あっ、やっべ。こっち2次創作で乳盛られまくってるヤンデレの妹の方だわ…… 作:RockRock-B
「
「ヒエッ……」
ハイライトの消えた瞳に見つめられて、俺は男だというのに情けない声を上げる。
どうしてこうなった……?
***
たとえば、ゲームの中に転生したとするならどうする?
ゲームの中なわけだから、道行く人々は当然本当の人間ってわけではなくて。けれど、彼らは確かに生きているし、脈を測れば血潮だって感じ取れるはずなのだ。それでも、俺達のように一人ひとりが意思を持って動いているのかと言われたら怪しいだろう。なら、お前自身が他と異なる“人間”なのだと、どうして言えるのか等と問われたところで明確な反論は出てこない。
でも、二度目の人生の舞台がゲームの中だって証拠は、とっくに見つけているのだ。
あれは、そう。二年前の春、中学に進学したての真新しい教室での事だった──。
***
俺──
二度目の人生ってのは、才能だとかチートだとか……そういうスパイスに満ちたものになると思っていたのだ。
けれど実際は、そんな事は無かった。
勉強面では前世の記憶ってやつが役に立ったけれど、運動面ではからっきし駄目。躰が着いて来ないのならば、理屈を理解していたとしても実現までには繋がらない。ならばと思って勉学に励んでみたものの、なかなかどうして成績の向上は見込めなかった。
手から火は出せないし、転んだら痛い。
勇者にだって、救世主にだってなれやしない。
──あぁ、この世界は現実寄りなんだ。
だから、諦めてしまった。
足掻くことも、もがくことも。
前世の知識を生かして起業でもすれば、俺でも何者かに成れただろうか。いや、一般人の知っていた事など高が知れている。結局のところ、
だけど、主人公ではなくたって運命的な出会いってものはあるものだ。だって此処は、ゲームの中なのだから。
未だ慣れぬ教室の一角。窓外には桜舞う景色。数人の女生徒の中の一人に彼女はいた。一目見て判ったのだ。あのキャラクターだって。それほどまでに有名だったのだ。
前世において人気を得ていた恋愛ゲームの一キャラクター。本編をプレイしたことは無かったけれど、二次創作を幾度も目にしたのを覚えている。
石竹色の髪をボブカットにした少女。とろんと落ちた群青色の瞳に、泣きぼくろをチャームポイントにした魔性の顔貌。男を惑わせる雰囲気に自然と目を奪われる。
中学一年生。十二歳という歳だったが、ゲーム内での高校生の姿の面影を確かに感じる。二次創作で見たような、起伏に富んだ体つきではないけれど、まだ成長の余地はあるように思えた。三年もあれば俺の知っている彼女になるだろう。
だから俺は、彼女が双城 舞陰なのだと確信したのだ。
「なぁ、お前ら何してるんだ?」
双城 舞陰といえばイチャイチャ甘々のシナリオ。胸が大きい子がヒロインだと聞き及んでいたし、事実イラストで目にした彼女は胸がデカかった。
だから、未プレイの俺でも知っている。双城 舞陰といえばイチャイチャ甘々なのだと。
そんな彼女が女子数人に囲まれて、なにやら言い立てられていた。俺はそれを制止する。
「誰よアンタ」
「その子、嫌がってるだろ」
虐めを止める。一見すると、勇気ある行動だった。打算が無かったわけではない。それどころか、下心すらあった。
お手軽にヒーローになれて、ヒロインの好感度を上げられるチャンス。何者にも成れなかった俺が、何者かになれる好機だったのだから。
「中学生にもなって、寄って集って一人を虐めるなんて、お前らダセーよ」
側から見れば、勘違い野郎に映ったかもしれない。お前如きが、思い上がりも甚だしいって嘲笑されるかもしれない。
それでも俺は構いやしなかった。だって、風の噂によると、双城 舞陰以外のもう一人の攻略ヒロインは、ヤンヤンデレデレな血で血を洗うナイトメアモードだと言うのだから。
