機動戦士ガンダム 終天の御伽噺-フェアリーテイル-   作:7746MRRWAY

10 / 12
第九章 機動戦士

1.

あの時、何かが通じた気がした。

心が、産まれた気がした。

あの時、目に見えない景色が、見えた。

風が、吹いた。

何かが、流されてきた。

それは、小麦色の、お皿に見えた。

慌てて、飛び跳ねて、受け止めた。

抱きかかえた時、ジークの顔が頭に浮かんだ。

笑ってるのか、泣いてるのか、応援しているのか、心配しているのか、わからない、そんな顔だった。

胸の奥が、熱くなった。

赤く光る、刃のように。

でも受け止めたものは、ここには無い。

あの瞬間、バラバラの屑に変わって、消えたから。

 

おれは、独りになりたかった。

「君の所為じゃない。最後まで、自由だったから。いつも、いつでも、夢に、思いに、真っ直ぐで・・・憧れだった。」

しばらく、誰にも会いたくなかった。

「まったく、バカはどっちだよ。本当・・・生き急ぎやがって。」

どれだけ柔らかい言葉でも。

「・・・いいよ、壊れても、直せばいい。言葉も、思い出も・・・ここにあるから。」

刃のように鋭くて。

「ジークは、会いに行った。お父さんと、お母さんに。今頃、胸を張っていると思う。」

中の何かが、刻まれる。

 

「・・・ごめんなさい。」

 

2.

独りに、させて欲しい。そう、お願いしたら、あっさりと、許された。

大きな町は、忙しかった。でも、賑やかじゃなかった。たくさんの、黒い服の人が、正門を通って歩いてきた。大きな箱に、縋りついていた。たくさんの人が、傷つけあった。大切な人たちが、馬鹿にされていた。みんな忙しくて、それでも優しくて。そこに居るだけで、苦しかった。

あの人たちにも、あの人にも、居たのかな。そういえば、会うなって言われたまま。結局、分からなかった。・・・名前さえ。

だから、ここに居たくなかった。居るだけで、苦しかった。

 

だから、ここに来た。生まれて初めて見た、外の世界。他に行く宛てが無かった、それもあるけれど。

ここは、ずっと穏やかだった。でも、賑やかだった。静かな公園のベンチ、そこに、たぶん、半日くらいは座っていた。たくさんの文字が、目に入る。戦勝記念セール、復興支援バーゲン、〇〇〇記念杯。ここでは割と大きな木の陰で、おじさんが2人、ケンカをしていた。1人は、普通の恰好。もう1人は、大きな町にいた人が、黒い眼鏡をかけたような。ああ、色眼鏡って、そういうことか。

 

しばらくこうしていて、やっと気付いた。たったの、15日。おれの一生からすれば、ほんの一瞬。でもなぜか、ほかの時間よりも、はっきりと、思い出せる。兄弟と過ごした、はてしない時間よりも。

「・・・何も知らなかった、ジークのこと。」

おれは、知らない。夢を、託されたはずなのに。

夢は、知っている。何度もその口から聞いたから。でも、いつ、どうして、そんな夢を見始めたのかは知らない。どんな道を歩いてきて、どれだけ頑張ったのかも。

嫌いな食べ物は知っている。好きな食べ物は分からない。嫌いな物以外を、みんな美味しそうに食べていたから。

・・・そうか。本当に、つらかったのは。

「みんな、おれの知らないジークを、知っていた。」

話を合わせて笑うことさえ、辛くなった。

だって、おれたちの旅は、こんなに、短くて。

おれの一生は、まだまだ続いて。

このまま生き続けていたら、みんな、先に、死んで、上書きされて、忘れて。どれだけ、託されても、いつか。

「みんな、消えて・・・。」

 

託された、けど。

もう、地球は無い。

この国以外に、人間は、いない。

どこに行って、何をすればいい。

「・・・幸せって、なんだよ。」

どうすれば、なれるんだ。

 

日が、もうすぐ暮れる。でも、帰る場所はない。何も、食べたくない。眠たくも、ない。人間っぽく振る舞う必要がなくなってから、必要ないときは、全部、しなくてよくなった。

でも、ここは、そろそろ出なきゃ、怒られる。

公園の曲がった棒の間を抜けて、茶色の地面から灰色の地面へ。前を見ても、何もない、はずなのに。

 

・・・?

何かが、あった。

灰色の建物と、建物の、間。

 

人の、手に見えた。

でも白というより、曇った透明に、見えた。

掌を向けて、親指以外を同時に曲げる。それを、何度も繰り返す。

その意味は、知っていた。

おいで、おいで。

黒いおじさんは、また別のおじさんとケンカをしていた。

 

行くところもないし、行ってみよう。

これが好奇心だって、初めて自覚した。

建物の間は、真っ暗だった。まだ、外は明るいのに。

それでも、その手は、はっきり見えた。

相変わらず、おれを、呼んでいる。

少しずつ、その手は、小さくなる。遠くなる。

 

待って。

そう思って、おれは、走り出した。

外側から見るよりもそこは、ずっと広く感じた。

 

「・・・おーい・・・ム・・・くーん・・・」

後ろから、聞き覚えのある声がした。

その言葉は、きっと、おれの耳には、届かなかった。

 

3.

真っ白な、部屋。不自然な、くらいに。

大きさは、あの、ロビーってところくらい。

入口も、出口もない。

ここは、どこだ。

そう思って振り返ると、()()はいた。

 

女の子。

背は、おれと同じくらい。

肌は、あの時見た手と、同じ色。

眼は、ガラス玉のようで、名前も知らない色で、ぼんやりと光っていた。

髪は、床に着くくらい、長い。何色とも、言えなかった。揺れるたびに、色が変わった。

 

背景も、白。服も、白。その子も、基本的には、白。なのに、なぜだかはっきりと見えた。

「はじめまして」

透き通るような声。でも、美しすぎて、寒気がした。

おれたちは、しばらく、見つめ合った。

この子は、出逢ってきた、誰とも、どんな人間とも違う。

誰もが、話す相手の眼を見ていた。おれたちも、自然とそうなった。逸らすことはあっても、頑張って見ようとしていた。

頭が、揺れる。視線が、揺れる。髪が、揺れる。

この人は、なにを見ているのだろう。どこを見ているのだろう。

「おねがいがあります」

唇が、動く。声が、聞こえる。でも、違和感がある。

声と、喉と、音と、口が、バラバラに、動いている。

この子は、誰と喋っている。

 

 (わたし)を殺してください」

 

意味が、分からなかった。

聞き返す言葉を考えるのに、かなりの時間がかかったと思う。

「・・・なぜ。」

その子は、即答した。

「あなたが主人公だからです」

・・・吸って、吐いてを、5回、繰り返したと思う。

「・・・どうして。」

間を置かずに、答えが返ってきた。

 (わたし)がラスボスだからです」

・・・言っている意味が、わからない。特に一人称が、聞き取れない。なのに、その子の言葉は続けられる。

「もっと言えば (わたし)たちしか残っていないからです」

自分の呼吸が、出来ているのか。わからない。

「・・・だから、どうして。」

女の子の視線が、ゆれた。三度ほど、往復した。

「この物語を終わらせたいからです」

・・・終わらせる、何を、だって。

「・・・だから、なんで。」

「新作を見たいからです」

「・・・だから、何の。」

「ガンダムの新作です」

「・・・何が、何なんですか!」

「だからいまの物語を終わらせます」

「・・・何が、何で!」

「主人公がラスボスを倒して感動の最終回ということです」

 

頭が、真っ白になった。

「あなたは、本当に、何を、言って。」

 

 

 

「・・・そもそも、()()()()()()()()()()()()。」

 

4.

