第三帝國召喚   作:(休止中)サン少佐

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第一部・第一章『導かれし異界の月』
第一話『異変』――PROLOGUE――


 西方世界の神として君臨せし超大国、"Großdeutsches Reich(大ドイツ国)"は、

惨憺たる大戦争(第二次世界大戦)結果(すえ)、欧州に新秩序(ニュー・オーダー)を構築するに至った。

 

 そんなGroßdeutsches Reich(大ドイツ国)は、1954年12月31日正子―――…

 

…―――天穿つ閃光と共に、日独冷戦世界から消え去ったのであった。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

…グレゴリオ暦1955年1月1日、午後2時30分頃。

―――大ドイツ国、世界首都ゲルマニア。総統宮殿(フューラーパラセイ)。―――

 

 煌めくシャンデリアの(もと)、大ドイツ国の頭脳が一堂に会する。

円卓に集うは14人の閣僚と、テレビ中継(ビデオテレフォニー)でブルグント騎士団領から参加した内務大臣である。

 そんな中、白色の軍服に身を包んだ一人の大臣が、キューバ葉巻を片手に口を開いた。

「…さて、新年早々叩き起こされた理由(わけ)を聞こうじゃ無いか。」

彼の名は"ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング"

アドルフ・ヒトラー内閣の航空大臣であり、国防軍の階級は最高位たる"国家元帥"。

そして何より…彼は総統職の代行者(ヒトラーの代理人)であった。*1

 

 「皆様、御注目下さい。」

閣僚達の視線の先には、今度発生した()()()()に関する説明を開始しようとする

"アルトゥル・ザイス=インクヴァルト"外務大臣の姿がある。

「事態が判明致しましたのは本日早朝の事であります。本日3時40分頃、イタリア大使館より、()()()()()()()()()()()()()()に関する通達がありました。」

 この海面変動について閣僚()は既に報告を受けていた。

ゲーリングもオーバーザルツベルクの別荘で一報を聞き、7時間掛けて会議に参加した身である。

「しかしながら夜間の事でありましたので、被害の全容把握が成されたのは今朝5時頃であります。イタリア政府広報の発表によりますと、沿岸部は軒並み大波の影響を受け、

最大で40mの海面変動が確認された地域も存在しているとの事です。」

 

 その言葉に、軍需大臣たる"ベルトルト・コンラート・ヘルマン・アルベルト・シュペーア"は、

「…40mは13階の高層建造物に相当する。帝国外務省の新庁舎とほぼ同じ高さだ。」

と、建築家としての視点から語った。

 

 ザイス=インクヴァルトは続ける。

「気象台からの報告によりますと、海面変動が開始されたと考えられる時間に地震は発生しておらず、今度の海面変動は()()()()()()()()()()()()()との事であります。」

「では原因は何かね?40mもの大波を引き起こした要因など……地震以外に考えられぬよ。」

閣僚会議は暫しの静寂に包まれる。

この40mにも及ぶ巨大津波、地震でなければ容易に引き起こせるものでは無い。

 

 …その時…シュペーアの脳内に、ある一つの要因が浮かんだ。

 

それならば40mの津波が発生するのは必然たる事で、在ってはならぬ大事件・大災害でもある。

 

 

 

 「…まさか…ジブラルタルか…?」

閣僚()は一斉にシュペーアの方を見た。

「…シュペーア殿…まさかジブラルタル堰堤(えんてい)*2が決壊したと(おっしゃ)りたいので…?」

 

 その昔、"アトラントローパ"と呼ばれる人工大陸の計画を提唱したドイツ人技術者が存在した。

名を"ヘルマン・ゼイゲル"と言う。

 

 アトラントローパとは、地中海の出入り口に当たる"ジブラルタル海峡"・"ダーダネルス海峡"・"シチリア海峡"の3つの海峡を堰堤(えんてい)によって塞いだ(のち)、地中海の海水を排出し淡水湖と干拓地を作り出す計画であった。

 この世界においてアトラントローパ計画は大ドイツ国政府によって実行に移され、既に数十mもの水位低下を発生させていたのだ。

 

 …―――その3つの海峡ダムの内一つでも崩壊したならば、地中海沿岸の地形*3も考慮し、今度の40mにも及ぶ海面変動の要因として十分、いや十二分に有り得るだろう。

 

しかしシュペーアは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

世界に名だたるドイツ科学の結晶が崩壊した(など)と言う…それは果たして有り得るのだろうか?

