SAO//G.U.  黒の剣士と死の恐怖   作:夜仙允鳴

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明けましておめでとうございました(遅すぎ


Fragment Q《咎人ノ名》

2025年 12月

 

 

「実際問題、《死銃》の奴はどうやってプレイヤーを殺してるんだと思う?」

 

ひょんなことから同行した栞里と一緒に朝田を家まで送り、何故か俺がGGOにアバターをコンバートしていることを知っていたその栞里とも別れ、件のビジネスホテルで智成と合流した後。ログインの準備――つってもそんな手間になるようなことは殆どないが――をしていると、智成がそう切り出した。

 

「常識的かつ科学的に考えたら、安全面が完璧に保障されてるアミュスフィアでのダイブ中に、衰弱死や突発的な病死以外の死因は有り得ない。そもそも、彼の悪名高きナーヴギアでさえ、殺し方は脳のレンチンだ。今回みたいな心臓発作じゃあない」

 

それは今ここに到るまで成されなかった話だ。

俺達がここまでしてきたのは、あくまで《死銃》のプレイヤーを特定し捕まえることで、更なる犯行を防ぐための対処療法でしかない。

仮想世界から現実の命を奪う《死銃》。その凶器(殺害方法)は、一体なんなのか。

かつてアインクラッドで起きた、《圏内》でのPK。あれは結局ただのトリックだったが、あの時キリトやアスナが殺害方法究明に奔走したように、それが判らなくては根本的な解決にはならない。

 

「実際には手も触れずに、ネットゲームという仮想現実を通して死を与える。まるで昔流行った漫画の、新世界の神になろうとした主人公の所業だ。ぶっちゃけ有り得んとしかいん」

 

「……常識的には、な」

 

そう、常識的には有り得ない。だが――

 

「……有り得ると、思うか?」

 

何が、とは智成は言わなかった。

だが、言われずとも判った。

 

常識を以て成せないのなら、科学を以て不可能なら、常識を、科学を棄てればいい。

無理を通して通りを引っ込ませるような、そんな荒唐無稽な非常識で非科学的な方法。

 

常識(リーガル)を超えた非常識(イリーガル)な力。

それを、(碑文使い)達は知っている。

何故なら、かつての己こそ、その非常識の体現者であったのだから。

何故なら、その非常識(憑神)を以て、仮想現実(The World)から現実に干渉する非常識(AIDA)と闘っていたのだから。

何故なら、今なおその残滓たるナニカを宿しているのだから。

 

「……絶対に有り得ねぇ、とは言えないだろ。俺達は」

 

「…………まぁ、な」

 

「事実、SAOでもALOでも、俺は《アイツ》の力を大なり小なり使えたし、桜がああいう形で存在してるのも碑文のおかげだろ。GGOも根本的な仕様が同じ《ザ・シード》を使ったVRMMOである以上、否定は出来無ぇよ」

 

それ故に、俺は、そして智成も、その可能性を否定しきれない。

 

「もちろん、そうだとも言えねぇがな。けど、なんとなく判んのは……」

 

「判るのは?」

 

「……多分、純然たる悪意によって行われてる、ってことだ。何かに無理やり引き出されたような、そんな感じがしねぇんだよ」

 

かつて、AIDAという未だにその詳細や発生源が判っていない未知の電脳ウィルスが引き起こした一連の事件。AIDAが行ったのは、あくまでも潜在的な願望の増幅だ。誰かを守りたい、厭なことから逃げ出したい、周囲に尊敬されたい、誰かに心配してほしい。そういった裡なる願望をAIDAによって強引に剥き出しにされて、感情を爆発させて暴走する。最終的に感情が暴走した時、そいつに真っ当な理性は存在しない。そうして引き起こされる《未帰還者》の発生というのは、言ってしまえばAIDAの持つ超常的な力の副次的なモノでしかなかった。

だが、《死銃》がしているのはそうじゃない。

現実から隔離された《アインクラッド》という閉鎖空間。たった一万人しかいない箱庭の中で非現実的な力を手にしたことで蒸留された殺人衝動とでもいうべき欲望。

箱庭から解き放たれてその果てなき欲望を向ける先を失った《奴》は、新たな箱庭と力を求め、そして手に入れた。

殺すために殺すという、感情を理性で肯定した上での行動。理性で以て行われる殺人。

 

「だからつって、何が判るわけでもねぇんだけどな」

 

「まぁな……取り敢えずは現実的に可能な方法を探るしかないだろうな。AIDAでも碑文でもない超常能力(イリーガル)じゃ、アッチ側で俺達に止められるかも判らんし、考えてもキリがない」

 

「だな。そもそも、ただ人を殺したいならリアルでやりゃいい。それを態々ネトゲを介してんのは何か理由があんだろうよ。その辺から考えてみるべきか」

 

いくら考えても答えの出ない問から脱却する為に、現実的な話題へシフトする。

幾ら自分がバカげた力(碑文)を使えるからっつっても、そうそうアッチコッチで出て来るもんでもねぇだろってのが正直な感想だしな。

真っ当な人間でも可能な方法を模索した方が余程建設的な思考だ。

 

