(完結)高坂麗奈の幼馴染みで車椅子生活のオーボエ奏者が吹奏楽部に入部して活動する話 作:春はる
前回から約1ヶ月ぶりと遅くなりましたが、続きです。
では、本編をどうぞ。
〜音楽室〜
〜蓮視点〜
合宿が終わり、関西大会まであと10日を切った今日。
今は、練習前に松本先生から"関西大会の順番が決まった"と言われた。
先生の言葉に皆はザワザワとなったが、"静かにしろ"と一喝されて静かになった。
松本「北宇治高校は16番目の演奏となる」
蓮(23番中16番目)
「あの〜、他の高校は……?」
と、部員の一人が質問すると、松本先生の目が鋭くなった。
蓮(……先生、睨むと怖い)
松本先生の睨みにそう思ってると、滝先生が主な強豪校として、大阪東照は前半の3番目、秀大付属は12番目、全国常連校の明静工科が15番目という事を教えてくれた。
「明静の次なんて……!」
強豪校の名前ばかりで、皆は動揺して声を上げていた。
橋本「なにー?強豪の次だからってビビってんの?」
「そりゃー、ねー?」
「うん…」
橋本「関係ない関係ない。関西大会なんてどこも強豪校なんだから」
滝「橋本先生の言う通りです。気にすることはありません。私達はいつもと同じように演奏するだけです」
滝先生の言葉に動揺していた皆は、一旦静かになってから"はい!"と返事をして、全体の話は終了となりパート練習を行うことになった。
鎧塚先輩にも声をかけようとした時に、新山先生が"鎧塚さん"と声を掛けてやってきた。
新山「今いい?」
みぞれ「あ、はい」
蓮「……先生、俺は移動しますね〜……」
新山「あ、待って。西原くんのにも話をしときたい事があるから、少し待っててくれる?」
先生にそう言われた俺は"あ、はい"と返事をして、返事を聞いた先生は先輩に向き直った。
新山「私、あなたにちゃんと謝っておこうと思って。正直に言うとね、あなたのソロを聴いた時、私も物足りないと感じたの」
みぞれ「……」
新山「なのに、高校生だから十分、表現力がいい西原くんがいるから十分って、私はあなたの可能性の上限を決めつけていた。ごめんなさい。失礼なことをしてしまったなって」
新山先生は、そこで言葉を切ってから言葉を続けた。
新山「……あなたの技術は素晴らしいわ。でも何故だが聴いてると苦しくなる。もっと楽しんでいいのよ」
みぞれ「……はい」
新山「西原くんは、少し廊下で話……いいかしら?」
蓮「は、はい」
と、返事をすると先生は廊下に向かったので、俺も付いていった。
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〜廊下〜
蓮「えっと、話ってなんですか?……俺も鎧塚先輩と同じく指摘とかそんな感じのですか?」
先生のあとを付いていって廊下に出た俺は、そう質問したら先生は横に顔を振った。
新山「ううん。西原くんの場合は、表現力も十分過ぎるぐらいだし、演奏技術に関しても問題ない状態になってる。ひとまず、今のままを維持しつつながら、上手くなってくれたらいいわ」
蓮「あ、はい。……なら、なんで廊下に出て話なんですか?」
新山「鎧塚さんの事なんだけどね。……君も鎧塚さんの演奏を聴いてて苦しく感じたとか、勿体ないとか何かしら感じなかった?」
蓮「それは、まぁ……一緒に練習してるので表現力は気にはなってましたよ。演奏技術は凄いので自然と尊敬してたしソロに選ばれるのも納得はしてましたし」
新山「……表現力、自分の感情を乗せるのが苦手とかはあったりするけれど、自由に吹くのも含めて表現する何かを欠けてる様な気がするの。……その辺りの話、聞いたりしてる?」
先生は、演奏に関しての事も含めた鎧塚先輩の事を心配して俺に話をしてきたと理解したけど、俺は何も聞いてない。
蓮「いや、何も聞いてないです。……えっと、一つ質問ですけど、先生は俺が中学の時に経験した出来事を聞いてます?」
新山「え、えぇ、滝くんから聞いたわ」
蓮「南聖中の事、ホイホイ言える話じゃないですよね」
という事を、滝先生から聞いたと教えてくれた新山先生の言葉に、俺が聞くと先生は頷いた。
蓮「そんな感じで、鎧塚先輩にもそう簡単に人に言えない、言いづらいのもあるかもって思って何も聞いてないんですよ、俺は」
新山「だから、何も聞いてないのね」
先生の言葉に俺は頷いた。
蓮「一応、過去に部内で何が起きたかはある程度聞いてはいますけど、鎧塚先輩の事は何もって感じです。あと、人と話すのも苦手なのかなって思って、あまり話しかけるのも少ないのもありますけど」
新山「そう……ありがとう、教えてくれて。……パート練、頑張ってね」
