第一話『異変』――PROLOGUE――
西方世界の神として君臨せし超大国、"
そんな
…―――天穿つ閃光と共に、日独冷戦世界から消え去ったのであった。
煌めくシャンデリアの
円卓に集うは14人の閣僚と、
そんな中、白色の軍服に身を包んだ一人の大臣が、キューバ葉巻を片手に口を開いた。
「…さて、新年早々叩き起こされた
彼の名は"ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング"。
アドルフ・ヒトラー内閣の航空大臣であり、国防軍の階級は最高位たる"国家元帥"。
そして何より…彼は
「皆様、御注目下さい。」
閣僚達の視線の先には、今度発生した
"アルトゥル・ザイス=インクヴァルト"外務大臣の姿がある。
「事態が判明致しましたのは本日早朝の事であります。本日3時40分頃、イタリア大使館より、
この海面変動について閣僚
ゲーリングもオーバーザルツベルクの別荘で一報を聞き、7時間掛けて会議に参加した身である。
「しかしながら夜間の事でありましたので、被害の全容把握が成されたのは今朝5時頃であります。イタリア政府広報の発表によりますと、沿岸部は軒並み大波の影響を受け、
最大で40mの海面変動が確認された地域も存在しているとの事です。」
その言葉に、軍需大臣たる"ベルトルト・コンラート・ヘルマン・アルベルト・シュペーア"は、
「…40mは13階の高層建造物に相当する。帝国外務省の新庁舎とほぼ同じ高さだ。」
と、建築家としての視点から語った。
ザイス=インクヴァルトは続ける。
「気象台からの報告によりますと、海面変動が開始されたと考えられる時間に地震は発生しておらず、今度の海面変動は
「では原因は何かね?40mもの大波を引き起こした要因など……地震以外に考えられぬよ。」
閣僚会議は暫しの静寂に包まれる。
この40mにも及ぶ巨大津波、地震でなければ容易に引き起こせるものでは無い。
…その時…シュペーアの脳内に、ある一つの要因が浮かんだ。
それならば40mの津波が発生するのは必然たる事で、在ってはならぬ大事件・大災害でもある。
「…まさか…ジブラルタルか…?」
閣僚
「…シュペーア殿…まさかジブラルタル
その昔、"アトラントローパ"と呼ばれる人工大陸の計画を提唱したドイツ人技術者が存在した。
名を"ヘルマン・ゼイゲル"と言う。
アトラントローパとは、地中海の出入り口に当たる"ジブラルタル海峡"・"ダーダネルス海峡"・"シチリア海峡"の3つの海峡を
この世界においてアトラントローパ計画は大ドイツ国政府によって実行に移され、既に数十mもの水位低下を発生させていたのだ。
…―――その3つの海峡ダムの内一つでも崩壊したならば、地中海沿岸の地形*3も考慮し、今度の40mにも及ぶ海面変動の要因として十分、いや十二分に有り得るだろう。
しかしシュペーアは…
世界に名だたるドイツ科学の結晶が崩壊した
「
「では、報告致します」
地中海で発生した巨大海面変動に際し、同日午後、総統宮殿の戦略会議室に災害対策本部が設置された。最も、実際に災害対応に当たるのはイタリア政府であり、この本部は災害全容や邦人の被った被害の把握、アトラントローパ関連の調査の為に存在する。
以下は、アトラントローパ担当大臣を兼任するアルベルト・シュペーアによる、災害対策本部での報告である。
「本日午後3時頃、今度の巨大海面変動に際して各地のアトラントローパ関連施設…即ち"ジブラルタル"・"ダーダネルス"・"シチリア"の
現在、外務省機をジブラルタとダーダネルスへ向かわせて確認を取っております。
―――…報告は以上です。」
…
……
…………
………同刻…蒼空に
地中海上空
『…しかし…気味が悪いです。…あの水平線。』
…水平線の傾きが異常なのである。
全く持って非科学的な事だが、まるで惑星が巨大化したかの様に
『…別の惑星にでも居る様だな。』
―――その数十分後…。
『機長、方位0-2-0に陸地が見えます。』
ヘッドホンから聞こえた声に、機長
「…あれは
その陸地はやがて…前方にも現れる。
気付けば、先程まで窓に映っていた水平線が全て、陸地へと変化していた。
「スペインにしては早すぎる。あの陸地は一体…。」
「…
…その後、フォッケ=ヴルフFw-300は災害対策本部より調査の指示が下され、
高度を落として
総統及びライヒ大統領:『アドルフ・ヒトラー』*5
総統代行:『ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング』総統代行者。*6
党官房:『マルティン・ルートヴィヒ・ボルマン』官房長。
総統官邸官房:『フィリップ・ボウラー』官房長。
大統領官房:『エーリヒ・ヴィルヘルム・ベルツ』官房長。*7
外務省:『アルトゥル・ザイス=インクヴァルト』外務大臣。
内務省:『ハインリヒ・ルイポルト・ヒムラー』内務大臣。
国防軍最高司令部:『ヴィルヘルム・ボーデヴィン・ヨハン・グスタフ・カイテル』総長。
航空省:『ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング』航空大臣
国民宣伝・啓蒙省:『パウル・ヨーゼフ・ゲッベルス』国民・啓蒙宣伝大臣。
財務省:『ルートヴィヒ・シュヴェリン・フォン・クロージク』財務大臣。
経済省:『カール・ブレシング』大蔵大臣。*8
司法省:『フリッツ・ノイマイヤー』司法大臣。
食糧農業省:『ヘルベルト・フリードリヒ・ヴィルヘルム・バッケ』食糧・農業大臣。
労働省:『テオ・フップアウアー』労働大臣。
科学・教育・文化省:『アルフレッド・バウムラー』科学・教育・文化大臣。
教会担当省:『ヘルマン・ムース』宗教大臣。
運輸省:『アルプレヒト・ルエーガー』運輸大臣。*9
郵政省:『ヤコブ・ネーゲル』郵政大臣。
軍事・軍需生産省:『ベルトルト・コンラート・ヘルマン・アルベルト・シュペーア』軍需大臣兼アトラントローパ担当大臣。
国家弁務官区統轄省:『アルフレート・エルンスト・ローゼンベルク』国家弁務官区統轄担当大臣
導かれし