「はあ」

目の前の女の子は、大きなため息をついた。

「そこからですか」

そう言うと、その子はくるりと反対方向に振り返って、歩き出した。

「ついてきてください」

 

・・・どれだけの距離を歩いただろう。代わり映えしない廊下の景色を眺めながら、ひたすらその背中を追っていく。それが終わりに近いと気づいたのは、その先に、大人1人分の大きさの、扉のようなものが見えた時だった。

「入ってください」

目の前の白色の扉が割れると、そこには果てしなく広い空間が広がっていた。高さは、建物の4階くらいだけれども、壁らしいものが見当たらない。その代わりに、目線と合うよう嵩上げされた透明な箱が、無数に並んでいた。

「ああ触らないで下さい」

一番手近な箱を指して、そう言った。その中には、人型の何かが入れられていた。

「・・・これは、人形?」

いや、ただの人形じゃない。その表面には服の代わりに、ほぼ直線で形作られた鎧が着せられていた。

違う、よく見れば、人の形をしていないものもある。ところどころ、人間の骨格を外れたものも見られた。その手には、それぞれ個性的な道具が握られていた。銃、刀、槍、鎚、大砲。それらは、敵を破壊し、人を殺すための武器のように見えた。

「・・・モビル・・・スーツ・・・?」

飾られていたものは、おそらく手のひら大に縮小された、MS(モビルスーツ)だった。まるで時が止まったかのように、決まった姿勢のまま静止している。実体の無いビームも、火花も、よく見ると半透明の何かで再現されている。

・・・でも、知らない()()がたくさんある。ジークたちが乗っていたものとも、違う。ケンさんたちが乗っていたのとも違う。見たことのない武器を持ったり、背負ったり、ぶら下げたりしている。

「おどろきましたか」

後ろから、声を掛けられる。

「全部 (わたし)が作ったんですよ」

「・・・これを、全部、独りで・・・?」

さっきまでいた場所。そこで、あの子たちが持っていた、思い思いの宝物、玩具たちを思い出した。そこには、ところどころで組み立てた跡、継ぎ目のようなものが見えた。アスミ先生のカバンの中のベルトにも、わかりづらいけど、それがあった。でも、ここにある人形には全部、それがない。

「・・・全部、手作業で・・・?」

「はい」

「・・・どれだけの、時間を?」

「暇だけはありましたから」

 

数十体の人形を見比べて、気が付いた。どこか、見覚えのある顔が混じっている。ある範囲では、10体に1体。多い場所では、2体に1体。

確かに、似ていた。特徴的な二つの目と、額の角、一部だけ張り出した下顎。イーヴノスに、ジヌーンに、バルダンデルスに、灰色のあいつに・・・ハゥフューレに、ジャバウォックに。

「気づきましたか」

「・・・あの顔。」

「そうそれがガンダムです」

あの子の声が、急に、ぱっと、明るくなったように、感じた。

・・・()()()()。・・・また、その言葉。

「・・・玩具、ですか。」

「いいえ総て実在した兵器です不思議でしょう」

・・・実在した、兵器?

「一応年代ごとにゾーン分けしています」

よく見ると、ケースには年代らしい数字が印字されている。

「ですがどの時代にもその名とその顔が異なった意味を背負い出現する」

長いものでは、千年以上の開きがあった。それだけ時代が空いて、同じ名前と、似た顔が、必ず?・・・そんな、ことが。

「素晴らしいでしょう」

でも、だとすると・・・。

「・・・ならなんで、同じ形で、同じものなのに大きさが違う。実物は、一つのはず。」

「スケールが違うからです詳しく言うと0.69%縮尺と0.10%縮尺とたまに0.17%縮尺があります」

わからない。

 

おれたちはその空間を、奥へ奥へと歩いた。

すると、ケース同士の間隔があいた、開けた場所に出た。そこに、さっきの場所よりまばらに、今度は透明なドームが置かれている。その中には、両腕で抱えるほどの岩が鎮座している。その上で、2人の小人が戦っている。銃を向け合ったまま、そのまま時間が止まっている。ここの人形は、どれも腕が、脚が、焼けて、途切れている。

壊れている、いや、まさか、自分で。

「なんで、せっかく作ったのに、自分で、壊して・・・。」

「史実を再現しているからです」

・・・史実。実際にあった、戦い。

右を見ると、同じような箱庭が、あった。土色の土台と、その上には小人が数人。それが、手の中の銃を地面に向けている。その先には、ぶちまけられた赤い塗料。その中で、小人よりさらに小さな小人が、必死に走りだそうとしている。でも、その世界の時は動かない。苦痛に歪んだ顔も、未来永劫変わらない。

「なんで、人殺しの武器を、兵器ばかりこんなに、作って・・・。」

「かっこいいからです」

もう、我慢できない。聞きたい気持ちを、抑えられない。

「・・・あの。」

「なんでしょうかまだ初心者コースの一割も消化していませんよ」

「・・・何千体も、何万体も。全部自分で、独りで作ったって。しかも、これだけ精巧に。・・・どれだけの、時間をかければ・・・。」

その子は、しばらくの時間をかけて、指を折っていた。やがて、諦め、投げ出すように、こう言った。

「さあ多分累計1万年ほどはかけたと思いますよ」

・・・いち、まんねん?

「退屈だけは永遠と呼べるほどありました」

・・・退屈・・・一万年の。

「・・・なんで。人間の、寿命は。」

するとその子は、胸に手を当てて、悟ったように、こう言った。

 (わたし)は死ねないんです」

・・・死ねないって。どういう、ことだ。

 

「どれだけ昔かは覚えていませんが (わたし)はこの世界に突如出現しました」

「最初に違和感に気づいたのは体感時間10年ほどの時」

 (わたし)はどれだけの時間が過ぎても老いることはない」

「どれだけ飢えてもどれだけ血を流してもどれだけ息ができなくても死ぬことはない」

「肉体が消し飛んでも意識は残りいずれ肉体も元通りになる」

「そんな永遠とも感じる時間の中で短すぎる人々の営み」

「人類の愚かなふるまいを見続けうんざりしていました」

「ですがそんな中で価値観を一変させる奇跡を目撃しました」

「この長い歴史の中で何度も」

「正確には時間を巻き戻して何度も観測しているわけですが」

「その奇跡は必ずとある名前を伴います」

「時には兵器の名前として」

「あるいは総称として」

「または愛称として」

「何度時代が繰り返されても必ず同じ顔と名前を持って生まれる」

「そして人類も歴史も心すら救い導く」

()械の肉体と神速の()()()()()

