんって大学では荒川プロとコンビだったっすか?」

 

「…………部内のレクリエーションで、まぁ、一回だけな?」

 

 

 そう言って視線を横にずらすと、それに合わせて東横の肩を掴んでいた照がそっぽを向いた。

 

 レクリエーションとは言ったが、実際のところはこのポンコツが引き起こした今も恐々と語り継がれる大事件だ。静かにキレている荒川と生贄に捧げられた須賀の二人によるコンビ打ちを誰も止めることができず、最終的に北海道からプリンを送ってもらうことでなんとかおさまったが、私を含めた多くの部員の心に傷跡を残した。

 

 

「私はまだ負けてない。憩にも、あの人にも」

 

「……照ちゃん」

 

「……照」

 

「何があろうと京ちゃんの隣に相応しいのは、私」

 

 

 

 

 

 

「負けは負けっすよ?」

 

「お前が一番、須賀と相性悪かったけどな」

 

 

 

「二人共、卓につこうか?」

 

*1
トップは花田煌

*2
許すとは言ってない




<おまけ> 京ちゃんの大学時代

・二つ上の先輩
小走やえ(麻雀プロ)
弘世菫(麻雀プロ)
臼沢塞(教師)
清水谷竜華(?)
『WAWAWA』(?)

・一つ上の先輩
荒川憩(麻雀プロ)
鶴田姫子(麻雀プロ)
花田煌(アナウンサー)

・同期
新子憧(?)
『トレッキング』(?)
原村和(?)

・二つ下の後輩
夢乃マホ(就活生)


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