「理由ねぇ……SAOで殺人ギルドにいたっていうんだから、ソレへの拘りとか?」

 

「それも一つだろうな。でなきゃあんな凝った舞台紛いの演出なんてしねぇだろうし。けど、それなら別にGGOじゃなくたって良い筈だ」

 

「殺す場所がGGOじゃなくちゃいけなかった理由……」

 

互いにアレコレと思いついたことを言ってみるが、どれも的を射ない……というか、コレだと確信を持てないものばかり。

それでも非常に時は過ぎ去り、気付けばキリトと合流のために取り決めた時間まであと僅かだ。

結局判らずじまいだが、一旦ダイブするしかない。

 

「しゃーない、続きはアッチで考えますか」

 

「だな。キリトも交えて考えりゃ、なんか思いつくかもしれねぇし」

 

「三人寄れば文殊の知恵、ってな。可愛い顔した少年の若い発想力に期待しましょうかね」

 

肩を竦めながら頷く智成。

なまじ思考が凝り固まってくる成人よりも、未成熟な子供の方が柔軟な思考が出来るのは確かだ。オッサンと言えばキレるコイツも、自分が若くないことはきちんと認めているらしい。口に出すと面倒になりそうだから言わねぇけど。

 

「なーんか見落としてる気がするんだよなぁ」

 

アミュスフィアを被りながら発せられた智成の呟きが耳に入る。

確かにその通りだ。

きっと、《圏内事件》でキリト達が圏内PKが実際に行われたと勘違いして捜査を進めていたのと同様に、俺と智成も何かを見落として、誤った理解の上で思考を巡らせているような気がする。

だが、その勘違いが一体何なのかが判らない。

 

「「リンクスタート!」」

 

図らずも二人同時に電脳世界へ旅立つための合言葉を唱えて、ゆっくりと意識が落ちていく中で、かつて自分がキリトとアスナに言ったことがフラッシュバックしていた。

 

『まず前提が間違ってんだ。これを逆転させる。そもそも《アンチクリミナルコード》の有効な《圏内》でPKが起こるわけがねぇってな』

 

そう、間違っているのは前提だ。仮想世界(ゲームの中)で殺人が出来るはずがない。

人を殺すには、現実で何かをするしかないのだから。

だとすれば、《死銃》がしたパフォーマンスの意味は、殺害対象を選んだ理由は――

 

もう少しで何かが掴めそうな瞬間、意識は完全に断たれ、朧気だった思考は遠く意識の底へ沈んでいった。

 

 

 

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〝俺と、この銃の名は《死銃(デスガン)》……〟

 

とても不自然な形で頽れ、回線切断によって退場したペイルライダー。

それを成した髑髏頭(スカルフェイス)の男が、中継画面を通して、観客に向かって話し出す。

その瞬間、何故だろうか、何かに弾かれた様に心臓が早鐘を打つ。

 

〝いつか必ず、俺は、貴様らの前に現れる。そして、真なる死を、与えるのだ〟

 

行き過ぎたパフォーマンス。そうに違いない。こんなのただの浮かれたプレイヤーの戯言だ。

そう頭では理解しようとしているのに、何かがそれを否定した。

 

〝忘れるな、まだ、何も終わってはいない。むしろ、これから始まるのだ〟

 

男が、こちらへ向けて銃口を向けた。それはまるで、言葉通りに死を齎すことを宣言しているようで。

 

〝素晴らしき狂宴の、幕を開ける。イッツ・ショウ・タイム〟

 

厭に拙いその英語を聞いた瞬間、奥底で眠っている記憶の何かが引っ掛かった。

 

私は、コイツを知っている……?

 

そんな疑問が浮上したのと同時、画面内では無数に放たれた弾丸を男が躱し、背後では二つの物音が聞こえた。

 

何事かと振り向けば、目を見開いてグラスを落としたクラインさんと、いきなり立ち上がってグラスを倒したアルゴさん。

 

何事かと皆が視線を二人に向けている。

二人とも何か知っているのか、と口を開きかけた途端、今度はまたモニターから、聞き慣れたような怒声が放たれた。

 

〝アァァァァアアァアッ!!〟

 

「え?」

 

まさかと再び視線を画面へ向けたが、すでに画面は別のモノに切り替わってしまったようで、見知った姿を見つけることは出来なかった。

 

「……今の声、ハセヲさん?」

 

「た、たぶん。ちゃんと見てなかったから何とも言えないけど……」

 

シリカちゃんが呟いた言葉に反応を示したのはリーファちゃんが、確証を求めてか皆を見回した。

けれど残念ながら、突如奇怪な行動をとったクラインさん達に私も含め皆注目していたみたいで、芳しい反応は返ってこない。

 

「あーもう、なんなのよ一体。てゆーか、二人は一体どうしたって――」

 

急な展開に付いて行けない所為か、リズが苛立ったような声を上げる。

 

「《ラフコフ》だ……」

 

それを遮る様な形で放たれたクラインさんの言葉に、空気が凍った。

シリカちゃんは膝にいたピナを怯えた様に抱きしめ、リズはヒュッと息をのむ。

それだけ、その単語は私達にとって衝撃的なものだったけど、同時に私の中では疑問が確信に変わった。

 

間違いない! 私はアイツを知っているんだ!

