彼女の準備を待つライダーだが……。
「これが吸血鬼の心臓で、こっちはヒドラの卵で……」
「……ホントにいたんだな、そんな生物」
ライダーはローウェンに屋敷の内部を案内されていた。今は研究対象の倉庫を案内されている。
「貴方にとっては専門外ですか?」
「流石に神話上、伝説上の生物は俺の専門外だ。実際に目で見て研究することなんか出来ないからだ」
ライダーは生前、生物の進化について研究を行っていた。
亀の甲羅や鳥のくちばしなど、対象となる生物やその特徴は多岐に渡ったが、流石に神話上の生物を実際に目で見て研究することは出来ない。
「そんな生物が実在したんじゃ、俺もお払い箱か……?」
「いいえ、これらは神代の生物です。それ以降の生物については、科学者の領域でしょう」
「なら、良いんだが……」
ライダーにとってはそれなりに堪える内容だった。まさか自身の知る以前の、遥か昔の時代の生物、その痕跡が現代まで残っているとは。
「それに、魔獣や神獣と動物や植物では、まったく別のモノでしょう」
「まぁ、それもそうか」
あくまで、時代も出自も別物――――ライダーとローウェンはそう結論付けた。
「そういえば、リリィはどうでしたか?」
「リリィ?」
「あー……貴方のマスターです」
「あぁ、マスターか。……どう、っていうのは?」
「……マスターとして、どうですか?」
ローウェンは心配そうにライダーを見ていた。
「……アイツは、聖杯戦争に関して、まだ覚悟が出来ていない感じだったな。俺を呼び出すときの触媒についてほとんどわかっていなかったし、怯えているようにも見えた」
「そうですか……」
その後、しばらく気まずい沈黙が続いた。
倉庫にあるモノは見終えてしまったし、話題を切り出そうにも、浮かぶ話題は専門的過ぎて会話には不向きだろう。
――――ふと、ライダーは思った。
(そういえば俺、まだマスターとはほとんど話してなかったな)
自身のマスターよりもその叔父と話している時間が長いのは、どうにもおかしい気がする。
今後の為にも、マスターとはもっと深くコミュニケーションを取っておくべきだろう。
「案内ありがとな、ローウェン。俺、マスターのところに行くわ」
「えぇ、お構いなく……」
ローウェンと別れたライダーは霊体化し、マスターの元へ向かった。
――――撃ち抜く。
時計塔で自分を邪険に扱ったもの。
――――撃ち抜く。
時計塔で自分を無視したもの。
――――撃ち抜く。
時計塔で自分を落ちこぼれと決めつける講師を。
――――撃ち抜く。撃ち抜く。撃ち抜く――――
――――リ――――
撃ち抜く。撃ち抜く。撃ち抜く。――――
――――リリィ!
「え、あ……なに?」
「お、おい……大丈夫か?」
ライダーが来た時、リリアンはテレビの前で座り込んでいた――――ように見えた。
「ご、ごめん、ちょっとゲームしてただけ」
テレビ画面は
「楽しいのか?」
「うん……今日は調子が悪くて、33キル5デスだったけど」
リザルトから察するに、100ポイント先取のチームデスマッチらしい。
自軍側スコアボードの一番上だけ色が違う。リリアンのスコアだろうか。
「……一番ってだけじゃ、納得いかないか?」
「普段より倒せなかったし、逆に倒されちゃったから」
リリアンは再戦をキャンセルし、ゲームの電源を落とした。
「……そういえば、いつからいたの?」
「い、いや、さっき来たところだ。気にすんなよ」
本当はゲーム開始時点では既に部屋に入っていた。1マッチ話しかけても、終了まで応答は無かったのだ。
「なぁ、リリィ、準備の方は、もう出来たのか?」
「準備……そ、それより! その呼び方――――」
「ローウェンのが移ったみてぇだな。嫌だったか?」
「ううん、嫌じゃないよ」
そう言いつつも、表情はどこか暗かった。
「なぁ、リリィ、1ついいか?」
「な、なに……?」
ライダーは真剣な表情だった。
「聖杯を何に使う?
聖杯はごく一部の例外を除き、聖杯に(あるいは聖杯戦争に)かけるだけの願望を持っている者から
裏を返せば、令呪を授かり
「私は……」
リリアンはうしろめたそうに俯いた。
「……聖杯戦争に参加すれば、自分を変えられるかも知れない……って……」
元々、聖杯戦争に参加したくてフランスに来たわけではない。しかし、そのことがライダーに知られたら関係に亀裂が入ってしまうかも知れない。
当然、リリアンの言っていることに嘘はない。ライダーも、マスターの言葉を信じているようで、特に怪しんでいる様子は無かった。
「そうか……」
「ど、どうかしたの?」
ライダーはリリアンの目を見据えた。
「お前、戦う覚悟はあるのか?」
「覚悟……?」
「そうだ。俺を呼んだあの部屋で話したよな? 『準備をする』って……」
ライダーは視線をモニターに移した。
「アレは戦いに行く前の、いわば最後の一服みたいなもんだと思っていたが……さっき俺が準備が終わったか聞いた時、露骨に嫌がっていただろ? だから、本当にこれから戦う覚悟があるのか、ここで確認しておきたい」
ライダーは視線を再びリリアンに向け、再度問いかけた。
「本当に戦う気があるのか、もう一度確認しておきたい。……覚悟は、出来てるのか?」
ライダーの眼差しに思わずたじろぐリリアン。彼女は正直に言うべきかウソをつくべきか、咄嗟に結論が出せなかった。
迷っていると、部屋の窓をたたく音がした。
「ん? なんだこれ?」
「伝書鳩だ……」
鳩から手紙を受け取ったリリアンは差出人を見て驚いた。
「これ……聖堂教会からだ」
マスタープロフィール
名前:リリアン・フィンレイ
身長/体重:160cm/52kg
年齢:19
血液型:A
属性:火
魔力
量:B/質:D 名家の生まれだが、質を高めるには鍛錬が必要。
人物
・褐色肌に黒い長髪を持つ女性。
世代としてはフィンレイ一族の七代目に当たるが、跡取りは彼女の兄と決まっている。
正義感が強いのか、不正を許せない一面がある。少々行き過ぎているためか周囲と中々馴染めていない。争いごとにも消極的で、他者に対し強く出ることが苦手である。
代々時計塔に関わりがあるためか、その卒業生に知り合いがいる。
参戦の動機
・彼女自身は突発的に令呪を授かったに過ぎない。しかし、彼女はこれを自身を変えるきっかけであると捉えたようだ。
聖杯への願い
・彼女が聖杯に託す願いは今のところは存在しない。フランスに来たのは、元々は自分の心身の休養が目的である。