誰だって、鉄臭い液体よりも甘々がいい。喉が焼けるくらいの甘美な生活を切望していた。
「アンタ何も解ってない! コイツはね……!」
「ちょっと、やめなって……」
「でも……」
俺に反論しようとした女子が、友人によって止められる。何か言い返した気な、釣り上がった瞳が印象的だった。噤んだ口から、どんな罵詈雑言が溢れ出そうが、痛くも痒くもないと思った。去って行く集団に、内心で「ざまぁみろ」と言い捨てる。
「えぇと……大丈夫だったか?」
彼女に手を差し伸べる。比喩的な意味で。それは王子様気取りみたいに、魅力的に演出的に。出会いは出来れば、ドラマチックなものが良いと思ったから、自分にできる精一杯の優しい表情を浮かべては彼女に語りかけた。
「救けて、くれたの……?」
「そうなるのかな?」
身長差故の上目遣いに、何だか気恥ずかしくなって目を逸らした。メインヒロインって凄い。こんなにも心を奪われる。どうしてか、うぶな少年みたいにドギマギしてしまう。
「……ありがとうございます」
「いやなに、見てて気持ちの良いものでもなかったしな」
実際、たとえ虐めの対象が彼女でなくとも、俺は一声くらい掛けていただろう。どんなに相手が集団であろうと、所詮は精神年齢が下の未だ尻の青い少女達だ。仮に、その行動によって今後の生活がどんよりと暗いものとなったとて、一人ひとり
けれど、今回は相手が双城 舞陰だったからこそ、なぁなぁにする事は決してなかったのだ。
「名前……私の名前は双城 舞陰です。貴方の名前を聞かせてもらってもいいですか……?」
「俺は弟月 優伍だ。よろしく、双城さん」
俺は呑気に考える。
本来なら、こういう場面でプレイヤーネームを入力したりするのだろうか。そもそも、この世界にも主人公ってやつがいるのだろうか……って。
「これから一年よろしくお願いしますね、優伍くん。後、私のことは舞陰で構いませんよ? 優伍くんとは、もぉーっと親密な関係を築いていきたいですから……」
「あ、あぁ……」
ぶるり、と身が震える。舞陰はその細めた眼差しから確かに俺を見ていた。彼女の瞳に見つめられると、ぞくぞくと躰が戦慄き始めるのはどうしてか。蛇に睨まれた蛙の如く、心を射抜かれたような気さえしたのだった。
***
あの出会いから、舞陰とは数多の時間を共にした。
元々話し相手があまり多くなかった俺は、彼女の方から会話のために足を運んでくれるのが嬉しくて、ついつい彼女以外と話す回数が少なくなっていった。それ故に、次第に周りとの距離は離れていったが、それも仕方のないことのように思えたのだ。
だって、双城 舞陰という少女と過ごす時間はあまりにも陶酔感で満たされるものだったのだから。
初めこそ、歩幅の合わなかった会話や歩みさえ、今や二人三脚みたいに自然なものとなっていた。
それもこれも、彼女自身のスキルだと言っても過言ではない。
双城 舞陰という少女は、規格外の人心掌握術を持っていたのだ。それも、きっと本人の自覚無しで。
「優伍くん、今他の女の子を見てませんでしたか……?」
彼女は時に咎めるような顔をして。
「優伍くん、優伍くん! 見てください! ネコさんですよ! ……あぁ、雌猫ですね。優伍くんは絶対に撫でないでくださいね?」
彼女は時に猫にさえ嫉妬して。
「優伍くん、今日は何の日か知っていますか? そう。バレンタインです。チョコ……貰ってくれますか? えぇ、よく気づきましたね。手作りなんです。なので、少し手を加えました。
彼女は時に恥じらいを冗談で誤魔化しながら。
そんなこんなで、あっという間に出会ってから二年の時が過ぎたのだった。
なんだか最近の彼女はその……ちょっと……あれだな、なんて思いを僅かに有して。