 

「ら、ラフコフって、そんな……!!」

 

「ま、まさか、あのギルマスの奴じゃ……」

 

小さく震えるシリカちゃんをそっと抱きながら問うリズに、クラインさんは首を横に振る。

 

「……いや、多分《PoH》じゃねぇ……野郎の喋りはもっと流暢だった。けど、最後の言葉……『イッツ・ショウ・タイム』は、野郎の決め台詞だったんだ。奴に近かった誰かのはず――」

 

やはり、クラインさんは奴の正体を知っている。そう確信した私は、咄嗟に敬語も忘れて詰め寄っていた。

 

「アイツが誰か判るの!?」

 

「い、いや、前の名前までは流石に――」

 

「――《ザザ》」

 

「「っ!」」

 

クラインさんと二人、声のした方に目を向ける。

声の主は、誰よりも先に反応したもう一人。今まで沈黙を保っていたアルゴさんだった。

 

「《ラフコフ》にはきちんとした統制なんかは殆ど無くて、メンバー各々が好き勝手やってたけど、それでもギルドマスターの《PoH》と二人の幹部と呼べる人間が統制してた。一人は《ジョニー・ブラック》。こっちはもういないから除外。残ったもう一人が……《赤眼のザザ》」

 

「……赤眼の、ザザ……」

 

名前を反芻して記憶を探る。

 

「厭に区切った様な喋り方に、当時はゴーグルだったけど、マスクの赤いレンズ。私の集めた情報と記憶の通りなら、間違いない」

 

普段のロール口調ではなく、多分素の口調で淡々と話すアルゴさんの言葉を聞きながら、

少しずつ当時の記憶を遡っていく。

そうして見つけたのは、あのラフコフ討伐作戦の会議で配布された資料に記載されていたラフコフメンバーのリストの一つ。

刺剣(エストック)使いの《赤眼のザザ》。

 

「……思い、出した……!」

 

漸く、解けた記憶が繋がった。

それと同時に、あの討伐戦が終わった後にキリト君とザザが一瞬だけ言葉を交わしているのを見かけたのも思い出した。

 

あの時、キリト君はいったいなんて言ってたんだろう……

 

聞えていたかも判らない言葉を知ろうとして更に深く記憶を探ろうとしていると――

 

「あの、申し訳ありませんが……」

 

――不意に、困惑したような表情で昴さんが声を上げた。

 

「ラフコフ、とはいったいなんのことでしょう?」

 

「僕達には聞き覚えの無い単語だからね。皆の様子からしてあまり良いモノじゃないみたいだけど」

 

昴さんの問いを補足するように司さんが言う。

アイナさんや望さん、朔ちゃん、それにリーファちゃんも話しに付いて行けず困惑しきりといった様子だ。

ALOから知り合ったメンバーは皆、私達がSAO帰還者だって知っているけれど、当然の如く当時の詳細な情報には精通していない。

私達と彼ら彼女らの間に、明確な認識の差があるのは無理からぬこと。

 

「ああ、うん、説明してなかったナ」

 

率先して口を開いたのはアルゴさん。情報屋の矜持として自分が話すべきと判断したのだろうか、口調もいつものロールのソレに戻ってる。

 

「皆ご察しの通り、《ラフコフ》っていうのはSAOに存在したとあるギルドの通称ダ。正式名称は《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》。で、端的に言っちゃえば、SAO最大の禁忌だったPK……つまり殺人を行うためだけに創られたギルドってわけサ」

 

これ以上場の空気を悪くしないためか、勤めて軽い口調で話すアルゴさん。

だけど、放たれた言葉の意味を瞬時に理解した面々は、その顔を嫌悪感に歪ませた。

そんな状態でも、誰も口を挟まなかったからか、アルゴさんはそのまま続ける。

 

「イカれた快楽殺人集団は瞬く間にその数を、そして被害者を増やして、アインクラッド中のプレイヤーに知れ渡たる程になったんだヨ。とはいえ、それなりには自浄作用が機能してたんダ、そんな危険なヤツラを長く放って置く訳ないダロ? んでもって、終には討伐隊が組まれてラフコフは無事消滅したのでしたメデタシメデタシ…………で、終わったはずだったんだけどネ」

 

「……終わっていなかった、というわけね」

 

「まぁ、そうみたいだネェ……」

 

アイナさんに肩を落として苦笑いを浮かべながら頷くアルゴさん。

普段と変わらない様にしてるんだろうけど、それでも気が滅入っているのが判る。むしろ、元SAOプレイヤーで《ラフコフ》の名前を聞いて平常心でいられる人の方が稀だろう。

 

「しかも、あの唐変朴が《死銃》クンに怒髪天な声上げて突っこんでたのを見る限り、理由までは知らないけど、かなり深刻な事情みたいだしネ……なぁんかおかしな気はしてたんだけど、まさかこんなことになってるとは思わなかったよ……」

 

座り直して力無く俯くアルゴさんに、掛ける言葉が見つからない。

ううん、違う。言葉を掛ける余裕がなかったんだ。

だって、唐変朴、って誰のことを揶揄して言ったのか、判らないはずがなかったから。

 

何かのっぴきならない事態を知っていてハセヲさんがGGOへ行った。

私には、特に問題ないだろうって言って、だ。

それは、どうして?