先生はそう言ってから今日教えるパートへ向かっていった。
先生が見えなくなってから俺も音楽室に戻り、鎧塚先輩といつもパート練習している場所へ向かった。
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〜パート練習中〜
パート練している場所で、鎧塚先輩と一緒に練習をしていた時だった。
「なんか久しぶりだね、みぞれ」
先輩の名前を呼ぶ声がしたから、声の方を向くとポニテの女子がいた。
鎧塚先輩も顔を向けてから数秒した瞬間に、椅子にオーボエを置いて走り出した。
蓮「先輩!?」
走り出してしまった事に驚いてると、すぐ隣で吉川先輩がポニテ女子の腕を掴んでいた。
優子「やめて……!」
希美「優子?」
夏紀「ちょっと!希美が何をしたっていうの!?」
優子「何もしてない、だから怒ってるの!」
夏紀「はぁ!?」
中川先輩も含めて言い合っていたが、すぐに吉川先輩か俺の方を見てきた。
優子「西原、訳ありとか言って介入させなかったけど、みぞれを探すの手伝って!今、知らない人が探すより知ってる人の方が良いから!」
蓮「わ、分かりました。流石に同じパートで同じ楽器で一緒にやってきたから心配なので。……因みに、あのポニテ女子の名前だけでも聞いてもいいですか?」
優子「希美……傘木希美で、私や夏紀、みぞれと同じ2年。なんとなく聞いてはいると思うけど、希美は2年生大量退部で辞めた1人。とにかく今はそれだけでもいい?」
蓮「はい。とにかく探しますね」
吉川先輩の言葉にそう答えた後に、吉川先輩は近くにいた久美子にも声をかけていた。
向かっていった方を確認して、行った階を探し回った。
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〜教室〜
先輩を探しまって、とある教室に入った時にうずくまってる鎧塚先輩を見つけた。
蓮「鎧塚先輩」
みぞれ「……」
声を掛けると、鎧塚先輩は何も言わずに俺の方を見た。
蓮「今まで深く話を聞かなかったので、よく分からないんですけど、あの話しかけてきた人って吉川先輩と話をしていた希美って人ですか?2年生の傘木希美って人……」
みぞれ「……うん」
蓮「逃げる形で走って行ってましたけど、傘木先輩と喧嘩とかして仲悪くなって会いたくないとかですか?」
みぞれ「ううん、違う」
久美子「……じゃあ、希美先輩の事が嫌いなんですか?」
いつの間にか隣に来ていた久美子が先輩に聞いた。
みぞれ「違う。嫌いじゃない、そうじゃない。……希美は悪くない。悪いのは全部私……私が希美に会うのが怖いから……」
先輩は、久美子の言葉にそう答えた。
蓮「……なんで怖いんですか?」
みぞれ「わかっちゃうから、現実を。…… 私にとって希美は特別で大切な友達」
蓮「傘木先輩とは、いつから友達なんですか?」
みぞれ「……中学の時なんだ。……私、人が苦手で性格暗いから友達できなくて一人だった。希美はそんな私に声をかけてきてくれて仲良くしてくれた」
蓮「……吹奏楽部に入った理由は?」
みぞれ「希美が誘ってくれたから、吹奏楽部にも入った。 嬉しかったし、毎日が楽しかった。でも、希美にとってたくさんいる友達の一人だった。だから部活辞めるのだって知らなかった」
蓮「そうなんですか?」
みぞれ「私だけ知らなかった。相談一つないんだって、 私はそんな存在なんだって、知るのが怖かった」
久美子「じゃあ、なんで吹奏楽部にずっといるんですか?」
みぞれ「わからない。どうして吹奏楽部にいるのかわからない。」
久美子「楽器を続けてるのは、なんでですか?」
みぞれ「……楽器だけが、楽器だけが、私と希美を繋ぐものだから」
先輩の話を聞いて、大雑把で簡単に"鎧塚先輩にとって特別だと思っていた友達の傘木先輩に裏切られたという出来事がトラウマになった"と、自分の中でまとめた。
蓮(けど、特別な友達から誘われた友達との唯一の接点の吹奏楽と楽器を辞める、手放したら今度こそ繋がりが無くなるって事でずっと続けていた感じ)
そんな風にも考えた俺は、"なんか拗れてるというかすれ違ってるような感じがする"と思った。
蓮(なんとなくだけど、多くいる友達扱いなら傘木先輩本人は鎧塚先輩に声をかけたりしなさそうな気がするな)
そう思った俺は、鎧塚先輩の答えに久美子は驚いているのを横目に見ながら、鎧塚先輩に声をかけた。
蓮「あの、鎧塚先輩」
みぞれ「……なに?」
蓮「俺のなんとなく思った勝手な考えなんですけど、その傘木先輩は鎧塚先輩の事を多くいる友達の一人とは思ってなさそうな気がするんです」
久美子(……え?)