***
時季は三年の梅雨時だった。連日降り頻る大雨や、分厚い暗雲が気分を憂鬱にさせる。なによりも、今年が受験生。定期テスト前のピリついた空気感は、俺の胃をキリキリと刺激していた。
二年経っても、俺は勉強が得意にならなかった。
それどころか、苦手意識は募るばかりであった。どんどんと薄れていく前世で培った知識と、物覚えの悪い今世の頭は入る量よりも出る量の方が多かったのだ。
俺の様子を見てか、舞陰が懇切丁寧に指導してくれる事もあったが、こればかりは頼り切りではいけないような気がしていた。なによりも、今後とも彼女の隣を歩いていくために。
「優伍くん、今日は私の家でテスト勉強をしませんか?」
「舞陰の家で……?」
初めての誘いだった。彼女とは、放課後や休日に遊びに出掛ける事も多くなっていたけれど、家に招かれるのは今日が初だったのだ。
「いいのか?」
「はい。今日は図書館も休館みたいですし、テストまで残り日数も少なくなってきてますからね」
「そりゃ、こっちとしては有り難い話だけど……今まで家に行った事、無かったよな?」
「そうでしたか? まぁ、今日は誰も家族がいないらしいので、ね……?」
舞陰は瞳を三日月にして、どこか扇情的にそう言って退けた。中学三年生が醸し出して良いような雰囲気ではなくて、気を抜けば情欲のままに行動してしまいそうな、一種の催眠術だった。
俺は、これではいけないと頭を振って邪念を払い落とす。
このような馬鹿に呑まれて、過ちを犯してはならない。彼女には嫌われたくない、今では心からそう思えていたから──。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
***
放課後、二人で傘を差して並んで歩いた。ぽつりぽつりと音を立てて振り落ちる雨粒は、まるで俺を急かしているみたいだった。
「ここです」
舞陰が立ち止まったのは、一軒家としては少し大きい住宅だった。俺は思えば、彼女の家族構成なんて知りもしなかった。だから、此処に何人で住んでいるのかさえ判らない。それでも、六人家族くらいなら手狭になることは無いように見えた。
「どうぞ、上がってください」
「お、お邪魔します……」
女の子の家に入る経験は無かった。なので、それはもう緊張してならない。
速すぎる鼓動を抑えつけるために、三和土の上で下を向くと、一足の靴が目に入った。
揃えられたレディースのスニーカー。これだけなら、舞陰の私物だと思っただろう。けれど、それは俺達の物と同じようにぐっしょりと濡れており、まるで
「なんだ、家族帰ってきてたみたいだな」
「あっ……」
デザインやサイズ感から、舞陰の姉か妹の物であると推測する。彼女に姉妹がいただなんて、初耳だったから少し驚いたが、これで良かったとも思った。家に他の人が居るなら、そうそう過ちなど犯すまい、と。
「挨拶させてくれないか? 舞陰の家族なわけだし一言くらい」
「──そんなの必要ないですよ」
彼女はニコリと言い捨てた。
「いや、でも……」
「舞陰、帰って来てるの?」
人を溶かしてしまうくらいの甘い声がした。そうして廊下の奥から、人が歩いてやって来る。暗闇になっており、此方からは辛うじて全体像を把握できる程度だ。しかし、近付いてくるにつれて、姿が明らかになる。
出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込む、起伏に富んだ躰。焼きたての甘菓子みたいな心が穏やかになる匂い。
舞陰のものと似ているけれど、確かに違いの感じ取れる撫子色の髪色に、長いロングヘアーの髪型。柘榴色の瞳が優しく輝いており、見つめていれば取り込まれてしまいそうになる。
「もしかして、舞陰のお友達? 初めまして、舞陰の双子の姉の
あっ、やっべ。
僕は乳は盛れるだけ盛れ派です。対戦よろしくお願いします。
好評なら続けます。