機動戦士ガンダムSEEDFREEDOMの二次創作小説です。シンルナの箱に考察と言う外装を巻いた中身妄想垂れ流し小説です。
種運命と種自由両方で『デスティニープラン』が出てきたので両者の違いを自分なりに考えて書いてみましたが、なんかよく分かんないですね(汗
グダグダと小難しいこと書いてますがシンルナとちょっとシリアスなコノエ艦長を見て頂ければそれで満足です。(中の人の声もあってコノエ艦長がすっごい解説役向きやったんや……)
『デスティニープラン』って何だったんだろう。
戦艦「ミレニアム」艦内に設けられた談話室で同期がポツリとこぼした言葉に、ルナマリア・ホークは怪訝な顔をした。
「いきなりどうしたのよ、シン」
カフェオレの缶を片手にルナマリアはその同期、シン・アスカに問いかける。当のシンは「うん」と項垂れるだけでそれ以上答え難そうだ。
ルナマリアははあ、とため息ひとつ吐くとシンの横に座った。惚れた弱みと言うべきか、それとも元来の性格故か、彼の辛そうな表情を見ると、放って置けなくなってしまう。
「まだ、デュランダル議長のこと気にしているの?」
デスティニープランは故ギルバート・デュランダル元議長が提唱した社会システムで、遺伝子によりその人の最適職を決定するものであり、その結果自身への不当な評価や現状への不満がなくなり平和で幸福な社会を構成することを目的にしていた。しかしそれは人々から職業選択の自由を奪い、夢や希望を見出だせなくさせると考えたラクス・クラインやオーブ連合首長国により阻止された。
シンはその戦乱でデュランダル元議長の側に立ち、ラクス、オーブと戦ったが、メサイア、レクイエム攻防戦にてアスラン・ザラに敗北、後にメサイアを墜としたキラ・ヤマトの誘いに応じラクスを初代総裁とする世界平和監視機構「コンパス」に出向し、今に至る。
シンはルナマリアの問いに首を横に振ると、またポツリと話し出した。
「そりゃ、議長の言ってたこと忘れられないって言ったら嘘になるけど。あの時の俺は議長の言ってることが間違ってる何て思ってもみなかった」
実際、デュランダル元議長の考えは決して間違っていたわけではなかった。彼は争いはあくなき人々の欲望や明日が分からぬ不安から起きると考え、事実あらゆる争いの根幹には「他者よりより上へ」と言う闘争本能があることは否定できず、彼はその解決策としてデスティニープランを提唱したのだ。
当時のシンは、親友だったレイ・ザ・バレルの助言もあり迷いながらもデュランダル元議長に賛同した。平和な世界を手に入れるために。戦争の犠牲となったマユやステラの様な人を出さないために。
「けど、隊長や総裁のおかげで、それは間違ってるって、いや、他の方法もあるって気づけた。何のために戦わなくちゃいけないのか少し分かった気がした」
「シン……」
「だからかな、デュランダル議長のデスティニープランとファウンデーションのデスティニープランはどこが違うんだろうって」
「どこがって……」
シンの疑問に対する答えをルナマリアは持っていない。それどころかシンの様に違いなんて考えもしなかった。シンはデュランダル元議長にその正義感と優しさ、辛い過去と経験を利用されていた。そこから立ち直りやっと前を向いて歩いているのにまた過去に囚われようとしついる。
恋人として彼を支えていかなければならないのに、かける言葉も求める答えも見出だせなくて、彼の不安そうな顔を見るのが切なくて、ルナマリアはそっとシンの肩に自分の頭を預けた。シンの不安が少しでも和らぐように。
「それは、デスティニープランの『主体』を何に置いているか、だろうな」
「「わあっ!!」」
突如かけられた声に、二人は驚いて離れた。慌ててキョロキョロと声の主探すと談話室の入り口にその人は居た。
「こ、コノエ艦長!?」
「そんなに驚かなくても良いだろう」
声の主、アレクセイ・コノエは唖然とする二人を尻目に自動販売機へと歩を進める。
「し、失礼しました!」
「構わんよ。こちらこそすまなかったね。折角の時間を邪魔してしまって」
缶コーヒーを取りながら茶目っ気をきかせる。こういった気さくのなさも、彼が部下から一目おかれている由縁だ。
「い、いえ……」
「まあそう畏まらなくても良いよ。私も今は休憩中だ」
「は、はあ……」
コノエは適当な席に座り、買ったばかりのコーヒーを飲んだ。二人も彼にならい再び座る。ひとり分席空けて。
「いやあ、時々このメーカーのコーヒーが無性に飲みたくなってね」
「意外ですね。コノエ艦長はてっきりご自分で煎れているのかと」
「ん? ああ。普段はそうなんだが、時々この『味』が恋しくてね」
