ホタルよ、輝く為に舞い上がれ   作:渚 龍騎

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ホタルよ、別の世界で生き残れ

 

 

 

 気が付けば、そこは見たこともない景色が広がっていた。

 薄暗い廃墟の中。ヒビ割れたコンクリートの床を踏み締め、サムは困惑しながら辺りを見渡す。割れた窓から差し込む陽の光に照らされながら、耳元の通信機に手を当てた。

 

 

「カフカ、聞こえますか?」

 

 

 だが通信機からは雑音が響くだけで、求めていた相手の声は聞こえなかった。

 サムは探索範囲内に生体反応が無いことを理解し、周囲の安全を目視で確認すると装甲を解除する。巻き上がる炎が身体を包み込み、サムの装甲は一瞬で手に持っていたアイテムに収納された。

 

 

「ここは、どこなの……?」

 

 

 2メートル近くあった巨躯の装甲が剥がれ、そこに降り立ったのは()()()()()だった。

 蒼穹戦線グラモスの鉄騎。その名は、ファイヤフライ-IV 戦略強襲装甲(Strategic Assault Mech)──略して『S.A.M.(サム)』。その正体はホタルと呼ばれる一人の少女だ。

 ホタルは荒れてしまった髪を僅かに整えると、もう一度この辺りを見渡す。肉眼で見ればなにかが変わると思っていたからなのかもしれない。だが、結局現実が変わることはなかった。

 

 

「明らかにあたしの知ってる場所じゃない……」

 

 

 仙舟『羅浮』やピノコニーの景色とも、自分が知っているどの景色とも当てはまらなかった。

 割れた窓から外の景色を眺める。廃墟となっているこのビルは、それなりの高さを誇っているようで辺りの建物を一望できた。

 

 

「なんで、この場所だけこんなにも荒れているの……?」

 

 

 ホタルが見た景色は、明らかにおかしなものだった。

 遠くに広がっていたのは、コンクリートで作られたビル群やガラス張りの建物。文明自体はそれほど進んでいるようには見えないが、平凡で平和な景色が遍いている。だが、ホタルのいるビルを中心に広がっていたのは、無残に荒れた大地だった。

 

 建物のほとんどは崩壊し、倒壊寸前のものもある。明らかにこの場所だけ別の世界にいるようだった。

 散らばった瓦礫やガラス片が巻き散って、手入れがされていないとかそんなレベルの話ではない。この場所で大規模な爆発かなにかが起こってしまったようにも見えた。

 

 

「と、取り敢えず、ここがどこなのか調べないと」

 

 

 頭を振って、ホタルは辺りを警戒しながら歩み出す。ボロボロになって歩きづらい階段を踏み外さないように降り、この世界に来て初めて大地に踏み込んだ。

 やはり、この場所だけ荒れている。人の気配すら感じない。この場所でなにが起こったのか見当もつかなった。

 ホタルの懸念は、この世界だけではない。寸前まで戦っていた黄金の鎧を纏った謎の騎士。彼もあの穴に吸い込まれていたのだったら、この世界に流れ着いている可能性がある。

 

 

「うーん、やっぱりカフカたちとも連絡がつかない」

 

 

 僅かな願いは簡単に潰えて、ホタルはがっくりと肩を落とす。大きく溜め息を漏らして、直ぐに頭を振って落ち込んだ感情を振り払った。

 その直後、背後から声が聞こえた。

 

 

「お前は、何者だ」

 

 

 慌てて振り返った先にいたのは、独りの男だった。

 黒を基調とした服装で、上着の丈はひざ下まで伸びている。乱雑に荒れた黒髪で、その下にある双眸はまるで生きる意味を見失ったように光が灯っていない。やさぐれた男だ。

 ホタルは警戒をしながら、一歩だけ後退る。そして眼前の相手を睨みながら口を開いた。

 

 

「あなたこそ、誰?」

「俺は……矢車、矢車(やぐるま) (そう)だ。お前は?」

 

