スガスバ放送局   作:こども

6 / 6
ナインゲートの打ち手曰く、雪を見ているとおもちを食べたくなるらしい

 〈
大学麻雀部(13)

既読9

08:04

集計結果です!

雑炊:4 ラーメン:4うどん:4 おもち:1

  弘世先輩

おい、第四の選択肢作ったやつ誰だ
08:06

  臼沢先輩

しょうがないよ。男の子だもん
08:07

  のどか

京太郎くん……
08:07

  須賀くん

@新子さん (助けてください)
08:11

  新子さん

@須賀くん 日頃の行いを悔い改めなさい
08:14

  小走先輩

ヒマしてるやつ今すぐ部室に集合!
08:20

  小走先輩

お見せしよう……王者の打ち筋を──ッ!
08:20

  臼沢先輩

急にどしたの? えらく元気だけど
08:22

  清水谷先輩

元気というより深夜テンションやない?
08:23

  弘世先輩

あぁ。ぐっすり眠った後悶え死ぬやつだな
08:24

既読6

08:28

ようは自主練をやるってことですよね?

了解しました!

  小走先輩

あっ、雪降ってるから気をつけて来るように!
08:30

  宮永プロ

了解
08:33

  弘世先輩

@宮永プロ 来るのは構わんが迷子になるなよ?
08:35

  チカ先輩

あれ? ちょっと目を離したら話が変わってる

結局、忘年会のシメの話はどうなったのー?

08:40

  のどか

……もう四つ全てやるでいいのでは?
08:42

  新子さん

それはそうめんの二の舞になるからNG
08:44

既読2

08:47

ちょうど意見が四つに分かれましたし、

あとは麻雀部らしく麻雀で決めましょうか

 +

 

 

 

「姫子ー、これから自主練行くけど姫子も来るー?」

 

「ぬくぬく」

 

「………………………………………」

 

 

 

 ○ △ □

 

 

 

 1.閑散とした大学校内と勁草(けいそう)姉弟

 

 

 大学の部室に続く廊下を一人歩く。冬季休暇真っ只中の校内は平時と比べて活気がなく人もまばらで、刺すような冷気に身を縮こませながら窓の外を見ると相変わらず白銀の世界が広がっている。いわゆる灰雪ってやつでしょうか……ひらひらと宙を舞う雪を見ているだけでぶるりと体が震える。

 最初こそ、遠く離れたは言いすぎとしてもそれなりに距離のある大都会でこんな故郷を彷彿とさせる雪化粧が見れるなんて、と心躍るすばらな気持ちになったりもしましたが、外に出るのが億劫になるくらい寒いのもまた事実。元部長からの号令がなかったら今頃、姫子と一緒に家に引きこもっていたと断言できる悪天候で、貼るカイロの偉大さを身にしみて感じる今日この頃でした。

 

 

「姫子は…………まだこたつでうたた寝してるんだろうなぁ……」

 

 

 ヒューンヒューンと吹く北風とコツコツと響く足音で音を奏でながら今朝のこと──寒かよー、とこたつにしがみついていた同居人のことを思い出して、つい溜め息がこぼれる。

 まぁ……この天気ですし、小走先輩も急でしたから一緒に来なかったことに対して、思うことはあれど文句はない。自主練はあくまでも自発的にやることなので強制ではないですからね。プロを志望しているのだから寒さに負けず、もう少し自発的になってほしいとは思いますが。

 

 とはいえ、です。

 冬将軍にあっさり白旗をあげたことに目を瞑るとしても、です。

 だからといって家で自堕落に過ごすのはすばらくない。いくら寒かったとしても、布団に入らずにこたつで寝てしまうと自律神経が乱れてしまうし、迷信かもしれませんが風邪をひく可能性だってある。未だ学生の身ではありますが、私達はお酒や選挙の参加が許された立派な大人。自己管理を徹底するのは当然のこと。