 

決まってる、それは――

 

「……キリト君も、知ってたんだ……」

 

――私を不安にさせないため。

 

気付くべきだったんだ。

あの二人が口を揃えて、なんでもない、なんて言って意味があるとは思えない行動をするなんて、何かあると言っているようなものだったのに。

 

それなのに私は、自分の都合のいいように言葉を捉えて、込みあがる疑念から目を逸らした。

 

そうやって、目を瞑って、耳を塞いで、気付かないふりをし続けてきた不安の種は、目を背け続けた私を嘲笑うかのように、とうとう芽吹き、大きな花を咲かせたのだ。

 

 

 

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「……なるほどね」

 

『……キリト君も、知ってたんだ……』

 

アスナの口から零れたその言葉で、大まかな事情を察することは出来た。

そもそもキリトがバイトでGGOに調査へ行くなんてところから違和感は感じてたけれど。きっとSAO事件絡みの関係者から持ち掛けられた話だったんでしょうね。

大方、大した事情も言わずにコンバートする旨だけをアスナに伝えて、それを不審に思ったアスナが彼へ相談したけど、彼は彼で香住さん辺りにでも頼んで――モニターに映る参加者覧に《クーン》の名前がある時点で怪しくはあったし――仕入れた情報が穏当な物じゃなかったから、アスナへは伝えず、香住さんと二人でキリトの支援の為にGGOへ乗り込んだ、といったところだろうか。

 

まったく……

 

「揃いも揃って女性に心配かけるなんて、なってないわね」

 

溜息を吐かざるを得ない。

まぁ、心配を掛けまいとしての行動だってんでしょうけど……結局隠し通せていないなら意味ないでしょうに。

 

「あ、アイナちゃん? いきなりどうしたの?」

 

誰に言うでもなく思考を自己完結させて言葉にしたために脈絡がなかった所為か、困惑した表情で望が声を掛けてきた。

望にはそんな顔をさせていたくないのに。

 

「ごめんなさい、大体の事情が察せたから、思ったことを口に出してしまっただけなの。気にしないで」

 

「ううん、別に謝ってもらわなくてもいいんだけど」

 

そう言って苦笑する望の胸に頭を預ける。

望の体温を感じて気持ちが解れて行くのが判る。

アルゴから聞いた《笑う棺桶》の話に酷く嫌悪したのは事実だけれど、自分で思っていた以上に私の精神を波立たせていたらしい。

 

「……私、一度落ちてキリト君の依頼主に連絡取ってみる」

 

そうこうしてるうちに、事態を詳しく把握する為に動くことをアスナは決めたようだ。

決めた、と言うよりはそうでもしなくちゃいられないって言った方が適切かもしれないけれど。

 

「アスナ、その人知ってるの?」

 

「うん、実はみんなも知ってる人なんだけど……ここに呼び出して問い詰める。ユイちゃん、私が落ちてる間にGGO関係の情報をサーチして、《死銃》ってやつに関係するデータ調べてくれる?」

 

「はい、ママ!」

 

「じゃあ、ちょっと待って――」

 

「――おっと、その必要はありませんよ、アスナさん」

 

今にもログアウトしようとしていたアスナを、何処からともなく聞こえてきた声が静止した。

 

「だ、誰っ!?」

 

明らかにこの場にいる面子ではない声の主に、声を上げたアスナだけでなくほぼ全員が警戒の色を見せる。

その中で、ただ二人――

 

「……あれ? 今の声って……」

 

「ま、まさか……」

 

――私のすぐ近く、望と朔だけは、違った反応を示していた。

望は何かを思い出そうとしているような、朔は苦虫を噛み潰したような、そんな表情。

 

「朔? なにか――」

 

知ってるのか、と聞こうとした瞬間、今度は部屋の中に突然ライトエフェクトが発生して思わず言葉を切ってしまう。

 

これは……転送エフェクト?

 

よくよく見れば、それは見慣れた転送エフェクトだった。それが二人分。

けれど、一体誰が? このハウスに直接転移出来る様なプレイヤーは殆ど揃っているはず。

 

「……そんな! 無許可での転送なんて!?」

 

そうユイが叫んだ瞬間、私の疑問に答える様に現れた二人のプレイヤー。

 

「そのまさか、ですよ。お久しぶりですね、朔さん」

 

「うわぁっ! な、なんだ一体!?」

 

一人は一応知っている人。アスナやキリトの知り合いらしく、ごく偶にパーティを組むプレイヤー――

 

「く、クリスの旦那ぁ!?」

 

「く、クライン君!? 一体何がどうなってるんだ……」

 

そう、クリスハイトだ。

けれどもう一人は……

 

「て、てゆーか、アンタ一体誰よっ!?」

 