 

 矢車と名乗った男に顎で指図され、ホタルは彼を訝しみながら小さく答えた。

 

 

「ホタル……」

「そうか。なぜここに来た?」

「えっと、迷い込んじゃって……」

 

 

 矢車は困惑しているホタルの様子を睥睨し、溜め息を漏らすと「ついてこい」とだけ言って歩き始めた。

 ホタルは矢車を怪しく思いながらも、今現状この状況で唯一話ができる相手故に、警戒をしつつ彼の背中を追った。

 コンクリート片を踏み締め、暗く荒れた道だった地面を気を付けながら矢車の後ろを歩く。瓦礫を踏み締める音だけが響く沈黙を破ったのは、ホタルだった。

 

 

「どこに行くの?」

「出口まで案内してやる」

 

 

 思いもしなかった答えにホタルは僅かに目を見開く。小さく「ありがとう」とだけ感謝を伝え、辺りを見渡しながらここでなにが起こってしまったのか矢車に問い掛けた。

 

 

「ここで、なにがあったの……?」

「お前、知らないのか?」

 

 

 矢車は僅かに驚いた様子だったが、直ぐにその表情は闇に飲まれる。彼の表情を見るに、ここで起こった出来事を知らない者の方が珍しいようだ。

 矢車は進めていた歩みを止めると、雲に隠れてしまった空を仰ぎ見ながら生気のない表情で答えた。

 

 

「十年前、この渋谷に隕石が落下したんだ。その影響で渋谷は見ての通り壊滅。隕石の中からはワームが現れ、街を蹂躙した」

「ワーム……」

「ワームも知らないのか?」

「う、うん、最近この辺りに来たから……」

 

 

 そうか、とだけ呟いた矢車はホタルを見下ろしてから、なにかを咎めることもなく辺りを見渡す。なにかを警戒しているのか、矢車の動きを疑問に思ったホタルも「どうしたの?」と呼びかけた。

 矢車はホタルに「俺の後ろにいろ」とだけを告げて、物陰に目を向ける。その瞬間、どこからともなくワームが飛び出した。

 

 

「やっぱりワームが潜んでいたか……」

「こいつが、ワーム……!」

 

 

 その異形な姿の怪物は、この世界に来る前に戦った怪物と同じ姿をしていた。それの正体を理解し、直ぐにでも装甲を纏うつもりだったが、矢車が前に立ちはだかって構えた。

 矢車は大きく溜め息を漏らし、上着をはためかすとその腰にはベルトが巻き付けられていた。

 

 

「下がれ」

「え、う、うん……」

 

 

 ホタルを下がらせると、岩陰からなにか小さなものが跳躍しながら現れる。それはまるでバッタのような見た目を模しており、ホタルの足元を抜けて矢車の手に跳ねてキャッチされた。

 なにをするつもりなのか、ホタルはいつでも装甲を纏える準備だけはする。生身で奴らと戦うには無理がある。もしもに備えていた。

 だが、矢車は手に持ったホッパーゼクターを握り締めて囁いた。

 

 

「変身」

 

 

 ホッパーゼクターをベルトに装着。瞬間『HENSHIN』と音声が響き渡り、ベルトから緑色の装甲──三層の超金属ヒヒイロノカネが矢車の身体を覆い尽くす。その直後にワームの一体が矢車に殴りかかるが、それを簡単に回避して変身を完了した矢車はワームを蹴り飛ばした。

 

 

 

《 CHANGE! 》

《 KICK HOPPER! 》

 

 

 

 キックホッパーへと変身した矢車は、ホタルを背後に置いて数体のワームを相手に一人で戦闘を開始。ワームが振り被った豪腕を回避し、回し蹴りで一体を蹴散らすと、直ぐさま脚を組み替え、ワームの背中に後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

 

 

「──ふっ!」

 

 