「その名を」

「ガンダム」

「でもいつの日かその名が表舞台に出ることも」

「奇跡の物語が起こることもなくなりました」

「見た目だけ似通っていてもその名を欠くものも現れました」

「その間は本当に退屈でした」

「ここのコレクションの始まりはその退屈な時間を活用するためでした」

「そうしているうちに母なる地球は老衰し」

「人類は物好きな一部と無知な模造品を遺して外宇宙へと逃げ出しました」

「残された者たちは母星を人工物で無理矢理延命しつつ」

「そんな中でも性懲りもなく争いだし」

「やがて“連邦-同盟軍戦争”へと発展し」

「追いつめられた彼らは来訪者からある兵器を買い取りました」

「フェアリーテイル・シリーズ」

「憧れたと同じ顔を持つ機械の巨人たち」

 (わたし)は待ちわび期待しました」

「ふたたび感動を見ることが出来るのかと」

「ですがその名で呼ばれることも終ぞなく」

「やがて”裁定者”によって延命器具も取り除かれ」

「ここに残された国は一握りに」

「だからこそ (わたし)は」

 

・・・正直、その話の意味の、半分も分からなかった。でも、そこまで聞いて、何かを閃いた。そうか、地球が滅びても、人類は。

「・・・そうか、そうだったんだ。」

「なんですか話の途中ですよ」

居ても立っても居られず、思い付きを口に出した。

「・・・外の宇宙には、まだ人が、生き残っている。新天地を目指して、まだ旅を続けているってことですよね!」

外の宇宙、そこに行けば、まだ見ぬ人たちに出会える。地球から持ち出した遺産も、たくさんあるはず。おれたちの夢は、まだ、終わっていないって。そう、思えた。

でも、その子は、呆れたような、がっかりしたような顔をした。

「ああ半端に期待させてごめんなさい」

え?

「その人たちってとっくに全滅しているんですよね」

・・・え?

「ですから地球圏を飛び立った数千もの開拓船は主に殺し合いで滅んでいます」

「・・・なんで?」

「ここまで言えば自分でわかりますよね」

「・・・戦争。」

「はいその通り」

「・・・そんな、嘘だ。」

「なら事細かに説明してあげます一番艦は革命と称した内紛がこじれにこじれて全滅しました」

・・・そんな。

「二番艦は未知の病原体からくる混乱が波及し暴動へと発展して生き残りも病死し全滅しました」

・・・嘘だ。

「三番艦は歴史上敵対する民族が大部分を占める十六番艦の特攻で両者轟沈しました」

・・・もう、聞きたくない。

「四番艦は」

ここから先は、ほとんど記憶に残っていない。でも、本当に事細かに、数十度に渡って打ち上げられた数百隻の移民船と、それぞれに乗る数千万人の人々が、殺し合う様が、語り尽くされた。そして、数千章もの物語は、この言葉で、締めくくられた。

「こうして人間の手による奇跡は二度と起こらなくなりました」

 

しばらく、時が止まったように感じた。その子が再び、理解不能なことを言い出すまで。

「ということで (わたし)はまた奇跡の物語を見たいと思って暗躍を始めました」

・・・え?

「ガンダムの物語をまたこの目で見るために歴史の誘導(プロデュース)を始めました」

・・・何を、言っている。

「人類が全滅してからというもの人間モドキの人形が人間の真似事をし始めたのを見て占めたと思いました新たな物語をこの目で拝めると」

・・・待って。でも、言っていることと、矛盾している。この子なら、この子の能力なら、出来るはずなのに。

「・・・過去に、戻れるなら。本当に、そんな力があるなら。歴史を、変えればいいのに。人類全滅なんて、悲劇の前に。」

でも、その子は再び、呆れたように答えた。

「それは出来ません」

どうして、そう聞き返したと思う。

「出来るのは自分の肉体を対象に相対的な時間を巻き戻すことだけ一方的な観測と一時停止以外は不可能です」

そして、観測中の自分は、まるで幽霊のように見えるだろうと語った。

なら実際は何をしてきたかと問いかけると、保管していた機体を渡したり、姿を隠して声や思念を送ったり、直接思考を操作して都合よく動かした、と言った。そして、こう締めくくった。

「やっぱり創造性の無い模造品はだめですね」

・・・そんな、ことって。

「あるいは無から何かを生み出せないのは元からかもしれません」

でも、その子はお構いなしに、続ける。

「というわけで駄作となったこの物語はこれでおしまいです他に主人公ができそうな役者も勝手に全滅してしまったのであなたが主人公で (わたし)が代わりにラスボスを務めます熱い議論と死闘の果てにさっさと倒して感動のエンディングっぽくまとめあげてください」

でも、この子は。

「ほら殺してください厳密には死にませんけど」

この子は、この子の考えは、だけど。

「・・・できない。」

おれは、そう言っていた。

「なぜですか (わたし)はあなたが目の当たりにしたあらゆる悲劇の元凶のようなものです葛藤を乗り越えてビターな結末(エンディング)にするのが最もそれっぽいと思いませんか」

なぜか、自分でも、分からないけど。あえて、言葉にするなら。

「・・・君が、かわいそうだから。」

自分でも、変だと思うけど。

「かわいそうだからって何やってもいいわけないじゃないですか涙を呑んで名言っぽいことを吐きながら殺してください」

君の言っている意味は分からないけど、でも、放っておけない。

「・・・君もずっと、独りだった。分かり合えるような人も、みんな先に消えてしまう。だから、ずっと変わらない、過去の感動にすがっていた。もう、そんなこと、しなくていい。」

その時、空気が、変わった気がした。空っぽに見えていたその子の顔が、少しだけ、怖く感じた。

「やめてくださいガンダムの主役はそんなことしません戦乱の原因を絶対に許しません」

言葉の意味は相変わらず分からないけど、なぜか同情してしまう。おかしくなったのは、おれの方かもしれない。・・・寂しさで。

「・・・役じゃなくて、おれを、見ろ。君の辛さと、きっと同じものを感じていたと思う。強すぎる力も、長すぎる寿命も、それが生む、孤独も。」

自分でも意味の分からないことを言い終えてしばらくたつと、その子の顔が、空っぽに戻った気がした。

そして、きっぱりと、こう言った。

「やっぱりやめます」

 

おれは一瞬だけ、この言葉をいい意味に捕らえた。わかってくれたって、これで可哀想な一人が救われたって。

でもそれは、すぐに打ち砕かれた。

「あなたは主人公失格です物語とか伏線とかどうでもいいです」

・・・え?

「あなたを抹消してまた(ゼロ)からやり直します」

・・・なんで。

「もうラスボスにちょうどいい強さの機体は使ってあげません持ちうる最強のガンダムであなたを消し去ります」

「・・・どうして!?」

その子は、一呼吸おいて、たっぷりと感情をこめて、答えた。

「あなたが嫌いだから」

 

次の瞬間、その子はなぜか、離れた場所に居た。そして、こっちに掌を向ける。指の間から見える眼は、本当に虚ろな、空っぽな色に変わっていた。まるで、全てに飽き飽きしたような。

そして、何かを唱えた。

「森羅万象」

鼓動が響く。

「その名の元に」

世界が揺れる。

「威光の元に」

世界が歪む。

「調伏させよ」

世界が暗く。

「平伏させよ」

世界が、反転し。

神威(アビゲイル)

 

正常な世界と共に現れる、真っ白な、巨人。

顕在化は、囲まれた狭い空間ではできない。そう、ジークは言っていた。

・・・でも、()()は透明な天井と、少しの床を削り取り、何十体もの人形を巻き込んで、星宙に、半身を晒しながら、いきなり、現れた。

その体は、まるでドレスを纏ったような装甲、背中には翼のようなもの、不規則な空洞が目立つ異形の腹。

そして、あの子が熱く語っていた、あの顔。

「・・・・白い、ガンダム・・・!」

 