「アスナさんのお知り合い、でしょうか?」

 

「―――っ!!」

 

昴の言葉に全力で首を横に振るアスナ。

立て続けに訳の判らないことが起きたせいか、まともに言葉が返せないみたい。

 

「クリスハイトはまだい……良くは無いけど! どうやったら許可も無く人様のホームに直接転移できるってのよ!?」

 

全員の疑問を代弁するようにリズベットが叫ぶ。

もう少し落ち着いた方が良いとは思うけれど、言い分自体には全面的に同意するわね。

 

「あー、リズ。なんちゅーか、コイツには何ゆーてもしゃあないで? いちいち気にしてたら気がもたんへん。ユイも、確かに怪しさ満点やけど、そこまで警戒せんでも大丈夫や」

 

「あ、あははは……」

 

そんなリズベットに声を掛けたのは、何もかも諦めたような顔で溜息を吐く朔。

彼女の頭の上に乗って宥める様に可愛いらしく軽く叩きながら、警戒心を顕わにしていたユイへもフォローを入れていた。

望は望で困った様に乾いた笑いを零すだけだ。

 

「二人は彼のことを知っているのかい?」

 

「うん、まぁ、知ってると言うか、なんというか……」

 

「腐れ縁っちゅーとこやな」

 

「腐れ縁って……」

 

司に答えた二人の言葉に軽く引いた様子のリーファ。

まぁ、こんな得体の知れない存在と腐れ縁だと聞かされたらそう言う反応になるのも判らないではないけれど。

それはさて置き、望と朔が知っているという事は――

 

「“アレ”の関係者かしら?」

 

面倒な追及を避けるために、望にだけ聞こえるよう声を落として言うと、望は頷いて同じように私にだけ聞こえるよう耳元で囁いた。

 

「うん、そういえばアイナちゃんは直接会ったこと無かったよね。彼は欅さん。何度か話だけはしたっけ?」

 

「ええ。そう、彼が……」

 

The World R:2において最大級の規模を誇った二大ギルドの一角、《月の樹》のギルドマスターにして、ネットスラム《タルタルガ》の管理人である規格外レベルのスーパーハッカー。

そして、(犬童雅人)の知人。

 

それが私の知る《欅》という存在のすべてだ。

 

彼のこと自体は望が言う様に、彼やかつての事件の関係者達から聞いているけれど、直接の面識はない。

というより、望達の様な《碑文使い》に比べて、あの事件に関して私の知っている事は圧倒的に少ないのだ。

何故なら、彼らと兄さんが事態の解決のために奔走していた殆どの時間を、私は眠って過ごしていたのだから。

だから、私が知っているのは、兄さんが遺した手紙や日記から知り得たことと、事の中心にいた犬童雅人の妹であるが故に、後日聞くことが出来た話だけ。

 

つまり何が言いたいかと言えば、《欅》という謎多き存在について、アスナ達よりは知っているけれど、望達よりは理解していない、ただそれだけのこと。

 

恐らく彼は私のことをよく知っているだろうし、コンタクトを取ろうと思えば取れたんでしょうけど……兄さんのことを吹っ切る為に敢えてそうしなかったのは私だ。今更あれこれ考えた所で仕方がないこと。

 

けど、せっかく顔を合わせる機会が得られたんだし、今度ゆっくり私の知らない兄さんの話しでも聞かせてもらいましょうか。

でも、今は色々と白状してもらうのが先ね。彼もそのつもりで来たのだろうし

 

突如現れた来訪者によって引き起こされた混乱の極みとでもいう状況の中、私は心中そんなことを考えていたのだった。

 

 

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あの《死銃》というらしい男を取り逃がした後、私達は鉄橋にいたハセヲと直ぐに合流して、一時的に身を潜められる岩場へと移動した。

《死銃》が逃げた直後、スコープ越しに見えたハセヲは酷く取り乱していたように見えたけど、合流するまでの短い時間のうちに落ち着きを取り戻したのか特に変わった様子は無い。

 

「んで、どーすっかねこっから先」

 

クーンがそう口火を切る。

口調自体は軽いのに、声音は重いとは、随分器用なことをするモノだと思う。態とやってるって訳ではないのかもしれないけどね。

 

「《死銃》を追う……前に、情報の整理が必要だろうな。妙なことが多すぎる」

 

そう言ってハセヲが挙げた疑問は三つ。

 

一つ、誰も近くにいたはずの《死銃》の存在に気付かなかったこと。交戦中でスキャンを見られなかった私とハセヲはともかく、ダインとペイルライダーを待ち伏せていた以上どちらかは確認していたはずのクーンとキリトが驚いていたという事はスキャンに映っていなかったという事になる。

二つ、私の狙撃が避けられたこと。私自身感じたことだけど、アレは完全に予測線が見えている避け方だった。ハセヲが鉄橋で背後から撃った時も同様に躱されていたし。つまり、何処かで少なくとも私とハセヲのことを見ていたという事になる。

そして三つ、ハセヲが《死銃》を斬り付ける直前、霞の様に《死銃》の姿が消えたこと。遠目で見ていた私達にもそう見えていたけど、どうやら見間違いではなかったらしい。

 