 

 「一先ず(ひとまず)、アトラントローパ関連施設に連絡を取って()()の有無を確認した上で、アトラントローパ計画関係者を招集し、今度の様な巨大海面変動が発生した際に想定される被害やその他事象に関する説明を求めよう。」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 「では、報告致します」

地中海で発生した巨大海面変動に際し、同日午後、総統宮殿の戦略会議室に災害対策本部が設置された。最も、実際に災害対応に当たるのはイタリア政府であり、この本部は災害全容や邦人の被った被害の把握、アトラントローパ関連の調査の為に存在する。

以下は、アトラントローパ担当大臣を兼任するアルベルト・シュペーアによる、災害対策本部での報告である。

「本日午後3時頃、今度の巨大海面変動に際して各地のアトラントローパ関連施設…即ち"ジブラルタル"・"ダーダネルス"・"シチリア"の堰堤(えんてい)施設に、外務省の巨大通信施設を用いて連絡を行いました。3時12分頃にシチリア堰堤(えんてい)からの応答があり、"異常な水位低下を確認したが、施設に損害は無い"との回答が有りました。しかし"ジブラルタル堰堤(えんてい)"・"ダーダネルス堰堤(えんてい)"からは、現時点で一切の応答もありません。

 

現在、外務省機をジブラルタとダーダネルスへ向かわせて確認を取っております。

―――…報告は以上です。」

 

 

 

 

 

 …

 

……

 

…………

 

 ………同刻…蒼空に鉤十字(ハーケンクロイツ)が輝く…。

地中海上空1000m(3600ft)で煌めくは、大ドイツ国外務省所属のフォッケ=ヴルフFw-300である。Fw-300は外務省職員を乗せ、ドイツ領ジブラルタルの"()()()()()()"に飛行していた。

 『…しかし…気味が悪いです。…あの水平線。』

()()()()を真っ先に気付いたのは、船舶や航空機の観測員であった。

 

…水平線の傾きが異常なのである。

 

全く持って非科学的な事だが、まるで惑星が巨大化したかの様に()()()()()()()のだ。

『…別の惑星にでも居る様だな。』

 

 

 

 ―――その数十分後…。

 

 『機長、方位0-2-0に陸地が見えます。』

ヘッドホンから聞こえた声に、機長()*4はコックピットの窓から外を見た。

「…あれは何処(どこ)だ、フランクライヒか?」

その陸地はやがて…前方にも現れる。

気付けば、先程まで窓に映っていた水平線が全て、陸地へと変化していた。

「スペインにしては早すぎる。あの陸地は一体…。」

「…一先ず(ひとまず)本部に報告を。」

 

 …その後、フォッケ=ヴルフFw-300は災害対策本部より調査の指示が下され、

高度を落として()()()()()へと向かい初めた。

 

 

小説『第三帝國(サードライヒ)召喚』

第一部・第一章「導かれし異界の月」

 


 

ヒトラー内閣

総統及びライヒ大統領:『アドルフ・ヒトラー』*5

     総統代行:『ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング』総統代行者。*6

      党官房:『マルティン・ルートヴィヒ・ボルマン』官房長。

   総統官邸官房:『フィリップ・ボウラー』官房長。

    大統領官房:『エーリヒ・ヴィルヘルム・ベルツ』官房長。*7

      外務省:『アルトゥル・ザイス=インクヴァルト』外務大臣。

      内務省:『ハインリヒ・ルイポルト・ヒムラー』内務大臣。

 国防軍最高司令部:『ヴィルヘルム・ボーデヴィン・ヨハン・グスタフ・カイテル』総長。

      航空省:『ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング』航空大臣

 国民宣伝・啓蒙省:『パウル・ヨーゼフ・ゲッベルス』国民・啓蒙宣伝大臣。

      財務省:『ルートヴィヒ・シュヴェリン・フォン・クロージク』財務大臣。

      経済省:『カール・ブレシング』大蔵大臣。*8

      司法省:『フリッツ・ノイマイヤー』司法大臣。

    食糧農業省:『ヘルベルト・フリードリヒ・ヴィルヘルム・バッケ』食糧・農業大臣。

      労働省:『テオ・フップアウアー』労働大臣。

科学・教育・文化省:『アルフレッド・バウムラー』科学・教育・文化大臣。

    教会担当省:『ヘルマン・ムース』宗教大臣。

      運輸省:『アルプレヒト・ルエーガー』運輸大臣。*9

      郵政省:『ヤコブ・ネーゲル』郵政大臣。

 軍事・軍需生産省:『ベルトルト・コンラート・ヘルマン・アルベルト・シュペーア』軍需大臣兼アトラントローパ担当大臣。

国家弁務官区統轄省:『アルフレート・エルンスト・ローゼンベルク』国家弁務官区統轄担当大臣

 

*1
(1941年6月21日の総統布告によって、ヒトラーが何らかの要因によって国家指揮が不可能になった場合、ゲーリングが総統職の代行を務る事が(あらかじ)め決定されていた。)

*2
(堰堤…"ダム"と同義。)

*3
(アトラントローパの影響で、地中海の地形は現実と異なる。)

*4
(具体的には機長と副操縦士・航空機関士である。)

*5
(体調悪化の為、現在は自身の別荘たる"ベルク・ホーフ"で療養中。)

*6
(1941年6月21日の総統布告によって、1940年代末から総統職を代行していた。)

*7
(架空の人物。)

*8
ドイツ帝国銀行(ライヒスバンク)の総裁でもある。)

*9
(架空の人物。)




導かれし太陽(日本)→導かれし(独国)
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