この空間に穴が開き、空気は漏れる。やがて、音を伝えるものは無くなる。それでもなぜか、声は聞えた。

「白ではなくプリズマティックパールホワイトです見る目がないですね本当にそのままひねり殺されて死んでください」

あの子はまだ外にいる。それなのに、巨人は動き、右手を伸ばす。同時に、透明な天井がひび割れて、破片を飛び散らせる。ゆっくりだけれど、確実に振り下ろされる、巨大な掌。

・・・潰される。そう思ったのと同時に、地響きを感じた。おれを潰そうと迫っていたその手は、気付けば遥か遠くにあった。反射的に、とっさに、触角で地面を蹴っていなかったら、潰されていた。・・・あの子の、好きが詰まっていたはずの、十数体の、人形たちと一緒に。

 

できれば、もっと話し合いたかった。

でも相手は、力を行使する。

見境なく、破壊してくる。

話し合うには・・・力がいる。

なら・・・呼ぶしかない。

「・・・ジャバ・・・ウォック!!!」

・・・出た、来た!なんとか、なった。天井が壊されていて、助かった。

「回避からの愛機の呼び出し今のタイミングはなかなか合格です」

その言葉を全て聞くことなく、おれは、乗り込む。乗り込んだら、天井の穴から抜けて、いったん距離を取る。そうしなければ、まず生き残れない。それだけは、判る。

 

もう、ここは空気なんてない、宇宙空間。でもあの子は、まだ外にいる。乗り込もうとすらせず、巨人の隣にただ、佇む。そして、お構いなしに言葉を発する。

「いいですね最終決戦を始めましょう」

 

5.

この宇宙には、何もない。何も、見当たらない。無の世界。

目に映るのは、遠くに輝く星たちだけ。

 

ただ白と赤が、向かい合う。

その子は、白い奴の隣で、浮いていた。

でも、それでも、圧倒的に、白が強い。

駄目だ、手を抜けば、死ぬ。託された思いも、消える。・・・なら、あの子が言っていたように、死なないと信じろ。思い込め、攻撃しても死なないと。あの分身と、同じように。

「最初から本気で行く!」

・・・でなければ、おれの方が、おれたちの夢が。

 

「行かなくていいですよ」

あの子は、どこから聞こえるか分からない声で、遮った。

「だってもう終わっている」

・・・え?

・・・身体が、動かない?

・・・声、も。

なんで、動け、動け、動け・・・。

「では次は視覚」

・・・動かない、まま、世界が、真っ暗に。

何も、見えなく。・・・何を。

「驚きましたかコレが (わたし)の能力です」

・・・固有・・・特性。

「指定した領域内に全ての事象が収まっているものを支配できる」

・・・なん・・・だって。

「支配領域を絞って密度を上げれば更に微細なものまで自由自在にできる」

・・・それ・・・なら。

「人の思考を支配するのはさほど難しくはありません密度でいえば太陽系全域です」

・・・なら、だから。

「だから何をしてもつまらないということです耳障りなので思考そのものをそろそろ遮断します」

・・・・・・・。

「ああ遮断しておいてなんですが良い感じの最期を考えるまで待っていてくれますか」

・・・・・・・・・。

「どんなのが良いでしょうか脇役として主役を食わずに程よく涙を誘う感じの」

・・・・・・・・。

 

6.

真っ暗だ。

何も、聞こえない。

何も、感じない。

何も、わからない。

何も、出来ない。

 

「・・・・・・。」

かすかに、何か聞こえる。

 

「・・・・・・・・・起きて。」

誰の声?

「・・・・・・・・・早く、起きて。」

誰の声だ?

「・・・・・・・・・お兄ちゃん、起きてよ。」

誰だ、君は?

「・・・・・・・・・・・・死んじゃうよ。」

 

・・・そうだ、起きなきゃ・・・・戦わなきゃ・・・・死ぬ!

全部、消えて、無くなる!

それだけは、嫌だ!!

 

「・・・・・ジャバ・・・ウォック・・・!!」

「うるさい静かにしてって」

「・・・・オルタナティブ!!!」

「あれなんで」

飛び出した触角が、黒い装甲に変わっていく。それと同時に、寂しさと不安が和らいでいく。さっきより、ずっと、心強く感じる。

「なんで動けるのですか確かに支配したのに」

わからない、そんなこと。・・・でも、それでも!

でもその子は、同じことを聞き返す。

「なんで思考支配が失敗したのですかどうやったのですか領域内に全てが収まっていなかったのかあるいは」

・・・わからない、けど!

「この世界に生きるものには、意思が、自由がある!選択する、権利がある!だから、そんな固有特性が、完璧なはずが、ない!」

この言葉を聞くと、不機嫌に見えていたその子は、唐突に喜びだした。

「よくできましたやっと主人公らしいセリフが出てきましたね」

・・・言っている意味が分からないし、正直怖い。でも、このチャンスは、無駄にしない。

空間障壁を展開し、触角で掴む。限界を超えて加速して、仕掛ける。そして、一気に終わらせる。

そう、思っていた。でもそれは、その子の言葉で、遮られた。

「ジャバウォック・オルタナティブですか」

その子の機嫌が、また傾いたように聞こえた。

「嫌いです」

言葉をつづけるたび、その不機嫌さは増す。

「グロくてガンダムらしさがない」

言っている意味は分からないけど、とにかく、まずは倒せ。意識をとにかく攻撃に・・・。

「だから (わたし)好みに手を加えます」

本当に、意味が分からなかった。

分解(katalyein)

その一瞬だけ、意識が途切れた、気がした。

その次、意識が繋がったとき、激しい痛みが走った。・・・左腕が、痛い。神経を引きずりだされるような痛みと、同時に消えた感覚。恐る恐る、痛みの元を、視界に収める。

嘘だ・・・左腕の、触角が、消えた。

「支配領域を圧縮すると量子構造すらも操れる」

いっしょに、頭の中のザワザワも、1つ、消えた。・・・消えたのは、足りなくなったのは。

「対峙する存在は全て手の中の玩具」

消えた、1つ、1人。嘘だ、イツキ・・・。

「どうあがいても面白くならない」

嘘だ、そんな、嘘だ。

「その部品(パーツ)も無い方がいいですね」

やめろ、やめてくれ。

・・・家族を、遺したものを、奪わないでくれ。

「この調子でモデリングを続けましょう」

 

遠い、遠すぎる。

挑んだことが、間違いなのか。

どうやって、生き残れば・・・。

 

7.