 卒業までまだ一年あるとはいえ、先輩方が引退されて、これからは私達が麻雀部を頑張って牽引していこうというこの大事な時期に体調を崩されたらたまったもんじゃありません。もうすぐ忘年会に年末年始とイベントも目白押しですし。

 

 今年入部してくれた一年生が四人。

 部の存続に必要な部員は五人。

 

 そういうこともあって私達の代が卒業するまでに最低でもあと一人、新入部員を確保する……それが今の麻雀部の課題です。あわよくばさらに先のことも考えて新入生を五人勧誘できればすばらですが、千里の道も一歩から。まずは三年後の存続の危機をなんとかしなければいけません。なんとしてでも、です。

 

 今まで頼れる先輩と頼もしい後輩に挟まれて、不可抗力ながらも甘い汁を吸う思いをした分、そのくらい頑張らないと私達の立つ瀬がなくなってしまう。

 最近──大学生活二年目も終わりに近づいている今、思うのです。このままではまるでダメな大人まっしぐらなんじゃ……って。いや、ホントに。冗談抜きで。もちろん私はそんな大人になりたくないですし、これから一生涯の付き合いになるでしょう同期達にもなってほしくない。

 

 まぁ、同期達はもう手遅れかもしれないんですけどね……。

 頼もしいからって後輩に『副部長』の役職を投げるのはすばらくないと思います、はい。

 

 

 

「雪の日にでぇとなんてロマンチックで照れますよーぅ」

「(デートじゃ)ないです」

 

「……………………………………んん?

 

 

 姫子の健康とか名誉とかその他諸々のためにもこたつの片付けを検討していると、前方から二人の男女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。まるでカップルのようにいちゃついている二人組。その姿に思わず立ち止まる……もウチの麻雀部が変なのは今更なことだとすぐに気を取り直して歩みを再開する。

 

 なんなら今朝も変なの(姫子)に見送られてきましたしね……。

 

 やはり麻雀には強くなるのと比例しておかしくなる作用でも含まれているんでしょうか?

 そう考えると小学校の頃から向き合ってきた麻雀がなにか恐ろしいものに思えてきました。立直するごとにどんどんハイになっていくとかありませんよね? 牌だけに。*1

 

 だけにハイになる。

 …………今度、和に採点してもらおう。*2

 

 

「おはようさん。やっぱり雪降っててもキラメちゃんは来たねぇ〜」

 

「おはよう、憩! こたつ(の住人)の誘惑に負けそうになったけど、もちろん来たよ」

 

「お疲れ様です。大分前から暖房をつけていたっぽいんで、部室はちゃんと暖かくなってますよ」

 

「すばら! ありがとう、須賀くん。そろそろ寒さが限界だったので助かりますっ」

 

 

 現実逃避をやめて、赤栗色の髪の同期の憩──荒川憩の挨拶とキャラメル色の金髪の後輩の須賀くん──須賀京太郎くんの労いにそれぞれ言葉を返す。

 

 片や、女子のインハイチャンプ。

 片や、男子のインハイチャンプ。

 二年前。女子と男子ということもあって公の場で一緒になることは数える程度しかありませんでしたが、追い詰められてから真価を発揮するお互いのそのスタイルから『疾風勁草(しっぷうけいそう)』になぞらえて勁草(けいそう)姉弟と呼ばれていた二人。

 

 二年経った今もなお私を含む当時のインハイ関係者達の中で、“高名の女王と無名の王の姉弟”として語り草になっている(草だけに*3)この二人は、どうして環境の整っている強豪校ではなく無名校に進学してきたんだろうと改めて疑問に思う。

 

 この二人だけじゃありません。

 この二人だけでなく、麻雀部の他の部員もそれぞれが高校時代に全国を経験している実力者、目の前の二人と同じように幾千の大学、果てはプロチームからのスカウトを断ったであろうことが安易に想像できる人ばかり。ここまでくるとなんらかの作為というか運命のイタズラ的なナニカを感じてしまいます。

 

