第三帝國召喚   作:(休止中)サン少佐

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第一部・第二章『クワ・トイネの欧州使節』
第六話『蓮の庭園、政治部会。』


 …水面に浮かぶ睡蓮は、神々しく煌めく光芒に照らされる。

此処は"蓮の庭園"。国家運営に携わる上級貴族達が集う"クワ・トイネ公国の中枢"である。

「しかし()()()()()()()な。…之で完全にロウリアは敵対したぞ。」

クワ・トイネ公国首相"カナタ"は言う。

 先日、ロウリア王国軍隷下と思われる騎龍が行った()()()()()()()に対し、クワ・トイネ公国とクイラ王国の両国はロウリア王国に対して強く抗議した。

…しかし実際には"国交樹立はおろか認知すらしていない文明圏外国による侵犯"であり、必然たる勘違いにより発生したこの一件は、ロウリアとの溝をより深める事に繋がったのだ。

「軍務卿、私はIf(もしもの話)を聞きたい。

仮に対ロウリア戦争が発生したと言うIf(もしもの話)だ。…我が国は勝てると思うか。」

「はっ。」

軍務卿は姿勢を正し、僅かに焦った様子を見せながらも、カナタ首相からの質問に答える。

「…ロウリア王国は人口大国であります。しかし…しかしロウリア国王が、その莫大な人的資源を駆使出来る程の影響力(プレゼンス)を持つとは考えられません。ロウリア王国は南部諸国を平定したばかりであります。果たしてその様な短時間で現地の諸王が忠誠を誓うでしょうか?」

 もっともな話である。()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う訳だ。

「軍務卿、一つ宜しいだろうか。」

…すると、リンスイ外務卿が発言を求めた。

「ロウリア大王を拝謁した事はあるか?」

「…いや、私は無いが。」

 

 「……私は、大王としての恐ろしい力量を見た。それは…万人を従える"()()()()()()()()"だ。」

リンスイ卿は姿勢を正し、カナタ首相の方を向いた。

「現大王は王子時代(代替わり前)から貴族との関わりを強め、平民の前にも姿を現し、国家全体からの圧倒的支持を受けている。尚且つ交渉上手な宰相"マオス"を抱えております。

現大王がロデニウス大陸西部一帯を纏め上げる事(など)…私は容易いと考えます。

 

 …ハーク・ロウリア34世を決して侮ってはなりませぬ。

これは外交屋としての警告であります。」

 その言葉に、蓮の庭園は暫時静寂に包まれた。

貴族平民問わず絶大なる支持を受ける()()()()()。人王"ハーク・ロウリア34世"。

内政・外交戦・裏回し…その力量は宰相たる所以(ゆえん)である。その名も"マオス"。

そして…大陸に名だたる戦の神々。大将軍"パタジン"、ロウリア三将軍"パタジン"、"ミミネル"、"スマーク"が存在している。

 第三文明圏で頭角を表しつつある非文明国家"ロウリア王国"は、

彼等(かれら)()()()によって成ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 「…―――話は変わるが…今度の領空侵犯を起こしたグロス・ドイチェス帝国に関する追加情報はあるかね?」

此処で話題は大ドイツ国へと移り変わった。

「今の所は…妙な"鉄の地龍"を有する事以外に情報は有りませぬ。」

「他には。」

外務卿は一瞬たじろぐも、

「他には…彼の国の指導者が"アドルフ・ヒットラー"である事でしょうか。」

と答えた。

「…彼の国の情報が圧倒的に少なすぎるな…折角"貸し"を作ったと言うのに。」

ドイツ側は理由を明かさなかったが、彼等は莫大な食糧をクワ・トイネから輸入している。

それは紛れもない()()()()()で、一種の"手綱"だと、クワ・トイネ側は考えていた。

 …そして実際にもそうであった。ドイツは食糧不足に陥り、クワ・トイネからの食糧輸入が断つ事が出来ぬ"命綱"となっていたのだ。

「…情報を得なければ。どの様な国家なのか見当がつかぬ。」

 …すると外務卿が、ある提案を行う。

 

