ホタルよ、輝く為に舞い上がれ   作:渚 龍騎

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バチバチに戦闘させようと思ったら、説明だけで一話が書けてしまいました。すいません。なので、今度こそ次回からライダーたちの戦闘が始まります。

あと追加で注意があります。
この作品ではカブトライダーの内二名のオリジナルフォームが登場します。それだけ注意をして下さい。


ホタルよ、偽物を倒してみせよ

 

 

 田所(たどころ) 修一(しゅういち)は実家の蕎麦屋で、目の前にいる女性と真摯な面持ちを浮かべていた。

 目の前の女性は、梳けるような黒い髪を伸ばした美しいほどに顔の整った女性だった。

 歴史を感じさせる老舗には、あまり似つかわしいとは言えないスーツを着込んだ彼女は、今や日本でも有名な『ディスカビルコーポレーション』の社長──(みさき) 結月(ゆづき)だ。

 

 かつて秘密組織『ZECT』で田所の部下だった岬は、今ではその名を世に轟かせる逸材となっている。だがそれでも岬の田所に対する対応は、昔と変わりなかった。

 

 

「お元気そうでなによりです、田所さん」

「岬、お前もな」

 

 

 神妙な面持ちの二人だが、蕎麦屋に客はおらず、店員も田所一人だけである。今日は蕎麦屋『たどころ』は定休日だ。決して売れていないわけではない。それなら、なぜ有名な会社の社長がこんな老舗に来ているのか。それは田所が、岬にしか言えないことがあったからだ。

 

 

「早速だが、最近ワームが動きが活発になってきているのは、岬も知っているな?」

「はい。天道君や加賀美君がなんとか倒してくれているようですけど……」

 

 

 田所は「ああ」と呟いてから黙然と俯く。なにか言いたいことを言えないような、そんな雰囲気を見せる田所。彼は乱暴に頭を掻いて、ポケットから()()を出し、机に置いた。

 

 

「ザビーゼクター!?」

 

 

 そこに出されたのは、紛れもないザビーゼクターそのものだった。

 マスクドライダーシステム仮面ライダーザビーへと変身する為のものであり、田所の手にあるということは、田所がザビーゼクターに選ばれ、資格者へなったということ。

 数年前のワームとの戦いでは、岬を含め田所がマスクドライダーの資格者になることはなかった。

 

 

「どうして、田所さんのところに……」

「分からない。出前に行った時ワームに襲われたんだ。そこでザビーゼクターが俺のもとに飛んできた」

 

 

 「しかもライダーブレスを持ってな」と田所はザビーゼクターの隣にライダーブレスを置く。その突然として語られた事実に岬は驚きを隠せず、目を見開いていた。

 田所は腕を組み「そこで」と切り出した。

 

 

「俺はまたZECTを再結成しようと考えている」

「ZECTを……ですか……?」

 

 

 ZECTはワームに似た種族のネイティブに操られ、人類全てをネイティブに変身させようとしたことがある。それを考えると、ZECTを再結成するのは世間からも非難の声があがるだろう。

 

 田所は持っていたバッグから一つの束になった資料を机に置く。それは真っ白な表紙に『緊急プロセス』とだけ書かれており、右下に小さく『加賀美(かがみ) (りく)』と聞き覚えのある名前が書かれていた。

 

 

「これは……」

「ああ、加賀美陸(統括)はもしまた宇宙からの脅威が訪れた時に備え、これを俺に渡した」

 

 

 岬はその資料を捲り、内容に目を向けた。

 書かれているのは人類の未来を守る為に、なにをすべきか、緊急事態に備えた行動、武装、ありとあらゆることが事細かに書かれている。そして最後には『田所 修一』をリーダーとして、再度ZECTを結成することが記載されていた。

 

 

「もう既にZECTだった隊員には声をかけた」

「そう、ですか……」

「だが、加賀美とだけ連絡が取れなくてな。なにかあったのかもしれない」

 

 

 だから、と田所は言葉を続けて岬に頭を下げた。

 

 