 まぁ、学業優先で麻雀が盛んじゃない大学に進学し、親友との二人三脚を覚悟していた私としては嬉しい誤算でしたけどね。

 

 それはそれとして。

 

 

「お二人はどうしてこちら(廊下)に?」

 

「えぇっと……それが、ですね……」

 

 

 おや、渋い反応。

 

 前方から──つまり私が向かう先からきたということは、おそらくこの二人は先程まで部室にいたんでしょう……部室が暖かくなっていると須賀くんも言っていましたしね。

 だからこそ、暖かくなっているはずの部室から出て、この外よりマシとはいえ冷凍庫の中のような極寒の廊下で、今こうして私と鉢合わせしている理由が分からない。二人揃ってですから、なおさらです。

 

 見る限り、手ぶら?なので家に帰るようには見えませんし、買い出しは先週に和と一緒に済ませたばかりなのでその可能性もおそらくない、と思う。それに少なくとも元部長──小走先輩が部室にいるはずなのに二人っきりで一体なにを……?

 

 というか二人の様子から察するに──

 

 

「──逢瀬ですか? 刺されますよ??」

 

「やっぱり分かりますーぅ? 私ってほんま幸せ者やわ〜」

 

「(逢瀬じゃ)ないです! あぁーっと、……照さんからヘルプの電話がきたんで、これから迎えに行くんですよ」

 

「……………………ご苦労様です」

 

 

 また一つ溜め息をこぼすように、まるで見たくなかったものを見てしまったかのようにげんなりしている須賀くんに慰めの言葉をかける。

 

 あれだけ元副部長──弘世先輩に釘を刺されていたのにまた迷子になったんですね、宮永プロ……。以前から思っていましたが、宮永プロって私と憩よりも部室に通ってる期間が長いですよね? 私達のようにほぼ毎日通っているわけではないとはいえ、それでも、結構な頻度で来てますよね??

 

 心の中で今も東京の何処かで途方に暮れているのであろう宮永プロにながら、手伝いましょうか?と申し出てるも須賀くんは苦笑いで首を横に振った。その様子から察するに、来たばかりの私への気遣いもあるんでしょうが、『捜索』ではなく『迎え』と言っている辺り、すでに居場所の検討がついているから本当に必要ないんでしょうね。

 あの宮永プロの説明で特定できるなんてすばらです。流石は名誉『宮永』係といったところでしょうか。でも、そのせいで宮永プロのお世話を押しつけられているんだと思うと、優秀過ぎるのも考えものですよね。

 

 高校の先輩の言葉を借りるならなんもかんも宮永プロがわるいっです。

 あとはまぁ……押しつけた私達もちょっとだけ。

 

 “現行の若手トッププロが来てくれる”。

 

 それだけ聞くと魅力的に感じますが、実際はただ遊びに来てるだけなんですよね。まぁ、今をときめくトッププロなだけあって、たまにくれるアドバイスはとてもタメになりますけども。

 

 

「二人がここにいる理由は分かりました。えぇ、分かりたくないですが分かりました」

 

「まさにチャンプのジレンマやね」

 

「いや、それだと憩と須賀くんも含まれるじゃん」

 

 

 他にもインターミドルのチャンプである和もそのジレンマに当てはまるし、後から和に怒られても知らないよ? 名誉毀損ですっ!ってまた追いかけ回されても私は知らぬ存ぜぬで通すからね。今回の須賀くんは完全にとばっちりだから助けるけど。

 

 そもそもチャンプのジレンマって意味あってるのかな? これだと宮永プロ達がジレンマを抱えていることになってる気が…………いや、宮永プロが関係するジレンマという意味では正しいのか。日本語って難しい。

 

 

「そんなことより、須賀くん。どうして須賀くんの後ろに憩がいるんですか? それは宮永プロ関係ないですよね?」

 

「気づいたら後ろにいました」

 

「京くん一人に宮永プロを探させるのはアカンでしょー?」

 

「それは確かにそう──じゃなくて。いえ、そういうことを聞きたいのではなくてですね……どうして須賀くんが憩をおんぶしているんですか?

