ホタルよ、輝く為に舞い上がれ   作:渚 龍騎

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どっちかを知らなくても分かるように頑張ります。
けど、仮面ライダーカブトを知らないと厳しいかもです。
※オリジナルフォームが二つ登場します。ご了承ください。


プロローグ

 

 

 

 時に、思うことがある。

 

 

 もしも普通の人間として生まれてきたなら、()()()はどんな道を歩むのだろうと。

 

 もしも普通の女の子として生まれたのなら、()()()はどんな人と恋をしたのだろう。

 

 もしも普通の生活がそこにあったとしたなら、()()()は誰と出会い、別れ、過ごしたのだろう。

 

 もしも、もしも、もしも──どれもが現実にならない妄想だ。絶対に叶わない夢のまた夢。所詮は兵器として作られ、生み出された存在でしかない。

 

 あたしには、課せられたことを成し遂げるしかない。()()()のように突出した特技があるわけでもない。あたしにある特技は、慈悲のいらない悪党にしか使えない。

 

 

 だけど、()はなにもかもが違った。

 

 

 ────だからどうした。

 

 

 そう言って、あたしの言葉を一蹴し。

 

 

 ────お前はお前の道を往け。

 

 

 そう言って、あたしの背中を押した。

 彼の背中はあまりにも大きく、あまりにも偉大だった。彼がいれば、なんとかなる──そんな風にも思えてしまった。

 それだけ彼の言動には()があった。

 

 

『あなたは、本当に何者なの?』

 

 

 あたしのその問い掛けに対し、彼は鼻で笑う。そして振り返ることもなく、人差し指を天に翳し、太陽の果てしない輝きと重なった──まるで太陽そのものが、彼の思うがままであるように。

 

 

 

『──お婆ちゃんが言っていた』

 

 

 

 太陽から降り注ぐ光の道を見上げ、彼は決して陰ることのない自信をその言葉にする。

 

 

 

『──俺は天の道を往き、総てを司る男』

 

 

 

 そして最後に、その名を告げる時、あたしの後ろに立っていた彼らが僅かに微笑んだ。

 そう、彼──仮面(マスクド)ライダー カブトに変身する男の名前は、

 

 

 

『──天道(てんどう) 総司(そうじ)

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 燃え盛る大地から昇る焦土の紅き光。轟々と燃え行く焔は、風に吹かれて靡けば煙を吐く。辺りを見渡して、過去の情景が脳裏に過りながらも、銀色の鎧を纏った鉄騎は黒煙に包まれた天を見上げた。

 

 

「殲滅完了」

 

 

 そう呟いて、鉄騎は自身の耳元に手を当てた。

 通信機が一瞬の雑音を響かせてから、()()との通信を繋ぐ。それに気が付いた彼女は、いつもの調子──妖艶な声色のまま──で『あら』と囁いた。

 

 

『早いわね、もう終わったの?』

「ええ、対象の殲滅は完了。かなりの量が跋扈している様子でした」

繁殖の子孫(スウォーム)ではなかったの?』

 

 

 その問い掛けに鉄騎は僅かに俯く。既に殲滅した対象は緑の炎を巻き上げて消滅している。だが、その異形な姿はしっかりとこの目に焼き付いていた。

 

 

「虫──であるのは間違いありませんが、スウォームとはまったく違った生命体でした」

 

 

 昆虫を模した二足歩行の緑色の怪物──そうとしか表現できない。スウォームのように群れを成しているのは間違いないが、明らかにスウォームとは別の存在だった。

 

 

「ですが──」

 

 

 言葉を続け、鉄騎の沈黙を感じた彼女は通信機の先で言葉を待った。

 鉄騎はさっきまでの戦いで、怪物が見せた能力に懸念を感じていた。戦いの最中で、怪物は自分の身体を変異させて鉄騎の姿を模倣(コピー)したのだ。

 

 

「どうやら彼らには()()の能力があるようです」

『擬態……あの愚者も同じようなことをしてたわね』

 

 