「頼む、岬。俺が創ったZECTに入って欲しい。お前の力が必要なんだ」

 

 

 岬の実力は誰よりも田所が知っている。だが、ワームとの戦いで愛した男がどうなったのかも知っている。あの戦いを乗り越えて未来へと突き進んでいる時に、過去への執着へと引き戻そうとしている。そんなこと百も承知だ。

 それでも田所は、岬に頼んでいた。

 

 

「田所さん、顔を上げて下さい」

 

 

 岬にそう言われ、ダメだったかと田所は肩を落としながら顔を上げる。彼女に視線を移せば、田所は僅かに目を見開いた。

 彼女は、笑っていたのだ。

 

 

「私、やりますよ──田所さんのZECTで」

 

 

 岬から差し伸べられた手を受け取り、田所は微笑む。二人でまた手を取って、ZECTが小規模でありながらもここにまた再結成された瞬間だった。

 

 

「でも、なにから始めるんですか?」

 

 

 結成したのは良いにしろ、どこからなにを始めるのか、岬はそれが疑問だった。ワーム発生の原因と、裏に誰がいるのか、なにも分かっていない状況にある。

 田所は腕を組んでから思考を巡らせた。

 考えていると、閉じていた扉が横に開き、天道と一人の少女が姿を見せた。

 

 

「天道君!?」

「天道!」

 

 

 その姿に驚きを隠せなかった二人。天道はおもむろに椅子を引きながら「情報ならある」と、そう告げて腰を下ろした。

 だが、天道の隣で腰を下ろす少女の姿に困惑を隠し切れず、田所は「彼女は誰だ?」と問う。そこで少女が自身の胸に手を当てて答えた。

 

 

「あたしはホタル。一応、別の世界から来ちゃった……みたい」

「別の世界? どういうことだ天道」

 

 

 別の世界──その意味を理解できずに天道を見つめる。だが彼は「そのままの意味だ」としか答えず、慌ててホタルが説明を付け加えた。

 

 

「えっと、あたしも理解できてないんだけど、宇宙は一つじゃなくて幾つも存在しているの。それであたしのいた宇宙と、この宇宙がなにかしらの拍子に繋がっちゃったみたいなの」

「ダメだ、俺には突拍子もなさすぎて分からん」

 

 

 思考を放棄した田所だが、岬もまた話の内容が大き過ぎる上に突拍子もなさすぎて理解できていなかった。二人は腕を組みながら、うーんと唸った。

 

 

「ともかく、今ワームが大量発生しているのは、ホタルの世界に存在していた『星核』が原因だ」

「星核は根付いた星の生態系を変えたり、星を滅ぼしてしまうほどの力を持った物体のこと。星核がどうしてこの地球に飛来したのかは分からないけど、早く封印しないと──この世界は滅んでしまうの」

 

 

 最後の言葉に目を見開く岬と、声を荒げた田所。天道は態度を変えることなくホタルに次いで言葉を続けた。

 

 

「それにワームを従えてるのは、ホタルと加賀美、影山に擬態したワームだ。おまけに加賀美と影山はマスクドライダーに変身までできる」

「加賀美君まで……」

「いま風間と矢車はひよりが見ている。加賀美はどこにいる?」

 

 

 田所と岬は視線を合わせる。答えたのは岬だった。

 

 

「いまは連絡が取れないの……」

「なるほど。加賀美の擬態がいるのでなんとなく想像していたが、加賀美は囚われているのかもしれん」

 

 

 腕を組んだ天道を見上げ、ホタルはふとさっきの戦いを思い出す。天道がガタックである加賀美を睨んだ直後──天道はその加賀美が偽物であることを見抜いていた。

 

 ワームが人のほぼ全てを擬態(コピー)しているのなら、それを一瞬で見抜くことなどできない。サムのシステムでも見抜けなかったものが、天道には見抜けた。それを不思議に思っていた。

 

 

「ねえ、どうしてさっき加賀美さんが偽物だって分かったの?」

 

 