 

「気づいたらおんぶしてました」

 

 

 なにそれこわい。

 いつから私の同期は子泣き爺(妖怪)になったんだろう。

 

 

「──くっ! かつて勁草姉弟と呼ばれたこの俺が、油断していたとはいえ背後を取られるだなんてッ!!」

 

「──私の雀力なら造作もないことですよーぅ」

 

「あぁもう……そうやって、すぐバトル漫画に繋げるのはすばらくないですよ。──あと背後を取られたのは、まぁ、相手がその勁草姉弟の姉ですし順当では? 姉より優れた弟は存在しない、と部室の本棚にある漫画にも書いてありましたし」

 

 

 闇堕ちしたり、修行パートに入ったり、決め台詞を叫んだり。

 最近の麻雀部は何故かバトル漫画が流行っています。どちらかというと、麻雀部はスポーツ物の仲間だと思うのですが果たして。

 

 取り敢えず、高い手でアガろうとしている人の背後に、主人公のモノローグに後ろ姿で出てくる師匠キャラみたいな感じで立つのは対局の邪魔になるんでやめましょうねー。

 

 

「花田先輩は一人で来たんですか? 鶴田先輩は?」

 

「京くん京くん。下の名前で呼んでやらんとヒメちゃんがまた拗ねますよーぅ?」

 

「………………姫子先輩は一緒じゃないんですか?」

 

「あぁ、姫子は──」

 

 

 私と姫子がルームシェアをしていることを知っていたら当然の質問に、こたつで丸くなってる、と素直に答えようとしてハッとする。

 文字通り背後で笑みを深めている憩にはバレていそうですが、まだ気づいていない様子の須賀くんにありのままを話してしまうのは忍びない……いや、ただ姫子がだらけていただけの話なんだけど、その……姫子の先輩としての立場的に。

 

 かといって嘘をつくわけにもいきませんし、ここはオブラートに包んで、

 

 

「──姫子はカタツムリになりました」

 

「なんて?」

 

「失礼、コタツムリ*4になりました」

 

「いや、なんて??」

 

 

 ダメでした。

 これなら素直に話した方がマシ(未知の生物になっちゃいましたし)だった気がしないでもないですが、気にしたら負けなので気にしないことにする。何と戦っているかはさておき。

 

 

「んふふ。そういえば、須賀くんも一人で来てたけど、他の一年の子達はなにしとるんでしょうねーぇ?」

 

「あれ、そうなんですか? 他の三人は今日は何か用事が?」

 

「京くんはなにか知ってます? みんな仲良しご近所さんでしょー?」

 

「あぁ、あいつらは──」

 

 

 そこまで言いかけた須賀くんがハッとした顔をする。

 

 

「──俺の部屋でコタツトライアングル*5になってます」

 

「なんて? ?」

 

 

 …………………………………………。

 

 もしかして麻雀部の三分の一がこたつ休暇なんですか!?

 

 

 あと憩は笑いすぎっ! 絶対確信犯だったでしょ!?

 

 

「それじゃ、俺達はこれから照さんを迎えに行くんで……元部長のことよろしくお願いします」

 

「ついでにヒメちゃんの様子を見に行きましょうねーぇ」

 

「姫子は動物園のパンダじゃないからね……?」

 

 

 というかこの二人はその状態(おんぶ)のまま外に出る気なんでしょうか。

 正気の沙汰とは思えませんが、絵空事だと簡単に切り捨てられないのが末恐ろしい。憩は須賀くん限定で常時ですが、須賀くんって普段はそんなことないのにたまに異性との距離感がバグりますよね。

 

 須賀くんが卒業後、地元の長野や思い入れのある島根、はたまた恩師?の伝手を辿って大阪に行くのか知りませんけど、将来、刺されるは冗談にしても鎖で縛られて監禁くらいはありえそうな気がしてきました……。