「首相閣下、グロス・ドイチェス帝国に使節団を派遣するのは如何でしょうか?」

 

 

 

 

 中央暦1639年・グレゴリオ暦1955年、2月1日。

独アルトゥル・ザイス=インクヴァルト外相の元に、クワ・トイネのドイツ公使館からの電報が届けられた。

 

"クワ・トイネ公国政府は欧州への使節団派遣を検討している"

 

 大ドイツ国への使節団派遣では無い。

欧州全体への派遣である。

恐らく修好の為の使節であり、各国元首との会談も含まれるだろう。

 …現在、消滅が確認されていない国家は10ヶ国。

・アルバニア国

・イタリア社会共和国

・クロアチア独立国

・サンマリノ共和国

・スイス連邦

・スロバキア共和国

・セルビア国

・大ドイツ国

・ブルグント騎士団国

・リヒテンシュタイン公国

 

 この内、クロアチア独立国とセルビア国は紛争中で、アルバニア国は反政府運動が活発化している為に除外させなければならない。

即ちスイス連邦、イタリア社会共和国、サンマリノ共和国、大ドイツ国、ブルグント騎士団国、リヒテンシュタイン公国、スロバキア共和国の7ヶ国の間で、クワ・トイネ公国からの使節団派遣に関する調整を行う必要がある。

「……忙しくなるな…。」

ザイス=インクヴァルトは大きく独り言を呟いた。

 

 

 2月4日。

本国からの回答を受け取った各国在外公館は、クワ・トイネ公国との交渉の末、クワ・トイネの欧州使節団派遣に関する旅程が決定された。

 

 以下はその抜粋である。

 

2月13日:マイハーク港にてドイツ船籍の1万2千トン級貨客船"マーレヌス"に乗船し、ブルグント騎士団国のダンケルク港へ入港。

2月14日:ブルグント騎士団国の首都ヴェヴェルスブルクにて同国閣僚(円卓の騎士)()と会談。

2月15日:ブライトシュプールバーンでスイス連邦へ入国。首都ベルンを観光する。

2月16日:スイス連邦の国家元首及びリヒテンシュタインの国家元首と会談。ブライトシュプールバーンで大ドイツ国へ入国する。

2月17日:世界首都ゲルマニアを観光した(のち)"ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング"総統代行者と会談。

2月18日;ブライトシュプールバーンでスロバキア共和国に入国。同・国家元首と会談。

2月19日:ブライトシュプールバーンでイタリア社会共和国に入国。首都ローマを観光。

2月20日:イタリア社会共和国の国家元首並びにドイツ特命全権公使と会談。ブライトシュプールバーンでブルグント騎士団国に入国。

2月21日:ダンケルク港で再び貨客船"マーレヌス"に乗船。クワ・トイネ公国マイハーク港に入港し、帰還する。

 

 この欧州使節に際し、大ドイツ国の国民宣伝・啓蒙省は記録映画の撮影を実施する事となった。

 

 

 

   その映画の名は…

「Europäische Mission vom Fürstentum Kw(クワ・トイネ公国の欧州使節)a-Toine」

 

第一部・第二章「クワ・トイネの欧州使節」




 "マルティン・ボルマン"の言葉に、次の様なものがあります。
「僕は嫌と言う程知らされたよ。歪曲、中傷、おべっか、愚かさ、低脳、野心、虚栄心、金銭欲。要するに()()()()()()ばかりさ。ヒトラー総統が僕を必要とされている間は如何(どう)にもならないが、(いず)れ僕は政治から離れる。私は決心した!」
――ドイツ国総統官房長官"マルティン・ルートヴィヒ・ボルマン"――

 …彼の言う"人間の嫌な面"を、ドイツから追い出して北フランスの"箱庭"()()()()()のが、
この世界の"ブルグント騎士団国"です。

次回:「クワ・トイネ使節団、ブルグント騎士団国へ…」
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