貴族令嬢の妹と入れ替わったら魔法が使えるようになりました!   作:秋津 幻

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appendix 近い未来

 私は、アルティ・ルヴァンと言います。

 貴族令嬢の子供として、学園に通っています。

 

 普通に勉強して、普通に友達と遊ぶ、そんな普通の学生ですが。

 ちょっと前に記憶喪失になっちゃったのが、人と違う所です。

 何でも、2回記憶喪失になったらしくて、1回目と2回目の間に、悪い人を倒したんだって。すごいね。

 

 私には、そんな力ないけれども。

 

 

 でも、本当らしいです。私がいつも使ってる剣は、その人が持っていたものを奪い取ったらしいんです。

 現に、ものすごい長くて、細くて、硬くて、そしてカッコいい剣がここにはあります。

 ですが、持ち上げるだけで一苦労。最近ようやく振れるようになったくらいで、戦うとか、まだ、全然。

 

 魔法はお姉ちゃんに色々教えてもらってますが、まだまだ全然使いこなせてないですし。

 固有魔法を考えろって言われてるけど、どんな魔法を使えばいいやら。

 

 なんでも、固有魔法というのは自分の本当の願いを形にするもの、らしいです。

 例えばお姉ちゃんだったら、早く大人になりたいから、成長魔法とか。

 

 私の願いって何だろう。

 そもそも、記憶喪失になったばっかりで、自分の昔の記憶が全然ない。

 

 だからまず、「自分」とは何かを探す日々です。

 

 それとも、記憶を思い出せば自分って言うものが見つかるのかな。

 

 どっちでもいいです。私は迷い続けます。

 

 とりあえず何か手がかりないかなーってこの悪い人が持ってた剣について調べることにしました。

 なんでも、一回目の記憶喪失に関わってたかもしれないんだって。

 

 昔の私は、この人と会ったことがあったのかも。

 アルファス・トーレ。悪い人だけど、どんな人だったのか。なにか、わかるかもしれない。

 まずは、この剣について調べることにしました。

 

 ***

 

 先生に聞いたり、一緒に冒険したことがある冒険者さんに聞いたり、本で調べてみたりしたところ色んなことが分かってきました。

 

 なんでも、伝説の剣らしいです。

 昔の魔法使い、「虚無の堕とし子」さんが使ってた剣らしく。

 魔法を少しだけ無効化することが出来る剣なんだとか。

 それじゃあ持ってる人は魔法使えないじゃんって思いましたが持ち手だけは大丈夫なんだとか。ほっとした。

 へーこの剣がねー、と壁に立てかけておいてる剣を見ます。

 

 じゃあこれを、頭かなんかにぶつけたら、記憶が戻ったりするのかな?

 私の記憶喪失が魔法かなんかが原因だったとしたら。

 ……。

 やって損はないかもしれない。

 剣を立てて、地面に座り込んで、研いでない所が倒れる方にして、位置について……

 

 よーい、スタート。

 

 ゴン。

 

 鈍い音があたりに響いた。

 

 

「いたた……」

 

 まあ、こんなんで記憶がもどるなんてそんな都合のいい事……

 

 

 あっ。

 

 

「やっべ……」

 

 全部、思い出した。

「俺」を倒して、記憶を失って、それでそれで……

 ……なんてことだ、すべて忘れて、普通の女の子として学園生活を楽しんでたなんて……

 

「アルちゃん!? なんか音したけど大丈夫!?」

 

 駆けつけて来たのは。

 俺が、私が、求めてやまなかった、彼女。

 

「ちょっと、頭ぶつけたの!? 大丈夫!?」

「あ、えっと、そのスフィ――」

 

 いや違う。

 もう、「俺」は倒したんだから。

 都合の悪い事を知ってる奴は、もういないんだから。

 

「お、お姉ちゃん」

「ほらほら、すぐに直してあげるから……痛いの痛いの、とんでけっ」

 

 そういって、頭に魔法をかける。

 頭の痛みが、すぐに和らいでいく。

 

「治癒魔法……」

「勉強したんだからね、もう二度とあんなことはさせないから……ってほらほらアルちゃん、そろそろ休み時間も終わるよ、早く授業いかないと、ほら……」

 

 お姉ちゃんが指さした先には、何人かの少女がいる。

 

「アルティちゃーん、いたいたっ」

「またどっかいっちゃって……探したんですわよ?」

 

 彼女たちは、友達だ。

 学園で出来た、新しい。

 

 そう、もう俺には、私には新しい人生が待っている。

 これからは、アルティ・ルヴァンとして。

 女の子として生きていく。

 

 それで、いいと思うのだ。

 

 偽りかもしれない。

 本当は、元にある姿に戻った方がいいのかもしれない。

 でもある女の子は特別な男の体を欲しがって、代わりにある男には普通の女の体を欲しがった。

 互いに、それでいいと思ったのだから、それでいいのではないだろうか。

 

「えっと、待って! 今行くから!」

 

 そして、皆の下に走り始めた。

 

 

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