 キックホッパーは左足で踏み込むと即座に右脚を振り上げ、ワームの顎を蹴り抜く。さらに空中で身を翻し、そのワームを蹴り飛ばした。

 振り払われた豪腕を脚で受け止め、弾き、飛び蹴り。さらに蹴り、跳躍し、踵落としでワームを地面に叩き付ける。

 

 

「──邪魔だ」

 

 

 キックホッパーの動きを観察していて、ホタルは一つ不思議に思うことがあった。

 

 矢車の攻撃は、全て蹴り(キック)だけなのだ。

 蹴って、蹴り飛ばし、踏みつけ、蹴り抜く。拳を握り、相手を殴ることは決してない。なにが彼をそこまで執着させるのかは分からないが、蹴りだけというハンデを持ちながら、ワームにまったく圧されていなかった。

 

 

「■■■■──ッ!!」

 

 

 ワームの一体が唸ると、キックホッパーは目の前のワームを蹴り飛ばしてから深紅の瞳で睨んだ。

 

 

「いま笑ったのはお前か?」

 

 

 誰も笑ってなどいない。だが矢車の落ちた声色は、どこか向けようのない怒りが強く滲んでいた。

 キックホッパーは苛立った様子でワームを掴み、至近距離から蹴り飛ばす。そしてバッタを模して作られたホッパーゼクターの後脚部──ゼクターレバーを可動させ、チャージアップを開始した。

 

 

 

《 RIDER JUMP! 》

 

 

 

 ホッパーゼクターの内部に秘められたタキオン粒子が足元に集中。一気に上空へと跳躍し、キックホッパーは眼下にいるワーム数体を睨む。そしてゼクターレバーを引き戻すと同時に叫んだ。

 

 

 

「──ライダーキック!」

 

《 RIDER KICK! 》

 

 

 

 タキオン粒子が一気に放出され、キックホッパーは急降下。深紅の稲妻が左足に駆け巡ると、超強化されたライダーキックをワームに叩きつける。その瞬間、左脚に装備されたアンカージャッキが連動して再び飛び上がる。そのまま次のワームにもライダーキックを叩きこみ、その連続的なキックで全てのワームを蹴り抜くとワームは緑色の炎を巻き上げて爆発四散した。

 

 

「はあ……」

 

 

 地面に降り立ったキックホッパーはゆらりと立ち上がり、大きく溜め息を吐きながら天を見上げる。沈黙が取り戻された廃墟で、矢車は小さく呟いた。

 

 

「相棒、俺はまた──お前のもとには行けなかった」

 

 

 相棒、そう言った誰かに告げて、キックホッパーは俯く。そしてふと顔を上げた先でキックホッパーは眼を疑った。

 

 

「影山、お前……生きて、いたのか……?」

「かげやま……?」

 

 

 矢車がぽつりとその名を呟き、ホタルは彼の視線を辿る。そこにいたのはどこか矢車に似た服装と雰囲気を纏った男だ。首から下げられた鎖の音を僅かに響かせながら、男はにこやかに笑って歩み寄って来る。矢車に向けて「兄貴」と明るい口調で言った。

 

 明らかに雰囲気がおかしい。矢車の様子もそうだが、影山と呼ばれた男から漂う漠然とした怪しげな感覚に、ホタルは悪寒を隠し切れなかった。

 

 

「矢車さん、明らかにあの人の様子はおかしい」

 

 

 だが、ホタルの声は矢車に届いていなかった。

 歩く速度が増していく影山らしき男に違和感を感じていると、彼は手に持ったホッパーゼクターを矢車とは反対にしてベルトに装着。全身をヒヒイロノカネが覆い尽くすと、キックホッパーに酷似した仮面の騎士へと変身を遂げた。

 

 

 

《 CHANGE! 》

《 PUNCH HOPPER! 》

 

 

 

