Fate/Cradle   作:味噌そぼろ

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 魔術師(マスター)達が英霊(サーヴァント)を召喚し、交流を深めていた。
 リリアン・フィンレイもまた、英霊(サーヴァント)の召喚に成功したが……。


英霊(サーヴァント)魔術師(マスター)②——リリアン・フィンレイとライダー——

 リリアンはとりあえず召喚には成功した。

 召喚の際の余波で研究室に風が吹いた。思わず周囲を見渡したが、ローウェンの姿が無い。召喚に際し、邪魔にならない様に研究室から出ていたのだろう。

 つまり、ここにはリリアンと――――召喚した英霊(サーヴァント)の二人しかいない。

 召喚した英霊(サーヴァント)に目を向ける。その英霊(サーヴァント)はかなり大柄で、服装と相まって屈強な戦士か、あるいは軍人のようにも見えた。

 

 「よぉ」

 

 よく通る低音の声だった。どことなく壮大さを感じさせられる。

 英霊(サーヴァント)との契約を前に、リリアンに緊張が走った。

 ――――のだが。

 

 「ここ、どこだ?」

 「――――へ?」

 

 思わぬ質問に素っ頓狂な声が出てしまった。

 それは自身の魔術師(マスター)よりも大事なことなのか?

 

 「……私の叔父さんの家」

 「そうか、サンキュ……。あ、契約しなきゃな、契約。俺はライダー。お前は?」

 

 おどけたように振る舞うライダー。

 対照的に、リリアンは緊張していた。しかし、契約を交わさなければ何も始まらない。一先ず、契約を交わすことにした。

 

 「わ、私はリリアン・フィンレイ。貴方のマスターよ」

 

 どうにか、契約にはこぎつけられたらしい。英霊(サーヴァント)のステータスが脳内に流れ込んでくる。

 平均してC~B。突出した能力値こそ無いものの、宝具次第では十二分に戦えるだろう。

 そして、気になるのはその真名である。リリアンがライダーを呼び出した時に用いた触媒は船の設計図。となると、呼び出されるのはその設計者か、あるいは乗組員ということだ。

 

 「ライダー、貴方の真名を教えて」

 「……それ、聞いちゃう?」

 

 困惑したような表情を浮かべるライダー。

 リリアンは表情を強張らせた。脳裏には同級生とのやり取りがよぎる。また自分は間違ってしまったのか?

 

 「……俺はダーウィン。チャールズ・ダーウィンだ。『進化論』って言やぁ、わかりやすいか?」

「チャールズ……ダーウィン!?」

 

 チャールズ・ダーウィン。生物の進化に、自然選択という概念を取り入れた偉大なる生物学者である。しかし、その理論を受入れられるものは多くなく、長きにわたり論争を繰り広げた。

 無論、魔術師であるリリアンにとってはあまり関りのない話ではあるが、それでもその名を耳にするほど、彼の遺した影響は大きいのだ。

 そして、真名が明らかになると、新たな疑問が湧いて来る。

 

 「ライダー、貴方の宝具は?」

 

 普通、学者というのは魔術師(キャスター)(クラス)として召喚される。正当な魔術師でなくとも、最も性質として近しいのがそれだからだ。

 しかし、彼はライダーとして召喚され、ステータスもキャスターのそれとは思えない。

 そうなると、気になるのは彼の宝具である。ライダーとして召喚された以上、科学者以外での側面が強調されているはずである。

 

 

 「宝具? 何だ、お前、触媒で呼び出したんじゃないのか? ならわかりそうなモンだが」

 「……どういうこと?」

 「船だよ。俺の宝具は船なんだ。……お、あるじゃねぇか、設計図!」

 

 ライダーは祭壇の上にある設計図を拾い上げた。

 

 「これが宝具ってわかってるから触媒にしたわけじゃないのか」

 「……なんの船かわかってなかった……」

 「おいおい」

 

 不服そうな表情を浮かべるライダー。

 しかし、そもそもリリアンは「年季の入ったもの」としか聞かされておらず、詳細など聞いてはいない。

 

 「これはなぁ、世界を周った俺の船なんだ。懐かしいな」

 

 ライダーは設計図を見ながら、懐かしそうにつぶやいた。

 何気ない一言だろうが、リリアンにはそれが引っかかった。

 

 (『俺の』船……?)