 ふと思い出したことを問えば、天道は腕を組んで「お婆ちゃんが言っていた」とまたまた語り始める。だが今回は、毎度の天を指差すことはなかった。

 

 

「──本物を知るものは、偽物には騙されない」

 

 

 本物を知っているのだから、絶対に間違えることはない。そう断言しているようだった。

 天道は瞳を閉じて、さっきの戦いを思い返しながらホタルにその理由を答えた。

 

 

「本物の加賀美なら、俺がハイパーゼクターを使っても退いたりしない。だがあいつは、俺が剣を向けただけで一歩──後ろに退いた」

 

 

 開かれた天道の瞳は、あまりにも強い眼差しを灯している。だがその中でゆらりと滲んだ怒りを、ホタルは見逃さなかった。

 それと同時に天道の観察眼がいかに優れたものであるのか、この時を以て理解できた。

 

 手負いのサムとキックホッパーを背後に置きながら、目の前に相手が多数存在している中で冷静に駆け引きを行い、相手の一挙手一投足を観察する。普通の人間では絶対にできない行動だ。

 それほどまでに天道 総司という男が、強くブレない冷静な心を持っているということだろう。

 

 

「すごいね、そんなことまで見てるなんて……」

 

 

 ふ、と天道が鼻を鳴らして微笑む。ただの自信過剰な男、というわけではなかった。

 天道 総司が尊大な態度で大言壮語を吐くのには、それ相応の実力と才能を持っているからである。

 

 

「でも、どうして天道君はここに来たの?」

 

 

 岬は「なにか用が無いと天道君は来ないでしょ?」と言って、ホタルは本来の目的を思い出す。そして天道が「ああ」と告げた後に『ゴン』のことを二人に話した。

 

 

「リバース・サムにゴンを攫われた。だからお前たちの力を借りたい」

 

 

 珍しく頼み込む天道の姿に岬は僅かに目を見開き、腕を組んだままの田所が頷いた。

 

 

「俺たちも天道の力を借りようと思っていたところだ。ここは全員で手を組むぞ」

「ああ、そうだな」

 

 

 田所が差し出した手を握り締め、天道は彼と握手を交わす。そこでテーブルに置かれていたザビーゼクターを見下ろしてから、田所の瞳を真っ直ぐに見据えた。

 

 

「ザビーゼクターに選ばれたのか?」

「ああ、なぜ突然ザビーが俺を選んだのか分からないが、これからは前に出て戦うつもりだ」

「遅れるなよ?」

「誰に物を言っているんだ、天道」

 

 

 お互い僅かに口角を上げて笑みを浮かべる。今まで後方での支援に徹していた田所と並んで戦うことができる。それだけでも天道の胸を踊らせるのには充分な出来事だった。

 

 

「それじゃあ天道君たちの情報と合わせて──」

 

 

 岬がそう切り出した直後に、どこがで爆発音が響き渡って店が地面ごと大きく揺れる。テーブルに置かれたコップが倒れ、水が勢い良くテーブルに蚕食。バランスを崩して倒れそうになる岬を慌てて田所が支え、ホタルの肩を天道が持った。

 

 

「いったいなんだ!?」

 

 

 声を荒げた田所が店先に視線を送る。ガタガタと建物が悲鳴を上げる中で、天道はホタルを支えながら辺りの気配を探っていた。

 地震が収まると田所と天道はそれぞれ支えていた二人に心配の眼差しを向けた。

 

 

「岬、大丈夫か?」

「は、はい、ありがとうございます」

 

「ホタル、お前も怪我はないか?」

「うん、ありがとう」

 

 

 よし、と頷いた天道は誰よりも早く外に飛び出る。慌てて三人も後に続くが、天道が睨むその先を見て、大きく目を見開いた。

 眼前にいたのは、大量のワームを引き連れた影山だ。既にパンチホッパーに変身している影山の背後から、攫ったゴンを抱えるワームが前に出た。

 

 

「影山、いやあれは偽物か……貴様、なにが目的だ!!」

 

 

