第三帝國召喚   作:(休止中)サン少佐

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第三話『"甚大なる資源危機"の予測』

…グレゴリオ暦1955年1月2日、午前9時頃。

―――大ドイツ国、世界首都ゲルマニア。総統宮殿(フューラーパラセイ)の災害対策本部。―――

 

 ブラウン管に映し出された大海は荒々しく白波を立てている。

閣僚()は"それ"を…驚愕の眼差しで見つめていた。

「…本当に之が…?」

今、眼前にて非科学的な光景が出力されている。

現在進行系で、帝国(ライヒ)は非科学的事態に晒されているのだ。

 

「…之がウクライーネだ。」

 

ブラウン管に映るは、ウクライーネ国家弁務官区…

"()()()"場所の中継映像であった。

 

 「かっ…各国家弁務官区に連絡を…か…確認を取らなくては…」

国家弁務官区統轄大臣たるアルフレート・エルンスト・ローゼンベルクは、書類を抱えて会議室から退出してしまった。時を同じくして、外務省のザイス=インクヴァルト大臣と食糧・農業生産省のヘルベルト・フリードリヒ・ヴィルヘルム・バッケ大臣も部屋を飛び出していった。

 …新年早々発生した"未曾有の危機"に際し、各省庁は対応に奔走する事となったのである。

 

 「…まさかこの様な事態になるとは…。」

「逆に想定出来ると思うのか、ボルマン。」

外国に居る邦人の被害確認を目的とした災害対策本部は、何時(いつ)しか当事国として被害の全面把握を行う為の本部へと移り変わった。

 「…しかし暑いな…。冷房をもっと強めてくれ。」

本日1955年1月2日は、冬の真っ只中である。

しかし年を跨いでからと言うものの、気象台は異常な温度上昇を記録しており、各地では雪解けによる鉄砲水や泥濘と行った災害が多数発生していた。

 「だが良かった事が一つだけある。あの日本人(ゲルヴァーアッフェ)*1共が消えたぞ。」

ゲーリングの言葉に対し、僅かな笑いが起きた。

…そう、大日本帝国の存在すらもを確認出来ていないのである。

 

 1949年のバリクソル湖畔事件以来、日独関係は悪化の一途を辿っていた。

近衞文麿公爵によって行われた日独和平交渉の結果として"ベルリン万博"や"東京オリンピック"が開催された他、日独間の技術・文化的交流が行われたが…。

 

 …今度の"異変"は、日独首脳会談事前交渉の直前に発生した。

大日本帝国の消失によって、日独関係改善を図る工作は無に帰したのである…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の内に、東方地域全ての消滅が確認された。

 

 

 

 以下は、"ヘルベルト・フリードリヒ・ヴィルヘルム・バッケ"大臣からの報告である。

「…東方領土の喪失。それは即ち、この帝国(ライヒ)()()()()()()()()が発生した事を意味します。」

…ドイツの良き同盟国にて、欧州の大産油国・大農業国であった"ルーマニア王国"。

生存圏(レーベンスラウム)における第三帝國(サードライヒ)食糧供給源(生命線)たる"ウクライーネ国家弁務官区"。

…それらの在った東方地域が消滅したのだ。

 

「今度の東方地域消滅並びに異常気象を踏まえて、我々"|食糧・農業生産省"の計算によりますと、

早くても今年の夏、遅くても今年の(すえ)には…

 

大ドイツ国はカブラの冬を彷彿とさせる大飢饉に陥るでしょう。」

 

 "カブラの冬"…それは、第一次世界大戦中のドイツ国で発生した大飢饉である。

ドイツでは主に飼料用に用いられる"カブラ(ルタバガ)"を食さねば餓死してしまう様な食糧危機であった為に、76万人もの餓死者を出した。NSDAP(国家社会主義ドイツ労働者党)による農業政策では、"如何(いか)ドイツ国民ら(ドイチェス・フォルクス)を餓えさせないか"が、国民が特に懸念する所であった。

 …しかしこの時ドイツに降り掛かった"甚大なる資源危機"は、食糧のみでは無い。

「そして問題は他にも御座います。…石油関連施設の消失です。

書類上の数値ではありますが、現在我々に残された燃料備蓄は()()()()。配給統制を行っても()()()()にしかならないかと。正確な石油備蓄の数値は、現在調査中であります。」

