2024年 11月7日
「七尾さん! 例の患者さんたちが目を覚ましたって!」
そう、先輩の看護師に言われて、私は自分が職場にいることも忘れて走り出していた。
動悸が激しい。それに併せて呼吸が荒くなる。
一階のナースステーションから三階にある彼の個人病室までの決して長くない距離が、今だけはとても、とても長く感じる。
辿り着くまでの時間さえもどかしい。
そして漸く、彼の病室の前に辿り着く。実際には一分も掛かっていないけれど、すごく長い時間走っていたように感じた。
両手を胸の上に置いて、ゆっくりと深呼吸をする。
何回か繰り返して、呼吸を落ち着かせたところで、ドアの取っ手に手をかけた。
もし、彼は目覚めてなかったら……そんな不安に駆られるが、そんなことはないと思い直して、ドアを開ける。
ああ、ほら。やっぱり、そんな不安なんて必要なかった
ナーヴギアを外して、ベッドの上で体を起こしていた彼は、冬に差し掛かり、決して強くはなくなった窓から漏れる日の光を、それでも眩しそうに見ていた。
そして、こちらに気が付いた彼が緩慢な動きで、私のことを見て――
「……ただいま、志乃」
ぎこちなく微笑みながら、そう言った。弱々しい声だったけど、そう言ってくれた。
それでもう、限界だった。
もう、堪えなくてもいいよね……? 抑えなくてもいいよね……?
言いたいことも、聞きたいこともたくさんある。けれど、今はこう言うのだ。
この二年間、一度たりとも流すことのなかった涙を流して。
それでも、心からの笑顔を浮かべて。
「……お帰りなさい……亮」
SAO//G.U. Vol.1 《剣界包囲》 完
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まずは、この拙作の第一章終了まで読んでいただきありがとうございました。
エピローグの文字数が1000字まで行かなかったので、この後書きが本文にくっついてしまっていますが、悪しからず。というか許してくださいお願いします。
最終話前書きでも言いましたが、大変長く間が空いてしまってすみませんでした。
三か月もの間待って下さった読者の皆さんには感謝感激雨霰です。
バイトやら、サークルやらその他諸々に時間を取られ、気付けばこんなことに…………面目次第もないです<(_ _)>
と、とりあえず遅れた言い訳はこの辺で。
さて、今までにない最大のボリュームでお送りさせていただいた(単に詰め込んだとも言う)最終話でしたがいかがだったでしょうか。原作の大筋をなぞった形で、ところどころオリジナルを織り交ぜております。賛否両論あるでしょうが、こういう形で落ち着きました。
また、次回はVol.2の予告から入るつもりです。近日中に公開します。
次に、更新速度についてですが、今回ほどではないものの遅くなると思われます。具体的には一月一話ペースでの更新を目指します。勿論、それより早く上げられるように努力はしますが。
最後に、ここまで読んでいただいた読者の皆様に、もう一度感謝を。ありがとうございます。
それでは、また次回に ペコリ
ご意見・ご感想は随時募集していますので、どしどし、送ってください