 ゴンは気絶しているようだったが、田所は怒りを露わにして叫ぶ。だが影山が答えることはなく、その背後からガタックへと変身している加賀美が姿を見せた。

 

 

「天道、大人しくハイパーゼクターを寄越せ」

「なるほどな。お前らの狙いはそれか」

 

 

 納得した様子の天道のもとにカブトゼクターが飛翔し、それを寸分の迷いなく握り締める。同時に田所はザビーゼクターを構え、並んでホタルも正面を見据えた。

 

 

「だが、寄越せと言われて、おいそれと渡すわけにはいかないな」

 

 

 加賀美の言葉を無視し、天道は正面を睨んだ。

 ハイパーゼクターはゼクターの中でも特異にして、特別なもの。単独での時空移動に加え、ハイパーゼクターに選ばれたマスクドライダーが使用すれば『ハイパーフォーム』へと変身。更には『クロックアップ』を凌駕する超高速移動──『ハイパークロックアップ』を可能にし、過去や未来も超えることができる。

 

 それだけハイパーゼクターという存在は、強力な力を持っている。ハイパーゼクターに駆け巡るタキオン粒子を利用すれば、ありとあらゆる不可能を可能にしてしまうだろう。

 

 

「欲しければ、俺から奪ってみるんだな」

 

 

 天道の煽りにガタックは怒りを募らせて唇を噛み締める。そしてふと感じた感覚にホタルは目の前──ガタックの背後を強く睨んだ。

 ワームの軍勢の間を抜けて──否、()()の歩みを止めさせることなく、ワームたちがゆっくりと捌ける。彼女の突き進む道を示すかの如く、擬態ホタルが姿を見せた。

 

 

「また出た……」

「また、って酷い言われよう。キミは()()()だよ?」

「違う。あなたはあたしに擬態した偽物でしかない」

 

 

 鋭く相手を睨むと、擬態ホタルは物怖じすることなく不敵に微笑む。「なにがおかしいの?」ホタルの僅かな怒りにも反応を示さず、寧ろそれを嘲笑うかのように笑った。

 

 

「別にー?」

 

 

 どこか聞き覚えのあるその物言いに、ホタルは目を眇めて今すぐにでも飛び出せるように構える。擬態ホタルはガタックとパンチホッパーに視線を向け、彼らはなにかを理解してゆっくりと頷いた。

 

 

「ホタル、お前はあの偽物とだ。できるな?」

 

 

 一歩前に踏み出た天道がホタルを一瞥し、それに応えるようにしてホタルは強く頷いた。

 偽物を倒すなら、やはり本物しかいない。

 カブトゼクターとザビーゼクターを、天道と田所は握り締めてそれぞれ装着──変身した。

 

 

「「変身!!」」

 

《 《 HENSHIN! 》 》

 

 

 そして直ぐ様キャストオフをして、身に纏っていた鎧を解放(パージ)。鎧に隠れていたカブトホーンが天に昇り、カブトとザビーの二人の複眼が光に輝いた。

 

 

《 CAST OFF! 》

 

《 CHANGE! 》

《 BEETLE! 》

 

《 CHANGE! 》

《 WASP! 》

 

 

 仮面ライダーカブト、そして仮面ライダーザビー。二人はホタルを真ん中にして並び、それぞれ戦う相手を睨む。対面するガタックたちの視線が交わり、全員は戦闘態勢を取った。

 合わせて、ホタルも手にサムの鎧が込められたアイテム──ここはカブトにちなんで『グラモスゼクター』と呼ぶことにしよう──を手に握り締めて、擬態ホタルの動きを見据えた。

 

 だが、ホタルがグラモスゼクターを握り締めているにも関わらず、擬態ホタルはその手になにも持とうとしない。そしてその背後にいるワームたちも攻撃を仕掛ける素振りは一切なかった。

 

 

「どうしてなにも持たないの?」

 

 

 擬態ホタルの動きに疑問を持つと、彼女は不敵に微笑んで首を傾げた。

 

 

「アタシのこと心配してくれてるの?」

 