 明らかになにかがおかしい。ホタルは駆け出して来たパンチホッパーから遠ざける為に、慌ててキックホッパーを押し飛ばす。矢車は勢い良く地面を転がるが、パンチホッパーはそのまま勢いに乗せ、ホタル目掛けて大きく拳を引き絞った。

 

 

「──戦略強襲装甲(S.A.M.)──展開ッ!!」

 

 

 ホタルがその手に握り締めたアイテムが翡翠色の羽根を広げ、ホタルの身体を爆炎で包み込んだ。巻き上がる炎に弾かれ、パンチホッパーは吹き飛ぶが空中で態勢を立て直すと眼前の炎を睨んだ。

 そして直ぐに大地を踏み抜き、炎に向けて拳を突き出す。だが既に装甲を纏ったサムはその豪腕を受け止め、勢い良く振り払った。

 

 

「ここからは、()が相手です。怪我をしたくなければ、このまま去ってください」

 

 

 サムは一歩前に踏み出て忠告するが、パンチホッパーは「断る!」と無視して突っ込んで来る。腰を低く構え、パンチホッパーの攻撃に対して戦闘態勢を取ると、()()()()()()()()から放たれたエネルギー弾がサムとパンチホッパーの足下を撃ち抜き、二人は驚愕しながらも飛び退いた。

 

 

「今度はいったいなにが……っ!」

 

 

 次から次へと起こる事態に、僅かな焦りを感じながらもなんとか理性で冷静さを保って今も立てている。歯を食いしばり、サムは巻き上がる粉塵を振り払って相手を睨む──そしてその姿を視認した時、あまりにも有り得ない光景に目を疑った。

 

 

「うそ……あた、し……?」

 

 

 鋼の如き装甲を纏った巨躯の男の横に、ホタルとまったく同じ容姿をした少女が立っている。うり二つ、完全に同じホタルだ。灰色がかった長い髪を靡かせ、服装はフリルが多く翡翠色のスカート。明らかにホタルとまったく同じ姿だった。

 

 困惑を隠し切れずにいるサムに、ホタル?は指を指して隣に立っている蒼き騎士を見上げた。

 

 

「あれが()()()()()()()()()()()。ガタック、お願い」

「あっちが偽物か! 俺に任せろ!」

 

 

 ガタック──と呼ばれた男は両肩に装備したガタックバルカンの砲口をサムに向けてエネルギー弾を連射。高速で迫り来るエネルギー弾が衝突する寸前でサムは背部のスラスターを全開させ、一気に飛び上がった。

 爆発音が響き渡り、巻き上がった粉塵と爆炎が混じった中を突き抜け、サムは距離を離した。

 

 

「──違うッ! それが私の偽物です! 私が本物のホタルだ!」

 

 

 エネルギー弾を高速で連射するガタックへ必死に真実を訴えるが、ガタックは「信じるものか!」と否定。なぜそこまで信じてくれないのか、もう既にあの偽ホタルが、ガタックに虚偽の情報を練り込ませているようだった。

 

 

「──俺は騙されない! お前が()()()()()()()()()()()()を庇い、影山さんと戦うのをこの目で見た!」

 

 

 ガタックの叫びにサムは驚愕を隠し切れず、一瞬だけ判断が遅れる。その刹那が致命的となってガタックバルカンの砲撃をもろに受けた。

 衝撃波で重力制御のバランスが崩れ、サムは真っ逆さまに地面へと撃ち落とされる。そのまま態勢を立て直すこともなく地面に打ち付けられ、ホタルは苦痛に顔を歪めた。

 

 

「いったい、なにが起こって……ッ」

 

 

 状況が理解できない。一緒に行動した矢車がワームで。ホタルに擬態したワームが本物に殺害の命令を下している。いったいなにがなんなのかまるで理解できなかった。

 息が詰まり、ゆっくりと立ち上がりながら矢車に視線を移す。彼は彼でパンチホッパーを相手に苦戦しているようだった──否、違う。一方的に殴られ続けていた。

 