 

 

 

 ○ △ □

 

 

 

 2.部活に関係のない物の方が多い部室と膝枕

 

 

 出身は全国屈指の強豪、晩成高校。

 ジュニアの頃から全国大会の常連だった通称“奈良の王者”。

 

 思い出すのは勁草姉弟が生まれるより一つ前の年──今から三年前のインターハイ。団体戦こそ県予選一回戦でダークフォースの阿知賀とあたり敗れてしまいましたが、それにめげることなく個人戦で下馬評を覆し、五本の指にまで登りつめたすばらな人──その名も小走やえ先輩。

 

 憩曰く、弘世先輩とはまた違う意味で読みの達人。

 須賀くん曰く、競り合いに強すぎる雀士。

 

 そんな(普段がどうであれ)高校時代に頂点を取ったあの二人ですら手放しで称賛する雀士の一人である小走先輩は今──、

 

 

よしよしっ……今くらいはゆっくり休んでなー」

 

「うゅぁー……あぅあー……」

 

 

 私と同じ学部の先輩──清水谷竜華先輩の膝の上で溶けていた。

 

 

「……………………………………………………」

 

 

 あの小走先輩がこんな風になる膝枕を日頃から受けていた園城寺さんって何者とか、須賀くんが小走先輩をよろしくって言っていたのはこれのことだったんだとか言いたいことは山のようにありますけど、まずは向かい合うように置かれているソファーに腰を下ろして一旦、一息つく。

 

 かつて関西最強と名高い千里山で部長を務めていた清水谷先輩。

 私の口癖である『すばら』を何故かミドルネームと勘違するような天然さんなところはありますが、他四人の麻雀部の先輩方同様、とても頼りになる良き先輩でもあります。

 

 なので、今まさに小走先輩のことを湯煎されたチョコのようにどろどろに溶かしているのもきっとなにか事情がある……はず……? *6

 

 とにかく状況証拠だけで断罪するのはすばらくない。

 疑わしきは罰せず、です。

 

 ……ただ、どんな事情であれ、いつもかっこいい小走先輩のこんな姿を見たくなかったなぁ。

 

 

「最近、北海道で事務所を立ち上げるーって忙しくしとったのはすばらも知っとるやろ? このまま野放しにしたらあかんなー思うて、またパンクする前に膝枕で癒しとるんや」

 

「おうやぅ……うち……ちゅじ……」

 

「うわぁ……」

 

「ガチで引いた声出すのやめーや。いつものみたくでもっかい頼むわ」

 

「すばらくない」

 

「そう! それやそれ!」

 

 

 確かに小走先輩とチカ先輩が最近オーバーワーク気味で私も心配していましたが、これはむしろ逆効果なんじゃ……。醜態を後輩に見られたと知ったら、いくら小走先輩といえど立ち直れなくなるんじゃないですか?

 

 責めるように見つめると清水谷先輩は顔の前で手をブンブン振って、

 

 

「た、確かにちょろーっと乙女がしたらあかん顔しとったり、人の形を保っとらんかったりするけど、い……今だけやから! 終わったらちゃんと元気になるからセーフ! アウト寄りのセーフやから!! だいたい元はと言えば、一人で色々抱え込むやえが悪いんやで? 今回だって私とすみれに内緒でチカとコソコソしとったし……やえにも考えがあるのは分かっとるけど、同期なんやからちょっとくらい相談とか頼ってくれたってええやん……! すばらもそう思うやろ?な?