 

 擬態ホタルは後ろに手を組んで、笑った。

 

 

「心配しなくても、キミの相手はアタシじゃないよ」

 

 

 その瞬間、四人の仮面(マスクド)ライダーたちが一斉にクロックアップ。機械的な音声と共に四人のライダーが目にも止まらぬ速さで駆け抜けた。

 たったの刹那、それだけで擬態ホタルの背後にいたワームたちが爆発。深緑の炎が一気に立ち昇り、跡形もなく消えていく。恐らくワームたちは、なにがあったのか理解もできずに爆発したのだろう。

 そして連れ去られていたゴンは、カブトが一瞬で取り返し、岬のもとに預けられた。

 

 

「岬、ゴンは頼む」

「うん、分かったわ!」

 

 

 なにかが、おかしい──そう漠然と感じたのは、ホタルだけではない。簡単にゴンを取り返せていた天道も、同じことを直感で感じていた。

 全てのワームが一瞬で殲滅され、戦闘するライダーたちはクロックアップによる超高速でどこかへと消えている。残ったのはゴンを支える岬と、それを庇うように立つホタル。そして眼前で不敵に微笑む擬態ホタルだけだった。

 

 

「あなたの目的はなんなの?」

 

 

 一向にサムを起動する様子のない擬態ホタルからは、なぜか戦う意志をまるで感じられない。下手にここで戦闘すれば、背後にいる岬とゴンを巻き沿いにする可能性がある。

 ホタルはゆっくりと岬たちから距離を離しながら、一歩ずつ擬態ホタルを引き離していく。

 

 

「アタシの目的は、()を総ての世界で最強へと導くこと」

「彼?」

「キミも戦ったでしょ? 蒼き薔薇に捧げ、黄金の鎧を纏ったライダー──()()()()()と」

 

 

 黄金の鎧を纏ったライダー。その言葉で脳裏に過ぎったのは、この世界を訪れる前に戦ったあの騎士だ。

 やはりあの騎士──コーカサスもこの世界にいることを理解して、ホタルは唇を噛み締める。あれほどの強さを思い出すだけで、鳥肌が立った。

 擬態ホタルは鷹揚と両腕を広げて語った。

 

 

「この広い世界には、弱者が多過ぎる。誰かを頼ることしかできず、誰かに縋ることしかできない弱い者たち。それら総てを抹消して、力にて総てを支配する」

 

 

 擬態ホタルの語る言葉は、どれも肯定できるものではなかった。

 強者が絶対である世界。そんなもの理解できるはずがない。力だけでは、他者を圧することしかできない。

 

 

「彼は最強に君臨できればいいだけなの。だから、()()を取り込ませて、総ての星神(アイオーン)を消し去る。そうすれば、彼は絶対的な頂点に君臨して、アタシはその他の生命を根絶させる」

 

 

 擬態ホタルは、そんな大言壮語を語った。

 拳を握り締めて、それを聞いていたホタルの確信は更に強くなる。許せるはずがない。そんなことを聞いて、黙っていられるはずがないのだ。

 ホタルは腕を振り払って、怒りを露わにした。

 

 

「そんなこと、絶対にさせない──ッ!」

 

 

 瞬間、擬態ホタルは眼前にいた。

 ホタルの持っていたグラモスゼクターを弾くと、擬態ホタルは耳元で囁き、背後へと回り込む。慌てて腕を振り払ったが、擬態ホタルは背後に飛び退き、一歩で距離を離した。

 

 

「ふふ、それじゃあ、精々がんばってね?」

 

 

 擬態ホタルは、それだけを告げて巻き上がる炎に包み込まれる。ホタルは慌てて炎に飛び込んだが、既にそこに擬態ホタルの姿は無かった。

 いったいなにがしたいのか分からない。目的こそ理解できたが、その本質が見抜けない。遣る瀬無い気持ちにホタルは拳を握り締めて、空を見上げた。

 

 

「………………最悪」

 

 

 たった一言を呟いて、ホタルは溜め息をついた。

 

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