この拷問が、どれだけ続いたか、もうわからない。

痛みだけは、慣れてきた。

「だいぶ (わたし)好みになってきましたね」

でも、この、寂しさは、喪失感は・・・。

「それで」

イツキは、抜かれた。

ミトウも、千切られた。

フソウは、細切れに。

シスイは、粉々に。

もう、誰も・・・。

「なんでまだ死んでないのですか」

誰の、声も・・・。

「もう思考支配も効かないしなんですか」

「・・・なんで。」

「質問しているのはこっちですよ」

「・・・その力は、すごい。でも、なんでそれを自分の為にしか。自分だけが、楽しむためにだけ。そんなの、つまらないに、決まって・・・。」

その子は、また、ため息をついた。

「だって (わたし)は人間の歴史をずっと傍から見てきたのですよ」

「・・・だったら、なおさら、なん・・・で?」

「誰だって同じ経験をすれば同じ結論に辿り着くことは明白です」

「でも、それでも、わから・・・ない。」

 

「ならわかりやすく戦争を例に挙げましょう」

「確かに当事者の皆様は命懸けでしょう」

「しかし当事者の線引きは人それぞれ」

「敵国が悪い」

「自国が悪い」

「無能な上官が悪い」

「無能な政治家が悪い」

「悪でもやるしかない」

「弾が飛んでくるまで関係ない」

「弾が当たるまで関係ない」

「関係ないけど命令だから撃つ」

「死ななければ関係ない」

「死ぬのは前線の兵士だ」

「もう楽になろう」

「隣で誰か死んだ」

「考えるのをやめよう」

「思いはそれぞれ」

「優劣などありません」

「間に国や海が挟まれば」

「知識人を気取る為に」

「或いは嫌いな国を嫌いな人間と同列に扱う為に」

「はたまた取り敢えず感動しておく為に」

「知りたがったりはするものの」

「当たり前のように」

「何ら変わらず」

「日常は続きます」

「当事者であるかもわからないまま」

「様々な言い訳を重ねながら」

「しかしそれも」

「また一つの在り方」

「間に宇宙が挟まれば」

「それは」

「もはや」

「物語の世界です」

「その空隙がゼロになるその時まで」

「自らの過ちさえ分からないまま」

「それでも人は変わらない」

「何を見ても」

「何を知っても」

「どれだけ感動しても」

「どれだけ反省しても」

「何度痛い目を見ても」

「ただ許し合い慰め合うだけで」

「またその場その場に酔いしれて」

「同じことを繰り返す」

「ずっとずっと永遠に」

「この壊れた」

「無意味だけれど」

「面白さという価値はある」

「そんな御伽噺は続くでしょう」

「人類とその模造品が」

「この世界から消え去るまで」

「そう戦争とは」

「歴史とは」

「命とは」

「そのことごとくが」

「後の時代の」

「退屈凌ぎの娯楽です」

「楽しんだほうが得でしょう」

 

話なんて、通じない。

こんな価値観、絶対に、おかしい。

こんな人間、他にいない。

本当に、狂っている。

 

8.

・・・でも、なぜだろう。一理ある、とも感じた。

狂っているのは、無意味なのは、人間そのものかもしれない。

おれは、知らなかっただけ。

あの子は、知っている。

おれよりもずっと。

ただ、長生きで、力があるだけ。

きっと、苦しかった。

苦しさすら、忘れるほどに。

おれが、痛みに慣れたように。

総ての感覚が麻痺していく毎日。

 

そんな中で、心から感動した。

戦争のための兵器が紡ぐ、奇跡の物語に。

そこは、そこだけは理解できた。

だって、おれも。

おれたちは、人を殺すために作られた。

でも、それができなくなった。

それでも戦って、戦い続けて、絶望して、失望して、結局何をするべきか見えなくなって。

 

でも、そんな中で最高の人に、相棒に出会えて。

どれだけ失望しても、人々の心を照らす光になって。

そして、最期の瞬間まで。

そんな兵器が、実在したなんて。

そんなものが実在したら、それって。

それって、この宇宙で一番・・・・・・・。

 

不謹慎だけど、思ってしまった。

そんな存在に、おれもなりたい。

そんな生き方を、おれもしてみたい。

そんな風に、最期を笑って迎えたい。

なれなくても、精いっぱい目指してみたい。

 

これが、感動。

これが、夢。

これが、希望。

 

見つけた。

なりたい自分を。

見つけた。

目指すものを。

 

・・・でも少しだけ、勇気が足りない。

・・・踏み出したいけど、踏み出せない。

・・・だから分けてください、ほんの少しの間だけ。

たった一度、許してください。

あなた達の、魔法の言葉を。

 

「行こう」

 

9.

そうか、お前の名は——————————。

確かに、古語で混沌化した議論を意味する。

そして、その結論も胸の中に眠っている。

議論と結論が互いに支え合い、ここに存在している。

そこに意味さえ与えられれば、お前は全てに決着を付けられるだろう。

例え、敵が“裁定者”であったとしても。

 

そして我々の思う、人類の進歩の理想でもある。

人類はただ生き、動くだけの存在を脱した。

秩序を持ち、合理的に群れで生きる術を獲得した。

だが、極まったそれは機械の生き方だ。

生命となる前の、物質へと退行とも言える。

不合理な自由意思を持ちながら、この世に生まれる意義がない。

人類とは、知性とは、機械と動物の狭間で戦う志士でなければならない。

 

ふざけるな、何が契約違反だ!お前たちがキリコを集め、どう利用しているか、知らないとでも!

落ち着け、エンジニアΚ!戻されたいか!

 

そうだ。我々は小さい。企業として矮小、ただ設計と材料を売り渡すのみ。故にただ、待つしかない。彼らが自ら気が付くことを。金塊と引き換えに得た存在に、我らが隠したメッセージに。

 

最後になるが、お前は気難しい。

きっと、なかなか相棒(パートナー)は見つからないだろう。

だが、きっと現れる。

そして願いを込め、真実の名を与えられた時、お前は真の姿となるだろう。力と共に、その願いに応えるために。・・・願いに殉じる呪いも共に。

だが、その呪いすら乗り越えて、お前達が欠けることなく手を取り合うことを。いつかその役目を果たすことを、我らはただ、願っている。

 

 

ぬごぁっ・・・痛ってえ・・・!

・・・つーか、ここ何処だ?

MS(モビルスーツ)適性試験の会場・・・って、ここでいいのか?

なんか、あるな。

・・・お前が、テスト機でいいのか?お、なんか動くぞ。

にしても、ずいぶん埃が積もってんなあ。

まあ、一晩もかけりゃ綺麗になるだろ。

・・・ん?緊急連絡?

 

緊急事態発生!繰り返す、緊急事態発生!勲章授与式にて武装蜂起発生!スパルタン隊、反逆!人質は、連邦首相以下首脳陣8名!敵はフェアリーテイル・シリーズ1機を含む、MS(モビルスーツ)20機!MS(モビルスーツ)戦闘員は総員緊急出撃せよ!

 

・・・総員?どうする?オレも戦えなくもねーけど。

まあ、いっか。あの性犯罪者もいることだし、放っとくか。

・・・って、アイツまで捕まって・・・。で、近くに水場も無い、と。オレがしょっ引いてやったときから成長したところとかねーのかよ、胸以外。

 

・・・で、どうすんだ?出るか?

・・・だよな。なんやかんやでアイツも更生して、今や広報誌の表紙。あのオッサンも好きじゃねえけど、死なれちゃ困る。今死なれたら、落書き思い出して国葬で吹きそうだし。

 

・・・償いで死ぬくらいなら、人の幸せのために生きてみろ、か。

ムズいけど、やってみるぜ。・・・おやっさん。

 

んじゃ、出るか。

・・・緊急時だ。ココは地下100m、地上まで最短距離でブチ抜く!

お前、名前は?

—————————そっか。

おっ!良い技、持ってるな。

そんじゃあ、ちょっとカッコつけて!

行こうぜ!!