「それじゃ一個ずつ考えて行きますか。勿論、辺りは警戒しながらな。まず一個目は多分、奴さん水の中潜ってたんだろうな」

 

「水の中?」

 

オウム返しの様に繰り返した私にクーンが頷く。

 

「ああ。戦ってる二人と合流するちょっと前に、スキャンが実行されたのは判ってると思うんだが、その時はまだキリトとも合流してなくてな。ダインを追ってペイルライダーが来てるのは判ってたし、キリトは近くにいないしで、仕方ないから先にハセヲと合流しようかと思って二人の方に向かってたら突然キリトが現れてな」

 

「随分驚いた様子でどこにいたんだって言われたよ」

 

「それが、水の中ってこと?」

 

「そういうこと。クーンと合流する直前まで、三人で決めた合流地点まで出来るだけ誰かに見つからない様に川底を泳いで下ってたんだ。そういうわけで、水の中、というか川底はスキャン範囲外になってるらしい――」

 

「ちょ、ちょっと待って! 泳いだってどうやって!?」

 

言ってることが言ってることだけに、堪らずキリトの言葉を遮って声を上げてしまった。

だってそうでしょ?

ただ潜っていたっていうならまだ判る。水中では継続的にHPが減少するくらいのデメリットしかないから。でも、泳ぐとなれば話は別。通常の装備じゃ――それがたとえ軽装であっても――重すぎて、専用の呼吸補助装置でも背負ってなければとても泳ぐなんて無理だ。

それを何のことも無しにやってみせたと?

 

そんな私の疑問に答えたのは、実行した本人のキリトでも、多分キリトから方法を聞いたであろうクーンでもなく、話を聞いていただけの筈のハセヲだった。

 

「ンな驚くことじゃねぇよ。ストレージに装備全部ツッコんじまえば何とでもなる。俺も鉄橋の東側からコッチに来るときそうやって渡河してきたしな」

 

「そゆこと」

 

常識だとでも言いたげな様子なルーキー(バカ)二人に、空いた口が塞がらない。

いったいどんな思考回路してたら河を泳いで渡ろうとか戦場で丸裸になろうなんて考えに到るっていうのよ。

 

「俺も聞いたときは正気を疑ったよ。まぁ、相手の目を見れば何処に攻撃が来るか判るなんて言うような奴らだから、今更っちゃあ今更だけどさ」

 

「……それもそうね」

 

そんな私の心中を察してか、慰めともつかないような言葉を掛けてきたクーンに曖昧な同意で返す。

仕方ないから、川底ではスキャンに引っ掛からないって有益な情報が手に入ったと無理やり自分を納得させることにした。一々コイツ等の無茶苦茶な行動を気にしてたらキリがないわ。

 

「一つ目はそれで解決として、問題は二つだ。特に三つ目なんて、透明化のスキルでもあるのか?」

 

キリトの言葉で意識を元に戻した。

ソレについては、実は心当たりがある。

 

「三つ目は、多分《メタマテリアル光歪曲迷彩(オプチカル・カモ)》だと思う」

 

「おいおい、そんなモン実装されたなんて情報聞いたこと無いぞ?」

 

「私だって聞いたこと無い。でも、目の前で消えるなんてそれ以外考えられる?」

 

「そうっちゃそうだが……」

 

私の言葉に疑いの声を上げるクーン。

確かに《メタマテリアル光歪曲迷彩》のプレイヤー向け実装なんて聞いたことは無いけど、アイツは噂でしか聞かない《アキュラシー・インターナショナル・L115A3(サイレント・アサシン)》まで持っていたのだ。もしへカート以上の超低確立レアドロップであろう《メタマテリアル光歪曲迷彩》アビリティ付の装備が存在するのだとしたら、RMTを通して手に入れていないとは言い切れない。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! メタマテ……なんだって?」

 

サプレッサーの時と同様、聞き慣れない単語の説明が無いままに話が進んで置いてけぼりになりそうだったのか、キリトが慌てて口を挟んできた。

ハセヲはどうなのかと見てみれば、特に判らないような様子は無い。というか、何か考え事をしてるみたいだ。

言葉の意味を理解した上で何か考えているなら、全く一般的な用語ではない筈だけど、もしかしたら字面で判ったのかもしれない。見た目や口調の割に、所々で博識ぶりを見せる彼は物理工学にも精通してるということだろうか。

 

まぁでも、それよりキリトに説明する方が先ね

 

「メタマテリアル光歪曲迷彩、よ。光学迷彩って言えばわかる?」

 

「あ、うん、それなら」

 

「本当なら、一部の超高レベルボスだけが持ってる能力なんだけどな。もしかしたら、その能力が付与されてる装備が有って、《死銃》が持ってるんじゃないかってことだ」

 

「それに、これが正解なら私の狙撃が避けられたのも説明がつくわ」

 

そう言うと、私の言いたいことが理解できたようで、キリトが指を鳴らして頷いた。

 

「なるほど、その光学迷彩を使って隠れながら俺達のことを何処かで見てたってことか」

 