そう言ってコノエはまた一口飲んでいく。つられてルナマリアも自分のを飲んで、ふとシンの方を見ると、シンは缶を握ったまま、また俯いている。
「……シン?」
「ん? ああ、ごめん。何でもないよ」
取り繕う様に、シンはコーヒーを飲んだ。まるで自分の言葉ごと飲み込む様に。
「あの、コノエ艦長」
「うん? 何だね?」
ルナマリアはシンの顔を見て決意した。彼の求める答えを見つけようと。
「さっき艦長が仰っていたことですが……」
「さっき? ああ、『アレ』かな?」
「はい。その事についてもう少し詳しくお聞きしたいのですが」
「ルナ?」
ルナマリアの意図が見えず、シンは心配そうに彼女を見る。ルナマリアはそんな彼に「大丈夫よ」と目を細めた。
「ふむ。まあその真意を知るものはもう今生には居らず、私の憶測の域を出ないが、それでも良いかね?」
「はい」
はっきりと応えるルナマリア。コノエは次にシンに視線を送る。シンは少し逡巡したが、ゆっくりと頷いた。
「では、先程の続きだが、とは言っても、答えは明白なんだがね」
「そうなんですか?」
「ああ。デュランダル議長はあくまでも遺伝子により、その者にあった役割を担わせ、公正で公平な社会を創るのが目的だった。その先に人類の幸福があると信じてね。それは分かるね」
「まあ、何となく、ですが……」
元教師だけあって、彼の話は簡潔で、それでいて要点はしっかりと押さえられていた。
「でも、ファウンデーションもデュランダル議長の後継としてデスティニープランの実行を宣言しました」
「確かに、ファウンデーション、アウラ女帝と宰相オルフェ・ラム・タオはデスティニープランを採択した。自分達の国を焼き払ってまでもね」
ファウンデーション王国のアウラ女帝は宰相オルフェの采配の下、コンパスを奇襲。キラを精神操作で暴走させ彼の乗ったライジングフリーダムを撃破、さらには戦艦アークエンジェルも沈めた。
そして、連合による報復と見せかけるため、偽装と証拠隠滅を兼ねて連合国側から核ミサイルを放った。1発はルナマリアがゲルククメナースで打ち落としたものの、2発目は軌道が変わり、ルナマリアの奮闘虚しく核の炎がファウンデーションを飲み込んだ。全てはラクス・クラインを略奪するために。
「しかし彼らは、デュランダル議長の様に『種の存続』のためでなく、彼らアコードによる統治を目的としその手段としてデスティニープランを選んだ。いや、デスティニープランが都合が良かった。と解釈すべきかな?」
オルフェらの採択したデスティニープランは、中身自体はデュランダル元議長のものと何ら変わりはなかったのだろう。しかし目指す社会体制は、アコードを頂点としたピラミッド型。遺伝子による公正を謳いながら、その実、遺伝子による身分制を目的としたものだ。公平で平等どころか、格差がより広がる前時代的思想そのものではないかと、コノエは語る。
「何でアウラ女帝とアコード達はそんなことを?」
「そもそもアウラ女帝の言葉を借りれば、アコードらは人々を導くために産み出された、コーディネーターを越える存在。謂わば人類の上位種となるために産み出された存在だ。彼らが自らを支配階級であると信じ、それが正しい社会システムであると考えてしまうのも無理はなかろう」
人の人格形成は幼少期の環境が重要であると言う研究結果もある。アコード達が最初からその様な目的で育ってきたのなら納得のいく理論ではある。理論上では、だが。
「何でそんな奴らを、アウラは造ったんだ!」
「それこそ、人の業だろう」
コノエの眼が一層厳しくなる。
「研究者というのは、本当に業の深い職業だ。本来生物が長い年月をかけて受動的に行ってきた『進化』を能動的かつ加速度的に進めてしまう。進化おも、自らコントロールできると錯覚させてしまう。アコードもアウラ女帝が描いた『進化』の青写真の一つだったのだろうな」
そこで区切って、コノエはコーヒーで喉を潤す。コノエの話で、デュランダルとアウラ、両者のデスティニープランの相違は何となくは理解できた。だが、だとしたらーー
「だったら、ラクス様は、総裁は……」
ラクス・クラインもまた、アウラが造り出したアコードだった。オルフェ・ラム・タオと対をなし、人々を導くために造られた存在。それを彼女の母親も望んでいたと言う。最初にその話をラクスから聞かされた時、シンもルナマリアも信じられなかったが、ラクスの悲しげな顔からそれが事実だと悟れた。
だがコノエは、「ならば、あの異様なカリスマ性も頷ける」といたく冷静だった。その言葉は皆から非難を浴びたが、