 

 

知ってるか?味覚で必須なのは甘みと塩味、あとは毒を見分けるための味、らしい。痘痕も靨ってな。結局は毒を愛せるかってことみたいだ。

諦めなきゃ、オマエも出会えるさ。性癖も、男嫌いも、過去も、きっと全部ひっくるめて味わってくれるやつがいる。

・・・オレか?何度も言うが、そもそも食えねえよ。それでも、出来ることをやってるだけだ。

だから、あきらめるな!

・・・よせ!

腐った残飯の身代わりになって・・・何になるよ!

・・・やめろ!

 

 

いやいや、それじゃ、かっこ悪いだろ。

って・・・どこからそんなセンスが出てくるんだ?

・・・そうだな、“——————————オルタナティブ”・・・ってのは、どうだ?

 

そっか、気に入ってくれたか。・・・勝手に言ってる。すまん。

 

・・・ごめんな。お前のこと、見捨てようとした。本当に、ごめん。頼む。改めて、力を貸してくれ。

 

 

——————————!!

——————————、護れ。

来た、——————————!

行こう。——————————。

壊せ、——————————!

・・・——————————。

——————————!!!

面白い、きっとできる。だからおれと、お前も、変われ!——————————!

——————————。

・・・来た、こっちも。————————————!

よし、行くよ、助けに。——————————、行きます!!

・・・・ッ!!——————————!!

 

・・・見つけた、目指すべき先を。見つけた、なりたい自分を。

行こう・・・。

 

”ガンダム”ジャバウォック

 

10.

なにが

起こって

 

赤い鍍金がはがれるように

原色に染まる機械の戦士

 

「こんなに、鮮やかに・・・。」

黄昏の如く輝く瞳

「ウィルと、おまえの・・・。」

暁の如く赫き胴

「ジークの・・・。」

晴天の如く蒼き胸

「そして、おれたちの・・・。」

透き通る白亜の身体

 

「・・・おれたちの、旅路の色。」

これは

「・・・綺麗だよ。」

 

ガンダム、だ

 

11.

違う

違う

あれがガンダムであるはずがない

所詮は色が変わっただけ

それも単なる過共振(オーバーハウル)

武装もビームサーベルだけそれも1本

まだまだ足りないものが

「そうだ、まだ足りない。」

「外観は、あれでいい。中身の参考は、あの、大砲。」

 

空間が歪んで

歪んだ空間の中に何かが結晶化する

黒い結晶すなわち暗色軽金属(ダーク・メタル)

そうかあの空間は鋳型

フレームの自己再生の原理

それによって自由な形を

部品を

完成体を

形成する

 

そして鋳出される

あれは

 

身の丈ほどもある

長大な

小銃(ライフル)

文字がある

Borogove

 

「まさか」

触媒晶体から反物質を取り出し空間操作で指向性を持たせて銃身からビームとして撃ち出した

銃床(ストック)は・・・右肩に押し付け、上半身と一体化する。・・・わずかに揺れ動く照準の中心と、ターゲットが重なったタイミングに合わせて・・・。」

絶対真空の焦点を生成するだけあって反物質の量は無尽蔵

戦艦の主砲を引き合いに出すことすら烏滸がましい

それは

「ビームライフル」

「銃爪を・・・引く!!」

目の前を横切る閃光

アビゲイルの装甲をわずかに掠めてはるか彼方に飛んでいく

 

まずい

あれの反物質は波動がリアルタイムかつ複雑に絡み合うため支配も困難

対処するとするならば着弾点までの全ての領域を指定して支配を

 

その思考の最中

あの砲への対処を思案するそのわずかな間

隙をつくようにアレは黒い刃を抜いた

とんでもない加速度ととてつもない速度で迫り

振りかぶり

斬りかかる

 

そうはさせない

あれを支配する

あの刃に領域を指定する

その領域に命令を下す

闇の刃よ爆ぜろ

爆ぜて主ごと塵芥と化せ

 

爆ぜない

止まらない

支配できない

真言の剣(ヴォーパル・ソード)には支配そのものが通用しない

支配する()()がない虚無の空間は支配できない

ならばその絶対真空を抑える周辺空間を支配する

だが空間操作は彼方が特化している

主導権の奪い合いになる

空間の支配権を奪い合う懸糸の綱引きになる

それすらも領域指定というワンステップが挟まるだけ出遅れる

無理に支配で対抗すれば空間の支配権をめぐって押し合いになる

押し負けないよう支配領域を可能な限り細く圧縮する

圧縮した支配領域で受け止める

支配領域を認識しているこちらから見ればさながら

さながらビームサーベルの鍔迫り合い

本来なら互いに一方的に斬り捨てて終わる最強の剣同士のぶつかり合い

決して成立することのない同志のしのぎ合い

押し負ければ消される殺し合い

生まれて初めての互角の戦闘

自我が芽生え初めて迫る死の実感

生れてはじめての

 

余計なことは考えない

まずは簡単に空間のエネルギー量を支配し増加し爆発させる

爆ぜろ(eruptio)

鍔迫り合いの末なんとか敵を弾き飛ばす

憎いものとの間に距離ができる

 

それの動きがまた止まる

それが何かを呟く

ここにいない誰かに話しかける

「・・・お前だろ、ジークと最期に話させてくれたのは。」

空間が再び歪む。それも、今度は本体から離れた場所に複数。

「でも頼む・・・もう少し、貸してくれ。」

歪みの数は11

形は漏斗

いや楔

鋳出されたのは光輝く八面体

玉虫色の半透明な

まるで極彩色の翼のよう

それらは散った

出来た途端に

鳥の群れが飛び立つ様に

上下左右

アビゲイルの周囲を

弧を描いて旋回する

やがて全てが

此方に鋭角を向ける

向けられた先端が

淡く光り唸りだす

まるで囀るかのように

Jubs

憶えがある

知っている

それはすなわち

その総てが

砲台

「ハゥフューレ・・・!」

強者の証

革新者の証明

オールレンジ攻撃

「技を、借りる!」

言葉と共に降り注ぐ閃光の五月雨

創り出されたのはビット兵器

ライフルと同質

だが細く弱い

だが無数の閃光は

あらゆる方角から降り注ぎ

籠目のように

全身をかすめる

 

いやまだ

また

アレの右肩に巨大な歪み

 

また何かを作って

巨大な円柱

Tums

先端が爆ぜるように歪む

爆発

逃げられない

とっさに出したアビゲイルの右手

掌から順に

衝撃が伝播

伝播と共に砕けていく

本体に到達前に切り離す

切り離した肩から先の

その全てが金属片と化した

 

おそらくは

強化された空間操作で

衝撃波を込めて撃ちだした

それはまさに衝撃波のバズーカ

 

再び空間の歪み

二発目が来る

その前に

左手を構え

領域をあの大砲に固定

分解(katalyein)

と同時に脇腹を撃ち抜く四本のビーム

 

意識外の角度から攻撃

ビットによる砲撃

ならその四つの砲台を支配

しようとしたその瞬間爆ぜた

違う

あの発光体は違う

ただの砲台じゃない

あれは実体じゃない

空間操作と粒子間力で形を成した

さながら

ビームの結晶

 

続け様にそれが

先程と同じ数

光の刃が弧を描いて飛来する

アビゲイルの胸に腹に脚に頭に

突き立てられそして爆ぜる

破片と残存粒子は支配で防いだ

間一髪

あれが何かを知るのが遅ければ消し飛んでいた

 