みぞれ「……なんでそう思うの?」
蓮「まず、傘木先輩が鎧塚先輩の事を友達の一人と思ってるなら、わざわざ声をかけるのかなって疑問に思って。それに先輩が走った時に"なんで?"って感じの顔になって、追いかけようとしてました」
みぞれ「……だから、多くいる友達の一人じゃないって事?」
蓮「はい。……って言っても、絶対な根拠みたいなのも無くて、話とか皆の様子をとかを見てなんとなく思った事を言った感じなんですけどね」
俺が先輩にそう言ったタイミングで、吉川先輩が教室に入ってきて鎧塚先輩の目の前にやってきた。
優子「みぞれ、何やってんのよ、心配かけて。 ……まだ、希美と話すの怖い?」
吉川先輩の言葉に、鎧塚先輩は頷いてから口を開いた。
みぞれ「私には希美しかいない。だから拒絶されたら……」
優子「……なんでそんなこと言うの!?そしたら、私はみぞれにとってなんなの!?」
みぞれ「優子は、私がかわいそうだから優しくしてくれた。同情してくれた」
優子「馬鹿!あんたマジで馬鹿じゃないの!私でも流石に怒るよ! 誰が好き好んで嫌いなやつと行動するのよ! 私がそんな器用なことできるわけじゃないでしょ!」
蓮「……吉川先輩は、鎧塚先輩の事を大事な友達だって言ってたので、同情で仲良くしてたとかは無いですよ」
優子「西原の言う通り、私はみぞれは大事な友達だと思ってんのよ!みぞれは、私の事を友達と思ってなかったわけ!?」
吉川先輩はそう言ってからしばらく鎧塚先輩に話す暇を与えずに、自分の気持ちを伝え始めた。
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吉川先輩の言葉に鎧塚先輩も自分の気持ちを伝えたりしていき、2人の話が終わる辺りで傘木先輩が入ってきた。
鎧塚先輩は傘木先輩に部活を辞めた理由とか、傘木先輩自身の気持ちとかを聞いたりと話をしていたから、傘木先輩はオーボエを渡した。
希美「私さ、中学の時からみぞれのオーボエ、好きだったんだよ。なんかさ、キューンっとしてさ!……聴きたいな、みぞれのオーボエ」
みぞれ「うん、私も聞いてほしい」
その会話の後、鎧塚先輩は教室で演奏を始めたから2人以外の俺を含めたメンバーは廊下に出た。
久美子「凄い綺麗な音……」
優子「……結局、みぞれの演奏はずっと希美の為にあったんだね。希美には勝てないんだなぁ。一年も一緒にいたのに」
夏紀「そんなの当然でしょ。希美ってあんたの100倍いい子だし」
優子「そうね。あんたの500倍いい子」
夏紀「でもさ、みぞれにはあんたが居て良かったって思うよ」
優子 「もしかして、慰めてくれてる?」
中川先輩の言葉に吉川先輩がからかってから、じゃれ合う感じの喧嘩をしながら走って、どっかに行って居なくなった。
蓮「(……仲良し)……なかよし川……」
久美子「……なにそれ」
蓮「……ううん、なんでもない。それにしても、鎧塚先輩の音は良くなったよね」
久美子「うん、綺麗な音」
蓮「ただでさえ演奏技術で尊敬してたけど、ここまでになるとますます尊敬するよ。凄いよね、鎧塚先輩は」
久美子「蓮でも、凄いって思ってるんだ」
蓮「そりゃそうだよ。元々、演奏技術は高かったし自然と目標にしてた部分もあるけど、それがあんな風になると尊敬しないとかにならないでしょ」
久美子「そっか」
蓮「うん。……じゃあ、そろそろ帰るよ」
久美子にそう声をかけて、"あ、うん"と久美子からの返事を聞いた俺はパート練をしていた場所に戻った。
練習場所で自分のオーボエを片付けてから、練習で自分が使ってた部活の備品も片付けようと時に足音が聞こえた。