「総裁はプラント最高評議会議長を務めたシーゲル・クライン氏の娘とは言え、当時はまだ政治の『せ』の字も知らぬただのアイドルだ。仮に親の教育の賜物であろうと、一個人の発言があの様な影響力を及ぼす方が異常」
と断した。皮肉にも、彼のその冷淡な洞察が、ラクス・クラインがアコードであると言う何よりの裏付けだった。
「確かに、アウラ女帝がクライン総裁をアコードとして造ったのは、人類の統治が目的だろう」
あくまでも冷静に、客観的に判断するコノエに、二人の顔が暗くなる。コノエはそんな二人の心情を察して、優しそうに微笑んだ。
「だが、クライン総裁のご母堂様がそんな事を望んだとは、私は到底思えないがね」
「え?」
アウラ女帝の発言を信じつつ、その言葉を否定するコノエに、ルナマリアは意図が掴めなかった。
「時に聞くが、君らは自分達の子供に、何を願う?」
「ちょっ、艦長それはーー」
「この発言がセクハラだと言う自覚はあるよ」
「だったら……」
「だが君らの疑問に答えるには必要な問いだ」
自分達の関係を知った上でのセクシャルな問いかけに、ルナマリアはハラスメントだと非難する。だが飄々とした物言いにも関わらず、コノエの表情は真剣そのものだ。思わず、ルナマリアは黙ってしまう。顔を赤らめつつシンの方を窺うと、彼はとても真剣に考えている様だ。
「……」
「シン……」
ルナマリアはシンが考えている事が手に取る様に分かった。おそらく、いやきっと、シンは自分の子供に重ねているのだ。マユ・アスカやステラ・ルーシェ、彼が守れなかった大切な人たちを。
「…………です」
「うん?」
「幸せになって欲しいです。戦争なんてない、温かい場所で」
シンの回答にコノエは頷くと、今度はルナマリアの方を向く。ルナマリアはシン微笑んでから
「私も、シンと同じ想いです」
としっかりと答えた。コノエは二人の答えに満足そうに頷くと、背もたれに体を預け天井を、その先を見つめた。
「そう。親が子に望むのは子供の幸せ。それで良いと私は思うんだ。それがある意味一番酷な願いだとしても」
我が子を思っての行動が反って子供を不幸にし、子に何もしてやれないと悔やんでもしっかりと愛情が伝わっていることもある。子育てとは本当に難しくそして愛おしいものである。
「ラクス様のお母様もそうだった、と?」
「少なくとも私はそう思っているよ。でなければ、今彼女の横に居るのはヤマト隊長ではなくタオ閣下だ」
母親の意図がどこにあったにせよ、ラクスはアウラ女帝とオルフェの目論見から外れ、キラを選んだ。彼らの言うところの己の役割を放棄して。
「アウラは、総裁のお母さんの想いを利用した?」
アウラ女帝が研究していたアコード。それが支配する社会の形成にはオルフェと対になる存在が必要だった。その際に、ラクスの母の協力を得たのは確かだろう。そこにどんな経緯や思惑があったのかは最早誰にも分からないが。
「彼女らを『悪』と断ずるならば、その可能性は否定できないな」
「艦長はアウラ女帝たちは悪ではないと?」
「彼女らも方法はどうあれ、結果的には平和な未来を目指していたはずだ。なら道を違えた我々とは敵対関係であったにせよ、その理念を悪と断ずることは私にはできんよ」
敵であれ悪ではない。コノエの言葉はシンたちにはまだ難しく感じられたが、この世に絶対的な正義や悪などないのだとういのは何となくは理解できた。
「まあアウラ女帝に関して言えば、彼女も研究者だから自分の研究成果が世界にどう影響を与えるか観測したかっただけなのかもしれないがね」
結局のところ科学者というのは因果なものだとコノエはぼやく。
「デュランダル議長も、同じだったのでしょうか?」
「うん?」
「実は人類の幸福とかどうでもよくて、自分の理論が正しかったのか観測したかっただけではなかったのかな、と」
コノエはルナマリアの意見に「ふむ」と腕を組む。暫く考え込んで、ゆっくりと首を横に振った。
「そう言った側面がないとは言い切れないが……私はプラント最高評議会議長のギルバート・デュランダル氏しか知らないから何とも言えないが、少なくとも政治家として彼がデスティニープランの実行を決めたのは間違いないだろう」
シンもルナマリアもコノエ同様、議長あるいはザフト軍総司令としてのデュランダルしかしらない。そもそも彼と個人的な付き合いのあった人物が今どれ程残っているかも分からない。
「まあ案外、デュランダル議長も俗物的な想いでデスティニープランを考えたのかもしれないな」
「俗物的?」
「そう例えば……『諦める理由』が欲しかったから、とか」
「諦める? 何をですか?」