いや違うそれだけじゃない

きっとアレが此方の考えさえ読んで自爆させた

残された3つの子機は各々の最短経路を辿って主人の元へ戻る

そして再び8つの歪みが生まれ

在るべき数

11に戻る

 

攻撃が止む

何をする

逃げる

相手をする必要はない

逃げる

とにかく遠くへ

空間を繋ぐ

瞬間移動

可能な限り遠くへ

 

これはかつて冥王星と呼ばれた石ころ

ずいぶんと遠くまで来た

その隙にアビゲイルを修繕する

やがて元の美しい姿へと戻る

腕も身体もダメージは無い

無意味で無価値な足掻きだった

なぜ逃げたくなったか分からない

なぜか横隔膜が震えている

呼吸なんて必要ない

そのはずなのに

 

目の前に何かが現れた

大きい

黒い物体

戦艦なのか

何これは

Bandersnatch

貼りつけられた無数のフタが開いてゆく

弧を描く無数のビーム

遅れて襲い来る無数のミサイル

無数のそれらが近づいてくる

なら領域をアビゲイルの周りに狭める

入り込んでいたものに端から命令をする

自ら乱し

かき消えろと

 

攻撃を防ぎ切ったその瞬間

領域をあの巨体に移す

分解(katalyein)

黒い巨体が

黒い塵になって消えていく

そこから飛び出し襲い来る

蒼と赫と白の存在

忌々しい存在

そうかあれは単なる防壁

空間操作で瞬間移動をする際の莫大な反動

それを防ぐための外殻

修復のために稼いだ時間

それがあれを創るための時間を与えた

 

時間を渡せば強くなる

そして逃げても追いつかれる

ならば戦うしかない

撃ち合うしかない

時に奔流

襲う衝撃

虚無の剣戟

閃光の雨

「・・・それでも、殺さない!」

それを捌く領域支配

「それなら」

その中でも

「あなたの中で (わたし)は許されるとでも」

言葉は交わされる

「もちろん、償ってはもらう!まず、それを自覚させる!あなたが狂わせた人生について、話し合って、謝ってもらう!」

怖い気持ち悪い

「嫌です」

「時間はある。」

「不快です」

「なら、まず話をしよう!さっきみたいに!」

「ガンダムですか」

「ああ、もっと話をしたい。それに、憧れたから。なりたいと、思ったから!」

「なれるわけない」

「確かにこのままじゃ、無理だ!だから、もっと知りたい!」

「その前に侮辱の罪を贖いなさい」

「・・・侮辱だって!?」

「その名に秘められた呪いを侮ったこと」

「・・・あんなに、かっこいいのに?」

「」

「頑張って、作ったなら、好きだろ!」

「だってあなたは主人公じゃない」

「誰だって主人公だ!もちろん、君も!」

 (わたし)は脚本家です」

「・・・傷つくのは、怖いさ。でもずっと客席や舞台袖にいた何万年かは、どうだった?・・・いい加減、舞台に上がろう!」

「平行線ですね」

「・・・だな!」

「それならまず勝ちなさい」

「・・・ああ。」

「それが人間の歴史」

「それが、生まれ、足掻く者の使命!」

 

議論による心根のぶつけあい

それもいずれ終わりを迎える

ぶつかり合い距離が開いた

その最中ビットが左腕に集まり一直線に

掲げられ自己崩壊し巨大なビームに

いや違う

これはビームサーベル

振り下ろされる

右半身が斬られ消された

だがただではやられない

左肩を獲った

分解(katalyein)

 

支配され砕ける左腕

「・・・くっ、やるな!」

なぜ嬉しそうなのか

そうか

右手のライフルを

カウンターで腹に当てた

でもすぐに修復

右腕も同様に

対してそちらはビットも片腕も砕けた

こちらは万全

そちらは半減

そんな足掻きに意味はない

 

そう思ったその隙に

真言の剣(ヴォーパル・ソード)で切りかかる

再び正面で鍔競り合う

あの顔が間近に迫る

弾き飛ばそうとした

まさにその瞬間

目の前の顔の顎が開く

来る

多連衝撃波束砲(ショック・バルカン)

させない

分解(katalyein)

支配され分解され砕ける頭

しまった

忘れていた

衝撃波が

解放されて爆発

此方も弾かれて

敵は遠くに

 

奴の武器

残りは右腕のライフルただ一つ

上を向けただ狙う

でも頭も

もう片腕もすでに

 

まって

これは

似ている

フラッシュバックする

記憶がよみがえる

肩より壊された左腕

メインカメラごと砕かれた頭

上方に向けられたライフル

あれは

見覚えが

あの姿は

 

しまった

つい

よそ事を

「・・・征けえええええっ!!」

叫びと共に銃口は輝く

間に合え

全身を支配して

どこでもいい

分解(katalyein)

放たれた光は

無意味にアビゲイルだけを貫き

重なった残像にも掠めることなく

はるか遠くへ飛び去って行く

 

跡形もなく砕ける幻想

バラバラになる白い残骸

現実はこんなものですか

 

「なぜ外すのです」

心の底から失望した

あれと見間違えたことが恥ずかしい

うるさい

大言壮語はなんだったのか

うるさい

 (わたし)が主人公とはなんだったのか

うるさい

あれの物語はなんだったのか

うるさいうるさい

一瞬でも期待したのはなんだったのか

うるさいうるさいギチギチうるさい

うるさい

うるさい

うるさい

うるさい

うるさい

うるさい

うるさい

うるさい

うるさい

 

うるさ

ここは宇宙

真空なら音は聞こえない

何故うるさい

 

骨伝導

骨に直接振動が伝われば

それが耳の器官を動かし音として伝わる

その源は肋骨それに巻き付いた

黒い

何か

 

黒骸(クロボネ)の触角

繋がる先に半分だけの黒い仮面

もう半分は憎いあの顔

その黒い手の先に

真言の剣(ヴォーパル・ソード)

 

まさか

あの最期の一射(ラストシューティング)そのものが偽装(フェイク)

ライフルの発射に合わせて飛び出した

虚無の刃を握りしめ飛び出した

 

最初から囮のつもり

本命はあれ自身

総てを代償にアビゲイルを跡形もなく消し去るつもり

今度こそあれを支配して破壊する

いやできなかった

一刻を争う

それならあれを支配するより

真言の剣(ヴォーパル・ソード)を破壊する

触媒の結晶体を破壊する

でなければすべて消えて去る

近づく刃

間に合え

迫るあいつ

罅が入る

虚無の世界が

あと少し

目前に

 

間に合った

砕けた

本体も塵になった

壊せた

虚無の刃も砕けて消えた

焦った

 

あっけない

 

でも

 

違和感

 

見下ろせば

臍を貫く

虚無の

かけら

それを握る

白い片腕

 

目の前には

憎たらしい

あれの顔

 

12.