 

「矢車さん……ッ!」

 

 

 矢車がワームであるのか、その真実は分からない。だがそれでも、一つだけ分かることがある────矢車は、ホタルを助けた。見ず知らずの人間を導き、ワームの手から守り抜いた。

 そんな彼が偽物だとは、到底思えなかった。

 だから、だからこそ、ホタルの直感は彼を信じた。

 

 

「──くッ、このままじゃ! 殲滅プラン、2nd.Gear 点火!!」

 

 

 サムは装甲を解放。内に駆け巡る熔火エネルギーを爆発させ、竜巻の如き炎を辺りに撒き散らす。爆炎は壁を作り出し、エネルギー弾と共にガタックとパンチホッパーの二人を弾き飛ばした。

 

 

「矢車さん、ここから逃げましょう!」

 

 

 ガタックたちの隙をついて、キックホッパーに手を差し伸べた直後──爆炎の壁を突き抜けて解放(キャストオフ)された鎧が超高速で弾け飛んで来た。

 慌てて鎧を叩き落とした瞬間に、炎で作られた壁が一刀両断。真紅に染まった複眼が輝き、仮面ライダーガタックが危険を顧みずに突っ込んで来た。両手に握り締めた双剣型のガタックダブルカリバーをサムに向けて振り下ろした。

 

 

 

《 CHANGE! 》

《 STAG BEETLE! 》

 

 

 

 両手に握り締めた双剣型のガタックダブルカリバーをサムに向けて振り下ろす。それを両手で受け止め、衝撃と共に超金属同士の衝突によって閃光と火花が瞬いた。

 

 

「聞いてください! 私が本物です!」

「──黙れ! 信じるものか!」

 

 

 サムの説得も虚しく、ガタックは一切耳を持とうとしない。ガタックダブルカリバーを振り払い、ガタックを蹴り飛ばす。彼はたたらを踏むが、直ぐに態勢を立て直すと同時にガタックダブルカリバーを合体──大鋏状に変型させた。

 

 

「──ライダーカッティングッ!」

 

《 RIDER CUTTING! 》

 

 

 ガタックダブルカリバーの刃に稲妻が迸り、膨大な破壊エネルギーがサムを挟み込まんと迫り来る。だが、サムには逃げ場がない。背後にはキックホッパーで正面から突っ込むガタックは眼前に迫っていた。

 避ければ、矢車が犠牲になってしまう。

 逡巡を押し切って、サムはその手でガタックダブルカリバーの刃を受け止めた。

 

 

「──なにっ!?」

 

 

 サムの想定外の行動にガタックは驚愕を隠し切れない。その思考の隙を狙って、サムはガタックダブルカリバーを膝で蹴り上げる。そのまま脚部のスラスターを解放──『Action.2』を即座に実行。

 吹き出た火炎が大地と共にガタックを焼き払う。だが、その背後に隠れていたパンチホッパーが拳を振り被り、サムは大地へと吹き飛ばされた。

 

 

「────ッ」

 

 

 唇を噛み締めながら、全身に走る激痛に耐える。だが装甲の損傷があまりにも激しく、少しの動きでさえも火花が散り、片膝で起き上がるのが精一杯だった。

 

 

「このままじゃ、本当に……ッ」

 

 

 既に態勢を立て直しているガタックと、ゆらりと起き上がったパンチホッパーの二人がゆっくりと歩み寄る。そしてガタックは腰に装着されたガタックゼクターのボタン──フルスロットルを三度、押し込んだ。

 

 

《 (ONE) 》

 

《 (TWO) 》

 

《 (THREE) 》

 

 

 さらにそのガタックと並んで、パンチホッパーはホッパーゼクターのゼクターレバーを可動。腰を低く構え、チャージアップさせると一気に飛び上がった。

 

 

《 RIDER JUMP! 》

 

 

