貴族令嬢の妹と入れ替わったら魔法が使えるようになりました!   作:秋津 幻

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第1話 アルファス・トーレは女の子になった

「お前は――ここで死んでもらう」

 

 ダンジョン深層。ボスを倒した後、俺は突然そう言われた。

 

「――何を……、突然! ぐっ……!」

 

 その時突然、体が動かなくなる。

 

「残念だったな、アルファス・トーレ。さっきのポーションに毒を仕込ませてもらった。安心しろよ。すぐ命を奪うようなもんじゃない……。ただちょっとの間動けなくなるだけだからな」

 

 俺が動けないのを見て、リーダー格の男……はニヤリと笑みを浮かべた。

 ボスと戦っている最中に毒を仕込む……? 何を考えているんだ。

 

「隙を見て殺すのは難しかったが……だが、ダンジョンの中で動けなくなったお前はどうなるかな? 最強の剣使いさんよお?」

「くっ……」

 

 確かに、ここはダンジョンの深層だ。

 今、俺の手元には回復薬もなければ、帰る方法もない。

 仮に動けるようになったとしても、一人で地上に戻るのは難しいだろう。

 つまり、俺はこいつらに殺されるしかないということなのか?

 そんな、やっとの事組んでくれたパーティだと思ったのに……

 このパターンは前もあったが、まさかこんなダンジョンの奥でだと?

 パーティから一人抜けた状態でどうやって帰るつもりだ?

 

「おいおい、そんな顔すんなって。別に俺たちだって殺したくて殺すわけじゃねぇんだぜ?  ただお前の存在が邪魔なんだわ」

「存在……だと?」

「ああそうだ。そもそも、なんで俺たちみたいな優秀なパーティがお前なんかと組んでたかわかるか?」

「――俺の実力を買ってくれたんじゃないのか」

「お前を殺すよう、頼まれたんだよ」

「!」

 

 ……なるほど、俺はいつの間にかそこまで嫌われていたか。

 人から好かれることはない人間だったが、まさか周到に作戦を立てて殺されるほどだとは。

 

「ったくよぉ。冒険者ギルドってのはほんと使えねーよなぁ。お前みたいな嫌われ者でも強きゃランク上げちまうんだもんな。それとも……脅しでもしたのか? だからこんなふうに依頼が来るってもんよ」

 

 そうだ。俺は嫌われ者だ。

 昔から自分は殺されてもおかしくない人間であった。事実、何度となく殺されかけてきた。

 魔法が使えないから? 人から好かれない性格だから? 違う。

 

「というか昔からあんたことが気に食わなかったのよ」

 

 エルフの弓使いの女が言う。食事に混ぜた毒を作ったのはこいつだろう。

 誰にも温和だといわれる彼女の態度は、俺にだけ違う。彼女からも嫌われるとは相当であろう。

 

 そしてそれは、普通の理由ではない。

 どうやら俺は――人から嫌われる呪いをかけられているらしい。

 

 なぜだか知らないが、人は自分の姿を見るとひどく嫌悪感と恐怖を抱くのだという。弱きものは恐れ逃げ出し、強き勇敢なるものはなんとしてでも俺、アルファストーレを殺さなくてはならないという使命感にかられるらしいのだ。

 

 この呪いはどうしてかけられたのか、いつからあるのか、わからない。両親にはいつもぶん殴られてばかりだったしもしかしたら生まれながらかもしれない。

 今まであらゆる解呪法を試したが一切効かなかった。

 1つだけ、この黒衣で完全に体を隠せばマシになる事だけは分かったが……これでもまだ問答無用で切りかかってくることがないだけで嫌われることには変わりない。

 

 そして、自分のもう1つの体質もあるかもしれない――それは。

 

「魔法も使えねえし、ほんと使えないわ」

 

 そうだ。なんと、一切の魔法が使えないのである。

 

 あらゆる人間が魔法を持ち。誰かが火をおこし。誰かが水を出し。誰かが傷を治すこの社会において――魔法を使えないというその一点は社会から拒絶されるのには十分であった。

 その上、人に嫌われる呪いがあったとして、その嫌悪感を魔法が使えないから当然のものと思い込んだはずだ。

 

 だが、そんな人生も遂に終わる。

 

「じゃ死んでくれ」

 

 俺の体に、剣が突き刺さった。

 

「ぐっ……!」

「じゃあな、自称「最強の剣使い」」

 

 そういって、過ぎ去っていく足音だけが聞こえる。

 俺の体はもう動けない。

 

 

 人に嫌われ、人に憎まれ、魔法に拒絶され。剣だけを頼りに生きてきたこの身も、ついに世界から拒絶される。

 

 ああ、願うならば、次の人生は……

 

 魔法を使え、人から愛されるような人間に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇ』

 

 

 

 

 

 ?

 ……走馬灯にしては、長いな?

 

 

 

 

『ねえ、かわいそうな冒険者さん』

 

 

 

 ――?

 

 自分を、助けでもするつもりか?

 

 なら、やめてくれ。もう、すべてが嫌になった。

 

 このまま死んで――

 

 

 

『辛いでしょう、悲しいでしょう。その過酷な運命に、その体を、ずいぶんと憎んだことでしょう……』

 

 

 

 なんだ、何をするつもりだ?

 

 君は誰だ? いったいどこから――

 

 

 

『だから、その体――あたしが貰ってあげる』

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、意識は途絶えた。

 

 

 ***

 

「うう……」

 

 どのくらいの時間がたったのだろうか。

 気が付くと俺は、ベッドの上で横たわっていた。

 

「ここは……?」

 

 どこかの部屋の一室のようだ。

 さっきまで俺はダンジョンにいたはず。誰かに助けられたのか……?

 こんな俺を助けてくれる人がいったいどこに……?

 

 何だか、体が軽いような。

 いや、胸のあたりが重いような……?

 

 

「アル! アルティ!」

 

 

 

 誰だ。その名前は。

 

 

 

「よかった、アル! 目覚めたのね! 生きてよかった……」

 

 

 

 俺の体が、抱きしめられる。

 

 目の前には、金髪で長髪の女の子がいた。

 

 

 

「もう、学園から突然いなくなって、心配してたんだから……」

 

「あの……」

 

 

 

 俺は言う。

 

 

 

「あなたは、誰ですか?」

 

 

 

 口から出た声は、かわいらしい女の子の声であった。

 

 

 

「?」

 

 

 

 首をかしげる。

 目の前の少女は、驚き目を見開いている。

 

 唖然としている女の人の後ろに、鏡がある。

 そこをちらりと見ると……そこには、金髪の小さな少女がいた。

 

 俺は右手を上げる。すると、鏡の中の女の子も左手を上げる。

 

「え」

 

 髪をなでる。そこにはつやつやした感触が手に伝わる。

 顔を触る。俺の顔より、はるかに小さいものであった。

 下を見る。そこには小さくも確かに胸のふくらみがあった。

 股間に触れる。そこには、何もなかった。

 

 俺は、女の子になっていた。

 

 

「ええええええええええええええ!!!?」

 

 かわいらしい少女の驚く声が、響いていた。

 

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