 彼女が指している『あの愚者』という相手には、直ぐにピンと来た。

 愉悦を求めて行動する仮面の愚者。小さな矮躯に似合わぬ戦闘技術を持ち、更には千の顔を持って他人を完璧に演じる。()()には、あまり関わりたくない。

 鉄騎は「はい」と頷いた。

 

 

「どこまで細部を擬態できるのかは不明ですが、もしも彼らが組織内部に侵入した場合──見抜くのは容易ではないかと」

 

 

 通信の相手は変わらない声色で『そうなのね』と答えた。

 鉄騎の能力を以てしても奴らの擬態能力を見破ることはできなかった。この力で見破れないのであれば、普通の人間の視覚では擬態の区別がつくことはないだろう。

 それでいて奴らの性格は残虐で狡猾だ。

 人に身に化け、相手を欺く。もし判断が少しでも遅れていたなら、変身する前に殺されていたかもしれない。

 

 

「私は、もう少しこの星を探索してみます。星核が見つかったら、また連絡します」

『分かったわ。刃ちゃんと銀狼には私から話しておくわ。気を付けてね、()()

 

 

 サム、と呼ばれた鉄騎は通信を切断。肩で呼吸をして、通信中ずっと背後から感じていた殺気に向けて問いかけた。

 

 

「あなたが、この怪物たちを仕切っていたのでしょうか」

 

 

 振り返り、ゆっくり見上げると崖の上から鉄騎を見下ろしている人の形をしたなにかがいた。

 サムの問いかけにその()()()が答えることはなく、計り知れない高さの崖から飛び降り、その姿が辺りで燃え盛る炎によって露わとなった。

 サムが白銀の鎧を纏っているのに対し、そいつは黄金の鎧を纏った仮面の騎士だった。

 透き通った水のような瞳でサムを睨み、髭のように伸びた二本の角と頭部から生えた角を合わせ、その姿はまるで昆虫──コーカサスオオカブトを模しているようだった。

 

 サムは答える様子のない黄金の騎士に向けて腕を伸ばし、拳を握り締めた。

 

 

「このまま去れば、命だけは見逃しましょう。でなければ、ここで死ぬことになります」

 

 

 だが、騎士は手に持っていた青い薔薇を口元に当てると、小さく囁いた。

 たった一言だけ「愛と共に散りなさい」と。その瞬間、騎士の姿が忽然と消え、認識したと同時に全身に衝撃が走り、サムの身体は吹き飛ばされていた。

 

 

「いったいなにが!?」

 

 

 サムの装甲があの一瞬で損傷。いつの間にか背後に立っていた黄金の騎士と距離を離せば、彼はゆっくりと振り返りながら声を漏らした。

 

 

「いまの攻撃に耐えますか。あなたは他のマスクドライダーとは違うようですね」

「マスクドライダー? いったいなんの話を」

「ライダーとは違う存在……」

 

 

 なるほど、と勝手に納得した黄金の騎士は青い薔薇を放って強く佇んだ。

 

 

「私は最強を示せればそれでいい。なので、あなたにはここで死んでもらいます」

 

 

 来る、そう感じたと同時に跳躍。瞬間、またもや騎士の姿が消える。まるで瞬間移動のようだが上空から観察して、騎士は目に見えないほどの速さで動いているのが理解できた。

 あとはどう対処するかだ。

 騎士は地面に転がっていた巨大な岩石を拳で叩き割り、その破片を飛翔していたサムに目掛けて飛ばした。

 

 

「ずっと高速で移動できるのであれば、最初の攻撃で私を倒していたはず。それをしなかったということは、この高速移動には制限時間がある」

 

 

 岩石を避けながら冷静に分析し、騎士の高速移動が終わる瞬間を決して見逃さない。動きを予測して、次にどの地点で高速移動が終わるのかを解析。そして騎士の脚が止まった直後──サムは装甲に秘められた焔を点火させた。

 

 

「──2nd.Gear 点火!!」

 

 

 その身に業火を纏い、一気に急降下。身を翻して、叫んだ。

 

 

「──Action.1 実行ッ!!」

 

 

 爆炎を纏った蹴りで騎士を狙うが、彼は蹴りが飛んでくる方向を瞬時に見極め一歩で回避。地面を蹴り抜いた一撃は辺りの空間を囲うように二次燃焼を広げ、騎士の逃げ場を消滅させる。そして高速移動をさせる隙を与えることなく、次の攻撃に移行した。