足音がした方を見ると、鎧塚先輩と傘木先輩だった。
みぞれ「……西原くん、片付け?」
蓮「あ、はい。今日はもう帰ろうと思ったので」
鎧塚先輩の言葉に、そう答えると先輩は静かになって少ししてから口を開いた。
みぞれ「……手伝う。私も、希美とこれから帰るから」
蓮「あ、ありがとうございます」
先輩の言葉に、お礼を伝えて傘木先輩を含めた3人で片付けを始めた。
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〜下校中〜
片付けを終わらせた後、途中まで先輩2人と一緒に帰る事になった。
希美「ねぇ、君もみぞれと同じオーボエなんだよね。一緒に練習してたし」
蓮「あ、はい」
希美「名前は?」
蓮「西原蓮です」
希美「て事は、君が南聖中の子だよね」
蓮「知ってるんですか?」
希美「あすか先輩達が話してたのを、チラって聞いただけなんだけどね」
先輩の言葉に、"あ、そうなんですね"と自然と答えていた。
希美「オーボエは、いつからやってたの?」
蓮「しっかりやり始めたのは中3の途中からですけど、元々は小学生から趣味程度にやってました」
希美「他に楽器やってたの?」
蓮「あ、コンバスをやってました。コンバスも小学生からです」
と先輩の質問に答えてから、なんで今オーボエをやってる理由と中学の出来事を教えた。
希美「そんなひどい事があったんだね。そりゃ南聖中の吹部は活動休止になるよ」
みぞれ「……でも希美、西原くんは凄い」
希美「ん?」
みぞれ「その酷い事を受けたのに、今はオーボエも練習もコンクールも練習も頑張ってるし、楽しんでて凄いと思った」
希美「そうだね、凄いね。流石にその出来事を私が経験したら音楽をやりたくないって思うかも」
みぞれ「私もそう思う。……だから、凄い」
希美「うん。ホント、西原は凄いよ」
そんな事を言ってきた2人に少し恥ずかしさを覚えたけど、中学の話以外にもいろいろとと話をしながら、途中まで帰っていた。
希美「じゃあ、私達はこっちだから」
みぞれ「……また明日」
蓮「あ、はい。また明日です」
2人の言葉にそう返して、俺も駅へ向かい家へと帰った。
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〜下駄箱〜
〜久美子視点〜
蓮と別れたあとに、低音パートの練習で使っている教室に荷物を取りに行った時に、あすか先輩に会い話をした。
その時に聞いたあすか先輩の言葉に、私は……何が本音で何が建前なのかと、その境目はあまりにも曖昧でこの人には一体何が見えているのか、それを考えるのが少し怖かった。
そんな感情を抱いた私は、あすか先輩と話をしている時に私を呼びに来た麗奈と共に下駄箱にいた。
あすか先輩で思った事を気にしつつも頭の片隅に追いやってから、鎧塚先輩の件で麗奈に聞きたいと思った事を聞いてみた。
久美子「……ねぇ、麗奈は誰かのために吹いてるとか、そういうのある?」
麗奈「……強いて言うなら、自分のためかな。……あと、蓮に負けたくないから吹いてるとかの理由もあるかも」
久美子「……麗奈って、マジ麗奈だよね」
と、麗奈の言葉に私は自然とそう言っていた。
麗奈「なにそれ……からかってる?」
久美子「全然!」
と、麗奈の言葉にそう答えた。
久美子(自分の為っていう答え、練習も本番も吹奏楽にストイックな麗奈らしいけど、蓮に負けたくないってのも麗奈らしいな)
そんな事を思いながら、私は麗奈と一緒に帰った。
年内の投稿は、今回で最後で次回は年明けです。
次回は期間が開くと思いますが、アニメ5話の内容、コンクール関西大会を軸に書いて投稿します。