“……我々は望む、七つの嘆きを。”
“……我々は覚えている、ジェリコの古則を。”
…接続完了。
「シッテムの箱」へようこそ、スペリオル先生。
……私のミスでした。
私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。
結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……。
……今更図々しいですが、お願いします。
Sスペリオルガンダム先生…いえ、スペリオル先生。
きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。
何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……。
ですから……大事なのは経験ではなく、選択。
あなたにしかできない選択の数々。
責任を負う者について、話したことが有りましたね。
あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。
大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。
それが意味する心延えも。
……。
ですから、先生。
私が信じられる大人である、あなたになら、この捻れて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。
そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。
だから先生、どうか……。
……い。
……先生、起きてください。
スペリオル先生!!
“……起動完了。各種システムに異常なし。オールグリーン。”
「……。」
“……?”
「少々待ってくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。中々起きないほどに熟睡されるとは。」
(…さっきのは…夢…だったのか?)
「……夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください。
もう一度、あらためて今の状況をお伝えします。」
「私は七神なながみリン、学園都市「キヴォトス」連邦生徒会所属の幹部です。」
(七神リン…)
「そしてあなたはおそらく、私たちがここに呼び出した先生……のようですが。」
(?)
「……ああ。推測形でお話したんもは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです。」
「……あなたのようなロボットの方は今までここでは見たこともありませんから。」
(あれ、結構不審がられてる?)
「……。」
「混乱されていますよね。分かります。
こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください。」
「どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります。」
「……。」
「学園都市の命運をかけた大事なこと……ということにしておきましょう。」
(突拍子もない話だが……切羽詰ってる雰囲気が感じ取られる。冗談というわけではなさそうだ。)
(とりあえず、ついていくか。)
そのままリンについていき、エレベーターに乗り込んだ。…頭頂部が入口に当たりそうでヒヤヒヤしたが。
ウィィィィィィィン
エレベーターが下がっていく音と共に外の光景が目に入る。
「「キヴォトス」へようこそ。先生。」
巨大なビル群。川。いかにも大都会という風景が広がっていた。
(これが…キヴォトス。…箱舟というネーミングにしては…大き過ぎる気もするが。)
「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。」
「きっと先生がいらっしゃってところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが…。
「でも先生なら、それほど心配しなくてもいいでしょう。あの生徒会長が、お選びになった方ですからね。」
「それに…中々強そうな見た目ですし。」
“褒めてるのか?それ?”
「…それは後でゆっくり説明することにして。」
(はぐらかされた…)
他愛もない会話をよそに、エレベーターはチンっという小気味よい音と共に到着した。
……そこでは何人もの生徒がざわざわと騒ぎながら集まっていた。
そこにいた紫髪のツインテールの生徒がこっちを見つけて駆け寄ってきた。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」
「……うん?隣の大人の方は?」
次に背丈が高い黒髪ロングの生徒が口を開く。
「首席行政官。お待ちしておりました。」
次にメガネの生徒が…
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
「あぁ…面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」
“すっげぇ嫌な顔してる…”
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員長、その他時間を持て余している皆さん。」
「こんな暇そ…大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています。」
(今暇そうって言いかけたぞ…)
「今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために…でしょう?」
そう答えたリンの顔は正直怖かった。
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」
「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました。」
(不穏なワード飛び出したな。連邦矯正局…?)
「スケバンのような不良たちが、投稿中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」
「戦車やヘリコプターなど、出所が分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」
“今2000%って言った?”
「先生は少し黙っててください。」
“…。”
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
(さっきから何度も呼ばれている連邦生徒会長…俺を先生とやらに選んだのも連邦生徒会長と言っていたが…)
「……。」
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました。」
「…え!?」
「…!!」
「やっぱりあの噂は…。」
「結論から言うと「サンクトゥムタワー」の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
「認証を迂回できる方法を探していましたが…先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでいした」
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」
「はい。この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」
「!?」
「!」
「この方が?」
“えっ俺ぇ?”
「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」
「キヴォトスではないところから来た方のようですが…先生だったのですね。」
「はい。こちらのスペリオル先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名…?ますますこんがらがってきたじゃないの…。」
“こんにちは、生徒のみなさん。”
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの…。い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて…!」
「そのうるさい方はきにしなくていいです。続けますと…。」
「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください、先生!」
“よろしく。”
「…先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」
連邦捜査部「シャーレ」。
「単なる部活ではなく、一種の超法規的規約機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です。」
「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが…。」
「シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何も無い建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に「とある物」を持ち込んでいます。」
「先生を、そこにお連れしなければなりません。」
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要ななんだけど…」
リンが通信でモモカと呼ばれた生徒に要請する。
(この生徒も連邦生徒会の幹部か。)
「シャーレの部室?…ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?」
「大騒ぎ…?」
“…嫌な予感してきたな”
「矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。」
「…うん?」
「連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいよ?」
「それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?」
「…。」
“マジかよ…。”
「まぁでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な…あっ先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!」
(ブツッ)
そう言って通信は切れた。
(プルプル)…。
“…大丈夫か?”
「…だ、大丈夫です。…少々問題が発生しましたが、大したことではありません。」
(少々ではないだろ…)
じー
「…?」
「な、何?どうして私たちを見つめてるの?」
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」
「…えっ?」
(ここの生徒が全員巻き込む気だ…)
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実にお必要です。行きましょう。」
「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!?」
…to be continued?