 

 

「──Action.2 実行ッ!!」

 

 

 脚部のスラスターから一気に爆炎が噴射され、正面への進行を塞ぐと同時に騎士を焼き尽くさんと燃え広がった。だが騎士は高速で手刀を振り払い、炎を容易く両断。直ぐさま拳を握り締めると、身体を引き絞って突き出した。

 

 サムはそれに合わせて拳を突き出し、互いの豪腕の衝撃波が辺りの空気を吹き飛ばす。その反動を利用して拳を引き戻し、直ぐに脚を組み替えると騎士の側頭部を狙った後ろ回し蹴りを放った。

 

 

「──ヌンッ!」

 

 

 騎士は腕で防御してから、腰に巻かれたベルトに着けられたカブト型のなにかのボタンを勢い良く叩く。瞬間『HYPER CLOCK UP』と声が響き渡り、騎士の姿が光の如く刹那にして消えた。

 

 

「これが高速移動の仕組み──っ!」

 

 

 見えなくなった直後に襲ったのは、衝撃と激痛の連鎖だった。吹き飛ばされて地面に落ちるよりも更に速く、騎士の攻撃は連鎖的に続く。それが終わるまで耐えるのは、あまりにも絶望的な苦痛だった。

 このまま猛攻が続けば、装甲も保たない。故に、サムは拳を握り締めて装甲にある業炎を爆発的に放出させた。

 

 

「──『協定採択』ッ!」

 

 

 サムの行動に異変を感じた騎士が、困惑で一瞬その動きを止める。それをサムは決して見逃さなかった。

 

 

「ターゲット、ロック!!」

 

 

 装甲にある爆炎がサムの身体を覆い尽くし、核融合の如き熱を灯した。

 騎士は襲い来るであろう一撃に備え、腰に装着させた()()()()()()()()のゼクターホーンを下げた。

 

 

《 MAXIMUM RIDER POWER! 》

 

 

 体内に流れるタキオン粒子が稲妻となって一気に騎士の角へと集束。粒子の衝突によって爆発的にエネルギーを拡大させたタキオン粒子を右脚に移行させ、彼は青い薔薇に語るかの如く囁いた。

 

 

「ライダーキック……!」

 

 

 同時にサムはオーバーロードさせた装甲の焔を拳に集束。それを一気に振り下ろし──オーバーロード・スーパーノヴァを叫んだ。

 

 

 

「──焦土作戦実行ッ!!!」

 

 

 

 ライダーキックとスーパーノヴァの衝突により、竜巻のように膨大なエネルギーが嵐を巻き起こす。騎士の放ったタキオン粒子がサムの持ち得る炎とぶつかり合い、粒子の加速と核融合の衝突。それらの影響は次元にヒビを入れ、空間そのものが歪曲する。そしてガラスが割れるように、空間が()()()

 

 

「んなっ!?」

 

 

 驚愕で声を漏らした直後に、割れた空間が一気に集束を始めた。

 世界そのものが修復をする副作用だ。辺りのものをブラックホールの如く吸い込んでしまう。それに気が付いた時にはもう遅かった。

 サムは全火力の全速力を以てその場からの撤退を試みるが、サムの飛行速度を遥かに凌駕する力で吸い込まれ、サムは『死』を覚悟した。

 

 

 ヒビ割れた空間の奥は漆黒に包まれていて、()()()()()()のようだった。

 そんなところに飲み込まれてしまえば、帰ってこれるかもわからない。そもそも生きていられるのだろうか。まだ、この命の意味も分かっていないのに、こんなところで死ぬのだろうか。

 

 

 なにも成し得ることもできずに散りゆくのか。

 まだ、まだ死ねない。また、彼女に会うために。また、くだらないことで彼女と笑いたい。だから、まだ死ぬことはできない。

 

 

 

「──また、あたしは君に会いたい……ッ!」

 

 

 

 その儚い願いだけを抱き、サム──ホタルは次元の狭間に投げ出されて完全に消え去った。

 

 

 




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