堅牢たる自然の障壁に守られ、長きに渡って王政と独立を維持し続けた"砂丘の王國"。
"クイラ王国"。
雲一つ存在し得ない砂漠地帯…青々とした空が延々と続く。
燦々と降り注ぐ日差しの中…クイラ王国の民族衣装を身に纏った
「…余には解らぬ。
あの"猛毒の泉"が、貴国に何の利益を齎すのかね。」
綺羅びやかな民族衣装を着たクイラの王族が、先程の
「科学技術においては"魔石"の様な物です、陛下。
今やムー国の科学技術において、"石油"は欠かせぬ物となっております。」
…そう言った彼の名は、"ランス"。
列強国たるムー国の陸軍大尉であり、ムー国外務省管轄下のクイラ局に属していた。
彼は
「遊牧民が定住し、遊牧文化が色褪せるのは悲しい事だが…。
国家と国民が豊かになるなら、それは良い事なのだろうな。」
クイラ王国の地下資源は正に"豊か"としか言い様が無く、持ち前の地下資源で工業化を成功させたムー国よりも…遥かに豊富である。
しかしクイラ王国を統べる"王の中の王"の
国内は結束しておらず、更には文明圏から離れている故に交易も儘ならない。
それこそがクイラ王国の工業化を妨げる要因であった。
ムー国はそう言った文明圏外国に投資や技術協力を行い、対等に交易が可能な文明国を増やす取り組みを考案した。その第一号としてクイラが選ばれたのであった。
「約束します、陛下。この国は我が国に劣らない東方世界の文明国となります。」
「ハハ…有り難い事だ。列強国がそう仰って頂けるとは…。」
"クイラの未来は明るい"
―――しかし…その時である。
談笑する二人の前に、一人の従者が駆け寄る。
「陛下!…そしてランス様!
空を!空を御覧ください!」
ランスは天を見上げた。
…しかし、永遠の蒼が広がるばかりである。
何か変わったものは見えない…そう言おうとすると、
「…!ランス殿!あれだ!」と、王族に右肩を強く叩かれた。
彼の指差す先を眺める。
…
……
…………すると低空で、"何か"が光った。
"何か"が空を飛んでいる…。
「…く…空襲じゃ!空襲じゃあ!」
慌てふためく王族を横目に、ランスは冷静に鞄から双眼鏡を取り出し、慣れた手つきで双眼鏡を向ける。
「ランス殿!逃げますぞ!」
「あ…あぁ…はい…!」
しかし彼は飛龍を確認する間も無く、現地人によって退避させられた。
「空襲だ!対空戦闘配置!…急げ!」
櫓に兵や魔法使いが並び、"砂丘の王都"は臨戦状態と化す。
…―――中央暦1639年1月1日午後…。
「飛龍め…この辺境に何の用だ…!」
砂丘に竚む王都、バルラートに飛龍が現れたのだ…!
「…!…この音は…この音は何だ…!?」
「耳を塞げ!妖術かもしれん!」
謎の轟音を上げ向かってくる飛龍に、兵士達は若干の恐怖を感じざるを得なかった。
「………!そろそろ射程に入る―――…っ!速いっ!」
「之では魔導士が対応出来ません…!」
その飛龍は異様な程に速く、クイラ側が攻撃を開始する正にその時、頭上を掠めるが如く風を切って飛び去った。
飛龍が攻撃する事なく、暫くして王都の対空警戒は解除された。
「……一体何だったんださっきのは…。」
クイラ王国には飛龍が生息しない。それ故、飛龍部隊も存在していない。
即ち、あの飛び去って行った飛龍を追跡する事は不可能なのだ。
…
…
大ドイツ国外務省所属のフォッケ=ヴルフFw-300であった。
同日夜。
帰投したFw-300の伝えた情報が、ザイス=インクヴァルト外相の元に齎された。
フランクライヒ南方に"既知の地形と一致しない砂漠地帯"が発見されたとの事だった。
「はぁ…之なら日本との外交問題が積み重なった方が幾らかマシに思えるよ。」
嘆くザイス=インクヴァルトの前には、
…その異常事態はドイツのみならず、欧州全土を震撼させる事となった。
地中海の位置関係により、初接触はクワ・トイネでは無くクイラ王国になりました。
ランスさんの元ネタは「アラビアのロレンス」です。
…地図についてはもう少しお待ち下さいませ…