どうしてこうなってしまったのでしょう

領域を狭め自らの時間を支配し遅らせて

なんとか自分の意識を保っていますが

もはや巻き戻すことは不可能です

支配領域にあれが入っているからでしょうか

 

まさかここまで計算して

愛機すらも犠牲にして

でもまさかそんな

流石に大胆過ぎませんか

 

この虚無が全てを飲み込めば

流石に消えてしまいます

これで死ぬことが出来る

でもこんなのが (わたし)の最期ですか

やっぱりまあ

いやですね

もっと見たいもの

感動したいもの

たくさんあります

 

そうですね

どうすれば生存できるか

そうだ

支配の力で空間操作を打ち消せば

さっそくやってみましょう

あれ

打ち消すと逆に絶対真空が大きくなりますね

何をどうやったらこんな罠を

見当すらつきません

勉強くらいしておけば

 

そうだ

わからないなら

今からでも空間操作を学べばいい

うまいぐあいに同じ材料をベースにしたサンプルが転がって

あれ

なんで

泣いて

なんで

こんな

まさか

 (わたし)

わたし、なんかに

 

しまった

ぼんやりしていたら

そろそろ下半身と上半身が分断されます

広がりも加速しているような気が

そうですね

もういっそ

あきらめますか

せめてラスボスとして

その生涯にあったかっこいい名言を

振り返りましょう

 (わたし)の生涯

 

まず嫌いなものを壊して

好きなものも壊して

頑張ったものも壊して

どうでもいいものも壊して

思い通りに行ったことはなくて

何か残りましたっけ

あれ

 (わたし)の生涯って

なんでしたっけ

 

そろそろ

脳まで

意識が

 

そもそもなんでこんなことに

どこからが失敗だったのでしょうか

主人公候補の選定が悪かったのでしょうか

どうせ意識支配でどうにでもなると思って無計画に戦ったことでしょうか

そもそも意識支配が効かなかった理由が意味不明です

恒星系内で完結しない存在なんていないはず

太陽系全域を覆う支配をどうやって

まあこれについてはもういいでしょう

あるいはラスボス候補の選定でしょうか

違いますね

もしくは干からびてきた()()を人気のない水場に3日ほど放置したことでしょうか

そうしたらそのまま置き引きされたことでしょうか

ピンときません

または安直に()()を次の主人公に選んでしまったからでしょうか

戦争の狂気で壊れる心もないサッカリンのような存在を

これっぽいですけど少し違うような

あるいは短期間にイベントが起こりすぎて介入を忘れていたせいでしょうか

それとも・・・。

 

やっぱり間違っていませんよね

誰だってそうですよね

誰だって感動したものに縋りますよね

そうでないものを叩きますよね

気に入らなければ壊しますよね

人間として当然ですよね

だからあんなに愚かな最期を迎えたと歴史も証明しています

本当に馬鹿馬鹿しい

あんな感動的な場面をいくつも残せたこと自体が奇跡ですね

でも

そもそもなんで

感動したのか

なんで

なんで

なん

 

・・・思い、出した。

忘れていた

羨ましかった

あの光景が

ただ欲しかった

あの中に

生まれたかった

 

今からでも

帰ろう

受肉(うまれ)る前に

還ろう

あの光樹(せかい)の根の一本へ

さようなら

優しい殺戮兵器さん

 

さいごになるけど

わたしは

これでもう

 

じゃあ、ね。

 

13.

・・・どうして、こうなってしまったんだろう。

 

真言の剣(ヴォーパル・ソード)の結晶が分解されて、虚無の空間が、爆ぜた。

 

そのひとかけらが、あの子のお腹に突き刺さった。

おれは、広がろうとするそれを、必死に抑えようとした。

でも、ジャバウォックの空間操作と比べると、へたくそで、少しずつ、虚無の刃のかけらは大きくなって。

おれの顔に、目元に、口に、何かが触れて。

大きくなった“虚無”は、あの子を消した。

おれが、殺した。

 

でも、死ねない。

人を、殺したのに。

おれは、生き残った。

最悪の、形で。

 

ジャバウォック。

お前も、消える、消えてしまう。

馬鹿で、ごめん

でも、ありがとう。

本当に、ありがとう。

・・・ごめんなさい。

 

おれは、死ねない。なんで、消えない。

人を、死なせたのに。殺したのに。

そうか・・・体が、半分無い。

あの時、一緒に、まとめて、消えた。

仕込んだ断片も、無い。

このまま体が再生すれば、おれは戻ってしまう。

人殺しの、怪物に。

 

寒い。

冷たい。

宇宙、こんなに寒かった。

でもそのおかげか、身体は再生しない。

このまま消えれば、誰も殺さなくていい。

お願い。

このまま誰にも見つからないで。

殺したくない。

でも、寂しい。

 

どれだけの時間が経っただろう。

少しずつ、何も感じなくなってくる。

この先に待つのが、死であってくれ。

無であってくれ。

退化でなくあってくれ。

おれは戻りたくない。

 

戻るくらいなら、消えたい。

 

・・・声が、聞こえる。

誰だろう。

本当にかすかに、声が聞こえる。

少しずつ、大きくなる。

 

頼む。おれに気付かないでくれ。

でも、寂しい。

声が、大きくなる。

頼むから、おれが先に死んでくれ。

見つかる前に、死んでくれ。

 

声は、近い。

お願いだ。

おれを、独りに・・・。

 

「・・・定時連絡。」

 

・・・え?

 

「・・・外宇宙開拓船第91番艦より、この宇宙のどこかにいる人たちへ。」

 

「・・・私たちの先祖が地球を旅立ってから、500年になるみたいです。今日からフソウおばあちゃんに代わって、私と・・・お兄ちゃんがこの通信を引き継ぎます。ほら、挨拶して。」

 

「いとこも、またいとこもいっぱいいます。でもこの役目は、私たちが引き継ぐね。おばあちゃんが、4人兄弟の中で一番長生きした、理由の一つになると思うから。それでは、次の定時連絡まで、おやすみなさい。」

 

・・・また、聞こえなくなった。

なんだろう、この声は。

外宇宙・・・開拓船?

でも、暖かいような、懐かしいような。

ずっと昔から、聞き続けていたような。

 

・・・あれ?

・・・また、聞こえた。

 

「・・・定時連絡。お兄ちゃんが、家を飛び出しました。学校サボって、漫画家になるんだって、ストレージの中にゴミみたいな画像データをため込んで・・・。」

 

「・・・定時連絡。・・・お兄ちゃんが、亡くなりました。船外作業の仕事で、友達を庇って、デブリに当たって・・・。」

 

「・・・定時連絡。・・・元気な、男の子です。彼に似て、とてもやさしい目元をしています・・・。」

 

そう、だったんだ。

 

「・・・定時連絡。・・・お兄ちゃんの遺品に、やんちゃ盛りの息子が目を付けました。人間の関節は、そんな方向には、曲がりません・・・。」

 

人は無から、独りでは、何も生み出すことは出来ない。

 

「・・・定時連絡。・・・今日から、僕が引き継ぎます。夢は伯父さんみたいに、かっこいいけどくすりと笑える、ダークヒーローを描くことです・・・。」

 

「・・・定時連絡。・・・今日から、私が引き継ぎます。お父さんみたいに絵はうまくないけど・・・。」

 

だって、人は、人である限り。

 

「・・・・・定時連絡。・・・・私の夢は、絵本作家で・・・・。」

 

あり続ける限り。

 

「・・・・・・・定時連絡。・・・・・憧れの姉ちゃんが・・・・。」

 

必ず、誰かと・・・。

 

「・・・・・・・・・定時連絡。・・・・・・やった、合格だよ・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・定時・・・・連絡。・・・・おやすみ・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・定・・・時・・・・・・・ありが・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・定・・・・・・時・・・・・・・・・。」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。