首を縦に振って肯定を示す。

ペイルライダーのすぐ傍に突如現れたのも同じだ。

 

「何処で見られたのかまでは判らないけどね」

 

とはいえ、相手が見えなかった以上、些細な問題かもしれない。

そこでふとハセヲがずっと喋っていないなと思って様子を窺うと、未だに何かを考え込んでいるようだった。

 

「……GGO……光学迷彩……派手な演出……電磁スタン弾……十字……」

 

しかも、よくよく耳を澄ませてみれば、なにかブツブツと呟いている始末。

 

「お、おい、ハセヲ?」

 

異変に気付いたらしいクーンが話しかけるけど反応が無い。

 

「……BoB……景品……」

 

「ハセヲ! どうしたんだよ!」

 

キリトがそう肩を掴んだ瞬間、ハセヲの目が見開いた。

 

「……判った」

 

「は? 何言って――」

 

「判ったぞ、奴のやってることが」

 

そして唐突に、そんなことを口にしたのだ。

 

 

 

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「あのー、結局貴方は誰なんですか? 望達は知ってるみたいだけど……」

 

程々に皆の興奮が収まってきた辺りでリーファが至極まっとうな疑問を突如ホームへ転送してきた片割れの少年へぶつけた。何となくというか、八割がた当りはついてるけど、本人から聞くのが一番確実だろうしね。

 

「自己紹介が遅れましたね。初めまして、僕は欅。朔さんの仰る通りお二人の、それからここにはいませんがハセヲさんの古い知り合いです。どうぞよろしく」

 

アルカイックスマイルを浮かべて会釈をする欅を眺めながら、やっぱりと自分の予想が正解だったことを確認する。

私の知る限り、こんなとんでもないことできそうなのはこの人くらいしかいないし、昔たまたま遠目にみた姿(アバター)と瓜二つだしね。

 

「それからアルゴさんも、ご無沙汰です」

 

「ん、久しぶり……っていうのも変な気もするけどネ、けーくん」

 

どうやらあちらも私のことを憶えていたらしい。

そんなことを思いながら返事を返せば、当然ながら周りからは疑問の視線が。

問い詰める様に声を上げたのはアスナ。

 

「アルゴさんとも知り合いなんですか!?」

 

「んー、知り合いと言えばそうだけどネ。ぼーくんと朔ちんほど親しい訳でもないヨ。実際、会ったのも正真正銘今日が始めてだしナ」

 

「いや、ウチらかて親しいわけやあらへんけどな」

 

すかさず朔から飛んでくるツッコミ。フワフワっと飛んできて私の頬にピシッと打った手は流石関西弁キャラなだけあってキレがあった。

 

「……うん? ちょっと待てよ、欅って名前どっかで聞いたような……」

 

「そういえば、クラ助もThe Worldやってたんだよナ」

 

「The World? それがどうし……いや、待て待て待て、欅ってたしか……!」

 

思い出そうとしてるクラインにヒントを出してやると、なんとか正解に漕ぎ着けたらしい。

 

「まさか、《月の樹》のギルマスの!? あの《欅》だってのか!?」

 

叫ぶクラインの表情は驚きの所為か、まさに間抜け顔って感じ。

うーん、女の子にモテたいなら、もうちょっと何とかした方が良いかな、うん。

ま、それはいいとして。

 

「だーいせーいかーい」

 

「いやいや大正解じゃねぇよ。つか、その欅がなんだってクリスの旦那引き連れてこんなとこに来たんだってんだよ!」

 

再び熱した興奮冷めやらぬままに欅を指さして怒鳴るクライン。

それにも全く動じず、アルカイックスマイルを保ったままに欅は口を開いた。

 

「何と言いますか、ちょっとしたお節介ですね。視ていた感じ、そろそろアスナさんが彼を呼ぶくらいかなと思っていたので、手間を省いて差し上げようかなと思っただけですよ」

 

「……なるほど、僕を呼び出したのはアスナ君じゃなかったのか」

 

「ど、どういうこと? それに視ていたって?」

 

戸惑った様子でクリスハイトに顔を向けるアスナ。

疑問を投げかけられたクリスハイトは困った様に苦笑を浮かべて答えた。

 

「ついさっき、君のアドレスからメールが来たんだ。キリト君のことで話があるから大至急ALOに来てくれってね。それで急いでダイブしたら、セーブポイントに立っていたのが彼だったんだ。そしたら、いきなり転送されて気付いたらここにって訳さ。視ていたっていうのは僕にも判らないけどね」

 

「そ、そんな……!?」

 

クリスハイトの言葉に動揺して両手で口を覆うアスナ。

彼の事情が判ってない者も同様に大なり小なり驚愕の色を見せている。

ここにずっといたはずのアスナがメールを送れる訳もないんだから、つまりはアスナのスマホを勝手に操作してクリスハイトにメールを送ったってことだからね。驚くのも無理ない。個人情報駄々漏れって言われてるようなものだし。

 

「アスナ、そんな気にすることあらへんて。さっきゆーたやろ? 気にしてたら気がもたんって」

 