 

「…………アウト寄りというかアウトオブアウトでは?*7

 

 

 頭を撫でられる度に身体がなんかピクピクしてますし。

 どういう原理かは分かりませんがトレードマークの一つの縦ロールがなんかみょんみょんしてますし。

 

 いや、これ以上は明らかに藪蛇なので詮索しませんけども。

 ……こういう時、臼沢先輩がいたら頼りになるんだけどなぁ。いつまでも引退された先輩方を頼るのもすばらくないのであまり大きな声では言えませんが…………臼沢先輩助けて──っ!!*8

 

 

 

 ○ △ □

 

 

 

「でも、勿体無いですよね」

 

「んー?」

 

「いえ、他に考えがあるにしても……赤土プロの勧誘を一考もせずに断ってしまうのは勿体無いなぁ、と」

 

「せっかく夢を叶える大すばらチャンスやのにぃー、って?」

 

「膝枕で溶かされることもなかったのにー、も加えていただけるとすばらですね」

 

「ん゛っ!?*9 ん、んーっと、すばらの言いたいことも分かるけどなぁ」

 

 

 インハイやインカレと違って、番狂わせが滅多に起きないプロリーグにおいて一部上位の看板はとても大きい……それこそ一部中位以降の選手が一部上位のチームに所属するには移籍しかないといっても過言ではないほどに。

 そういうこともあって、赤土プロからの──『松山』からの勧誘は、プロで頂点に立つと豪語していた小走先輩にとっても渡りに船どころか渡りに豪華客船の話だったと思うのですが、どういう考えからか先輩は即答で断っていました。

 

 

「やけどさ、やえっぽい話やない? ほら施しは受けんよ!的な?」

 

「小走先輩はそこまで頑固じゃないと思いますけど」

 

「いーやっ。すばら達の前ではクールぶっとるけど、胸の内に熱い小宇宙(コスモ)がやな……」

 

「感じたことないですけど」

 

山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)の方が良かったか。*10 まっ、すばらが深く考える必要はないで? やえだって全く気にしてないことを悔やまれても困るやろうし」

 

「気にしてないって……一部上位からの勧誘だったのにですか?」

 

「迷わず即答で断ったんならそういうことやろ」

 

「……確かに。余計なお世話でしたかね?」

 

「いやいや、やえは後輩からの心配を余計だと怒るような小さい女やないで? 背は小さいけど

 

「その一言は余計だと怒られると思いますよ?」

 

 

 身長のことが器も王者級な小走先輩の数少ない沸点の一つということは、私より小走先輩と付き合いが長い清水谷先輩ならもちろんご存知だとは思いますが。

 

 身長といえばこの前も、白水先輩が理想の身長差*11とかなんとか言って、雑誌片手に姫子から須賀くんの身長を聞き出そうとしてましたね。白水先輩が昨年よりもおしゃれでキラキラしていたのは、後輩のつっきーさんやかおりんさんの影響を受けてか、これがまさに恋は女を綺麗にするというやつなのか。

 結局、話を聞いた姫子が頑なに自分の十五センチ上しか言わないものだから一波乱起きましたけど、なにはともあれ白水先輩が変わらずお元気なようですばらでした。

 

 

「まぁ、私も詳しいことは知らんのやけど……チカへの同情心だけで断ったんならチカが赤土プロの前でやえのこと泣かしとるやろうし、一部上位関係なしに、既存チームで云々より新興のチームで文字通りゼロからのスタートの方が単純に()()()()()()()んやないかなー、って──あながち間違いやないやろ?」

 

「…………………………あうあー」

 

「ほら」

 

「ツッコミませんからね」

 

「!?」

 

 

 いや、そんな信じてたのに裏切られた!?みたいな顔をされましても。

 むしろ私の方が清水谷先輩からの信頼がツッコミだったことに対して、裏切られた気分なんですけど。信頼していただけるのはすばらなことこの上ないですが、漫才の相方としての信頼ならノーセンキューです。全くもってすばらくないです。

 

 

「……さて、と。このままお茶もなしに話を続けるのもアレですし、紅茶でも淹れてきますね。先輩方も同じものでよろしかったですか?」

 

「あっ、うん。ごめんなぁ……もう部長はすばらやのにこき使わせちゃって」

 

「いえいえ、先輩方には今まで大変お世話になりましたしお気になさらず。その代わり、私が戻ってくるまでに小走先輩を復活させておいてくださいね? 今見た光景は忘れるように憩と須賀くんにも言っておきますから」