 …この様な資源危機に際し、まず国家がすべき事は只一つ。

「新年早々国民には申し訳無い事をするが…総統代行者としての権限を用い、国家非常事態を宣言すると共に、迅速なる食糧並びに石油を対象とした配給制の実施を行う事とする。」

 

 

 

 

…グレゴリオ暦1955年1月3日、午後8時頃。…

―――大ドイツ国、ポツダム郊外のテレビシアター*2にて。―――

 

 視聴者()の前で、シアターのブラウン管に帝國鷲(ライヒスアドラー)が浮かび上がる。

之よりナチス・ドイツのテレビ放送が始まるのだ。

 

『Achtung! Achtung!*3 此方(こちら)はパウル・ニプコー放送局です!』

そう挨拶を初めたのは、同放送局の女性アナウンサーである。

 

 …大ドイツ国とは、世界で最も早く"テレビ放送"を実現した国家であった。演説やプロパガンダ映画のみならず、映画・ドラマ・料理番組・音楽番組・美容番組・ニュース番組・宝くじの合格発表に至るまで、多種多様な番組を放送している。

"ドイツテレビ放送"チャンネルは、世界に先駆けて現代的テレビ放送を成し遂げていたのだ。

 

『本日はドイツ国民へ向け、大ドイツ国政府より重大な発表が御座います。

ドイツ・テレビ放送は今日もドイツ国民の為に。

 Heil Hitler!(ヒトラー万歳!)

 

―――1月3日午前8時1分、大ドイツ国政府による国家非常事態宣言―――

 

『Achtung. Achtung.ドイツ国民の皆様へ。

此方(こちら)はパウル・ニプコー放送局"ドイツテレビ放送"であります。

大ドイツ国は"国家非常事態"の宣言を致します。

繰り返します、大ドイツ国政府は、"国家非常事態"を宣言致します。

 

 之は1955年1月1日午後、欧州東方地域の消失が確認された為であります。

繰り返します、東欧の消失が確認されました。

この東方生存圏消失と言う非科学的事態に際し"()()()()()()()()()()()()()()"を防ぐ為、

加えて"食糧及び石油資源に関する統制令"を布告する事を、

昨日午後8時40分に閣議決定致しました

本布告によって統制下に置かれる品目は以下の通りであります。

コムギ、オオムギ、ライムギ、テンサイ、ジャガイモ、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、砂糖、牛乳、チーズ全般、チョコレート、茶、酒類全般、ガソリン、灯油、軽油、A重油、B重油、C重油、粗製ガソリン、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭、そして木材。』

 ドイツは石炭産出国であるが、石油の代用品として石炭需要が高まる事を考慮し、統制下に置かれる事となった。木材に関しても同様である。

『この件に関しましてヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング空軍大臣閣下は、「大ドイツ国において今度の様な配給統制は大戦争以来の事であるが、この生存圏消失と言う事態は大ドイツ国存続に関わる事象であり、ドイツ国民の為、ドイツ国家の為、そして総統閣下の為に、必ずやこの危機に対する解決策を見つける事を約束しよう。」と述べられました。』

…視聴者は静かに傾聴していたが、心の内では困惑しているであろう。

『全ドイツ国民の皆様、今は耐え忍ぶ時であります。』

―――パウル・二プコー放送局、ドイツテレビ放送。―――

 

   …グレゴリオ暦1955年1月3日。大ドイツ国政府は国家非常事態を宣言。

 石油・主要食糧・生活必需品が配給制に移行され、内務省管轄下として設置された"食糧統制庁"は各地で食糧の徴発を行った。更には政府によってパン(など)の標準品質が引き下げられ、食糧危機に対する迅速な対応が行われた。

 

 時を同じくして周辺諸国も同様の制度に移行し、

欧州で発生した資源危機は、国民の前に表面化されたのであった。

*1
(ゲルヴァーアッフェ…ドイツ語で「黄色いサル」)

*2
(テレビ放送開始から20年が経過したものの、未だテレビを持つ程の経済的余裕を持つ者は少ない。そこで国民宣伝・啓蒙省は、ドイツ全土にテレビ放送を視聴できるシアターを設置したのである)

*3
(ドイツ語で「御注目下さい!」を意味する。)




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http://regestry.m10.coreserver.jp/broadcast/nazi.html
 見つけた時はビックリしましたよ…ネットって凄いですね…
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