 

 チャールズ・ダーウィンの搭乗したビークル船の船長はフィッツロイ。『俺の船』と言うのは言葉の()()だろうか。

 

 「で、どうする? もう戦いに行くか?」

 

 マスターの疑念をよそに、やる気満々のライダー。彼はどうやら好戦的らしい。

 

 「まだ早いんじゃ……」

 「そうか?」

 

 ライダーは単純な疑問として聞き返したのだろうが、リリアンは息が詰まってしまう。

 単なる質問ですら、どことなく責められているように感じる。

 しかし、今の自分は魔術師(マスター)なのだ。

 

 「そうだよ。ライダーを呼んだばかりだし、今はまだその……礼装とかの準備が、ね」

 「なるほど。なら、準備が出来るまではおあずけか」

 

 ライダーは納得していたが、リリアンの本心は違った。

 

 (本当は、不安で仕方ない……)

 

 英霊(サーヴァント)の召喚にこぎつけたが、彼女にはまだ戦う勇気などなかった。

 聖杯戦争に参加すると決めた時点で、相応の覚悟をしているつもりではあったものの、いざ英霊(サーヴァント)を召喚すると、途端に恐怖が心中を支配した。

 ライダーには悟られてはいないだろうが、戦いに出るには、まだ時間が必要そうだ。

 

 「……私は部屋にいる。また準備が出来たら言うね」

 「わかった。俺はどうしようか」

 

 ライダーの反応から察するに、彼女が抱いている不安は、どうやら表情には出ていなかったらしい。

 

 「部屋の外で叔父さんが待ってる。屋敷の案内でもしてもらって」

 「さっき言ってた人だな。了解」

 

 大柄な見た目によらず、聞き分けは良いらしい。

 

 「待ってる間、暇だったらたまんねぇもんな。助かるぜ」

 

 ……聞き分けが良いというよりは、偶然リリアンの提案とライダーの心情がかみ合っただけらしい。

 二人が研究室から出ると、ローウェンが出迎えた。

 

 「お疲れ、リリィ。で、この人が英霊(サーヴァント)?」

 「あぁ、俺はライダー。よろしく」

 

 ローウェンとライダーは握手を交わした。

 それを尻目に、リリアンは自室へ戻っていった。

 

 




サーヴァントステータス

クラス:ライダー
マスター:リリアン・フィンレイ
真名:チャールズ・ダーウィン
属性:中立・善
身長/体重:183㎝/95㎏
筋力:B+・耐久:B・敏捷:B・魔力:E・幸運:B+・宝具:D
・クラススキル
・騎乗:D—
船舶に限れば現代の乗り物は問題なく操縦可能。ただし、船舶以外は……

・対魔力:E
魔術に対する耐性・防御力。Eランクでは気休め程度。
魔術に疎いライダーは当然低ランクである。

・保有スキル
・生命への探求(進化):A++
生命の、及びその起源への探求心及び探求に当たっての偉業。自然選択を基盤とした進化論を唱えた彼は最高ランクでこのスキルを有している。
しかし、キャスターではなくライダーとしての召喚に伴い、本来よりも大幅にランクダウンしている。
スキル『神性』を持つ英霊(サーヴァント)との戦闘において有利な判定を得られる。
また、負の方向への神性としても働く。神性が高いものに効果を発揮する宝具は、逆にライダーに対しては脆く、無力なものになるだろう。

・無辜の怪物:B
人々のイメージや偏見等に強く影響を受け、霊基や身体が変化してしまっている。
ライダーの場合は風刺画の影響からか、首から下が猿のような体毛に覆われ、身体能力が大幅に向上している。彼のステータスの高さはこれに由来する。

・怪力:C-
本来ならば魔物・魔獣の類が持つスキル。ライダーの場合は無辜の怪物スキルの影響で保有している。
筋力をワンランク向上させる代わりに敏捷がワンランクダウンする。
また、敏捷が低下するような状態・状況に置かれた場合でも筋力が自動的に上昇する。
その環境に、適応するが如く。

・宝具
示し導く船の旅(トラベル・オブ・ビークル)
・ランク:C++/対軍宝具/最大補足:1~10人/レンジ:200
生物は進化をすることによって種を拡大した――――ライダーにそう気づかせた船旅。それに用いられたビークル船を呼び出す。
ライダーと共に世界を巡った、という点から、頑丈さが強調される。
ある種、結界宝具や防御宝具としても機能するが、本人は頑丈さにものを言わせて突進する戦術を好むようだ。
だが、この宝具の本質は――――――――

 次回は、マスターであるリリアン・フィンレイについてのお話の予定です。
 よろしくお願いします。
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