 

「! もちろんやっ! ありがとうな、すばら!」

*12

 

「すばらっ! いいってことですよ!」

 

 

 そう言ってソファーに座っている清水谷先輩とその膝上で耳を赤くしている小走先輩にサムズアップだけして、他の目撃者が現れる前に宣言通り紅茶を淹れるべく給湯室に向かう。

 せっかくですし先週買ったクッキー缶ももう出しちゃいましょうか。宮永プロがいたら誰かが目を光らせてないとですから、気楽に食べられませんしねー。

 

 そんなことを考えながら給湯室でお湯を沸くのをぼんやりと待っていると、ポケットに入れていた携帯がメッセージの受信を知らせる音と共に震えた。

 

 

「あれ、姫子から……?」

 

 

 

 〈
姫子

花田ー
07:27

みかんば取ってきてー
07:27

既読

07:30

……何で目の前にいるのにこっちで言うの?

私は食べてないし、自分で取ってきてよ

ぶー。花田は冷たか女やね
07:31

既読

07:32

つまりクールビューティーってことだね!

夏にがばい重宝すっ女やね!
07:32

既読

07:33

それはただのコールドビューティー(ゆきおんな)じゃん

花田ー
09:45

[コタツムリになってる勁草照姫*13の画像]
09:47

 +

 

 

 

「……………………………」

 

 

 

 ミイラ(こたつ)取りがこたつ(ミイラ)になってるー!?

 

 

 

*1
あ、あったかくない(カチコチ)

*2
……アリ寄りのアリですね

*3
どうしてこんな所に氷像が──お姉ちゃん!?

*4
こたつでうつ伏せになってるだけ

*5
三人でこたつを囲ってるだけ

*6
きっと、たぶん、おそらく、メイビー

*7
花田は訝しんだ

*8
大声

*9
小ダメージ

*10
血液がビートを刻んでる

*11
大体十五センチメートル

*12
…………ありがとう。それと気を使わせてすまない

*13
荒川憩・須賀京太郎・宮永照・鶴田姫子の四人





<おまけ>

・清水谷竜華(大学三年生)

 大学で離れ離れになっていた幼馴染が、長野美人の太ももに浮気してるところを目撃して闇堕ちした悲しき膝枕マシーン。
 後日、幼馴染が寝取った太ももの持ち主である長野美人のアイデンティティーを奪うべく片目で生活していたら、縦ロールがみょんみょんしてる同期にアホの子を見るような目で見られたため膝枕で黙らせた。


<架空世界の掲示板>

【実質】新たなスピンオフ作品『咲-saki- 大学生編 the end of youth』が咲本編の伏線を回収しまくっている件について【憧外伝】

1 名無しの咲ファン
 現時点で回収された咲本編の伏線まとめ
・一年生編のインハイで久が持っていた対戦相手の牌譜→ 回想 和「これ……全部、須賀くんが用意したんですか……!?」 久「そっ。だから対戦相手に関するアドバイスが欲しいなら、私より須賀くんの方が適任よ?」
・京太郎、やえの『函館』入団理由→誓子繋がり?
・竜華「京ちゃん」 姫子「きょー太郎」→大学の先輩後輩
[中略]
・衣「きょーたろーが相手なら弦月くらいが丁度良い」→京太郎は満月の衣の相手にならない……と思わせるミスリードで、言葉通り京太郎との勝率が一番高いのが弦月の日(詳細不明)
・菫「須賀には負い目がある」→入部したばかりの京太郎に照の世話を押しつけた
[後略]