 ガタックが、ガタックゼクターのゼクターホーンを勢い良く再び倒す。同時に、パンチホッパーはゼクターレバーを再度可動させた。

 

 

「──ライダーキック!!」

「──ライダーパンチ!!」

 

 

《 RIDER KICK! 》

《 RIDER PUNCH! 》

 

 

 飛び上がった二人のライダーキックとライダーパンチが迫る。刹那の思考よりも早く、サムは本能的に内部装甲の炎を無理やり爆発させ、オーバーロード・スーパーノヴァを始動させようと拳を握り締めた。

 覚悟を決めるその瞬間──時が、ゆらりと流れた。

 

 

 ()()()()()()()で、一人の男が歩いていた。

 紅と白銀の装甲に身を包み、悠然とした佇まいで躊躇なくサムとマスクドライダーたちの間に割り込む。ゆっくりとした動きでありながらも、他の者に彼の動きは見えなかった。

 男はなにも語ることなく、クロックアップをも超えた速度で彼らの間に入ると、腰にあるハイパーゼクターのゼクターホーンを下げた。

 

 

《 MAXIMUM! 》

 

《 RIDER! 》

 

《 POWER! 》

 

 

 更に、()()()()()()()のフルスロットルを連続で押し込むと、ゼクターホーンを倒してから彼は囁いた。

 

 

「──ハイパーキック」

 

 

 顔を上げ、タキオン粒子の衝突によって生まれる爆発的エネルギーがカブトホーンへと昇り、透き通った蒼き複眼が輝く。そして更なるパワーを得たタキオン粒子は一瞬にして右足へと集束──迫り来る二人の必殺技に合わせて上段回し蹴り(ハイパーキック)を叩き込んだ。

 

 

 ────そして、時は動き出す。

 

 

 突然の爆発。サムたちの眼前でいきなり爆発が起こり、パンチホッパーとガタックは突如として吹き荒れた爆発に吹き飛ばされ、勢い良く地面を転がる。なにが起こっているのか理解できない全員が、慌てて眼前の爆発を睨んだ。

 

 吹き上がる爆炎の中──蒼き複眼が瞬く。背中から生えた虹色の羽根が消え去り、それを傍観していたホタル?が大きく目を見開く。そしてガタックが「お前……!」とその正体に気が付いた様子で声を荒げた。

 

 

「あ、あなたは……?」

 

 

 誰よりも近くにいたサムが、目の前に立っている男へ向けて声を漏らす。ゆっくりと、猛者たる立ち振る舞いで()()()()()()()()()は振り返り、人差し指を天へと掲げた。

 

 

「──お婆ちゃんが言っていた」

 

 

 開口一番、そんな言葉が聞こえてサムは首を傾げる。だがカブトはそのまま同じ声色で語った。

 

 

「──天の道を往き、総てを司る男」

 

 

 その瞬間、落ちつつあった橙色の太陽が、崩れ去った建物の隙間から覗く。まるでそれは、太陽そのものが彼の意のままであるかのように──彼の影と重なった。

 

 

 

「──俺の名は、()() ()()

 

 

 

 最強の男が、この大地に降臨した瞬間だった。

 

 

 




▽ホタル

▽『星』を滅ぼす力を持った『星核』を収集している謎の組織『星核ハンター』の一人にして、蒼穹戦線グラモスの鉄騎サムの正体である少女。
 容姿は儚げでありながら、強い意思を持った少女である。だが、兵器として生み出された為、遺伝子操作によって『ロストエントロピー症候群』の苦痛を味わっている。生命の意義を探し、運命に抗う方法を追い求めている。
 実直な性格で優しいが、慈悲のいらない悪党には容赦ない。嘘をつくのが下手。

▽小ネタ
 サムに変身する為のアイテムがゼクターっぽい上に、サムの攻撃『Action.1』はまんまライダーキック。更にはサムとの戦闘で得られるアチーブメントの名前が『心火を燃やして、ぶっ潰す』となっている。
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