SAO//G.U.  黒の剣士と死の恐怖   作:夜仙允鳴

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結局、九月中には投稿できなかった…………


Vol.2 魂魄萌芽
prologue


2024年 11月

 

 

「…………暇だ」

 

「仕方ないだろ? 二年間もぐーすか寝てたんだ。最低限の体力もない状態で出来ることなんかほとんどないだろ。てか、人が態々見舞いに来てやったのに顔見て言うことがそれか?」

 

「んなこと判ってるっての。つーか聞き飽きた。それでも暇なモンは暇なんだよ」

 

「ったく……気を利かせて持ってきてやったそこの本の山をさっさと消化しといて何言ってんのかね?」

 

「だから暇なんじゃねぇか……PCでも有りゃもう少しマシなんだけどな」

 

「はぁ……お前も懲りないね、全く。あんな目に合っといて」

 

「今更だろ」

 

「まぁな。それよりどうなんだよ、体の方は。あれ全部読み終われるくらいには回復してるんだろうが……」

 

「二、三日前から普通の飯は食えるようにはなった。それで体力がある程度戻ったらあとはリハビリで筋肉を日常生活レベルに戻すのに一月くらいだとよ。ま、リハビリの期間は個人差が出るらしいからそれ次第らしいけどな」

 

「なるほど。ま、よかったじゃないか。意外に早く退院できそうで」

 

「あぁ、リハビリのこと考えると憂鬱どころじゃねぇけどな」

 

「切実だねぇ……ま、頑張れ青年」

 

「……その発言は自分はもう青年じゃなくてオッサンだって認めてるってことだな、判った」

 

「なっ!? お、お前なぁ!」

 

 

 

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先ほど迄見舞いに来ていた友人、智成が帰ってから、再び暇になった俺は眠ることもなくベッドに横になっていた。

 

鉄の城に囚われていた俺たち未帰還者が多大な犠牲の下、現実に帰還してから二週間と少し。

目覚めて数日は身体を起こすのもやっとな程に衰弱しきっていて殆ど横になったままだったが、智成にも言った通り今は多少マシになっている。

ただ、回復したは良いものの、これもさっき言ったがとにかく暇でしょうがない。

数日前に智成が持ってきた本は一昨日までに読み切ってしまい、他に暇を潰すようなモノが何もない。

売店まで行けば雑誌くらいは有るだろうが、歩いて行けるほど回復しているならベッドに横になっている訳もなく。

萌や志乃に頼む、という方法もあるが、それでは仕事中の彼女達に申し訳ない。ただでさえ他にもいる患者を診ている中、仕事が終わった後や非番の日も顔を見せに来てくれている二人に迷惑をかけるのは流石に忍びない。

 

と、いうわけで……

 

「あぁ…………暇だ」

 

目が覚めてから、何か理由があるのか、多くの知り合いとはまだ顔を合わせていない。

誰でもいいから話し相手くらいは欲しいもんだ――

 

 

 

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――なんて思った数日前の俺をぶん殴ってやりたい。

いや、確かに話し相手が欲しいとは思った……思ったけどよ……

 

「……………………………………」

 

「ほら、亮さん。リンゴが剥けましたよ。あ~ん」

 

「あ、チョット千草! 抜け駆けは許さないよ!」

 

「ほらほら、智香? うかうかしてないで頑張んな?」

 

「さぁ、亮。僕の手で食べさせてあげよう。口を開けて?」

 

「いや、アンタが食わせたらマズイだろ、なんつーか絵面的によ。な、なんならアタシが食べさせてやっても……」

 

「薫様に食べさせてもらうなんて、そんなん認めへん! バカ亮如き、犬みたく皿に顔くっつけて食べとれば――」

 

「――っとぉ、ためだよ桜。おにいちゃんはまだ病み上がりなんだからっ……て、愛奈ちゃん?」

 

「伊織、はい、あーん。たぶん美味しいよ?」

 

「それ、一応、亮のためのものだと思うんだけど……言っても無駄ね」

 

「まったく、相変わらず羨ましい奴だな、お前は……」

 

「良いんですか、智成さん? 舞さんの前でそんなこと言って」

 

「何時まで経っても、智成さんは変わらないねぇ。舞さんに怒られるぞぅ?」

 

「大丈夫、智成君は、一生私を愛してくれるから」

 

「ふむ、二人は相変わらずお熱いようだな」

 

「ふふふ、ええ、本当に。でも安心しました。思ったよりも三崎さんが元気そうで」

 

「そうっスね。ま、体の方は見る影もなく骨と皮になっちまってるがよ」

 

「……………………」

 

「あ……アハハ、ハハ。す、すごいですね、みんな。亮の為に……?」

 

「う、うん、そうだね。ちょっと、多い気もするけど……ね」

 

千草、智香、潤香、薫、ニナ、伊織と桜、愛奈、令子さん、智成、優一、孝太、舞さん、拓海、加賀さん、真吾、そして苦笑いを浮かべている萌と志乃。

ベッドに体を起こしている俺を含め、総勢十八人という大所帯が、決して広いとは言えない病室に所狭しと入り思い思いに好き勝手喋っている。

 

はっきり言おう。

 

多過ぎんだろ!? どう考えてもよ!!

 

確かに話し相手が欲しいとは思ったさ。だけど、この人数は一体なんだ。半分は静養のための入院のはずなのに、全く以て気が休まらねぇよ、これじゃあ。

 

折角目を覚ましたのに、現実逃避を理由に再び寝ちまいたくなった、とある冬の日ってやつだった。

 




という訳で、大変遅ればせながら第二章プロローグです。
プロローグとエピローグが異様に短いのは仕様ですので勘弁してください;
第一話はこの続きから。今月中に投稿しようと思っていますので、楽しみにしていただければ。
ではでは、また次回

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