2 名無しの咲ファン
 >>1
 乙
 薄々分かってたけど、ほぼほぼ京太郎絡みじゃねーか

3 名無しの咲ファン
 >>1
 おつ
 とうとう本編で京ちゃんを深掘りするの諦めたのか……

7 名無しの咲ファン
 清澄高校一年 須賀京太郎←ワイ「はは〜ん。コイツを麻雀少女達が取り合うんだな」
 京太郎「作るか……俺史上最高のタコス……ッ!」←ワイ「あぁ、そういえば居たなこんな奴」
 【超朗報】須賀京太郎、一ページ半でインハイチャンプになる【生きとったんかワレ】←ワイ「ファッ!?」

9 名無しの咲ファン
 インハイチャンプになっても、落ち込んでる優希のためにインタビューバックれて俺史上最高のタコス作ってくれる京ちゃんいっぱいしゅき

10 名無しの咲ファン
 >>1
 部長の言っていることが事実なら、一年生編の京太郎は初心者なのに一人で牌譜を取りつつ、麻雀部の雑用とタコス研究もこなしてたのか
 牌譜は団体戦だけじゃなくて個人戦しか出場しない選手の分もあるって言及もされてたし、そりゃ本編に登場してる時間なんてありませんわな

12 名無しの咲ファン
 和が牌譜を持ったまま言葉を失ってるのを見て、あぁ……部長の所業にドン引きしてるんだなって思ったら「須賀くんって何者ですか……?」って京太郎に戦慄してて笑った
 でもよくよく考えると、雑用に追われて麻雀を全くやれてない初心者が、ホテルのベットを埋め尽くす量(部長曰く、これでもごく一部)の牌譜を多めに見積もって三か月で用意したとか異常だわ

13 名無しの咲ファン
 京ちゃんが異常なのはプロ編が始まる前から言われてたことだから……

14 名無しの咲ファン
 咲日和の二年目清澄の回で、表紙に『理想』と書かれた京太郎のノートを発見したタコスが中身を見たらどのページも牌譜しか書かれてなくて唖然とする話とか、絵で誤魔化されてるけど普通に怖い話だよね
 
17 名無しの咲ファン
 >>14
 一年目の冬休み明けの話も中々だぞ

 久「クリスマスなにしてたー?」
 京太郎「麻雀ですねー」
 久「……大晦日なにしてた?」
 京太郎「麻雀です」
 久「…………お正月は?」
 京太郎「麻雀」
 久「………………昨日」
 京太郎「まー 久「ごめん! やっぱ聞きたくない!!」
 
21 名無しの咲ファン
 高校卒業と同時にサキーのお守りからも卒業したのに、今度はテルーのお守りをすることになった京太郎に対して「寂しい思いをしなくて済みそうですね」ってナチュラルに煽る和もまず面白いし、間髪入れずに「憧が一緒なら私服で恥ずかしい思いをしなくて済みそうだな」ってちゃんと煽り返す京太郎も面白い

 アコチャーも言ってたけど、アンタら仲良すぎな

24 名無しの咲ファン
 本編ではあまり描かれなかったけど、憧外伝では和と京太郎ってちゃんと三年間苦楽を共にしてきた仲間なんだなって思うシーンが多々あってほっこりするわ

27 名無しの咲ファン
 >>24
 それな
 先輩対策会議の時の無言で同時に頷くシーンとかちょーかっこいいよー

30 名無しの咲ファン
 >>24
 消去法だったけど、部長と副部長だったもんなぁ

35 名無しの咲ファン
 今更ながらアコチャー達が入部した大学麻雀部って部員の出身校が北海道、岩手、東京、長野、奈良、大阪、福岡とグローバルだよね

36 名無しの咲ファン
 全部国内なんですがそれは

39 名無しの咲ファン
 メタ視点だけど、部員の半数が未来のトッププロとかヤバすぎィ!

【UA10000ありがとう安価】どの話が読みたいですか?

  • ①飛ぶ鳥落とす同盟(小走やえ)
  • ②正反対の親友(南浦数絵)
  • ③三人寄れば文殊のチカ!(桧森誓子)
  • ④第1回(?)
  • ⑤未曾有の新星『函館』に震撼するスレ
  • EX.活動報告で他のキャラやシチュを募集
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