デュランダル元議長は研究者としても政治家としても一流と認められた人物だ。理念に没したとは言え順風満帆だった彼が理由を欲する程の挫折を味わったとは思えなかった。
「何ってそりゃあ、女性関係とか」
事も無げに宣うコノエにルナマリアがまた顔を顰める。さっきまでの空気が嘘の様である。
「そんな顔をしなくてもいいだろう」
「そうさせたのは艦長ですよ」
「デュランダル議長だって一人の人間なんだ。色恋沙汰の一つや二つあってもおかしくなかろう?」
「だからって、失恋したからってあんな大それたことしますか? しかも遺伝子レベルで」
「あるだろうコーディネーターには。その『遺伝子レベル』で諦めなければいけないことが」
彼が言っているのが、プラントの婚姻統制であることはルナマリアにはすぐに分かった。遺伝子操作された影響か、コーディネーター同士の出生率は非常に低く、子供が出来る遺伝子の組み合わせが決まっている。それは世代をおう毎に複雑化しており、これを問題視したプラントは『出産可能な遺伝子の組』でしか婚姻を認めていない。無論、婚姻しないまま男女の仲を続けることはできる。今ならオーブのような中立国に移住し結婚することもできるだろう。
「けど、そんなこと……」
「確かに聡明な彼がそんなことで決起するとは思わんよ。だが、きっかけにはなり得るだろう?」
実際に、デュランダルは婚姻統制のせいでタリア・グラディスと別れることになった。遺伝子が原因で苦しい思いをした。ならばこれが始めから決められていたと、人の『運命』は遺伝子によって決められているのだと未来を諦める考えに至ったとしてもおかしくはない。
「いずれにせよ、デュランダル議長もアコードも悪意があったわけではない。彼らを悪と断ずる権利など誰も持ちえはせんよ」
「……じゃあ艦長は、何が悪だと思いますか?」
唐突に向けられた質問に、コノエは一瞬目を白黒させるが、すぐに考え込んだ。
「……難しい質問だな。法を犯した者、と言えれば簡単たが、現実は物語のように勧善懲悪で成り立つほど単純ではない」
顎に手をあて思考にふける。シンとルナマリアはコノエの次の言葉を静かに待った。
「強いてあげるなら、人の心、かな?」
「人の心……」
「デュランダル議長ではないが、結局争いというものは往々にして人の憎しみや欲望といった負の感情から起きるものだ。だとすれば、悪とはそれを起こす人の心となる」
デュランダル元議長は、デスティニープランを宣言した際、『人類の無知と欲望こそ克服しなければならないもの』だと言った。それは計らずともコノエの言うことと同義であった。
「けど、人の心は善にもなります」
コノエにルナマリアが反論する。コノエもそれが分かっていたのか、そうだな、と同意した。
「そうだ。だから人は戦っていかねばならない。自分の心と、その弱さと」
かつて、レイはシンに『お前は優しい、だかそれは弱さでもある』と言った。その時はよく分からなかったが、今にしてみれば彼の言っていたことが身にしみる。
「けど、人は強くなれます」
自分がもっと強ければ、と夢想する日は少なくない。けれど過去を振り返ったところで、失ったものは還ってこない。時は二度と戻らないのだ。ならば今を生きる自分は一生懸命に生きていくしかない。前を向いて一歩一歩。それが強さになり、昨日を越えて明日に繋がると信じて。
「シン……そうね。私もそう思う」
ルナマリアが何度となくシンに微笑む。そんな二人を、コノエは少し眩しそうに見つめる。自分が教えたことを飲み込み、理解し、糧にする。元教師として、彼らの上官として嬉しいことこの上ない。
「君たちならやれるさ」
幾ばくかの期待と確信的な自信をもってコノエは言う。彼らの作る未来は希望に満ちあふれていると。
『コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! モビルスーツパイロットは搭乗機にて待機願います! 繰り返します――』
けたたましいアラームとともにオペレーターからの指示が飛ぶ。シンとルナマリアは急いで缶の残りを飲み干し、ごみ箱に捨てた。
「艦長、失礼します! お話、凄く勉強になりました!」
「艦長、行ってきます!」
「ああ。気を付けてな」
略式敬礼を交わし談話室を後にする二人。コノエはそれを見送ると、自分も缶を空にした。
「さて、私も行くとしよう。今回も忙しくなりそうだな」
無造作に缶を放り、コノエも談話室を出る。放たれた空き缶はガコンとごみ箱に収まった。それが自らの
ご感想などございましたらよろしくお願いいたします。