そんなアスナに呆れたような口調で声を掛けたのは朔だ。

 

「それに、コイツはデリカシーは欠片もないけど、知ったこと悪用するほど腐っちゃおらへん。せいぜい揶揄うのに使うくらいやから安心しぃ」

 

「あはは、デリカシー無いとは酷いですね」

 

「事実やろっちゅうねん」

 

欅の額目がけて飛び蹴りをかます朔。現実ならかなり過激なツッコミだけど、朔が小さいから見てる分には酷くコミカルだ。

そのおかげか、張っていた空気も和んでいる。意外に面倒見がいいし気の利く娘だから、態とやったのかもしれないわね。

 

「ほら、クラ助も聞いたことないカ? 《月の樹》の欅は、実はハッカーだって話」

 

「そういや一時期そんな噂があった様な……てことは、あれマジだったってことかよ?」

 

「見ての通りダ。でなきゃこんなことできないダロ? 視てたってのも、ハッキングしてこのホーム内を監視してたってことだろうナ」

 

「VRMMOでハッキングなんて……」

 

司が頭が痛いとでも言いたげな様子で言葉を漏らす。

事実、VRMMO……というか、アミュスフィアをはじめとしたVR関連のプロテクトは彼の天才茅場晶彦がその骨子を組み立てた所為か非常に強固で、ちょっとした機能の穴を突く位ならともかく、かつてのMMOなんかであった様な悪質なハッキングやチートなんかは早々出来ないようになってる。全く不可能ではないのかもしれないけど、未だに破られたって話は聞いたことが無い。

 

VR技術の売り文句にもなってるそれを、かるーく破ったと言われれば頭痛もする。

その手のことにこの中の誰よりも精通してるであろうユイちゃんなんか驚きすぎて固まっちゃってるし。

まぁ、彼を知ってる側からすれば、むしろ納得と言わざるを得ないんだけどね。

 

私が彼のことを知っていたのも、その辺りが縁だ。情報屋として犯罪スレスレのラインで活動していた時に偶々目にしたスーパーハッカーの噂。ソレに興味を持った私は持てる手段を全て――それこそぶっちゃけちょーっとラインを越えちゃってるモノも含めて――使って辿り着いたのが彼だった……というか、嗅ぎまわってるのがバレてアッチからコンタクトしてきたんだけどね。

それから何回かメールでやり取りする内に少しばかり親しくなったことで、様々な情報を提供してくれる切り札として彼とのコネクションをゲットしたわけだ。勿論、彼は私と違って完全にラインのアッチ側の人間だから、そうそう手を借りることは無かったし、確実にアウトなことは聞かなかった。例えば、亮の所在とかね? まさか(ハセヲ)と彼が知り合いとは思わなかったけど。

 

「まぁ、アルゴさんの言う通りですね。皆さんハセヲさんと親しいようでしたし、ちょっと興味が湧きまして。アスナさんのスマートフォンを勝手に操作したことについてはすみませんでした。彼を呼び出すのに一番早いのがそれかなと思ったので、つい」

 

「は、はぁ……」

 

酷く無邪気な感じで謝られた所為か、毒気を抜かれた様に曖昧に頷くアスナ。

 

「というか、僕のアドレスを知っていたってことは、僕のことも知っているんだろう? それなのによく目の前でそんな話が出来るね」

 

「ええ。現在は総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室、通称仮想課所属で、元対策チームの一員であったことも存じてますよ」

 

「「「「はい?」」」」

 

私も含めてアスナとユイちゃん以外が異口同音に声を発して首を傾げた。

一応、クリスハイトがネットワーク関係の仕事をしてる公務員だってことは聞いてるけど。

それに対策チームって?

彼らの口振りからキリトの依頼主がクリスハイトであるのは明らかだけど、一体どういう関係なのか。

 

「……参ったね、そこまで知られているとは。これはもう、洗いざらい喋るしかないかな」

 

溜息を吐いて眼鏡を直したクリスハイトが開口一番放った言葉は、私達に小さくない衝撃を与えた。

 

「実はね、僕はかつて、SAO事件の対策チームに所属していたんだよ」

 

まったく、今日いったい何度驚けばいいのか。これじゃあ体がもたないって……




どうも、新年初投稿が二月の頭とかいうクソ遅筆を曝した作者です。

しかも話ほっとんど進んでないしね。
そのかわりいろいろぶっ飛んだことしたから許してください……

まぁ謝罪もどきは程ほどに、今回はGGO組は程ほどに外野組がメインでしたね。かな~り前に張っといた伏線を地味~に回収しましたが、気付いた方はいたでしょうか?
もし答え合わせがしたい方が居れば感想へどうぞ。

そして、原作と違いもうここで死銃くんの手口は判ってしまったわけですね。
でも安心してください、死銃くんフルボッコフラグはへし折れます。

いやー、それにしても書いてるうちにフッと思いついた展開を入れてるせいで話が進まない進まない。そろそろ3~4万字レベルのをぶち込まないといい加減終わらないなとひしひしと感じる昨今です。

では、また次回に。感想、誤字脱字報告等ありましたらよろしくお願いします。

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